ドイツワイン・ナビゲーター


香りの言葉

1980年代にカリフォルニア大学ワイン醸造学部のアン・ノーブル教授の主導で、「アロマホイール(Aroma Wheel)」と呼ばれる、ワインの香りと味を表現する用語集が作られました。円グラフ状になっており、白ワインと赤ワインを1つにまとめています。

ドイツワイン・インスティトゥート発行の「アロマラット(Aromarad)」(写真)は、 このアロマホイールをドイツ向けに改良したもの。醸造学者ウルリヒ・フィッシャー氏が、ドイツ醸造家協会と共同で製作しました。ドイツ版は、白ワイン用と赤ワイン用に分かれており、ドイツワインの香りがとても詳しく分類してあります。

アロマラッド

ただ、これはドイツ人の嗅覚を標準としたものですので、日本人ならそれ以外の香りの表現を思いつくこともあるでしょう。例えばドイツでは、柑橘類のバラエティーは、レモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジくらいですが、日本人にはさらに、みかん、夏みかん、きんかん、ぼんたん、柚子、すだちなどが感じられるかもしれません。逆に、様々な種類のベリー類やプラム類など、ドイツにはふんだんにあって日本ではなかなか見つからないフルーツもあります。このアロマラットに網羅されている香りを知ることで、ドイツ人テイスターの嗅覚や味覚を共有することができます。

白ワイン用の香りの分類を例にとると、大体、以下のようになっています。

フルーツ系

・グリーン系フルーツ(グリーンアップル、ルバーブなど)
・柑橘類(レモン、グレープフルーツなど)
・ドイツ国内産フルーツ(りんご、梨、桃、アプリコットなど)
・トロピカルフルーツ(バナナ、パイナップル、マンゴーなど)
・フルーツコンポート(各種ジャム、ママレードなど)
・ドライフルーツ(ドライアプリコット、ドライレーズンなど)

フローラル系

・甘い香りの花(薔薇、ジャスミン、アカシアなど)
・強い香りの花(ゼラニウム、ライラックなど)

ハーブ/ベジタブル系

・フレッシュベジタブル系(青草、ミント、ユーカリなど)
・調理済み野菜(アーティチョーク、グリーンアスパラなど)
・ドライベジタブル系(干し草、紅茶など)

スパイス系

・強い香りのスパイス(ナツメグ、黒こしょう、生姜など)
・甘い香りのスパイス(ヴァニラ、丁字、シナモンなど)
・ナッツ(アーモンド、ハーゼルナッツ、クルミなど)

カラメル系

・(カラメル、ブリオッシュ、蜂蜜など)

スモーク系

・スモーク香(皮革、薫製ベーコン、タールなど)
・木の香り(トーストしたオーク材など)
・ミネラル香(濡れたスレート岩、土など)

微生物系

・(ヨーグルト、バター、チーズ、キノコなど)

このアロマラットの片隅には、味についての表現が書かれています。次章はそれを参考に、ワインの味についてお話ししましょう。

Sekthaus Raumland ゼクトハウス・ラウムラント
(ラインヘッセン地方)

ゼクトハウス・ラウムラント(ラインヘッセン地方)

1990年創業の若手ゼクトメーカー。オーナー兼醸造家のフォルカー・ラウムラントは、約8年にわたり、フランス人のシャンパーニュ専門の醸造家と共同作業していた。そのため、フォルカーの生み出すゼクトのコレクションはいずれも、シャンパンと肩を並べるレベルのものばかり。2004年版「ゴーミヨ・ドイツワインガイド」で、初めてゼクト部門の上位10位にランキングされて以来、毎年のように首位の座を占めている。ゼクトそのものの味を活かした、フレッシュ&フルーティーな味わい。高品質のゼクト造りのコンサルタントとしても活躍している。

Sekthaus Raumland, Alzeyer Strasse 134, 67592
Flörsheim-Dalsheim
Tel. 06243-908070
www.raumland.de


2001 I.Triumvirat, Grande Cuvee Brut
2001年産トリウンヴィラート1(ブリュット)29€

2001 I.Triumvirat, Grande Cuvee Brut

フォルカー・ラウムラントが初めて世に出した、シャンパンに比肩するゼクト。シャンパンに使用される3品種、シャルドネ、ピノノワール(シュペートブルグンダー)、ピノ ムニエ(シュヴァルツリースリング)をブレンド。ぶどうは全て、ダールスハイマー・ビュルゲル(グローセス・ゲヴェックス/特級畑)で収穫されたもの。フレンチオーク樽熟成のベースワインを絶妙に加えることで、ほんのりブリオッシュの香りが立ちのぼる。これは、フォルカーのブルグンダー種のゼクトに共通する「筆跡」だ。
最終更新 Montag, 10 August 2015 18:16
 

テイスティング

ドイツワインは、ドイツワインであるというだけで、これまでちょっと損をしていました。大量生産の、安価で深みのない甘口ワインのイメージがあまりにも強すぎて、ドイツワイン全体がそのようなものだと誤解されていたのです。ひょっとすると現在もなお、そのようなイメージを抱かれる方がおられるしれません。誤解や先入観を取り払う最良の方法は、テイスティングに尽きるでしょう。レストランなどで提供しているグラスワイン、ワインショップでの試飲、あるいはお祭りなどのイヴェントのワインスタンドで、未知のドイツワインを見つけたら、ぜひ試してみてください。

本格的なテイスティングでは、外観、香り、味の3つのステージをそれぞれ評価します。外観は色のニュアンスと透明感などを、香りはその強弱、クリーンさ、質などを、味も、やはりその強弱、クリーンさ、質、加えてタンニンの状態、後味の長さなどを確認します。こうした基本的なチェック事項のほかに、ワインが具体的にどんな色で、どんな香りや味がするか、全体の調和がとれているかなど、気づいたことをメモします。

香りを表現するとき、アロマ(Aroma)やブーケ(Bukett/ブケット)という用語を使うことがあります。この二つの用語は同じ意味で使われていることがあり、ドイツのワイン辞典では、アロマもブーケも「ワインの香りと味の印象の総合」と定義されている場合があります。しかし、基本的には香りと味は別個のもの、というのが学者たちの見解です。通常、ぶどう由来の香りをプリメアアロマ(Primäraroma)、発酵を経て生じる香りをゼクンデアアロマ(Sekundäraroma)、熟成によって生じる香りをテルティエアアロマ(Tertiäraroma)と分類します。ブーケという言葉は、ワイン中に存在する臭覚で感じられる物の総体、つまり香り成分とアロマ成分の全てをさしています。ドイツでは、ムスカテラー種、ゲヴュルツトラミーナー種など、ぶどうにもワインにもその個性的な香りがしっかり表れる白ぶどう品種が栽培されています。このようなワインをブケットワイン(Bukettwein)と呼ぶことがあります。

ワインは発酵、熟成を経て、果汁からは感じられなかった思いがけない香りを獲得します。また、同じ品種であっても、テロワールや収穫時期の違いなどによって、香りが異なってくることがあります。

外観と味もそうですが、香りと味は特に密接な関係にあります。味わうという行為は、外観や香りによって予測される味を確認する作業でもあります。香りとして感じられた印象は、味に感じられる場合も、そうでない場合もあります。また、酸味、甘み、苦み、タンニンのように、外観や香りからはっきり予測がつかない味わいの要素もあります。

次章ではドイツワインにどんな香りと味が潜んでいるのかを探ってみましょう。

Weingut Villa Niederberger ヴィラ・ニーダーベルガー醸造所
(プファルツ地方)

ヴィラ・ニーダーベルガー醸造所

企業グループ、ニーダーベルガー社が新しくスタートさせたブティックワイナリー。同社はほかにも、バッサーマン=ヨルダン醸造所などの老舗ワイナリーを所有している。ヴィラ・ニーダーベルガー醸造所のぶどう畑はたったの1ヘクタール、ぶどう樹は3000本だけ。醸造家に抜擢されたのは、かつてミュラー=カトワール醸造所で腕を振るったハンス=ギュンター・シュヴァルツ。完璧なまでに整備されたぶどう畑と、「なるべく何も施さず、しかし、しっかり見守る」というミニマルな醸造手法から、毎年、その年らしさのあふれるワインが誕生している。

Haardter Str.13, 67433 Neustadt
Tel. 06321-877114
www.villa-niederberger.de


2006 Neustadter Mönchgarten Rosé
2006年産 ロゼ(ほんのり甘口)12€

2006 Neustadter Mönchgarten Rosé

シュペートブルグンダー30%、メルロー30%、カベルネソーヴィニヨン20%、レンベルガー、サンローラン各々10%のブレンドロゼ。ヴィラ・ニーダーベルガー醸造所でちょっとずつ収穫された赤を合わせ、爽やかなロゼに仕立てた。糖度102エクスレで収穫し、自然に発酵が止まったために、ほのかな甘口ワインに仕上がった。フレッシュなイチゴの香りあふれる夏向きのワイン。
最終更新 Montag, 10 August 2015 18:01
 

ヴィンテージ

ヴィンテージとは、もともと「ぶどうの収穫」のこと。通常は「収穫年」という意味で使われています。ドイツ語では、人間の「誕生年」と同じ「ヤールガング(Jahrgang)」という言葉を使いますが、ワインの誕生年であることをはっきりさせるため、「ヴァイン・ヤールガング」と言うこともあります。ドイツワインは、ご存知のように、ほとんどがヴィンテージワインです。

ゼクトの場合は通常、複数のヴィンテージがブレンドされていますが、醸造所元詰めのヴィンツァーゼクトは、ヴィンテージ表記のものが増えています。

「偉大なるヴィンテージ」と言われる年は、ドイツでも1970年代頃までは、10年に2、3回あるかないかでした。当時は気候が冷涼すぎたせいもありますが、収穫方法や醸造方法が現在のように進んでいなかったことも関係しています。

しかし、1990年頃を境に状況は変わってきました。今のところ、温暖化に向かっているらしき気候が、ぶどう栽培の味方をしてくれているのです。加えて造り手も、いかなる悪条件下であっても、その年最高のワインを造ろうと意気込み、収穫時に品質の劣るぶどうを思い切って排除し、完璧なぶどうだけを使用してワインを造っています。そのため、ヴィンテージによる品質の差は小さくなっています。

軽快なクヴァリテーツワインは、3年から5年くらいで飲み切ってしまうものですので、さほどヴィンテージにこだわる必要はありませんが、カビネット以上のリースリングや、高級甘口ワイン、重厚なシュペートブルグンダーなどを長期保存する場合には、ヴィンテージにちょっと気をつけてみてください。

それぞれのヴィンテージの飲み頃は、専門誌などのヴィンテージチャートで確認するのが良いでしょう。ただ、地域差がありますので、地域ごとのヴィンテージの特徴が詳しく書いてあるものを参考になさってください。専門店でもヴィンテージ情報は得られます。

一番良いのは、どれくらい保存が可能か、造り手から直接情報をもらうことです。造り手から「これは、なるべく早めに飲んだ方がいい」となどといったアドバイスをもらったら、覚えておきましょう。とはいえ、ワインは一期一会の飲み物。購入したワインをいつ、どのような状況で、誰と飲むかといったシチュエーションは無数にあります。さほど評価の高くないヴィンテージのワインを、もう飲み頃は過ぎているだろうと思った頃に開けてみたのに、とても美味しく飲めることがあります。プロの造り手でさえ、そういった体験をしているのですから、あまり肩肘張らずに、気軽に楽しんでください。

Weingut Wöhrwag ヴェアヴァーグ醸造所
(ヴュルテンベルク地方)

ヴェアヴァーグ醸造所(ヴュルテンベルク地方)

大衆的赤ワイン、トロリンガー種の産地として知られるヴュルテンベルク地方で、常に高品質のワインを造り出しているヴェアヴァーグ醸造所。オーナーで醸造家のハンス=ペーター・ヴェアヴァーグはドイツ各地、米・カリフォルニアで修業後、両親の醸造所を継ぎ、ワインスペシャリストのクリスティン夫人とともに醸造所をトップクラスに導きました。ヴュルテンベルク地方ならではのカジュアルで素朴なワインから、世界に通用するインターナショナルなスタイルのワインに至るまで、多彩なコレクションを展開しています。

Weingut Wöhrwag
Grunbacherstr. 5, 70327 Stuttgart
Tel. 0711-331662
www.woehrwag.de


2006 Lemberger trocken
2006年産 レンベルガー・トロッケン(辛口)6,20€

2006 Lemberger trocken

ライトなトロリンガー種が普段着のワインなら、レンベルガー種は、ちょっとよそゆき。別名ブラウフレンキッシュと言い、ポルトギーザー種のような軽やかさと、シュペートブルグンダー種のようなふくよかさを備えた、上品な赤ワインです。オーストリアでは多く栽培されていますが、ドイツではまだまだめずらしい品種。偶然見つけたら、ぜひ味わってみてください。
最終更新 Montag, 10 August 2015 18:00
 

エティケット

ドイツではワインのラベルのことを「エティケット」と呼んでいます。かつては「ドイツワインのエティケットは難解」などと言われていましたが、最近は、すっきりしたデザインのものが増えています。情報量は今なお多いですが、ボトルに詰まったワインの内容がとてもよく解るようになっています。

最近では、ボトルの両サイドにエティケットを貼り、片方のエティケットを文字の少ない、デザイン的にインパクトのあるものにし、もう片方のエティケットに詳しい内容を表記するパターンや、ボトルをぐるりと巻く幅の広いエティケットが増えています。

ドイツワインのエティケットの特徴のひとつは、ぶどうの品種名が表示されていることです。同一品種が少なくとも85%使われている場合は、その品種名を表示してよいことになっています。また、ブレンドワインの場合は、2種類までであれば、両品種名を表示することができます。そのため、どの地方でどのような品種が主に栽培されているのか、といった予備知識を持つ必要がありません。品種は味の決め手ともなりますので、エティケットに印刷された品種名を頼りにワイン選びができるというのは、とても便利なことです。

次の特徴は、プレディカーツワインの多くに村名と畑名の表示があることです。通常、表示は先に村名、そして接尾語erがつき、続いて畑名、となっています。「Westhofener Kirchspiel」とあれば、「ヴェストホーフェン村のキルヒシュピールという名の畑」を意味します。同じ醸造所の同じ品種でも、テロワールによって味わいが異なってきますので、ドイツワインに少し慣れてきたら、ぜひ比較しながら味わってみてください。醸造所のサイトをのぞいてみると、大抵、畑ごとの土壌の違いなどの情報を得ることができます。

もう一つの特徴は、辛口、中辛口といった味覚の傾向が表示してあることですが、これについては前章で詳しくお話ししました。ただし、以上3点の表記とヴィンテージ表記は任意となっています。

ドイツのクヴァリテーツワインとプレディカーツワインに義務付けられている表示は、「Deutscher Qualitätswein」(ドイツ産クヴァリテーツワイン)または「Deutscher Prädikatswein」(ドイツ産プレディカーツワイン)という表記、指定生産地名、品質のレベル(場合によっては肩書き)、生産者名(またはボトリング業者名)、実質アルコール度数、正味量、公認検査番号(AP番号)、「Enthält Sulfite」(亜硫酸塩が含まれる、という表記)となっています。

近年のエティケットの傾向は、「ブランド名」が表示されていることです。醸造所の特定のワインに、造り手の子どもの名前や造り手のイニシャル、土壌や岩石の名前、洒落た単語やフレーズなどがブランド名としてつけられています。

Weingut Duijn ドゥイン醸造所(バーデン地方)

ドゥイン醸造所(バーデン地方)

1995年、彗星のようにデビューしたバーデン地方ビュールの醸造所。オーナーのヤコブ・ドゥイン氏はオランダ出身。ソムリエ、ワインコンサルタントとして活躍した後、醸造家に転身、同地方で伝統的に栽培されてきたシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)種に惚れ込み、この一品種だけを栽培している異色の醸造家です。15アールの小さな畑からスタートし、現在では8ヘクタールを所有。新しい醸造所ながら、樹齢を重ねたぶどう畑を少しずつ購入したため、平均樹齢は25年という。ブルゴーニュの醸造家たちとの交遊も深く、偉大なブルゴーニュのピノ・ノワールに比肩するワインを世に送り出しています。

Weingut Duijn,
Hohbaumweg 16, 77815 Bühl
Tel. 07223-21497
www.weingut-duijn.com


2005 Pinot Noir SD
2005年産ピノ・ノワールSD(辛口)47€

2005 Pinot Noir SD

ピノ・ノワールSDは、ドゥイン醸造所が生み出す最高級ワイン。凝縮した味わいが楽しめます。SDは「セレクション・ドゥイン」の略。花崗岩風化土壌であるビュールのエンゲルスフェルゼン、シュテルンベルク両畑に育つ樹齢30年のシュペートブルグンダーを手摘みし、木製発酵槽で発酵させ、オークの新樽で2年近く熟成、さらに瓶熟成を経て出荷しています。2005年産のSDの飲みごろは、今年から2025年にかけてとのことです。
最終更新 Montag, 10 August 2015 17:59
 

トロッケン、ハルプトロッケン、そしてファインヘルプ

ドイツ語では、辛口(ドライ)のことを「トロッケン(Trocken)」といい、中辛口(セミドライ、ミディアムドライ、オフドライ)のことを「ハルプトロッケン(Halbtrocken)」と言います。例えばフランスには、スパークリングワインを除いてこのような味わいの表示は見られませんが、ドイツでは辛口、中辛口はその都度表示します。

ただ最近では、味わいを表示していない辛口ワインもあります。例えば、ドイツワイン・インスティトゥートが2000年から提唱しているクラシック(CLASSIC)というカテゴリーのワインや、ラインガウ地方のエアステス・ゲヴェックス(Erstes Gewächs)、ドイツ・プレディカーツワイン協会(VDP)が推進しているグローセス・ゲヴェックス(Großes Gewächs)というワインは、辛口であってもその表示がありません。いずれもドイツワインは辛口がスタンダードであることを印象づけようとする試みです。

ところで、トロッケンとは一体どのようなワインなのでしょう? 圧搾して得られたぶどう果汁内の糖分が、ワインとなる過程でほぼすべて発酵、分解すると、トロッケンとなります。では、ハルプトロッケンや甘口ワインはどうやって造るのでしょう? 以前はズースレゼルヴェ(Süßreserve)と言う冷蔵保存したぶどう果汁に亜硫酸塩を加えたものを、ワインとブレンドすることで、甘みのあるワインを生産するのが主流でした。現在も、この製法で甘口を生産している醸造所はあります。しかし、醸造設備が進化し、発酵タンクの冷却が容易になってからは、多くの造り手が冷却によって発酵を止め、果汁内の自然の糖分を残すという方法で、甘口ワインを生産しています。そういったワインのことを「レストズース(Restsüß)」、つまり残糖のあるワインと言ったりします。なかには、自然に発酵が止まって、甘口に仕上るワインもあります。

数値で言うと、ワインの残糖が1リットルあたり9グラムまでがトロッケン、18グラムまでがハルプトロッケン、45グラムまでがまろやかな甘口である「リープリッヒ(Lieblich)」、それ以上が甘口「ズース(Süß)」となります。最近ではワインの味わいを「洗練された辛口」を意味する「ファインヘルプ(Feinherb)」と表現するのがちょっとしたブームになっています。これは、残糖がやや多めのトロッケンからハルプトロッケンに至る味わいを表現する言葉で、ニュアンスとしては辛口寄りとなります。ハルプトロッケンのハルプ(半分)という言葉にエレガンスが感じられないので、醸造家たちはあまり使いたくないようです。

リープリッヒやズースという表示をエティケット上で見かけることはほとんどなく、味覚の表示がなければ、甘口である場合が多いです。醸造所のサイトやワインリストには、辛口、中辛口、甘口といった味覚が明記されています。購入するときに味覚の表示が見当たらなかったら、販売スタッフに尋ねてみましょう。味覚は購入の際の重要なポイントで、コミュニケーションのきっかけにもなります。

Wein- und Sektgut Heinz Schneider ハインツ・シュナイダー醸造所
(モーゼル地方)

ハインツ・シュナイダー醸造所

リースリングの産地として知られるモーゼル地方で、赤ワイン品種の栽培が認可されたのは1992年のこと。トリアー近郊ライヴェンにあるハインツ・シュナイダー醸造所では、当時、持ち畑の約半分を赤ワイン品種に植え替えるという、思い切った方向転換を行った。オーナーで醸造家のハインツ・シュナイダーさんが栽培している赤ワインは、無農薬栽培が可能な新交配品種レゲントと、伝統品種シュペートブルグンダー、そしてドイツ特有の品種ドルンフェルダーの3種。白ワインが主流の同地方で、優れた赤ワインを生み出している注目の醸造所だ。

Klostergartenstraße 34-36
54340 Leiwen
TEL:06507-99139
www.weingut-schneider.de


2005 Terra Ginestra Spätburgunder trocken
2005年産 テラ・ジネストラ・シュペートブルグンダー(辛口) 8,90€

テラ・ジネストラ・シュペートブルグンダーハインツ・シュナイダー醸造所の所有畑のうち、最も日当りのよい、デボン紀粘板岩土壌の畑、ギンスターベルク(エニシダの山)で栽培されたシュペートブルグンダーの甘口。赤ワイン品種を粘板岩土壌で育てている地域は世界でも限られているが、ドイツではモーゼル地方のほか、アール地方、ラインガウ地方に粘板岩土壌育ちの赤ワインがある。テラ・ジネストラ(ギンスターベルクのイタリア語訳)は、粘板岩土壌ゆえにエレガントに仕上った、軽やかなシュペートブルグンダーだ。

最終更新 Montag, 10 August 2015 17:58
 

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