ドイツワイン・ナビゲーター


150年前のぶどう畑を想像する

今回は、今から150年ほど前のぶどう畑がどんな様子だったのか、想像をめぐらせてみましょう。

「ゲミッシュター・ザッツ(混植)」という言葉をご存知の方もおられると思いますが、当時のぶどう畑では、様々な品種が混ざった状態で栽培されていました。赤品種の隣に白品種、あるいは早熟品種の隣に晩熟品種といった具合だったのです。収穫量は1ヘクタール当たり20ヘクトリットル程度※1だったそうで、かなり低い数字です。今日も同程度の収穫量で醸造されるワインがありますが、できあがるワインは非常に高品質です。しかし「ゲミッシュター・ザッツ」では、品種ごとの最良の収穫タイミングを考慮することなどはできず、一挙に収穫してしまうため、未熟なぶどうも多く、高品質のワインは得にくかったようです。

そんな時代、欧州のぶどう畑は3つの困難に直面しました。1840年にウドンコ病、1863年にフィロキセラ、そして1878年にベト病が確認されたのです。この3つはいずれも北米から欧州に運ばれました。19世紀は欧州から北米・南米大陸へと人々が移住しはじめた時代。グローバル化により、それまで欧州に存在しなかった病害がもたらされたのでした。中でもフィロキセラの被害は凄まじく、欧州のぶどう畑の多くを壊滅させました。これら3つの病害は現在もなお、ぶどう畑を脅かし続けています。

1863年、ぶどうを根から食いつくし、枯らしてしまう体長1ミリにも満たない害虫フィロキセラを確認したのは、フランス、ヴォクリューズ県の栽培家でした。1871年の段階で、フランスでは10万ヘクタール以上のぶどう畑に被害が及びました。これはドイツの現在のぶどう畑全域に相当します。

ドイツ帝国成立翌年の1872年、ラインガウ地方のガイゼンハイムに「王立果樹・ぶどう研究所」が設立されます。この研究所の最初の使命がフィロキセラ問題に対処することでした。早くからフィロキセラに見舞われたフランスの研究者らと情報交換し、フィロキセラに耐性のある米国品種のぶどうを台木とし、それに欧州品種を接ぎ木する方法が採用されます。

しかし問題は簡単には解決しませんでした。フィロキセラに耐性のあるぶどうの産地は主に米国の北東部。同地は石灰分が少ない酸性土壌です。一方の欧州は石灰分が非常に多い土壌。初期の頃の台木はフィロキセラには効果があっても、欧州の土壌に適さず、ぶどうが鉄分不足になるという別の問題が起こりました。そこでフランスや当時のオーストリア=ハンガリー帝国の研究者は、複数の米国品種のぶどうを何通りも交配し、欧州の土壌になじむ台木を改良し始めます。

ドイツでも1870年代後半から、王立研究所が台木研究に力を入れはじめ、接ぎ木する欧州品種と相性が良く、ドイツの土壌に適合し、生育しやすい台木が次々誕生しました。その後、1935年のフィロキセラ法により、被害が予測される畑では接ぎ木ぶどうの栽培が義務付けられるようになり、植え替えが進むとともに混植の畑も減って行きました。1960年以降は接ぎ木ぶどうだけが植樹されるようになっています。ただ、樹齢100年前後の自根の古木が今日なお元気に育つ、モーゼル地方などの一部の畑に、リスク覚悟で新たに自根のぶどうを植えている醸造家もいます。

※1 ドイツでは収穫量を搾汁量で表すのが一般的。20hl/ haは約2800kg/ha。

 
Weingut Bernhard Koch
ベルンハルト・コッホ醸造所(ファルツ地方)

カロリン、ギュンター、ライナー
コッホ・ファミリーと坂田千枝さん

コッホ家のルーツは1610年までさかのぼることができるという。現在のオーナーはベルンハルト&クリスチーネ・コッホ夫妻。ベルンハルトさんが父親から継いだ畑は7ヘクタール弱だったが、徐々に買い足し、現在では47ヘクタールを所有。ブルグンダー種のコレクションを充実させた。ぶどう畑での丁寧な手仕事を重視、個々の土壌のタイプ、ぶどう品種の特性を活かしたワイン造りが信条。厳格な選別収穫を行い,高品質のワインを生み出している。2013年からは日本人醸造家の坂田千枝さんを迎え、共同でワイン造りに取り組んでいる。次世代を担う長男のアレクサンダーはガイゼンハイム大学で栽培・醸造学を、次男のコンスタンティンはハイルブロン大学でワイン経営学をそれぞれ勉強中だ。

Weingut Bernhard Koch
Weinstraße 1
76835 Hainfeld
Tel. 06323 2728
www.weingut-koch.com


2014 グラウブルグンダー・レッテン・レゼルヴァ2014 Grauburgunder „Letten“ Réserve
2014 グラウブルグンダー・レッテン・レゼルヴァ 9€

ベルンハルトさんは当初、ブルグンダー系品種はシュペートブルグンダーだけを栽培していたが、現在ではヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、そしてシャルドネが揃う。いずれもベーシックなワインから、レゼルヴァ、グランレゼルヴァまでを生産。ご紹介するのはハインフェルダーの「レッテン」という畑で栽培されているグラウブルグンダーのレゼルヴァ。「レッテン」は石灰質と粘土の混じるマール土壌。理想的な収穫期を見極めることに注力し、充実した味わいながら、軽やかでエレガントな仕上がりになっている。かりんや熟した洋梨の風味。


 

最終更新 Mittwoch, 10 Februar 2016 16:41
 

ワイン展から学ぶこと

現在、東京の国立科学博物館で「ワイン展ーぶどうから生まれた奇跡ー」が開催されています。11月下旬に一時帰国したとき、東京に1泊する機会があり、同展に駆けつけました。

ワインについては通常、店頭試飲、見本市などのイベント、ワインメーカーズ・ディナー、醸造所見学を通して、より深く知るチャンスがありますが、博物館という場でワインがどのように紹介されるのか、興味があったのです。「ワイン展」という試みは、私の知る限り欧州では例がないように思います。

展覧会は、ワイン造りの四季を疑似体験できるコーナー「ワイナリーに行ってみよう」「ワインの歴史」「ワインをもっと楽しむ」の3部構成。科学と歴史についてのウエイトが高く、未知の情報をいくつも得ることができました。日本人の視点で構成された展覧会であることが、私にとってとても新鮮でした。

ワインの酵母や貴腐菌を顕微鏡で見たのは初めてで、酒石酸から造られるロッシェル塩が、太平洋戦争中にソナーの素材として軍事利用されていたことも知りました。香気成分も代表的なものが分かりやすく解説され、理系の知識を得られる、刺激的な体験でした。

歴史のコーナーでは、紀元前6000年から現在までの、8000年に及ぶワイン史がコンパクトにまとめられていました。欧州では、紀元前6000年に西アジア、南コーカサス地域に存在したという野生ぶどうの西進が話題になりますが、それは東進もしており、シルクロードや海路を経て日本に到達しています。

タクラマカン砂漠の南のニヤ(尼雅)の遺跡には、約2000年前の漢の時代のぶどう畑の遺構があるそうで、西方で発展したぶどう栽培が導入されていたことを物語っています。唐の時代(7~10世紀)の太宗はトルファンからワインの製法を導入していたそうです。

日本では奈良時代の平城宮跡から野生ぶどうの炭化種子が見つかっていますが、畑の痕跡などは見つかっておらず、ワインが飲まれていたかどうかは不明です。しかしながら、葡萄文様が愛され、奈良時代から「葡萄唐草文」のモチーフが屋根瓦などに使われています。

興味深かったのが、大航海時代の日本へのワインの伝播です。16世紀にフランシスコ・ザビエルがキリスト教の布教のために来日して以来、ワインは各地の大名たちに献上品として届けられました。その後、キリスト教布教が禁じられ、鎖国時代には出島でのオランダとの交易だけが例外的に認められます。出島のオランダ商館での宴会などでは、ワインが振る舞われていたことがわかっており、出島の発掘調査により、ワインボトルやワイングラスが見つかっています。

日本滞在中は、長崎の出島にも足を運びました。出島の復元は着々と進んでおり、既に多くの建築物と展示品が見学可能で、2017年には橋を含む全てが完成します。出島のオランダ商館は、オランダ東インド会社の支店で、1641年から1859年まで貿易が行われていました。ところで、オランダ人は1652年に南アフリカのケープタウンを植民地とし、 1659年に同地で初めてのワインが造られています。展覧会では南アフリカについての言及はありませんでしたが、長崎では、欧州産以外に、ひょっとすると南アフリカ産のワインも飲まれていたかもしれません。

(「ワイン展」は2016年2月21日まで開催。)

 
Weingut Hans Lang
ハンス・ラング醸造所(ラインガウ地方)

カロリン、ギュンター、ライナー
新生ハンス・ラング醸造所を率いるカウフマン氏とラップスさん

1953年創業のハッテンハイムの醸造所。2009 年からビオに移行、2012年からエコヴィン会員。2013年から新オーナーとなったのは、スイスの企業家ウルバン・カウフマン氏。カウフマン氏は元スイス、アッペンツェルのチーズ生産者。スイスの醸造所で修業した後、ガイゼンハイム大学の聴講生となり、ワインの知識を深めた。カウフマン氏のパートナー、エファ・ラップスさんはVDP前社長。醸造所のマーケティングを一手に引き受けている。ハッテンハイムの特級畑ヴィッセルブルンネン、ハッセルなどに畑を持ち、前オーナー、ハンス・ラング氏の助言を受けつつ、主に高品質のリースリングを生産。また買い付けたぶどうから、秀逸なゼクトコレクションもリリースしている。カウフマン氏は、趣味の伝書鳩の飼育について語るユニークなワインセミナーも実施している。

Weingut Hans Lang Rheinallee 6
65347 Eltville-Hattenheim
Tel. 06723-2475
www.weingut-hans-lang.de


ゼクト「ピノ・エクストラ・ブリュットSekt Pinot extra brut
ゼクト「ピノ・エクストラ・ブリュット」 13.80 €

ウルバン・カウフマン氏は後継者のいなかった同醸造所を継いで以来、伝統製法のゼクトコレクションにも力を入れ始めた。現在生産しているのはリースリングほか4種類。ご紹介するピノ・エクストラ・ブリュットは、ハッテンハイムとハルガルテンにある複数の畑で栽培されているヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダーのブレンド。瓶内で酵母と15カ月接触させたもの。熟した洋梨やナッツ、ビスケットの香りが立ち上る、ふくよかでクリーミーな味わいのゼクト。


 

最終更新 Mittwoch, 13 Januar 2016 17:41
 

UMAMIの世界 5 ー UMAMIとワイン

日本の学者によるうま味の発見は1908年のことでしたが、国際的にうま味の概念が認識されたのは、1985年にハワイで行われた第1回うま味国際シンポジウムにおいてでした。また、うま味の歴史において重要な出来事は、2002年にうま味成分の一つであるグルタミン酸に反応する受容体(舌の味蕾にある感覚細胞)が、米国人の学者たちにより発見されたことでした。うま味は言葉で表現しにくい味わいですが、それが確かに存在し、感知できることが分かったのです。

食品に含まれるグルタミン酸は、植物性・動物性食品や、たんぱく質の豊富な食品の細胞膜から得られ、加熱、発酵などのプロセスを経て抽出されますが、ワインにおいてもこのうま味は抽出されるようです。長期間酵母と接触させるシュール・リー製法のワイン、バリック(小型オーク樽)を使用したワインなどに、ほのかなうま味の痕跡を感じることがあります。

ワインの味わいを表現する際、これまでは5つの味覚要素のうち、甘味、酸味、苦味の3つが主に使われていましたが、近年、ワインの「ミネラリティー」(鉱物を連想させる風味)が話題になると共に、塩味という表現が盛んに使われるようになりました。そして今、うま味という表現も使われ始めています。

ガイゼンハイム大学のライナー・ユング教授によると、「グルタミン酸ナトリウムはワインの成分にはないものだが、例えばシェリーのように、フロール(産膜酵母)と接触して醸されるワインには、その産膜酵母に化学分解する細胞があり、アミノ酸が放出されるため、通常のワインにはない、うま味のような風味が感じられることがある」とのこと。

ただ、ドイツではうま味らしき風味から、ラベージ(Liebstöckel)(別名マギークラウト。化学調味料マギーに似た香りがすることから命名された)を連想するケースが多く、その風味はあまりポジティブには評価されません。従来ワインに求められているのは、フルーティーな風味、ミネラリッシュ(鉱物的)な風味、バリックによる樽香などであり、うま味のような風味ではないという根本的な問題もあります。

シェリー以外で、うま味が微かに感じられるのが、シャンパンや伝統製法のゼクトです。ユング教授によると「伝統製法のゼクトは長期間酵母と接触しているが、酵母の自己分解(自己消化)が起こると、アミノ酸が放出され、それがうま味のような香りを放つことがある。ろ過されていない、瓶内に酵母が少し残った状態で熟成したワインにも、うま味らしき風味が感じられる」のだそうです。

日本人は、うま味といえば、昆布やかつお節、醤油などを即座にイメージし、すぐにどのような風味かを想像できますが、うま味がドイツ語で「Wohlgeschmack(美味)」と訳されるため、ドイツ人にとっては、一体どんな味なのかをイメージすることがまだ難しいようです。

ワインの中にうま味を見つけることはまれですが、ワインと食事のコンビネーションにおいて、うま味は考慮されるべき要素です。西洋のうま味だけでなく、日本のうま味の代表格である、だし、醤油、みそなどによく合うワインもあるからです。伝統製法のゼクトは、そのような繊細な味わいの料理との相性が良いように思います。

 
Weingut Bergdolt
ベルクドルト醸造所(プファルツ地方)

カロリン、ギュンター、ライナー
左からカロリン、叔父ギュンター、父ライナー

中世の古文書にも登場する、元修道院の醸造所(Klostergut St. Lamprecht)。1553年に選帝侯フリ-ドリヒ2世の所有となった後、ハイデルベルク大学に遺贈された。1754年にヤーコプ・ベルクドルト氏が醸造所を継いでからは、260年にわたって同家が経営。今日、醸造所を運営するのは、8代目のライナー&ギュンター・ベルクドルト兄弟、9代目に当たるライナーの娘カロリンの3人。ビオ基準のワインはライナー&カロリン父娘のチームワークで造られている。

主要品種は白のヴァイスブルグンダーとリースリング、赤のシュペートブルグンダーだが、ボルドー品種も栽培。1986年からは伝統製法のゼクトも生産し、現在では醸造所の主要なコレクションとなっている。

Weingut Bergdolt - Klostergut St. Lamprecht Dudostr.17
67435 Neustadt an der Weinstraße
Tel. 06327-5027
www.weingut-bergdolt.de

カロリンのパートナー、マグヌス・メヴェスのサイト
www.magnusmewes.de


ライタープファド リースリング 2014 Reiterpfad Riesling GG
2014年 ライタープファド リースリング GG(辛口)26€

ベルクドルト家が所有するVDP基準の特級畑(グローセ・ラーゲ)では、各々の土壌にマッチした品種が慎重に選ばれ、キルヴァイラーにある畑、マンデルベルクではヴァイスブルグンダーが、ドゥットヴァイラーのカルクベルクではシュペートブルグンダーが、ルッペルツベルクのライタープファドではリースリングが栽培されている。ベルクドルト家がブルグンダー種の栽培を始めたのは1940年代。ご紹介する2014年産のリースリングは、凝縮感と軽快さのバランスが見事。みずみずしい桃の風味が立ち上る、繊細で凛としたワイン。


最終更新 Dienstag, 05 Januar 2016 17:37
 

UMAMIの世界 4 ー 日々の食卓のUMAMI

今回は、ドイツで生活する私たちの食生活における「うま味」にスポットを当ててみましょう。

ドイツの代表的なうま味素材といえば、肉や野菜、チーズなどの発酵乳製品です。また、トマトピューレをはじめとするトマトの加工品やドライトマト、きのこにも、うま味が凝縮しています。ドイツ版の「だし」にはブリューエ(Brühe)があります。

本格的なブリューエを作るのは大変ですが、例えば鶏肉を骨付きで買い、肉から外した骨をねぎなどの香味野菜と短時間煮て、塩こしょうで味を整えるだけでも、ベーシックなだしが得られます。北海エビの殻からも、うま味の利いただしを取ることができます。

このほか、生ハムや薫製ベーコン、薫製ソーセージ、塩漬けアンチョビ、パルミジャーノチーズなどのうま味食材を常備しておくと、あらゆる料理に手軽にうま味を加えることができます。生ハムやパルミジャーノチーズは熟成が進むにつれ、グルタミン酸含有量が増えていきます。また、長期熟成したパルミジャーノチーズに見られる白い粒は、グルタミン酸の結晶です。

私たちは普段、何気なく、サラダに生ハムや炒ったベーコンを添えたり、ドレッシングに塩漬けアンチョビを混ぜたり、サラダやパスタ料理にパルミジャーノチーズを削りかけたりして、うま味をプラスしています。熟成した固めの生ハムを薄くスライスするときには、削り立てのかつお節に似た香りが立ち上ります。これらのうま味食材のほかに、良質のオリーブオイル、かぼちゃの種やクルミのオイルを加えれば、料理はより風味豊かになります。

日本のうま味素材である昆布やかつお節、煮干しなどは、短時間でうま味たっぷりの「だし」が抽出できる優れもの。乾物なので長期間保存でき、どこにでも持って行くことができます。しかも、醤油や味噌はそのまま使える優れた調味料です。ドイツの肉料理や魚料理、野菜料理にも、醤油や味噌などを少し加えるだけで和のテイストとなり、慣れ親しんだうま味を楽しむことができます。

ドイツでも日本でも、料理に香味(ハーブやスパイス)をふんだんに使い、うま味とのハーモニーを楽しみます。ドイツらしいフレッシュハーブといえば、フランクフルター・グリーンソースにも使われるパセリやあさつき、ガーデンクレスが代表格。行者ニンニク(ベアラオホ)やディルなどもポピュラーです。南国由来のバジルやローズマリー、アジア由来とされるニンニクなども、ベーシックな香味として使われています。香味の多くは和食にもアレンジできます。最近ではドイツでも、シソやカイワレ大根などの種や、スプラウト(新芽)が入手可能になりました。ねぎや大根、しょうがなどもグルタミン酸を多く含有し、香味とともにうま味をもたらしてくれます。

ドイツのクリエイティブなシェフたちも、世界各地のハーブやスパイスを積極的に取り入れ、隠し味に醤油や味噌を使うほか、シソ、海苔、わさび、柚子などを使い始めています。先日目にしたグルメ雑誌で紹介されていたレシピには、七味唐辛子やふりかけまで使われていました。やがて、山椒や梅干し、納豆なども活用されるようになるかもしれません。2013年にユネスコ無形文化遺産に認定された和食は、うま味とともに、ますます注目を集めています。

 
Strauch Sektmanufaktur
シュトラオホ・ゼクトマニュファクチュア(ラインヘッセン地方)

シュトラオホ・ゼクトマニュファクチュア
イザベル・シュトラオホ&ティム・ヴァイスバッハ夫妻

「クアフュルスト・フォン・ダルベルク」ブランドで知られる、ダルベルガーホーフ・シュトラオホ醸造所(創業1545年)の次世代である、イザベル・シュトラオホ&ティム・ヴァイスバッハ夫妻が2011年に立ち上げたゼクトマニュファクチュア。ゴーミヨ・ドイツワインガイド2015年版で新星ワイナリーとして高く評価されたばかり。計25ヘクタールに及ぶぶどう畑では、ラインヘッセンらしく多種多様な品種が栽培され、ゼクトのコレクションは多彩。年末年始の贈答用には、メッテンハイムの単一畑「ミッヒェルスベルク」のリースリングとゲヴュルツトラミーナーをブレンドした2011年産ヴィンテージゼクト、ミッヒェルスベルク・ブリュット(35€)がお勧め。

Strauch Sektmanufaktur
Dalbergstr. 14-18, 67574 Osthofen
Tel. 06242-913000
www.strauch-sektmanufaktur.de
ショップリスト
www.dalbergerhof.de/wein-stores


ゼロ ブリュット ナトゥレZero Brut Nature
ゼロ ブリュット ナトゥレ 14.90€

シュトラオホ家は、すべてのワインをビオ基準で生産。ゼクトマニュファクチュアでも自社のビオのぶどうだけを使用し、すべて伝統製法で生産している。現在入手可能なゼロ・ブリュット・ナトゥレは、2012年産のヴァイスブルグンダー。ベースワインはオークの大樽と小樽で熟成。瓶内2次発酵とそれに続く酵母との接触期間は、トータルで30カ月に及ぶ。ノンドサージュで残糖は0.8g/L。桃や花梨のコンポート、酵母由来のパンのようなほのかな香り、クリーミーできめの細かい泡。ソフトな酸味が魅力的だ。ゼクトはダルベルガーホーフ・シュトラオホ醸造所のブティックで入手可能。


最終更新 Mittwoch, 11 November 2015 15:09
 

UMAMIの世界 3 ー 西洋のUMAMI

西洋において、古来、味覚の大事な要素と考えられているのが脂肪分です。脂肪分はそれ自体が味わいを持ち、ほかの味わいを支えます。肉類の味わいは、筋肉組織を包む脂肪分を通して増強されます。バターや様々なオイルも、料理の味わいをより豊かにします。

脂肪分とともに重要な味わいの要素となるのが、フランスのフォン(fond)やブイヨン(bouillon)、ドイツのブリューエ(Brühe)など、肉類(主に骨とすじ肉) あるいは魚介類と香味野菜を長時間煮込んで得られるスープ、いわば西洋版の「だし」です。

これらのスープ類に牛乳や生クリーム、サワークリーム、ヨーグルト、チーズ、トマト、ハーブ、スパイス類などを加えて、味わいを濃厚にすることもあります。フォン・ド・ボーのように、素材となる骨やすじ肉を一度焼いてから煮て、濃厚さを出す場合もあります。

スープの味わいをさらに奥行きのあるものにするために、果汁や蜂蜜、バター、オリーブオイル、ワイン、ビールなどを加えることもあります。それは和食の煮物などに、みりん、ごま油、日本酒などを加え、味に深みを出す感覚と似ています。

近年、西洋でうま味の概念が知られるようになり、どの食材にうま味が多く含まれているかが認識され始めました。西洋のうま味といえば、まず肉類。上述のスープ類にはうま味が凝縮されています。生ハムやベーコンなどの薫製食品、塩漬けの豚なども、うま味の宝庫です。牛肉、豚肉、鶏肉に共通して多いのはイノシン酸。肉類のうま味は、一緒に食べるじゃがいもやパン、パスタなどの味わいを豊かにしてくれます。

次に重要なうま味を持つ食品は、発酵乳製品です。特にチーズにはうま味が多く、グルタミン酸が豊富に含まれています。牛乳から作られるチーズのほうが、羊や山羊の乳から作られるチーズよりもグルタミン酸含有量が多いそうです。イタリア料理では、パルミジャーノチーズをパスタやスープなど、あらゆる料理の上に削って振り掛け、うま味を加味します。ギリシャやトルコ、バルカン地域では、料理にサワークリームやヨーグルトなどを加えます。

また、西洋においても魚介のうま味が活用されており、スープ類以外に、乾燥させた魚介や塩漬けにした魚介が使われています。古代ローマにはガルムという、イワシやマグロなどの内臓を細かく刻み、塩水に漬けて発酵させた魚醤に似た調味料があり、あらゆる料理に使われていましたが、現在は姿を消し、代わりにアンチョビが調味料のように使われています。

トマト由来のうま味も、重要なものです。南米原産のトマトが欧州大陸で栽培されるようになったのは16 世紀以降ですが、今や西洋の食卓に欠かせない食材となりました。トマトはグルタミン酸含有量がチーズ並みに多く、生で使うほか、トマトピューレやドライトマトも利用されています。インドネシアの黒大豆醤油(Kecap)をヒントに英国で生まれたといわれるケチャップにも、トマトが使われています。

グアニル酸が豊富なきのこも、うま味のもととして活用されており、グルタミン酸が最も豊富なきのこは椎茸で、ドイツでも栽培されています。このほか、西洋のナチュラルなうま味のもとに、英国と英語圏で使われている酵母や麦芽のエキスがあります。うま味たっぷりのウスターソースも、英国生まれです。

 
Weingut Weigand
ヴァイガント醸造所(フランケン地方)

アンドレアス・ヴァイガント
ジルヴァーナーの可能性に挑戦する
アンドレアス・ヴァイガント

1990年にヴェルナー&ペトラ・ヴァイガント夫妻が興した醸造所。2013年からは、息子のアンディことアンドレアス(24)がワイン造りに取り組んでいる。アンディは、地元のブリューゲル醸造所ほかで修業。現在はバーデン地方のツィアアイゼン醸造所での研修と、ガイゼンハイム大学での学業、実家でのワイン造りを掛け持ち中。自らの直感を大切に、テイスティング能力を磨きつつ、高品質のワイン造りに取り組んでいる。所有畑は約6ヘクタール、栽培品種はジルヴァーナーが50%を占める。ジルヴァーナーにはまだまだポテンシャルがあると語るアンディ。将来的にはジルヴァーナーの畑をさらに増やし、すべてのジルヴァーナーを木樽で醸造したいと言う。

Weingut Weigand
Lange Gasse 29
97346 Iphofen
Tel. 09323-3805
www.weingut-weigand.de


2014年 リースリング ゾンネンベルク 辛口2014 Silvaner「Der Franke」
Julius Echter Berg trocken
2014年 ジルヴァーナー「デア・フランケ」
ユリウス・エヒター・ベルク 辛口 14€

ヴァイガント醸造所のコレクションは、「Der Held」「Der Franke」「Der Wilde」の3段階。いずれも主役はジルヴァーナーだ。「Der Held」は、選りすぐりの古木のジルヴァーナーを木樽で自然発酵させたもの。「Der Franke」は、イプホーフェンの2つの畑の古木のジルヴァーナーを畑別に醸したもの。ご紹介するユリウス・エヒター・ベルクのジルヴァーナーは樹齢40年。畑は三畳紀のコイパー土壌。ハーブ系の風味と爽やかな苦み、クリーミーなテクスチャー。ジルヴァーナーの可能性を探るアンディの渾身作だ。


最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 09:31
 

<< 最初 < 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 > 最後 >>
7 / 26 ページ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


Nippon Express SWISS ドイツ・デュッセルドルフのオートジャパン 車のことなら任せて安心 習い事&スクールガイド

デザイン制作
ウェブ制作