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特集


新春 英国・ドイツ2国特集

AI・SNS時代に考える欧州で暮らす私たちと
メディアの距離感

AIやSNSが生活のあらゆる場面に入り込み、私たちのメディアとの関わり方や言葉との向き合い方も大きく変化している。欧州では、未成年のSNS使用制限やメディア・リテラシー教育の強化など、情報環境の見直しが進む。2026年新年号では、英独を中心にメディアをめぐる現状を多角的に捉えながら、研究者や文化人に「メディアとの向き合い方」について聞いた。マスメディアを超えて広がる多様な声の中から、自分に合った情報の選び方を探っていきたい。(文:英国・ドイツニュースダイジェスト編集部)

メディアとの距離感

なぜ今「情報との付き合い方」を問うのか

情報の海と加速するデマ

現代社会は、かつてない規模の「情報洪水」に覆 われている。ソーシャルネットワーキングサービス (SNS)のタイムラインを開けば、真偽不明の情報が次々と流れてくる。人工知能(AI)に質問すれば、もっともらしい答えが返ってくるし、あるいは本物と見分けがつかない画像や動画を瞬時に生み出してくれて便利だ。しかし、どのAIプラットフォームにも必ず小さくこう書かれている。「回答は必ずしも正しいとは限りません」。私たちは日々、「何を信じ、どう受け止めるか」という選択を迫られているのだ。

この問いは新しいようでいて、実は古代から続いている。ギリシャのソフィストたちは、言葉を単なる写し鏡ではなく、現実に働きかける力として捉えた。プロタゴラスは「人間は万物の尺度である」と述べ、真理が人間の認識と切り離せないことを示した。ゴルギアスは「言葉は魂に作用する」と洞察し、語りが感情や判断を動かす事実を照らす。言葉が世界を組み替えるという修辞観は、私たちの時代にも通底している。

今日では、インターネット上の一投稿や映像が、社会の「現実」を塗り替える。2020年のコロナ禍では、デマがワクチン接種を妨げ、社会不安を煽った。2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、虚偽情報が爆発的に拡散し、情報戦の新局面を示した。そして生成AIの普及によって、誰もがそれらしい偽情報を「作れる」時代が到来している。

各国が模索する情報空間の安全

こうした状況に対し、欧州では法整備を通じて情報空間の安全を守る動きが進んでいる。欧州連合(EU)は2024年、世界初の包括的なAI規制法「Artificial Intelligence Act」を施行。同年、デジタルサービス法(DSA)の全面適用も始まり、大手プラットフォームに対して違法コンテンツの迅速な削除を義務付けている。EUは「技術は市場に任せるだけでは制御できない」という立場を明確にした。

英国は2023年に「オンライン安全法」(Online Safety Act)を成立させ、未成年保護や誤情報対策を包括的に扱う。きっかけは2017年、SNS上の自殺関連投稿に触れ続けた14歳の少女が自ら命を絶った事件だ。アルゴリズムが有害コンテンツを次々と表示し、少女を絶望の渦へと引き込んだこの出来事は、プラットフォームの責任を問う議論の転換点となった。

一方、日本ではAI事業者向けガイドラインの策定やSNSの透明性向上をめぐる議論が進められている。欧州のような厳格な規制ではなく、「柔軟なガバナンス」で成長と安全の両立を図る方針だ。

どんな現実を共につくるか

もっとも、法制度は乱用を抑えつつ自由を保障する「外枠」にすぎない。その内側で私たちがどう振る舞うかは、依然として大きな課題だ。プロタゴラスに立ち返れば、「真理は唯一ではなく、人の数だけ見方がある」。多様な意見が共存する社会では、他者の言葉を理解し、解釈を更新し続ける努力が欠かせない。一人ひとりが情報との付き合い方を選ぶこと、その選択の積み重ねこそが、私たちの未来を映し出すのかもしれない。

参考:GOV.UK「Guidance Online Safety Act: explainer」、Bundesministerium der Justiz und für Verbraucherschutz「Gesetz zur Verbesserung der Rechtsdurchsetzung in sozialen Netzwerken」、EU Artificial Intelligence Act「Official Journal」、Bundeszentrale für politische Bildung「Gegen den Hass im Netz」、The Guardian「how Molly Russell fell into a vortex of despair on social media」

疑うのではなく、理解し関わるAI・SNS時代のメディアリテラシー

技術の進歩によって、ニュースの選び方も届け方も大きく変わりつつある。AIが記事を推薦し、SNSで誰もが発信者となる今、私たちに求められる力とは何か。メディアリテラシー教育を専門とし、テレビ・ディレクターとして制作現場も経験してきた昭和女子大学准教授の村井明日香さんに、情報を「疑う」のではなく「理解する」ための視点について聞いた。

村井明日香さん 村井明日香さん
Asuka Murai
メディア研究者。昭和女子大学人間社会学部准教授。テレビディレクターとして報道・ドキュメンタリー番組の制作に携わった後、メディアリテラシー教育の研究者に。現在は大学でメディア論を教えるかたわら、学校や市民講座などでもワークショップ等を実施している。

Q1. そもそもメディアリテラシーとは何ですか?

私がよく参照するのは、メディア教育研究者である中橋雄さんの定義です。すなわち、メディアリテラシーとは「メディアの意味と特性を理解した上で、受け手として情報を読み解き、送り手として情報を表現・発信するとともに、メディアのあり方を考え、行動していくことができる能力」(中橋雄『メディア・リテラシー論』北樹出版、2014年)であると。つまり、メディアの重要性を共有しながら、それをより良いものにしていこうとする主体的で前向きな姿勢が、メディアリテラシーの本来の姿だと思います。

一方で、今の大学生にメディアリテラシーに関する授業を行うと、多くの学生が「メディアを疑うことを忘れないようにしたいと思います」というような形でまとめたレポートを提出してきます。というのも、日本では特にメディアリテラシーを「メディアを批判的に読み解く」と訳したために、「批判すればいい」と誤解されてきた面があるのです。

英語の「critical」には「批評的」や「吟味的」といったニュアンスがあり、日本語の「批判」とはニュアンスが異なります。その翻訳のずれが、メディアリテラシーの本質を見えにくくしてきた面があるかもしれません。メディアを批判したり、遠ざけたり、ボイコットしたりすることは、むしろメディアリテラシーの理念と逆行します。

Q2. このメディアリテラシーに対する「誤解」は、なぜ生まれてしまったのでしょうか?

その一因として、日本がメディアスタディーズを専門科目として中等教育に取り入れなかったことがあると思います。例えば英国やカナダでは、メディアスタディーズの専門の先生が学校にいます。私も英国滞在中に授業を見学したことがありますが、専門的な観点からメディアについてうまく教えているなという印象でした。もちろん課題もあって、英国の場合はあくまで選択科目なので、科目を選択をしなかった生徒は全くメディアについて学ぶことなく中等教育を卒業していくことになります。

一方、日本ではメディアリテラシーを教えるのがメディアの専門家ではなく、国語や社会、美術、あるいは技術の授業などで、各担当の先生が少しずつ教えるという形なんです。全ての生徒がメディアについて学ぶ機会を担保するような仕組みになっていて、これにはいい面もありますが、内容面では専門性をより高めていく必要があるでしょう。

そして今、AI・SNS時代を迎えて、このメディアリテラシーへの誤解の影響がより深刻になっていると感じています。AIが記事を選び、SNSで誰もが発信者になれる時代だからこそ、「疑う」だけでは足りない。むしろメディアの仕組みを理解し、主体的に関わっていく力が、これまで以上に求められています。

欧州でも広がる未成年のSNS規制

昨今、未成年者をSNSの有害な影響から守るため、法律による規制強化の動きが急速に広まっている。背景には、SNS利用による子どもの精神衛生への悪影響や、依存性の高いコンテンツ、暴力的な情報への曝露リスクの増加がある。

オーストラリアでは昨年12月、16歳未満の子どものSNS利用を禁じる法律が施行。国レベルでの措置は世界初となる。一方、EUはデジタルサービス法などで未成年者保護を規定し、運営企業への責任追及を強化。デンマークでは15歳未満のSNS利用禁止を首相が表明しているほか、英国やドイツでも年齢確認やアカウント保有の制限が議論されている。

もっとも、表現の自由や憲法との適合性、子どもによる規制の迂回可能性など、SNSを法的に禁止する際の課題は多い。各国は、デジタル時代の権利と保護とのバランスを慎重に模索する必要がある。

参考:European News Room「To ban or not to ban: EU countries debate social media age limits」

未成年のSNS規制

Q3. それでは、具体的に身につけるべきメディアリテラシーとは?

最も基本的な学びとしては、ニュースがどのような基準で選ばれているかを理解すること。また、経済基盤に対する視点も欠かせません。例えば、NHKは受信料、民放は広告収入が主というように、経済的な基盤が異なります。こうした違いが番組内容にどう影響するのかを学ぶことも大切です。

ロンドン大学のデービッド・バッキンガム教授は、メディアリテラシー教育を「制作」「言語」「表象」「オーディエンス」の四つに整理して説明しています。多角的にメディアを理解するための包括的な枠組みを提示してくれているので、とても参考になると思います。

バッキンガム教授による
メディアリテラシー教育の枠組み(抜粋)

制作
  • どんなテクノロジーが使われているか
  • 誰がメディアを作り、所有し、どのように利益を生むのか
  • 誰がメディアの制作や供給を制御するのか
  • 誰の声が聞かれ、誰の声が排除されているか
言語
  • メディアは理念や意味を伝えるためにさまざまな様式の言語をどのように使うか
  • メディアの文法上の「ルール」はどのように確立されているか。そのルールが破られたらどうなるか
  • 映像、音声、言葉の組み合わせや配列を用いて意味はどのように伝えられるか
表象
  • このテクストは現実に忠実であろうとしているか
  • メディアの世界に何が含まれ、何が排除されているか
  • 特定の世界観や価値観を支持しているか
  • 特定の社会集団や問題についての私たちの見方に影響を与えているか
オーディエンス
  • メディアはどのようにして特定のオーディエンスに照準を定めるのか。彼らに対してどのようにして興味を引こうとするか
  • オーディエンスは日常生活でどのようにメディアを利用しているか
  • オーディエンスはどのような楽しみをメディアから得ているか。彼らは何が好きで何が嫌いか
  • オーディエンスの行動において、ジェンダー、社会的階層、年齢、民族的背景が果たしている役割は何か

(出典:Buckingham, D. (2003) Media Education, Polity Pressを参考 に編集部が作成)

Q4. メディア上ではAI生成コンテンツがどんどん増えていますが、そうしたなかで人間の制作者が担うべき役割も変わってきていますか?

AIが記事を自動で選択して配置するニュースサイトが登場するなか、逆にメッセージ性を持った編集というのが、すごく生きてくる時代になっているように思います。例えば、日本のニュースサイトでも、AIがトップ記事を選び、自動的に表示させるようなものも増えてきました。

一方で、メディアの役割は読者の興味やニーズに合った情報を提供することだけではありません。もしAIが読者の興味だけでニュースを選んでいたなら、絶対に上位に表示されないようなニュースがあります。例えば、これまで日の当たらなかった人々や弱者に関する報道には、こういったものも知ってほしいとか、世の中がこうなってほしいというようなメッセージが込められています。思いの込められた記事作りやニュース選びには、やはりキラリと光るものが見えますよね。ほかにも、編集者や記者個人がSNSを通して発信するということも当たり前になってきました。

編集という行為は、単に情報を伝わりやすいように羅列するだけではなく、そこには必ず、送り手の価値観や社会に対する姿勢が反映されていると思います。AIの時代だからこそ、「人間による選択」の意味が際立つのかもしれません。

ネット記事の半数以上がAI生成?

AIによる記事生成が急増しており、SEO企業Graphiteの調査では、2024年末〜2025年初めにかけてネット上の記事の過半数(最大55%)がAIによるものだったという。ただし、今後もAI記事が爆発的に増加するとは考えにくいとの見解も示されている。というのも、AI記事は検索結果で上位表示されにくいことが別の調査で分かっており、制作側も限界を認識し始めていると分析している。

しかし、ますます多くのメディアが、コスト削減や生産性向上のためにAI技術を導入しており、AIで生成されたコンテンツの普及は今後も加速していくと考えられる。多くの読者にとっては、閲覧している記事がAIによって作成されたものかを判断することは難しい。AI生成コンテンツには明確な表示を行うなど、読者が情報源を理解した上で判断できる環境を整備することが急務だろう。

参考:Graphite「More Articles Are Now Created by AI Than Humans」

AI生成?

Q5. AIやSNSによる情報が氾濫する現在、あらためて「あり方を考え、行動する能力」としてのメディア・リテラシーをどう実践すべきでしょうか?

メディアというのは、単にその現状を客観的に伝えるものではないということを、もっと読者に説明していいんじゃないかと思っています。例えば欧米のメディアではそれぞれが応援する政治家や政党が明確です。一方、日本のメディアは公平中立を掲げてきたところがあるので、それを受け取る側の人たちも、そこに何か送り手側の主張があるということに対して、ものすごく嫌悪感があるわけですよね。

しかしそれは、やはり現実とずれています。情報の送り手側は自分たちの判断で社会をより良くしようという意思を持って報道をしているわけで、そこには必ず送り手の視点が介在しています。それを「偏向」として忌避するのではなく、むしろその判断の背景を理解し、複数の視点を比較することこそが、成熟した情報との向き合い方ではないでしょうか。

また本来、SNSの強みは一次情報を発信する人々が増え、これまでのメディアでは得られなかった情報にアクセスできることや、これまで声を上げられなかった人が自分で発信できることがポジティブな側面のはずでした。しかし、そこにアルゴリズムによるフィルターバブルや、フェイクニュースの拡散などが複雑に絡み合い、さらにAIによって生成されたコンテンツが急速に増えている。正しい情報を判断するのはどんどん難しくなっています。

完璧な方法があるわけではありませんが、ある情報を受け取ったら、できるだけ複数のソースで確認することが重要だと思います。もう一つは、情報の発信源がどこにあるか、すなわちこの記事を書いたのは誰でどんな人なのかを調べてみるのは有効です。「誰が、なぜ、この情報を発信しているのか」を意識的に考える習慣が、私たちを情報の海で溺れさせないための、最初の一歩となります。

おすすめの書籍

『世界は切り取られてできている』

『世界は切り取られてできている』
中橋雄 編著
村井明日香、宇田川敦史 ほか著
NHK出版 2024年2月刊行

メディアは「現実」を伝えているのか?統計やグラフはどのように読めばいいのか? 動画やコンテンツを作る上でトラブルを避けるにはどうすればいいのか? 日常に浸透したAIとどのように付き合うべきか?あふれかえる情報に惑わされず、偏見や差別を回避し豊かな社会を目指すための、メディア社会に生きるすべての人に向けたメディア・リテラシー入門書。

欧州ゆかりの9人に聞いた日々の情報との向き合い方

ニュースのプロ、学者、文化人、アーティストなど、欧州で暮らす9人が日々選び取っている情報源とは。信頼しているメディアや、生活の中でどのように情報に触れているかを語ってもらった。ポッドキャスト、YouTube チャンネル、ニュースレター、雑誌、SNS、そして個人の発信まで。多様な選択の中に、今の時代を映すヒントがある。

小林恭子さん Ginko Kobayashi
小林恭子
在英ジャーナリスト。英国をはじめとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。英国ニュースダイジェストでは毎号「英国メディアを読み解く」を執筆。著書に『英国メディア史』(中公選書)、『なぜBBCだけが伝えられるのか』(光文社新書)など。

信頼できる情報とは何か

自分にとって信頼できる情報とは何か。その判断の方法ですが、正確な、あるいは正確な情報を提供しようとする組織、メディア、個人からの情報を「信頼できる情報・事実」として取り込んでいます。「信頼できる」というのは、この組織、メディア、人であれば正確なことを言っているだろうという判断です。どのように信頼できるとするのかというと、例えばBBCのように「偏りのない情報を出そうとする」方針があるのかどうか、党派的でない、特定の主義主張を基に事実をねじ曲げていない、長年にわたって主張が一貫している、ほかの人も信頼している、などが挙げられます。

ニュースの調べ方としては、BBC のほか、「タイムズ」紙、「テレグラフ」紙などのニュースサイトをチェックし、だいたいの情報と「保守系はどう考えているのか」を知り、チャンネル4の19時のニュース番組で「左派リベラル系の主張」を見ます。また、BBCやスカイニューズのほか、海外のニュースサイトも確認。BBCラジオ4の定時ニュースは毎日自分のタイミングで聴き、ポッドキャストで専門家の見解をチェックしています。欧州での生活を通じて、国際的観点から物事を見るようになりました。欧州情勢の理解には歴史の把握が欠かせませんので、世界大戦で起きたことも学ぶようになりました。ニュースで疑問があったときや、歴史的な事柄を調べたいときにAIを用いることも多いです。

おすすめメディア

Political Currency

Political Currency

元財務相ジョージ・オズボーンと元・影の財務相エド・ボールズが、経済政治について漫才のような掛け合いで語るポッドキャスト。政権の中心にいた人たちの本音が分かるほか、オズボーン氏の見方は国内政治の分析に役立ちます。

BBC Newscast

毎日1回配信されるBBCのポッドキャスト。BBCのジャーナリストたちがその日のトピックについて気軽に語り合うスタイルなので分かりやすく、リラックスして聴けます。特定のニュースのことをよく知るのにも便利です。

木村クリストフ護郎さん Goro Christoph Kimura
木村クリストフ護郎
上智大学外国語学部ドイツ語学科教授。専門は社会言語学、ドイツ語圏地域研究。 とりわけ、社会を形成・運営する基盤としての言語とエネルギーについて研究・教育を行っている。ソルブ語をはじめ、手話やエスペラントなどの多様な言語を話す。

言語とメディアが形作る世界の見え方

絶対に信頼できる情報というものはありませんが、実際に現場に行って取材したジャーナリストによる情報、つまり誰がどこでどのように得たかが明確な情報は、玉石混交のインターネット検索やSNSの伝聞よりは信頼できると考えています。また、AIは情報をまとめてくれて便利ですが、多数派の常識(正しいとは限らない!)に沿う可能性が高く、一見客観的に見えても、どのようなデータに基づいているかで答えが変わるので、あくまで参考程度にしかならないと思います。

メディアや言語は、単なる情報の器ではなく、情報を加工して形作る重要な要素です。だからこそ、どんなメディアやどの言語で発信された情報なのかを意識しています。速報性ではSNSやネットが優れていますが、じっくり考えるのには向きません。ネットではゴシップも災害も同列に扱われ、情報の軽重の感覚がおかしくなる気がします。その点、重要度に応じてメリハリがある新聞は、依然として重宝しています。

言語の観点から言えば、日本語のニュースは日本人や日本に住む人を念頭に置いているのは当然ですが、英語だから国際的とは必ずしも言えません。例えばBBC NewsやCNN Internationalは「国際性」や「グローバル性」をうたっていますが、前者は英国、後者は米国の動きに焦点があり、それぞれの「自国化」が明確です。他地域を理解するためには、それらの地域の言語での報道がやはり一番だと思います。

おすすめメディア

MONATO

MONATO

エスペラント語の月刊誌で、世界各地の人が現地の視点から書いた記事を、編集者がファクトチェックをした上で載せています。世界の多様な生の声を知ることができます。これを読むためだけにエスペラントを学ぶ価値があるといったら言いすぎでしょうか。
www.monato.be

住んでいる地域の新聞・メディア

ドイツに住んだことで、現地密着情報の醍醐味を知りました。ドイツは街ごとに輪郭がはっきりしていて、個性ある新聞などのメディアが充実しています。それを読んで一日を始めると、自分の住んでいる街の情報が分かって生活が豊かになりました。

谷口仁子さん Noriko Taniguchi
谷口仁子
Adobe Brand Studioのクリエイティブディレクターとして、ブランディング、表現全般を手がける。以前はアートコレクティブ「チームラボ」でカタリストとして活動。学生時代はロンドンでアートを学ぶ。

「つながりすぎる時代」と距離を置く

最終的には、自分の考えや判断軸を育てるために情報を得ているのだと思います。そのためには、さまざまな意見や視点に触れることが大切。ただ、SNSやAIによって情報収集が効率的になった一方で、次々と新しい情報が流れ込んできて、肝心の「考える時間」を持ちにくくなっていると感じることもあります。ロンドンにいたときは、地下鉄の中で電波が届かないなど、ちょうどいい遮断があったのですが、東京では常時接続なので、意識的に情報から離れる時間を取るようにしています。「スロー・インターネット」という言葉がありますが、情報の波に飲み込まれず、自分の意志で選び取ることを心掛けています。それでも、どうしても見てしまうときは、iPhoneの画面をカラーフィルタで白黒に設定して抑止しています(笑)。

一方、AIはさまざまな場面で活用しています。調べものや作業など、AIによってかなり効率化されたと感じています。ただ、あまりに大きなテーマを丸投げしてもうまくいかないので、基本的には、具体的に指示を出せる範囲で手伝ってもらう「相棒」のような存在として使うように。先日も、購入した英語の本が想像以上に専門的でした。そこでAIに難解な文章の翻訳を頼んでみたところ、文脈を踏まえて訳すだけでなく、用語や時代背景の解説まで添えてくれて。以前なら自分一人では到底読み解けなかった内容を理解することができ感動しました。

おすすめメディア

Louisiana Channel

デンマークのルイジアナ美術館が運営しているアートにまつわるYoutubeチャンネル。世界のアーティストたちの言葉や思想に触れることができ、知的な刺激に満ちています。内容だけでなく、映像としてもとても美しくて癒やされます。
www.youtube.com/c/thelouisianachannel

Are.na

Pinterestのようにビジュアルを集めたりリサーチしたりできるプラットフォーム。広告もアルゴリズムもなく、どこか「静けさ」を感じさせるシンプルなつくりが魅力。落ち着いて考えやアイデアを深められる場所です。
www.are.na

カセキユウコさん Yuko Kaseki
カセキユウコ
ベルリン在住。舞踏の師匠である故古川あんず氏を追いかけ、91年に渡独。ブラウンシュヴァイク芸術大学パフォーミングアーツ科に在籍した。舞踏をよりどころに、テキストや音楽、現代美術など、さまざまな分野と交わりながらパフォーマンスを行っている。 www.cokaseki.com

「知らない方がいい」で過ごしてはいけない

たくさんの人々が抱えている(であろう)問題と、顔を付き合わせる毎日です。溢れんばかりの情報に踊らされ、怒ったり泣いたり笑ったりしています。気が付けば一日中、次から次へと流される情報と生活してしまいます。特に今の戦争、紛争を知れば知るほど、複雑に絡み合った歴史が善悪を超えた様相を呈し、ただ何もできない自分へのいらだち、罪の意識にやるせない思いで身動きできないでいました。

SNSで私が得た情報をリポストすることで、反対の立場に立つ人々からの攻撃を受けることもあります。なるべく対話したいと思うのですが、話は平行線で噛み合うことは難しい。立ち位置が違うだけで対立を深め、敵にさせられていく。俯瞰の視点を持ちつつ、対話をしていく、そしてお互いに修正、認め合うことができるのかが問われていくのだと思います。

ドイツに移住してから政治について情報を集め、話す機会が増えました。日本から離れることで、かえって日本の政治状況にも興味が湧き、これまでいかに自分が社会に対して無関心であったのかと思い返されます。今の世界状況は「知らない方がいい」で過ごしてはいけない状況ではないかと思います。何が正しいのか、間違っているのかは、幅広い知識がなくては判断もできません。知ることで狭く硬くなるのではなく、柔らかく広がる判断ができるようになりたいです。

おすすめメディア

AL jazeera

アラビア語と英語でニュースを24時間放送している衛星テレビ局。本社はカタールのドーハ。メジャーなメディアでは伝えられないニュースを、さまざまなジャーナリストや識者の意見を交えて放送しています。
www.aljazeera.com

街録ch 〜あなたの人生、教えて下さい〜

著名人から一般の人まで、その人の生い立ちと現在の生き方を露わにするインタビュー番組。YouTubeでなければ知りようもない人々が登場し、人間の深さも愚かさも垣間見ることができます。
www.youtube.com/@gairokuch

久保山尚さん Hisashi Kuboyama
久保山尚
スコットランド在住。英国最大規模のビジネス利益団体で政策研究・ロビー活動に従事する傍ら、SNSなどで政治や社会情勢に関する正確な情報を発信する。エディンバラ大学人文社会科学部歴史学専攻博士課程修了(PhD, Scottish History)

情報の正確さを見極める

情報源としてはSNS全盛の時代ですが、SNSで見かける情報については信頼できる情報源、例えば新聞や報道機関のウェブなどで必ず裏を取るようにしています。報道機関は誤った情報を流すと信頼に関わるため、情報源や第三者から得られた情報と照合して、正確かどうかをチェックすることを義務付けているからです。

SNSで流れてくる情報にはそのような正確性が担保されているとは限らないので、見たものを鵜呑みにはしないようにしています。例えばSNSで最近よく「英国は移民を入れすぎて社会が崩壊している」というポストを目にすることが多いですが、統計やデータを調べると、英国では過去20年間ほどで犯罪率がほぼ全ての分野で減少しています。ニュースやSNSでは犯罪の情報が常に流れ、ひどい犯罪が日常的に報じられているため、犯罪率が下がり続けていると言われても信じ難いかもしれませんが、これは事実なのです。

一方で新聞やテレビといった報道機関は信頼度が高いですが、情報の取捨選択に関しては完全に客観的とはいえませんし、社会の関心などによって報道の重点は大きく左右されます。メディアもやはり商売なので、人々が飛びつく情報を流しがちになるわけです。その意味で、報道される情報やニュースはショッキングなものが多くなりがちなので、そこは常に頭の片隅に入れておくべきだと思います。

おすすめメディア

The Times

The Times

英メディアに関しては、精度という点では「タイムズ」紙と「フィナンシャル・タイムズ」紙が頭一つ抜けており、この二つを読めば大体のことは分かります。情報源という点に関しては、SNSはかなり注意が必要だと思います。
www.thetimes.com

城島未来さん

日本語で英国に関する精度の高い情報を得るのは容易ではありませんが、現地で記者が直接取材を行う媒体は貴重です。その中でも、TBSロンドン支局特派員の城島未来記者は丁寧で確かな取材を重ねており、信頼できる報道を発信しています。
https://x.com/mikojoburg

小畑和香子さん Wakako Obata
小畑和香子
フライブルク在住。日系企業に勤める傍ら、モビリティシフトを目指す市民活動に参加。3件の自転車市民決議(州民/住民請求)、カーゴバイクシェアシステム運営など経験。共著に『世界に学ぶ自転車都市のつくりかた 人と暮らしが中心のまちとみちのデザイン』(学芸出版社)。

情報との距離感と発信の倫理

私が「信頼できる」と考えるのは、客観的な伝え方をしていて、出典に紐づけることができる情報です。そのメディアや発信者の蓄積を見て、信頼性を見極めるようにしています。

自転車市民決議に参加していた時期や共著を執筆していた頃は、積極的に関連するニュースを追っていました。しかし最近は、モビリティシフトへの向かい風が強まっていることもあり、ネガティブな情報が心理的に影響するようになったため、受動的に情報に触れる形に変えました。意識的に距離を取ることも、情報との健全な付き合い方だと感じています。交通やまちづくりといったテーマでは、日本語圏のSNSにおいて男性発信者の割合が偏って多いことも気になっています。特定のテーマ発信への時間の使い方にジェンダー差があることは問題だと考えています。だからこそ、自分にとって心地よくない空間にならないよう、見る範囲を調整しながら向き合うようにしています。

情報を発信する立場としては、住民請求のアカウントを運営していたときには「絶対に賛成する層」と「絶対に反対する層」の間にいる大多数の人々に訴えかけることを強く意識していました。文法を正しく「ジェンダーする」こと、ボディ・シェイミングを支持しないこと、写真や動画で個人の匿名性を守ることなど、細部への配慮を大切にしながら発信してきました。

おすすめメディア

Cycle

MONATO

「自転車生活を楽しく」をテーマとした、15年以上続く日本のフリーペーパーとウェブマガジン。スポーツではなく、カルチャーとしての自転車にまつわるあれこれを知ることができます。自転車に普段乗らない方にとっても、「自転車」という切り口から多彩な世界が見えてくるはず。
https://cycleweb.jp

Ingwar Perowanowitschさん

モビリティシフトに関心があるドイツ語圏の人がよくフォローしているジャーナリスト。交通政策関連ニュースや、欧州の自転車インフラ先進事例を紹介しています。
www.instagram.com/ingwar.perowanowitsch

國枝孝弘さん Takahiro Kunieda
國枝孝弘
慶應義塾大学総合政策学部教授。専門分野はフランス文学およびフランス語教育で、異文化理解を促す授業構築や、文学と言語表現に関する研究を中心に展開。 公共メディアでの活動として、NHKの語学番組「テレビでフランス語」などで講師を務めた実績がある。

自分の立場を問うメディアとの対話

速報ニュースを追うことは少なくなりました。その代わりに、「ル・モンド」や「アルテ」など信頼性の高い媒体で、背景を掘り下げる論説系のポッドキャストを中心に聴いています。またフランスでは、ラジオ番組の多くがポッドキャストとして配信されており、時差の関係でリアルタイムで聞けない番組も好きなときに聴けるのが便利です。

もちろん、それらの報道を鵜呑みにしているわけではありません。判断に迷うときは信頼するジャーナリストのSNSを参考にしますが、その人が常に正しいとは限らない。情報を受け取る際に大切なのは、最終的に「自分がどういう立場を取るか」を意識することだと思います。

SNSはXとBlueskyを併用しています。フランスでは大手メディアがXから撤退し、Blueskyに移行しているため、後者が欠かせない情報源になっています。一方で、個人のジャーナリストの多くはいまだにXを活用しており、両方を見比べるようにしています。欧州で実感するのは、独立系メディアやフリーランス記者の重要性です。大手とは異なる視点が情報の多様性を支えていると感じます。

AIは避けるものではなく、授業の中でも実際に取り入れています。例えばフランス語の授業では、学生にAIを使って練習問題を作らせ、それを別の学生が解くというアクティビティーを行っています。AIを活用することで、学び方や考え方の幅が広がると感じています。

おすすめメディア

France Culture

フランスの公共放送「Radio France」の文化専門チャンネル。文学や映画、哲学など幅広いテーマを扱い、作家や映画監督本人が出演してパーソナリティーと対話する知的で深い番組が多いのが特徴です。
www.radiofrance.fr/franceculture

西村カリンさん (Karyn NISHIMURA)

日本在住のフリーランス・ジャーナリスト。日刊紙「リベラシオン」や公共放送「ラジオ・フランス」の特派員として活動している。当事者に近い立場から現場の声を丹念に伝える取材姿勢に定評があります。
https://x.com/karyn_nishi

新野見卓也さん Takuya Niinomi
新野見卓也
ブダペスト在住のピアニスト・音楽批評家。国際基督教大学卒業、一橋大学大学院言語社会研究科を修了後、リスト音楽院でピアノを学ぶ。現在はハンガリー国立ダンスアカデミーのバレエピアニストとして活動しつつ、演奏・執筆を通じて日欧の音楽文化を架橋している。

情報は「媒介」された世界である

「media」の原義、すなわち「媒介」ということを常に意識することが大切だと思います。私たちが受け取っているのは「生の情報」ではありません。取材の過程での取捨選択、編集方針、見出しや写真の構成、さらにはSNSのアルゴリズムや私たち自身の関心の偏りといった、いくつものフィルターを通過した結果が「情報」として届いているのです。大手メディアであれ、個人のSNS発信であれ、この媒介性から自由ではありません。

私は長くXを使ってきましたが、一般にSNSは立場を問わず極論が目立ちやすい場です。もちろん、即応が求められる場面を否定するものではありません。ただ、その都度反射的に反応するだけでなく、自分でその問題を引き受けて、または相手の立場に立って、立ち止まって考えることもときに必要でしょう。そして私は、SNSで気になったことをSNSの中だけで完結させないことを心がけています。本を読むこと、考えること、あるいは行動に移すことで初めて、その情報収集が生きるというべきでしょう。

AIについては、特段の関心はありません。人間が自分で表現し、考え、他者と触れ合うことに喜びを見いだす限り、AIがあろうとなかろうと、人間の幸福の核心は容易に変わらないのではないでしょうか。むしろ私たちは少し冷静になって、「AIとどう付き合うか」という技術論だけでなく、その裏側で何が犠牲になっているのかにも目を向ける必要があります。

おすすめメディア

ゲンロン友の会(シラス)

批評誌「ゲンロン」を中心に活動する会員制コミュニティーと、配信プラットフォーム。思想、社会、アートなど多彩なテーマの講義や対談をオンラインで発信。思考を深める場として支持を得ています。
https://webgenron.com

Dialogue for People

NPO法人。国内外の社会課題や人権問題を取材し、記事や動画、ポッドキャストなど多様な形で発信。現場の声に耳を傾け、対話を通じて共感と理解を広げる姿勢が高く評価されています。
https://d4p.world

丹羽良徳さん Yoshinori Niwa
丹羽良徳
ウィーン在住の現代美術家。公共・政治空間でスローガン的な行為を実施し、その記録映像を通じて、制度の外縁や行為が生む軋あつれき轢から社会通念・価値観の源流を探る。プロジェクトに「私的空間からアドルフ・ヒットラーを引き摺り出す, 2018」など。

メディアが映す無意識と、その先にあるもの

昨年、一時帰国した際に日本のテレビを見ました。ところが、画面に映る光景はどこか不気味で、感情的な言葉と、空虚な娯楽だけ。情報を伝えるより、現実を忘れさせるための装置に近づいているように感じました。「どうでもいいニュース」にも一応の社会的機能があります。日常の重圧や政治的対立の疲労感を和らげる現実逃避の空間として機能しているのです。

これは支配体制にとって都合が良く、テレビ、政府、視聴者が共犯関係にあると言えるでしょう。多くの番組は重要なことを伝えず、国民を無知のままに保つ姿勢が主流です。SNSは、アルゴリズムによって心地よい情報だけが選ばれ、さらにフェイクニュース拡散の温床となり、民主主義を脅かしています。人々は偽物かどうか識別能力を失い、右派の台頭も誤認や疎外感を助長しているのです。今は情報過多ではなく「検証可能な情報の不足」なのでしょう。

メディアは人間の情緒の集積で、人間が変わればメディアも変わるはずです。それには年に一度は知らない場所に行き、異なる現実に触れることや、長時間労働を見直し「立ち止まる時間」を持つ社会をつくること。それがメディアとの健全な距離を取り戻す第一歩になるのではないでしょうか。明日、電車の中で見知らぬ誰かにそっとウィンクしてみましょう。そこから、世界の見え方が少しだけ変わるかもしれません。

おすすめメディア

報道特集(TBSテレビ)

報道ドキュメンタリー番組。社会問題や国際情勢に加え、日常に潜む違和感や声なき当事者にも焦点を当てています。丁寧な取材と深い人間洞察に基づくルポルタージュを通して、日本社会の今を伝える貴重な番組。
www.tbs.co.jp/houtoku

よど号日本人村

1970年のよど号ハイジャック事件の当事者たちが、亡命先での生活を発信していたウェブサイト(2021年で更新停止)。当事者を肯定・擁護する意図はありませんが、社会を揺るがした出来事が次第に風化していく現実と、その無常を伝えています。
www.yodogo-nihonjinmura.com

編集部スタッフがピックアップ! 心が豊かになるメディア

Lobsterr Letter www.lobsterr.co

Lobsterr Letter

Selected by 編集部(真)

毎週月曜日に届くニュースレター「Lobsterr Letter」では、未来の兆しとなるようなビジネスやカルチャーのニュースを集め、編集部の感想や考察を添えて紹介しています。ニュースの速読というより、選び抜かれたニュースが長めに書かれているため、私は月曜の朝、コーヒーを飲みながらまず見出しをチェックし、気になったトピックを後からじっくり読むのが習慣です。なかでも特に好きなのが、ニュースレター冒頭の「Outlook」のコーナー。編集部が気になっているテーマに沿って、関連する記事を挙げながら展開される小論考のような内容で、「何かおもしろいことありますかね」「面倒を見るという仕事」「ビジョンがなくても」など、毎回のタイトルにも惹かれます。

INA「BAROMÈTRE」 www.data.ina.fr

INA「BAROMÈTRE」

Selected by 編集部(沖)

フランス国立視聴覚研究所(INA)が毎月発行している「BAROMÈTRE」は、ニュース番組やラジオ放送をAIで分析し、報道でどんな言葉が繰り返され、どの地域が目立ち、誰の声が多く聞こえたのかを数値化するニュースの鏡のようなレポートです。興味深いのは「声の偏り」。ニュース番組で話す女性の割合はわずか39%。つまり、テレビの音の6割は今も男性の声に占められているのです。一方で文化系ラジオ「France Culture」は男女比が50対50と最もバランスが取れていました。数字だけを追っているのに、メディアが映す社会の影がくっきり見える「ニュースのあと読み」がこのバロメーターの魅力。ニュースをただ受け身で見るのではなく、今の社会を観察する感覚が得られます。

Time Sensitive www.timesensitive.fm

Time Sensitive

Selected by 編集部(徒)

文化・アート・政治などのジャンルから、今立ち止まって考えたいものを紹介する「The Slowdown」というメディアがあるのですが、その編集長スペンサー・ベイリー氏が手掛けるポッドキャストが「Time Sensitive」です。毎月「時間」をテーマに作家やアーティスト、建築家、思想家などをゲストに迎え、その人が時間とどう向き合い、創作や人生に生かしているかを掘り下げます。これまでに写真家の杉本博司、ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルをはじめ、第一線で活躍する人々が出演しています。最近、私はニュースを急いで日本語翻訳して読むクセがつき、さらにニュース以外でもそのせわしない読み方が定着しかかっているため、文字ではなくあえて耳から英語をじっくり味わうようにしています。

クーリエ・ジャポン https://courrier.jp

クーリエ・ジャポン

Selected by 編集部(穂)

海外の媒体から選りすぐりの記事を日本語で紹介する「クーリエ・ジャポン」は、独自の特集が組まれ、さまざまな視点から物事を考えることができる媒体で、学生時代からお世話になっていました。印象に残っているのは「9割の日本人が知らない『危機』」と題された2015年の緊急総力特集で、パリ同時多発テロ事件の発生直後に発行された号です。当時渡独を1年後に控えていた私は、今この時代に欧州に行くとはどういうことなのか、答えを求めて手に取りました。現在はウェブ版のみですが、記事だけでなく動画配信やイベント開催など、まだまだメディアの可能性を感じさせてくれます。オンラインイベントでは編集長や読者と直接話す機会もあるので、また参加したいなと考えています。

最終更新 Montag, 12 Januar 2026 17:15
 

From Staff 特別編
月刊化を迎えて
編集部座談会

1994年のドイツニュースダイジェスト創刊から32年。月刊化という大きな節目を迎えるに当たり、編集部の沖島、土井、岡島の3人があらためてこれまでの道のりを振り返ると共に、これからのドイツニュースダイジェストについて語り合いました。 (文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

沖島沖島
2011年にフランスニュースダイジェスト入社。ドイツニュースダイジェスト編集長。

土井土井
ベルリンに恋して渡独。2018年からドイツニュースダイジェスト編集部員。

岡島岡島
2019年からドイツニュースダイジェスト編集部員。現在はライプツィヒ在住。

それぞれのニュースダイジェストとの出会い

沖島:私はもともとドイツでジャーナリズムを勉強していましたが、家族の都合でフランスに移りました。そこでフランスニュースダイジェストを知り、2010年からライターとして関わり始め、2011年1月に正式に入社。その後、2014年にフランス版を休刊することになり、ドイツニュースダイジェストに異動しました。

これまでの仕事で特に印象に残っているのは、2012年に姉妹誌であるドイツ語フリーペーパー「JAPANDIGEST」の定期発行を始めたとき。当時、社員の中でも「本当にできるのか」と議論になりました。JAPANDIGESTのウェブサイトを開設するタイミングで初めてドイツ人スタッフを雇ったのも大きな出来事でした。これまで日本人が作っていた雑誌に、ドイツ人の視点が加わったことで、ドイツニュースダイジェスト・JAPANDIGEST両方の幅が広がったと思います。

土井:私は2018年6月にドイツニュースダイジェストに入社しました。実は日本で大学生をしていたころ、授業でニュースダイジェストの記事が紹介されていたことがありました。当時は気づいていませんでしたが、それが最初の接点でした。

その後、学生時代に訪れたベルリンに住んでみたいと思い、日本でライフスタイル誌の編集者として経験を積んだ後、2016年10月にベルリンで暮らし始めました。2018年3月に当時の社員の方と出会い、その数週間後にはニュースダイジェストの拠点であるデュッセルドルフに面接のため足を運んでいたという感じです。ベルリンは今も大好きですが、気づけばデュッセルドルフ生活の方が長くなりました。今では、ニュースダイジェストは私のドイツ生活になくてはならない存在です。

Eスクーターを取材編集部の日常① Eスクーターがドイツで解禁された2019年夏、1105号特集「EスクーターのABC」の取材のため試乗!(岡島)

岡島:私はもともとベルリンの大学院で芸術学を学んでいましたが、ちょうどその頃は、ベルリンの家賃高騰で住む場所を見つけるのが難しくなってきていて、この先どうしようかなと考えていました。そんななか、先輩編集者である土井さんと出会って初めてデュッセルドルフに行き、2019年8月から編集者としてドイツニュースダイジェストで働いています。

もともとデュッセルドルフに住んでいましたが、再び学業のためにライプツィヒに引っ越すことに。リモートで働くようになったのですが、これまであまり取り上げられなかったドイツ東部地域の取材も積極的に行うようになりました。2024年には妊娠・出産を経験しましたが、編集部お二人のバックアップもあり、子育てしながら変わらず誌面作りを楽しませてもらっています。

ライプツィヒ編集部の日常② 出産後の岡島を訪ねてライプツィヒへ!(沖島・土井)

思い出に残る号、記事、人

岡島:ニュースダイジェストは創刊からしばらく週刊新聞で、2012年〜昨年12月までは隔週(年に24回)で発行していました。単純計算だと、私は約150冊、土井さんは約180冊、沖島さんは約360冊の編集に関わったことになります。その中で特に思い出に残る号はありますか?

沖島 土井 ……(ありすぎて考え中)。

岡島:では、私から話してみます(笑)。入社1年目を振り返ってみると、とにかく土井さんとがむしゃらに特集を作っていて、純粋に楽しかった記憶があります。例えば5ページの特集があったとして、私が1ページ目と4〜5ページを担当し、土井さんが2〜3ページを担当する。それでお互いの原稿を突き合わせてみると、何だかお互いの原稿が響き合っていてうれしくなる。1108号・1109号「ベルリンの壁崩壊30周年記念特集」や、1114号「ベートーヴェン生誕250周年記念」などが記憶に残っています。

読み返してみると、もう少しこうできたのになとか、肩の力が入っているな、というものもあるんですが、同時にすごく熱量を感じる。今はむしろ経験を積んで質は上がっていると思うので、月刊化をしていく上でも、あらためて純粋なものづくりの楽しさを大切にしていきたいなと思う今日このごろです。

ドイツ東部の村ザイフェン、くるみ割り人形の生産の職人さん編集部の日常③ 1182号特集「ザイフェンの木工おもちゃに会いにいく」では、くるみ割り人形の生産地であるドイツ東部の村ザイフェンで職人さんたちを取材(岡島)

土井:岡島さんがそう思ってくれていることを、知らなかったわけではないですが、単純にすごくうれしいです。当時は、私も先輩としていろいろ教えなきゃと思っていたんですが、いつの間にか自分も一緒に楽しくなっていました。連載「ドイツの逸品」でドレスデナー・シュトレンを紹介する記事を入社したての岡島さんに書いてもらったとき、「バターがたっぷり」という表現が3回くらい出てきていて、「この人本当にバターが好きなんだな」と思って。それを私が指摘して、二人でゲラゲラ笑いましたね。

岡島:土井さん、そのエピソード何回も言ってきますよね(笑)。

土井: はい、何回でも言います(笑)。さて、最近だと、1248号「都市ガイドシリーズ⑮ロストックの魅力再発見!」を制作するのが本当に楽しかったです。この都市ガイドシリーズは2022年から続けていますが、2025年からはドイツ政府観光局にご支援いただき、現地での取材をもとに制作させてもらっています。ダース半島を自転車でめぐる取材は体力的にも大変でしたが、今の自分だから作れる記事になったと思います。

岡島さんの「バターがたっぷり」もそうですし、ロストックの取材もそうですが、記事の中に人柄が出ることや、実際にその場に行って見たこと・感じたことをまとめるというのは、これからの時代にもっと大切にしていきたいと感じました。

ダース半島のビーチ編集部の日常④ 1248号特集「ロストックの魅力再発見!」の取材のため訪れたダース半島のビーチ(土井)

沖島: 連載でいうと、中村真人さんの「ベルリン発掘の散歩術」は、読むと本当にその場に行った気分になれますよね。私は特に、1121号掲載の「マレーネ・ディートリヒの美に酔って」が好きです。熱狂的なディートリヒのファンである高橋さん(掲載当時87歳)が、人生をかけて追い求めたディートリヒへの愛が伝わってくる、大変印象的な記事でした。

土井:ニュースダイジェストの良さは、編集者・ライターさん・読者の距離の近さにもありますね。読者が友人であり、知り合いであり、同じ悩みを共有する仲間でもある。知り合いから、誌面で紹介した内容について「実際にあそこに行ったよ」とか「これを買ってみたよ」と言われることも多々あります。あるいは連載「Dr.馬場の診察室」では、以前私が馬場先生とのやりとりの中で坐骨神経痛に悩んでいるとお話したことがあったのですが、それをテーマにしてくださったことがあります(笑)。

ダース半島のビーチ編集部の日常⑤ 毎年5 月にデュッセルドルフで開催される「日本デー」は、ニュースダイジェストにとっても読者と直接会える貴重な機会です(土井)

岡島:ほかにも、1218号「ドイツの小学校入学準備ガイド」や1226号「ドイツで初めての妊娠・出産」などは読者へのアンケートをもとに制作していますが、現地生活者ならではの喜びや苦労、葛藤がにじんでいて、いつも回答を読むだけで泣きそうになります。

AI時代のニュースダイジェストの役割とは

沖島:実際に現地生活者として、自分が疑問に思ったことをすぐ企画にできたり、同じくドイツに住む日本人と悩みを共有したりできるというのは、編集者としてとても恵まれた環境ですね。特に最近では、SNSやAIの登場によって情報が溢れかえっているので、ネットで拾えるニュースではなく、実際にコミュニティにとって役立つ生活情報や体験談がうちの強みになると思います。

岡島:本当にそうですね。というのも、本号の特集「欧州で暮らす私たちとメディアの距離感」は、読者の方々に情報との向き合い方のヒントをお届けすることが主な企画意図でしたが、裏テーマには「私たち編集部がこれからすべき仕事は何か」ということがありました。AIに頼めばすぐにそれらしい記事を書いてもらえるようになり、果たして編集者の仕事はなくなってしまうのか? メディアの未来はどうなるのか? という、作り手として抱える不安や葛藤に向き合う時間にもなりました。

沖島:1257号の特集「欧州で暮らす私たちとメディアの距離感」での村井明日香さんへのインタビューには、英独編集部全員で参加させてもらいましたね。村井さんは英国滞在中に英国ニュースダイジェストを読んでくださっていたこともあり、インタビューの後半では、自分たちの制作者としての悩みや疑問を共有させていただき、ご意見をいただくなどとても勉強になりました。そのなかであらためて「意志を持った編集」ということの重要性を感じました。

パリオリンピック 2024編集部の日常⑥ 1209号特集「パリオリンピック 2024」の発行後、現地で観戦もしました!(沖島)

土井:それはもちろん、誌面の編集だけに限りません。例えば最近、インスタグラム(@pickup_doitsu)の投稿に力を入れていますが、そのなかでドイツのニュースにまつわる投稿へのフォロワーさんたちの反応がいいことに気づきました。

沖島:そもそも名前が「ドイツニュースダイジェスト」ですしね。読者の方々が私たちの「ニュース」の部分に信頼を置いてくださっているのは、創刊当時から変わらないのかもしれません。

土井:私たちはドイツ生活のキラキラした側面ばかりを見せる必要はなくて、自分たちの目線でキュレーションしたドイツ語のニュースをしっかりとした日本語で届ける。それは創刊当時からの使命であり、32年間受け継いできたものです。AIの台頭に不安になる部分もあるけど、私たちにできることはまだまだあると思います。

岡島:AIとの差別化ということでいえば、あらためて「一次情報の価値」を大切にしていきたいと思います。例えば連載「私の街のレポーター」で各地のレポーターさんが書いてくださる記事の中は、日本語で検索しても出てこないような情報だらけなんです。

レポーターさんにはいつも、「ネット上には『ドイツのおすすめ○選』といった記事が山ほどあるから、それよりも、ご自身が実際にその場にいて何をどう感じたのか、どういう感情がそこで生まれたのか、ということを知りたい」とお伝えしています。さまざまな背景や個性を持った方々がレポーターを務めてくださっていて、一読者としても大好きなコーナーです。ほかでは得られないローカルでパーソナルな声もしっかり取り上げていきたいです。

「全ては知ることから始まる」

岡島:月刊化するに当たり、どうしても「速報性」という意味ではネットには叶いません。SNSやウェブサイトを使ってそこを補いつつも、誌面ではより深く読み込める記事をもっと作っていきたいですね。ページ数もこれまでより増えるので、一つの号のなかで複数の視点から特集を組むことができるようになり、よりドイツを立体的に感じていただけたらうれしいです。

土井:あとは、読者の声をもっと知りたいです。私たちは三人とも文化や芸術が好きだったり、一緒に誌面を作るなかで似てきている部分もあると思うので、もっとこういう切り口がある、こういう情報を知りたい、というような声を聞きたい。先ほども言ったように、ライターさんや読者の皆さんとの距離がとても近いので、インスタライブや読者会などのよりインタラクティブな機会を増やしたいですね。そうした出会いのなかで、ゲスト的に読者の方に記事を執筆いただいたりするのも面白いかもしれません。

沖島:編集部では、月刊化に当たって私たちが目指す方向性を言葉にする作業を進めてきました。そのなかで読者に届けたいメッセージの一つは「全ては知ることから始まる」ということ。まずはニュースダイジェストを通して、ドイツのニュースや文化、社会、政治、経済、生活を知る。そして、知ったことで実際に行動してみたり、ドイツをより深く理解できたり、生活がより豊かになったり。そういう「知ることの先」まで一緒に届けられる誌面作りを目指したいと思っています。

編集部一同 これからのドイツニュースダイジェストに、どうぞご期待ください!

●編集部からのお知らせ●

月刊化第一号の発行を記念して、
1月 14日(水)21時(ドイツ時間)
からインスタライブを開催予定です。ぜひご参加ください! https://www.instagram.com/pickup_doitsu
最終更新 Dienstag, 13 Januar 2026 17:29
 

2025年のドイツ、世界、日本の主要ニュースまとめニュースサマリー2025

1月 Januar

ドイツマクデブルクで追悼式典

2024年12月にザクセン=アンハルト州マクデブルクのクリスマスマーケットで起こった襲撃事件から4週間が経過し、同市で追悼式典が営まれた。式典にはフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領も出席した。

ドイツ公的機関がXの利用を停止

連邦国防省は、ソーシャルメディアのX(旧Twitter)アカウントからの発信を今後停止することを発表した。国防省は「実質的な意見交換が、同プラットフォーム上で非常に難しくなった」と述べている。1月10日時点で、国内60以上の大学や研究機関がXの利用停止を発表していた。

ドイツ刃物による殺傷事件で2人が死亡

バイエルン州北部のアシャッフェンブルクで1月22日、刃物を持った男が公園にいた幼稚園児のグループに襲いかかり、男性(41)とモロッコ出身の移民家庭の男の子(2)が死亡、3人が重傷を負う事件が発生した。

ドイツアウシュヴィッツ解放から80周年

アウシュヴィッツ強制収容所がソ連軍により解放されて80年目に当たる1月27日、現地で同収容所の生存者や55カ国から政治家らが参加して追悼式典が営まれた。式典は、絶滅収容所だったアウシュヴィッツ=ビルケナウ記念博物館で行われた。ドイツからはシュタインマイヤー大統領とオーラフ・ショルツ首相(当時)、ロベルト・ハーベック副首相(当時)らが参列した。

アウシュヴィッツ=ビルケナウ記念博物館での追悼式典の様子1月27日、追悼式典の会場となったアウシュヴィッツ=ビルケナウ記念博物館

ドイツ流産に対する母体保護を拡充

連邦議会は流産に対する妊婦保護を拡充する法案を可決した。流産に対する妊婦保護は6カ月目からで、それ以前に流産した場合、それを理由とした病欠などが認められていなかったが、改正後は妊娠13週間目の流産に対して、2週間の妊婦保護が認められる。

米国「米国第一」トランプ大統領が就任

(ワシントン 1月21日 時事)米共和党のドナルド・トランプ氏(78)は1月20日、第47代大統領に就任し、4年ぶりの復権を果たした。就任演説で「米国第一」を誓い、成長国家として「黄金時代が始まる」と強調。不法移民の大規模送還を最優先に掲げ、南部国境に軍を派遣すると明言した。経済政策については「記録的なインフレを打破する」と公約。

大統領室で署名するトランプ大統領1月20日、米国議会議事堂で行われた就任式に続き、大統領室で署名するトランプ大統領

タイ「結婚平等法」が施行

(バンコク 1月23日 時事)タイで1月23日、東南アジアで初めて同性婚を可能とする「結婚平等法」が施行。バンコクでは同性カップルが一斉に婚姻届を提出するイベントが開かれ、タイ人女性と結婚した日本人女性は「うれしい」と喜んだ。

コンゴ衝突激化で700人死亡

(ニューヨーク 2月1日 時事)国連は1月31日、アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)東部で激化する政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突により、少なくとも700人が死亡し、2800人が負傷したと明らかにした。

日本阪神大震災から30年

死者6434人、負傷者4万3792人を出した阪神大震災は1月17日、発生から30年の節目を迎えた。震災後生まれの人が増え、記憶の風化が進むなか、能登半島地震など各地で災害は頻発している。遺族らは震災の教訓を次世代につなげる決意を新たにし、犠牲者の冥福を祈った。

日本青葉被告の死刑が確定

京都アニメーション第1スタジオが放火され、36人が死亡、32人が重軽傷を負った事件で、殺人罪などに問われ、一審京都地裁で死刑判決を受けた青葉真司被告(46)が1月28日までに控訴を取り下げた。死刑判決が確定した。

2月 Februar

ドイツミュンヘンでデモ隊に車が突入

2月13日の午前10時半頃、アフガニスタン出身の24歳の男が、ミュンヘン市内でサービス産業労組ヴェルディのデモ隊めがけて車で突入する事件が発生。少なくとも37人が負傷、事故の2日後には重傷を負っていた37歳の母親と2歳の娘が死亡した。

ドイツホロコースト施設で刃物襲撃

(ベルリン 2月22日 時事)ベルリンにあるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)追悼屋外施設で2月21日夜、30代のスペイン人観光客が刃物で襲撃され、重傷を負った。ドイツ警察は難民認定を受けていたシリア出身の男(19)を殺人未遂の疑いで拘束。

ドイツ連邦議会選挙でAfDが第2党に

2月23日の連邦議会選挙で、キリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)が28.5%を獲得して第1党に。前回の倍の得票率20.8%を獲得した極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が社会民主党(SPD)の16.4%を押さえて第2党となった。緑の党は3.1ポイント失い11.6%。一方で左翼党が大きく躍進して8.7%を獲得、自由民主党(FDP)とザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)は5%に達することができず議会入りを果たせなかった。投票率は82.5%と1990年の東西ドイツ統一以来最高の数字を記録した。

ドイツミュンヘン空港でストライキ

2月27日と28日の2日にかけてミュンヘン空港の地上職員が48時間の時限ストライキを決行。予定されていた便の80%が欠航した。サービス産業労組ヴェルディは、空港のセキュリティーサービスや機体整備などの地上職員の賃上げを雇用主側に要求。

米国米関税の「第1弾」が発動

(ワシントン 2月2日 時事)トランプ米大統領の掲げる高関税政策が動きだした。第1弾としてカナダ、メキシコからの輸入品に25%の関税を課し、中国には10%を上乗せすることを決定。

日本石破首相がトランプ氏と初会談

(ワシントン 2月8日 時事)石破茂首相(当時)は2月7日、米ワシントンのホワイトハウスでトランプ大統領と初めて会談した。日本企業の対米投資を1兆ドル(約151兆円)規模に拡大する方針を伝達。トランプ氏は対日貿易赤字の解消を目指すと表明し、実現しない場合は新たな関税措置を取る可能性に言及した。

日本ホンダと日産、統合協議終了

ホンダと日産自動車は2月13日、それぞれ取締役会を開き、経営統合協議の打ち切りを正式決定した。日産の内田誠社長は横浜市内で記者会見し、ホンダから日産を完全子会社とする案を示され、「日産の自主性がどこまで守られるか最後まで確信を持てなかった」と破談に至った理由を説明した。

3月 März

ドイツ全国各地で警告ストライキ

3月10日、サービス産業労組ヴェルディは国内の13空港で24時間の警告ストライキの実施を呼びかけた。市内交通、保育所、ゴミ収集などでもストライキが実施され、ヴェルディによると10日の週に全国で15万人以上が参加した。

ドイツウクライナの追加軍事支援を決定

(ベルリン 3月22日 時事)ドイツ連邦議会の予算委員会は3月21日、ロシアの侵攻を受けているウクライナに対し、2025~29年に追加軍事支援として計110億ユーロ以上を割り当てる政府案を承認した。ウクライナにとっては継戦能力が高まり、ロシアとの停戦交渉で強い立場を取りやすくなる。

ドイツ独政府の50億ユーロ支援策承認

(3月26日 時事)欧州連合(EU)欧州委員会は3月24日、ドイツ政府が実施する企業の脱炭素化を促す総額50億ユーロ(約8100億円)の産業支援策を承認した。製鉄や化学、鉱業など幅広い分野でのエネルギー転換に取り組む企業に補助金を拠出する。

ドイツ連帯税のあり方は合憲

連邦憲法裁判所は、FDPの複数の政治家が訴えていた連帯税(Solidaritätzuschlag)の撤廃に対して、これを退ける判決を下した。連帯税は1995年、旧東ドイツ地域の経済的再建など東西再統一のコスト捻出のために導入され、これまでに126億ユーロが国庫に税収として納められた。

オーストリア中道3党の連立発足

(ベルリン 3月3日 時事)オーストリアで3月3日、中道3党の連立による新政権が発足。引き続き与党となる中道右派・国民党のクリスティアン・シュトッカー党首が新首相に就任。国民党と連立を組むのは中道左派・社会民主党と、初の政権入りとなる中道NEOS。

ミャンマーM7.7の地震で被害多数

(バンコク 3月28日 時事)米地質調査所(USGS)によると、ミャンマー中部で3月28日午後0時50分ごろ、マグニチュード(M)7.7の地震が起きた。国軍によれば、死者144人、負傷者732人が確認された*。
*3月31日の時点で、死者は約1700人、負傷者約3100人

日本旧統一教会に解散命令

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る解散命令請求について、東京地裁(鈴木謙也裁判長)は3月25日、文部科学省の主張を認め、解散を命じる決定をした。教団信者による不当な献金勧誘行為などについて「類例のない膨大な規模の被害を生じさせた」と指摘。法令違反を理由とした解散命令は3例目で、幹部らが刑事責任を問われたオウム真理教などとは異なり、民法上の不法行為を根拠とした初のケースとなった。

日本フジ日枝氏が取締役を退任

フジテレビと親会社フジ・メディア・ホールディングス(HD)は3月27日、元タレント中居正広氏の女性トラブルを巡る対応が批判を受けた問題で、経営陣を大幅に刷新し、両社の取締役相談役を務める日枝久氏が退任すると発表した。取締役を40年以上務め、社内に強い影響力を持つ日枝氏を含めて体制を見直し、早期の信頼回復を目指す。

4月 April

ドイツ公共サービスの賃上げ交渉が決着

複数回にわたるストライキと3回の交渉決裂を経て公共サービスの賃上げ交渉が決着し、260万人に対して二段階の賃上げと労働条件の向上が約束された。

ドイツCDU/CSUとSPDが連立協定発表

連邦議会選挙以来、連立交渉を続けていたCDU/CSUとSPDが4月9日、正式に連立協定を発表した。「ドイツのための責任」と銘打たれ、経済の強化と移民政策の厳格化などが打ち出された。

ドイツAfDが初の支持率首位に

(ベルリン 4月9日 時事)4月9日、世論調査会社イプソスが最新の政党別支持率を発表し、排外的な極右AfDが、独全土を対象とした調査で初めて首位に立った。支持率は前月から3ポイント上昇の25%。

ドイツBSWが票数の数え直しを要求

2月の連邦議会選挙で、9529票が足りず議会入りを逃したBSWが、票数の集計に間違いがあったと主張して数え直しを要求。

韓国憲法裁が尹大統領を罷免

(ソウル 4月4日 時事)韓国憲法裁判所は4月4日、「非常戒厳」宣言を巡り弾劾訴追されていた尹錫悦大統領(64)を罷免すると宣告した。尹氏は任期を約2年残して即時失職した。韓国大統領が罷免されるのは朴槿恵元大統領に次ぎ2例目。

世界世界の軍事費9%増

(ロンドン 4月28日 時事)スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は4月28日、世界の2024年の軍事費が前年比で実質9.4%増の総額2兆7180億ドル(約391兆円)となり、過去最高だったと発表した。支出増は10年連続で、特に欧州と中東地域で急増。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の悪化が影響した。

日本脱線から20年、犠牲者に祈り

乗客106人と運転士が死亡し、562人が重軽傷を負ったJR福知山線脱線事故は4月25日、発生から20年を迎えた。兵庫県尼崎市の事故現場に整備された慰霊施設「祈りの杜もり」でJR西日本主催の追悼慰霊式が開かれ、遺族らが犠牲者の冥福を祈った。式には、中継会場も含め遺族や負傷者ら343人が参列。

5月 Mai

ドイツ5月から姓表記などが法改正

5月1日からいくつかの法改正が施行され、夫婦の姓表記などに関する法律が新しくなった。今回の改正では、夫婦の一方にしか認められていなかった二つの姓の併記が双方で可能となり、夫婦別姓の場合でも子どもは両親の姓を併記できるようになった。また、身分証明書のための証明写真はデジタルでの提出が義務に。

ドイツメルツ首相が誕生

CDUのフリードリヒ・メルツ党首(69)が5月6日、連邦議会で新たな連邦首相に選出された。ただし1回目の投票では選出に必要な過半数の票を集められず、野党に協力を要請した結果、2回目の投票で選ばれるという異例の事態となった。

5月6日、ショルツ前首相と握手するメルツ首相5月6日、ショルツ前首相と握手するメルツ首相

ドイツドイツ大統領が終戦80年演説

(ベルリン 5月8日 時事)シュタインマイヤー大統領は5月8日、第二次世界大戦でナチス・ドイツが連合国に降伏して80年の節目に合わせて連邦議会(下院)で演説し、「過去と向き合う者は、未来を諦めることもない」と述べた。

ドイツ独軍リトアニア旅団が発足

(ベルリン 5月24日 時事)ドイツ軍は5月22日、バルト3国のリトアニアの首都ビリニュスで、同国に常駐する旅団の発足式典を行った。独軍が単独で国外に大規模部隊を常駐させるのは第二次大戦後初めて。

ドイツ移民政策を根本から転換へ

移民政策の転換についての法案を、連邦政府が閣議決定した。新たな移民法では移民受け入れの制限と管理・把握を強化することを目的に掲げる。移民がドイツ社会に適応するなどの条件を満たした場合に、国籍申請時期を滞在5年目から3年目に早めることができるとし、前政権が制定した法律が無効に。補完的保護対象となっている難民の家族呼び寄せは2年間停止へ。

バチカン新ローマ教皇にプレボスト枢機卿

(バチカン市 5月9日 時事)カトリック教会の最高指導者、ローマ教皇を決める選挙「コンクラーベ」で、5月8日の投票の結果、4月に死去したフランシスコ教皇の後任に、米国のロバート・フランシス・プレボスト枢機卿(69)が選出された。第267代の教皇で、レオ14世を名乗る。

日本経常黒字、過去最大の30兆円

財務省が5月12日発表した2024年度の国際収支速報によると、海外とのモノやサービスの取引、投資収益の状況を示す経常収支は30兆3771億円の黒字だった。黒字額は23年度の26兆1664億円を上回り、1985年度以降で過去最大を更新。配当金や利子の収支を示す第1次所得収支の黒字拡大が寄与した。

日本「2000円」備蓄米が消費者に

政府が随意契約で放出した備蓄米が5月31日、小売店の店頭に並び、消費者の手に渡り始めた。小泉進次郎農林水産相(当時)が掲げた「5キロ2000円」がわずか1週間余りで実現。5月26日に発表した全国のスーパーの平均価格は5キロ当たり4285円。

6月 Juni

ドイツ兵役復活論が現実的に

ボリス・ピストリウス国防相(SPD)は、北大西洋条約機構(NATO)強化においてドイツ連邦軍が新たに6万人の兵士が必要であると提言。本格的な兵役復活の可能性が現実味を帯びてきた。

ドイツ移民の25%「ドイツを去ることを考える」

ドイツに住む外国出身者のうち4人に1人が「ドイツを去ることを考えている」ことが労働職業研究所(IAB)の調査で明らかに。同調査の対象者人数は260万人で、このうち3%がすでにドイツを去る具体的な予定を立てていることが分かった。

ドイツ山田和樹さんがベルリン・フィルデビュー

6月12日、指揮者の山田和樹さんがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会でデビューを果たした。最終日14日の公演は、NHKが生放送を実施。地元のベルリーナー・モルゲンポスト紙やベルリン=ブランデンブルク放送(rbb)も、同氏のデビューについて報じた。

ドイツ独防衛費、29年に3.5%

(ベルリン 6月24日 時事)ドイツ政府は6月24日、防衛費を国内総生産(GDP)比で、今年の2.4%から2029年までに3.5%へ引き上げる財政計画を閣議決定した。長年頼りとしてきた米国が欧州の安全保障への関与に消極姿勢を示すなか、軍備増強を急ぐ。

ドイツ企業に対してのみ大幅減税

連邦政府は、数十億ユーロ規模の大幅減税を企業に対して実施することを可決。さらに家賃高騰ブレーキを4年間延長することを決定した。企業減税は、2027年まで特別減価償却として投資額の30%が対象となり、法人税は2028年まで15%から10%に引き下げられる。さらに、電気自動車を購入した場合は75%が減価償却として認められる。

インド旅客機墜落で241人死亡

(ニューデリー 6月13日 時事)インド西部アーメダバードで6月12日、地元航空大手エア・インディアが運航する旅客機が市街地に墜落した事故で、同社は乗客乗員242人のうち241人の死亡が確認されたと13日発表した。

ハンガリーLGBTパレードに数万人が参加

(ベルリン 6月29日 時事)東欧ハンガリーの首都ブダペストで6月28日、LGBTなど性的少数者の権利を擁護する毎年恒例のパレードが実施され、少なくとも数万人が参加した。オルバン政権はパレード禁止を打ち出したが、市や主催団体は反発。

6月28日、ブダペストで実施されたLGBTなど性的少数者の権利を擁護するパレード6月28日、ブダペストで実施されたLGBTなど性的少数者の権利を擁護するパレード

日本年金改革法が成立

将来世代の基礎年金底上げ策を柱とする年金制度改革関連法が6月13日の参院本会議で、与党と立憲民主党などの賛成多数により可決、成立した。政府が法案を国会に提出した時点では底上げ策が省かれたが、3党合意により復活した。2029年の年金財政検証で給付水準の大幅低下が見込まれる場合に発動する。

日本都議選で自民が歴史的惨敗

任期満了に伴う東京都議選(定数127)は6月22日投開票された。自民党は獲得議席が21にとどまり、過去最低だった2017年の23を下回る歴史的惨敗を喫した。小池百合子知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が31で、第1党を奪還した。

7月 Juli

ドイツコロナ禍を検証する特別委員会設置

連邦議会は、コロナ禍を総括する特別委員会の設置を決定した。同委員会(Enquete-Kommission)は、将来的に同様のパンデミックが発生した際の教訓を引き出すことを目的とし、14人の連邦議員と14人の専門家で構成される。2027年末までに最終報告書をまとめる予定。

ドイツ「独政府はアフガニスタン人の庇護に責任」

2021年にアフガニスタンでタリバンが復権したのを受け、連邦政府は2000人以上のアフガニスタン人の庇護を約束していたが、移民政策の転換で受け入れが停止。これに対しベルリン行政裁判所は、連邦政府は約束した対象者の庇護を遂行する義務があるとの判決を下した。

ドイツドイツからの強制送還相次ぐ

連邦政府は7月18日、81人のアフガニスタン人を本国に強制送還した。公式発表によると、強制送還されたのはドイツ国内で犯罪歴のある人物となっている。2021年にアフガニスタンでタリバンが政権を掌握してから、ドイツから同様の強制送還が実施されるのは昨年8月に続いて2回目。これに対し、国連難民高等弁務官事務所は「帰国後に過酷な迫害や拷問が待ち受けている危険のある状態への強制送還は即時停止すべき」と勧告。

ドイツ「Made for Germany」を立ち上げ

国内トップ企業の代表がメルツ首相、ラース・クリングバイル財務相(SPD)と会合を持ち、ドイツ経済の再生を図る大規模な投資計画「Made for Germany」を発表した。同計画では、2028年までの3年間に6310億ユーロをドイツに投資し、2年前にリセッション入りした経済状況の転換を目指す。

ドイツAfD「極右過激派の疑い」認定は合法

連邦行政裁判所は、昨年5月にミュンスターの州上級行政裁判所がAfDを「極右過激派の疑いがある」と認定した判決を合法と認めた。AfDは移民の背景を持つドイツ市民に対しての権利縮小を訴えており、「極右過激派の疑いがある」との判決を受けたが、同党はこれを上告。今回の判決により、連邦憲法擁護庁はAfDを引き続き監視対象下に置くことができるように。

ブルガリア21カ国目のユーロ導入へ

(ブリュッセル 7月9日 時事)欧州連合(EU)は7月8日の財務相理事会で、ブルガリアが2026年1月1日に欧州単一通貨ユーロを導入することを最終承認した。ブルガリアの導入により、ユーロ圏は21カ国に拡大。ユーロ導入国が増えるのは、23年1月のクロアチア以来3年ぶり。

カナダG7で3カ国目のパレスチナ国家承認

(ニューヨーク、カイロ 7月31日 時事)カナダのカーニー首相は7月30日、オタワで記者会見し、9月の国連総会でパレスチナを国家承認する意向を示した。フランスと英国に続き、先進7カ国(G7)では3カ国目。イスラエル外務省は声明で、承認はパレスチナのイスラム組織ハマスへの「褒美」になると猛反発した。

日本小中で国語と算数・数学の学力低下

文部科学省は7月14日、小学6年と中学3年を対象に実施した今年度の全国学力・学習状況調査の結果のうち、正答率の全国平均を公表。国語と算数・数学は小中いずれも昨年度を下回った。理科は3年ぶりに実施され、小6は57.3%で前回の63.4%より下落した。

日本自民39議席、公明は過去最低

参院選(7月20日投開票)は同21日、改選124と非改選の欠員1補充を合わせた全125議席が確定した。自民党は選挙区27、比例代表12の計39議席で、公明党は過去最低の8議席。自公で47議席となり、非改選(75)と合わせて参院でも過半数割れとなった。参院選の選挙区で全勝を逃すのは2007年以来18年ぶり。

8月 August

ドイツSPDの連邦憲法裁判事候補が辞退

連邦憲法裁判所裁判官に推薦されていた法律家のフラウケ・ブロジウス=ゲルスドルフ氏が、同判事候補を辞退することを明らかにした。ブロジウス=ゲルスドルフ氏は辞退の理由を書面で表明。第1の理由としてCDU/CSUの協力が得られなかったことを挙げており、連立政権の対立が深刻化することを望まないとしていた。

ドイツドイツがイスラエル武器輸出停止

(ベルリン、イスタンブール 8月8日 時事)メルツ首相は8月8日、イスラエルがガザ市制圧の方針を承認したことを受け、イスラエル向けの武器輸出停止を発表した。中東や欧州、国連からはイスラエルの方針に強い非難が相次いだ。

ドイツ爆破事件でウクライナ人逮捕

(パリ 8月22日 時事)ドイツ検察は8月21日、ロシア産天然ガスを欧州に送る海底パイプライン「ノルドストリーム」が2022年に爆破された事件に絡み、ウクライナ人の男(49)が滞在先のイタリア北部で逮捕されたと発表した。事件の首謀者の一人とみられるという。爆破の犯行声明は出ておらず、ウクライナ政府は関与を否定。

ドイツ難民受け入れ決断から10年

2015年、シリアをはじめとする国々から大勢の難民が地中海経由でドイツを目指す流れが加速した。その後、アンゲラ・メルケル元首相が「われわれにはできる」(Wir schaffen das)のスローガンとともに大規模な難民受け入れを決断してから、8月31日で10年目を迎えた。

スイスプラ生産規制で深い溝

(8月16日 時事)プラスチック汚染を防ぐ条約策定に向け、8月15日までスイスで開かれた国際交渉は、合意に至らず閉幕。EUなどが、世界目標を設けて生産、使用、廃棄の各段階で対策を取るべきだと主張。産油国側が、生産規制に関して「条文は不要」との強硬姿勢を貫いた。

フィリピン日本人2人、射殺される

(マニラ 8月18日 時事)フィリピンの首都マニラで旅行中の日本人男性2人が路上で射殺された事件で、警察当局は8月18日、容疑者の男2人を逮捕した。1人は実行役、もう1人はツアーガイドという。

レバノン国連レバノン軍が26年末で活動終了

(ニューヨーク 8月29日 時事)国連安保理は8月28日、今月末に期限を迎える国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の任期を2026年末まで延長し、27年中に撤退するとの決議を全会一致で採択した。採決後、レバノンのアラファ国連大使は「レバノンと地域の安全と安定のためには存在がいまだ不可欠だ」と懸念。

日本相互関税、最悪は回避

トランプ米大統領が、日本への相互関税に関する大統領令に署名した。日本にとって最悪の事態が回避されたが、8月7日に相互関税が15%に上がり、自動車関税の引き下げは時間を要する。日米交渉の合意内容には曖昧さも残り、日本政府が今後、影響を受ける事業者への説明責任をどう果たすのかも焦点となる。

日本終戦80年、平和の誓い新た

終戦から80年を迎えた8月15日、政府主催の全国戦没者追悼式が日本武道館で開かれた。天皇、皇后両陛下や石破茂首相(当時)、遺族ら4523人が参列。先の大戦により犠牲となった約310万人を悼み、平和への誓いを新たにした。天皇陛下は「戦中・戦後の苦難を語り継ぎ、平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願う」と述べられた。

9月 September

ドイツハーベック前経済相が議員を辞職

前政権で副首相および経済相を務めたロベルト・ハーベック氏(緑の党)が9月1日付で連邦議会議員を辞職した。政界を離れ、デンマークおよび米国で研究職に就き視野を広げたいとしている。議員辞職を受けてXでは惜しむ声が上がり「Robert Habeck」がトレンド入り。フォルザ研究所の調査でも35%が、同氏の政界復帰を願うと回答した。

8月27日、公共放送ZDFのトークショー「Markus Lanz」に出演したハーベック氏8月27日、公共放送ZDFのトークショー「Markus Lanz」に出演したハーベック氏

ドイツ青少年のソーシャルメディア使用禁止に支持

ミュンヘンのifo研究所が発表した「教育バロメーター」で、ドイツ人の大多数が青少年のソーシャルメディア使用禁止を支持していることが明らかになった。ドイツ一国でソーシャルメディア禁止の決定ができるかどうかは不確定で、EU内での議論を深める必要があるとみられている。

ドイツドイツ鉄道に新CEOが就任

パトリック・シュニーダー交通相(CDU)はドイツ鉄道(DB)の新たなCEOにイヴリン・パラ氏を任命。記者会見を行い、問題が山積しているDBの立て直しと信用回復に取り組むことをアピールした。

ドイツボッシュが大規模リストラを発表

自動車業界全体の深刻な低迷を受け、大手自動車部品サプライヤーのボッシュは2030年までに1万3000人の人員削減を実施することを発表した。人員削減の対象となるのは主にドイツ国内の自動車部品部門。シュトゥットガルト=フォイアーバッハなどに拠点を置く同部門では7万人の従業員が勤務している。

米国米保守活動家が撃たれ死亡

(シリコンバレー 9月11日 時事)トランプ米大統領に近く、2024年の大統領選で同氏の返り咲きに貢献したとされる保守活動家のチャーリー・カーク氏(31)が9月10日、銃撃され死亡。西部ユタ州オレムのユタバレー大学でのイベントで、聴衆の前で討論している最中だった。同氏は12年に保守系団体「ターニング・ポイントUSA」を設立した一人。

中国民主派、前回に続きゼロ

(香港 9月15日 時事)9月14日投票のマカオ立法会(議会、定数33)選挙は15日、開票結果が判明し、2021年の前回に続き民主派の獲得議席がゼロになった。香港と同様に「一国二制度」が導入されているマカオでも、中国共産党に反対する勢力を排除する「愛国者による統治」が強化されている。反対派排除を徹底する習近平指導部の姿勢が反映された形で、統制強化が一段と進んでいる。

日本石破首相が退陣表明

石破茂首相(当時)は9月7日、首相官邸で記者会見し、退陣する意向を表明した。7月の参院選で大敗した結果、党内で総裁選前倒しを求める「石破降ろし」の声が拡大し、続投は困難と判断した。首相は2024年10月に就任。直後に衆院解散・総選挙に踏み切ったものの、派閥裏金事件などの影響で与党過半数割れの大敗を喫した。

日本トヨタ「ウーブン・シティ」が始動

トヨタ自動車が建設した実証都市「ウーブン・シティ」(静岡県裾野市)が9月25日、始動した。2020年の構想発表から5年。同社を含む19の企業が参画し、人が暮らす環境下で車の運転や物流の自動化などの実証実験を本格化する。一般来訪者の受け入れは26年度以降を目指す。

10月 Oktober

ドイツ東西ドイツ再統一から35年

1990年の東西ドイツ再統一から35年目に当たる今年、10月3日の統一記念日にザールブリュッケンで記念式典が開かれた。今回フランス大統領としては初めて、エマニュエル・マクロン氏が同式典に来賓として出席。ドイチュラントトレンドが統一記念日に合わせて発表した調査では、「ドイツ統一に満足している」と回答した人が61%、「不満を感じている」は34%だった。ただし、東地域に限ると50%が満足、46%が不満と拮抗している。

ドイツ警察のドローン防衛が可能に

連邦政府は正体不明のドローンに対して、警察の権限を拡大して防衛を可能にする法改正を閣議決定した。近年、ドイツ国内では空港や工業地域などで正体不明のドローン飛行が確認されていた。

ドイツ市民手当を廃止し基礎保障を導入

連邦政府は懸案となっていた市民手当について、罰則強化を盛り込んだ新たな制度に置き換えることを閣議決定した。新制度では、これまでの市民手当に代わって基礎保障(Grundsicherung)が導入される。受給者がジョブセンターの面談に正当な理由なく2回欠席した場合は受給額の30%が減額、3回目以降は100%の減額に。

ドイツメルツ首相の「都市の景観」発言が物議

メルツ首相が移民問題を語る文脈で用いた「都市の景観」(Stadtbild)という言葉が物議。首相は10月14日にブランデンブルク州で行われた記者会見で、今年8月の難民申請件数が前年比で60%減少したことを挙げ、「しかし、われわれはまだ都市の景観においてこの問題を抱えている。そのため連邦内相は、非常に大規模な強制送還の実施に尽力している」と述べた。

ドイツ連立政権が最低賃金引き上げを決定

雇用者連盟と労働組合の代表で構成された「最低賃金委員会」は、現在12.82ユーロの最低賃金を2026年1月から13.90ユーロとし、2027年からはさらに14.60ユーロにするという二段階での引き上げを提唱。連立政権はこれを承認した。連邦統計庁によると、恩恵を受ける人の数は600万人以上を超える見通し。SPDは本来、最低賃金を2026年から15ユーロに引き上げることを求めていた。

ベネズエラノーベル平和賞にマチャド氏

(ロンドン 10月10日 時事)ノルウェーのノーベル賞委員会は10月10日、2025年のノーベル平和賞をベネズエラの民主化運動を率いる反体制派指導者マリア・マチャド氏(58)に授与すると発表した。授賞理由として「ベネズエラ国民の民主的権利を促進するたゆまぬ活動と、独裁体制から民主主義への公正かつ平和的な移行を実現する闘い」に尽力してきたことを挙げた。

英国アンドリュー王子の称号剥奪

(ロンドン 10月31日 時事)英王室は10月30日声明を出し、チャールズ国王が弟アンドリュー王子(65)の「王子」などの称号を剥奪する手続きを取ったと発表した。同氏は、少女への性的虐待で起訴され自殺した米富豪エプスタイン被告との親交や自らの性的虐待疑惑で強い批判を浴びており、国王は異例の厳しい措置に踏み切った。

日本日本人2名にノーベル賞

スウェーデン王立科学アカデミーは10月8日、2025年のノーベル化学賞を、極小の穴が無数に開いた「金属有機構造体(MOF)」を開発した北川進・京都大特別教授(74)ら3氏に授与すると発表した。日本人のノーベル賞は同6日、生理学・医学賞受賞が決まった坂口志文・大阪大特任教授(74)に続き、米国籍取得者を含め30人目。化学賞は6年ぶり9人目となる。

日本大阪・関西万博が閉幕

「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに184日間、大阪市の人工島「夢洲」で開かれた大阪・関西万博が10月13日、閉幕した。55年前の大阪万博(6422万人)に次いで2番目に多い2500万人超が来場した。

日本高市内閣が発足

自民党の高市早苗総裁(64)は10月21日召集の臨時国会で第104代首相に指名された。女性の首相就任は初めて。皇居での首相親任式と閣僚認証式を経て、日本維新の会が「閣外協力」する高市連立内閣が発足。首相は首相官邸で記者会見し「国家国民のため、全力で変化を恐れず果敢に働く」と述べ、「決断と前進の内閣だ」と表明した。

日本安倍氏銃撃初公判へ

奈良市で2022年、安倍晋三元首相を手製銃で殺害したとして、殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判の初公判が10月28日午後から奈良地裁で開かれるのを前に、同市の奈良公園には傍聴を希望し、727人が詰め掛けた。地裁によると、この日の一般傍聴券は32席だった。

11月 November

ドイツマクデブルク事件の裁判が始まる

昨年ザクセン=アンハルト州マクデブルクで起こったクリスマスマーケット襲撃事件の犯人に対する裁判が始まった。犯人のAは検察により6件の殺害と338件の殺害未遂、309件の深刻な傷害で訴えられており、同事件の裁判のためだけにマクデブルクには裁判施設が特設された。共同告訴のために450人分の傍聴席が用意され、厳重警戒体制の下での開廷となった。

マクデブルクの裁判施設今回の裁判のために特設されたマクデブルクの裁判施設

ドイツヴァーゲンクネヒト氏がBSW代表を辞任

ザーラ・ヴァーゲンクネヒト氏は、自ら創設し自身の名前を冠したBSWの党代表を辞任することを発表した。同氏は、党内で「基本価値委員会」を立ち上げてこれを率いていくとしている。党代表は、欧州議会議員のファビオ・デ・マージ氏とアミーラ・モハメド・アリ氏が引き継ぐ見込み。

ドイツ交通インフラに特別追加予算足りず

公共インフラ整備のために打ち出した特別追加予算(Sondervermögen)に対して、「国の半分の整備費用にしかならない」との指摘が上がっている。アゴラのリポートによると、国内の鉄道、道路、地域公共交通機関、自動車産業変革への支援などを総計すると、2030年までに最低3900億ユーロが必要であり、交通インフラに充てられている1840億ユーロでは足りないとしている。

ドイツPHV購入補助へ、EU産優遇も

(ベルリン 11月28日 時事)連立与党は11月28日、低迷している自動車産業のてこ入れ策として、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の購入補助を導入すると発表した。EU内で組み立てられたり、EU産部品を多く使用したりしている車を優遇して補助する仕組みを検討するという。

フランスパリ同時テロ10年で追悼

(パリ 11月14日 時事)2015年11月にフランスの首都パリと郊外で起きたイスラム過激派による同時多発テロから10年を迎えた11月13日、パリ市庁舎そばで犠牲者追悼集会が開かれ、大勢の遺族らが参加した。マクロン大統領は演説で「テロが終わった保証はないが、牙をむく者は容赦しない」と、再発防止を訴えた。

国連ガザ和平計画支持を決議

(ニューヨーク 11月18日 時事)国連安全保障理事会は11月17日、トランプ米大統領が提示したパレスチナ自治区ガザの和平計画を支持する決議案を13カ国の賛成多数で可決した。決議案は米国が提出し、ロシアと中国は棄権した。決議は20項目の和平計画に記載された「国際安定化部隊」(ISF)の派遣などを承認するもの。安保理決議は法的拘束力を持つため、各当事者に計画の履行が迫られる。

日本中国、日本への渡航回避を通知

(北京 11月15日 時事)中国外務省は11月14日、国民に対し日本への渡航を控えるよう呼び掛ける通知を出した。高市早苗首相の台湾有事を巡る発言で「中日の人員交流の雰囲気がひどく悪化した」と理由を説明しており、報復措置とみられる。

日本クマ対策、自衛隊に協力要請

政府は11月14日、クマ被害に関する関係閣僚会議を首相官邸で開き、対策パッケージを取りまとめた。警察によるライフル銃を使用した駆除、自衛隊・警察OBへの協力要請といった緊急対応により、人の生活圏からのクマ排除を強化。ハンターへの手当や箱わななどの調達費を含め、地方自治体への支援を拡充する。

12月 Dezember

ドイツAfD議員の招待は「間違い」

家族経営企業連盟のマリー=クリスティーヌ・オスターマン会長は、10月の初めに同連盟のイベントに極右政党AfDの議員を招いたことを「間違いだった」とする見解を発表した。10月初めの連邦議会議員を招くイベントで、AfDからも事務局長のアルブレヒト・フォンデアハーゲン議員が招かれていた。

ドイツ独警察にドローン防衛隊

(ベルリン 12月3日 時事)ドイツ警察で12月2日、ドローン防衛の専門部隊が発足した。内務省が発表した。不審ドローンの出没で主要空港が閉鎖を余儀なくされる事態が続発しており、ドブリント内相は「ハイブリッド型の新たな脅威に対応する」と強調した。発表によると、妨害電波システムや迎撃ドローンを配備し、空港のほか、鉄道や港湾などの重要インフラ周辺の警戒を強める。専門人材の育成も行う。

ウクライナ和平に向け、領土で譲歩の用意

(パリ 12月12日 時事)ウクライナのゼレンスキー大統領は12月11日、ロシアの侵攻終結に向け、米政権が東部ドネツク州に非武装の「自由経済区」を設ける解決策を提案していると明らかに。フランス紙ルモンド(電子版)によれば、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は譲歩し、非武装地帯を受け入れる用意があると述べた。

オーストラリアシドニーのビーチで銃撃

(シドニー 12月15日 時事)オーストラリア最大都市シドニー近郊のボンダイビーチで12月14日夕(日本時間同日午後)、男2人による銃乱射事件があった。地元警察は、同15日までに被害者15人と容疑者1人の計16人が死亡したと発表した。負傷者は約40人に上った。当局はユダヤ教徒を標的としたテロと認定し、捜査している。アルバニージー首相は15日、銃規制の強化を表明した。

日本流行語大賞は「働いて働いて」

この1年の世相を反映した言葉を選ぶ「2025T&D保険グループ新語・流行語大賞」が12月1日、発表された。年間大賞には、日本初の女性首相となった高市早苗氏の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」が選ばれた。表彰式には高市氏が自ら駆け付け、「皆さまのために貢献したいとの思いがあった」と振り返った。

※日本関連ニュースはすべて時事通信社提供の記事によって構成されています。

最終更新 Freitag, 19 Dezember 2025 12:53
 

ドイツのボードゲームで遊ぼう!

冬のおうち時間を盛り上げる! ドイツのボードゲームで遊ぼう

ドイツでゲーム(Spiel)といえば、電子ゲームより「ボードゲーム」を思い浮かべる人も少なくない。実際、平日の夜や週末に家族や友人でプレイすることも多く、ドイツではボードゲームが余暇の過ごし方の一つとして定着している。本特集では、そんなドイツボードゲームの魅力を徹底解剖する。
(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

参考:1110号「ドイツボードゲームのすすめ」、kulturgutspiel.de「Brettspiele spielen jetzt offiziell Immaterielles Kulturerbe in Deutschland」、brett SPIEL「Brettspiele spielen gehört zum deutschen Kulturerbe」

ドイツのボードゲームの9つの特徴

  1. 対象は子どもから大人までと幅広い
  2. 比較的ルールが単純で分かりやすい
  3. プレイ時間はおよそ15分~2時間程度
  4. 言葉による説明だけではなく、絵や図形が用いられている
  5. 多様性に富んだゲームのテーマ。ただし戦争を題材にしたものは少ない
  6. 運だけで勝てないし、戦略だけでも勝てない
  7. 交渉や協力プレイなど、ほかのプレイヤーとのコミュニケーションが必要
  8. ゲームのパーツに木が使われるなど、素材やデザインに配慮がある
  9. 途中で誰かが脱落することは少なく、全員が最後まで楽しめる

年間ゲーム大賞が生んだドイツ独自の文化

ドイツは、毎年数百のボードゲームが新たに発売されている、言わずと知れたボードゲーム大国。街のおもちゃ屋やボードゲーム専門店はもちろん、書店やカフェなどでボードゲームを見かけることが多いほか、図書館で借りることもできる。家族の集まりや友人たちとの飲み会でも、ボードゲームで盛り上がることが少なくない。今年3月には、ドイツのボードゲーム文化(Brettspiel spielen)がユネスコの無形文化遺産に登録されるなど、ボードゲーム業界はますます活気づいている。

ドイツでボードゲームが独自の発展を遂げ始めたのは1970年代から。第二次世界大戦後のドイツでは、戦争を題材にした米国のシミュレーション・ウォーゲームとは一線を画す、平和的な娯楽としてのボードゲーム文化が育まれていった。1970年代に入ると、書籍や映画と同様に、ボードゲームに対する専門的な批評文化が確立。この批評活動が高まるなか、質の高いゲームを選び出し、広く紹介することを目的に、1979年に「ドイツ年間ゲーム大賞」(Spiel des Jahres)が設立された。

この賞は、評論家やジャーナリストなどの専門家が、過去1年間に発売された中から優秀なゲームを選ぶもので、大賞を受賞したゲームは、ライセンス料を支払うことで「年間ゲーム大賞」のロゴをパッケージに印刷する権利が与えられる。中立の立場を守るためにスポンサーなどは一切付けず、ロゴのライセンス料のみで運営されているため、ゲーム制作者・購入者からの信頼も厚い。

2025年には初めて日本人が受賞!

1980年代を通じて、年間ゲーム大賞の存在はドイツの玩具業界に大きな影響を与え、質の高いボードゲームをつくることへの競争が激化。そして1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ドイツのボードゲームが世界的なブームを巻き起こす。この火付け役となったのが、1995年に発売され、世界中で熱狂的に受け入れられた「カタンの開拓者たち」だ。これによってボードゲームが「ファミリーゲーム」の枠を超え、大人の知的な娯楽として広く認知され、それまでボードゲームになじみのなかった層にまで浸透した。

そして2025年には、日本人デザイナーの林尚志さんが手がけた「ボムバスターズ」がドイツ年間ゲーム大賞を受賞。日本人デザイナーによる初の大賞受賞は、ドイツで育まれたボードゲーム文化が世界各国のクリエイターに影響を与え続けていることを示す出来事として、日本でも大きな話題となった。

「ドイツ年間ゲーム大賞」(Spiel des Jahres)

「考える楽しさ」を味わおう

ドイツのボードゲームは実に多様だが、そのどれにも共通するのが、「人が生きること」や「世の中がどのように動いているか」について、ボードゲームが扱う題材やメカニズムを通して疑似体験できることだろう。プレイヤーたちは、与えられたルールの中で競争や交渉、協力、時にはだまし合いなど、さまざまなコミュニケーションで互いに影響し合い、ストーリーを展開させる。

一方でドイツボードゲームには、戦争を題材にした作品はほとんどなく、直接的にほかのプレイヤーを攻撃したり、脱落させたりするルールも少ない。これは、ドイツが二度の世界大戦で敗戦国となったことや、ナチスの過去との決別と関係があるともいわれている。

ドイツボードゲームの醍醐味は、人と人とが対面してコミュニケーションを行い、「考えること」を共に楽しむことにこそある。パソコンやスマートフォンの画面を通したコミュニケーションが増えている私たちに、ドイツボードゲームは、大切な人との心温まる豊かな時間を提供してくれるだろう。

「ドイツのボードゲーム

この冬に遊びたい! おすすめボードゲーム12選

遊びを通して想像力や記憶力、コミュニケーション力など、さまざまなスキルを鍛えられるボードゲーム。今年の年間ゲーム大賞受賞作をはじめ、ドイツニュースダイジェストのインスタグラム(@pickup_doitsu)のフォロワーの皆さんに教えてもらったおすすめゲームなど、ドイツで人気のボードゲームを厳選してご紹介する。

※アンケート調査にご協力いただいたフォロワーの皆様に、この場をお借りして感謝申し上げます。

ドイツの定番ゲーム

未知の島をめぐる冒険へ Catan
カタンの開拓者たち

カタンの開拓者たち

ドイツのボードゲームブームの火付け役であり、今年で30周年を迎えた大人気シリーズ。プレイヤーが無人島の開拓者となり、資源を集めて国を発展させる戦略型ボードゲーム。六角形の地形が広がる島には資源が眠っており、プレイヤーは道を延ばし、家を建て、村を街へと成長させながら、誰よりも豊かな国を築いていく。サイコロで得られる資源の運と、他プレイヤーとの交渉が勝敗を大きく左右する。最初に10ポイントに到達した者が、新たな島の覇者となる。

おすすめポイント

シンプルなルールながら、運と戦略、そして交渉の妙が絡み合う傑作で思わぬドラマが生まれる。世界中で愛され続ける理由は、「勝つ」だけでなく「つながる」楽しさにあり!

  • ゲームデザイナー:Klaus Teuber
  • 製作年: 1995年
  • 対象年齢: 10歳以上
  • プレイ人数: 3~4人(拡張セットで6人まで)
  • プレイ時間: 約45~90分•
  • www.catan.de(ドイツ語版)
  • www.gp-inc.jp(日本語版)

家族みんなでつくる中世の街 Carcassonne
カルカソンヌ

カルカソンヌ

1枚のタイルから始まる街づくり。道をつなぎ、城を囲み、修道院や草原を広げていくうちに、テーブルの上に中世の景色が少しずつ現れる。プレイヤーは、自分のコマを置いて、旅人、騎士、修道士、農夫として街の発展に関わる。タイルを引くたびに地形が変わり、誰の陣地が広がるか分からない。完成した城や道、修道院の規模によって得点が入り、最終的に最も多くの点を集めたプレイヤーが勝者だ。

おすすめポイント

遊ぶたびに全く違う風景が生まれ、地図を1枚ずつ描くように世界を創っていく楽しさは、カルカソンヌの独自の魅力。ルールがシンプルで、初めてのボードゲームにもぴったり。

  • ゲームデザイナー: Klaus-Jürgen Wrede
  • 製作年: 2000年
  • 対象年齢: 7歳以上
  • プレイ人数: 2~5人
  • プレイ時間: 約35分
  • www.carcassonne.de(ドイツ語版)
  • www.mobius-games.co.jp(日本語版)

じっくり戦略型

チームで爆弾処理に取りかかれ! Bomb Busters
ボムバスターズ

ボムバスターズ

プレイヤーが爆弾処理の専門家になりきり、チームで爆弾を解除する協力型ゲーム。ミッションごとにプレイヤー同士が情報交換をしたり、探知機などの「装備カード」を使ったりしながら、それぞれの手札からペアになる数字を見つけて「コード」を切っていく。間違って違う数字のコードを切ると「起爆ダイヤル」が一つ進み、赤いコードを切ったとたんにドカン! と爆発。赤以外のコードを全て切ったら解除成功だ。

おすすめポイント

初心者向けのトレーニングミッションから音声(公式サイトから視聴可)で指令を受ける難易度の超高い任務まで、ハラハラドキドキの66のミッションに挑戦できる。

  • ゲームデザイナー:林尚志(OKAZU brand)
  • 製作年:2025年
  • 対象年齢:10歳以上
  • プレイ人数:2~5人
  • プレイ時間:20~40分•
  • https://pegasus.de(ドイツ語・英語版)
  • www.engames-s.com(日本語版)

ボムバスターズ

美しいタイルを敷き詰める AZUL
アズール

アズール

プレイヤーがタイル職人として王宮の壁をきれいに装飾するという、華やかで美しいゲーム。テーブル中央のタイル工房から交代でタイルを選び取り、自分の図案ボードに並べていく。工房からタイルがすべて無くなったら、ボードの右側にある王宮の壁にタイルを貼る。これを数ラウンド繰り返し、誰かが横一列にタイルを5枚並べたところでゲーム終了。タイルを貼った個数やデザインによって得点が加算される。

おすすめポイント

ルールが簡単なため初心者でも気軽に遊べる一方、ほかのプレイヤーがどのタイルを欲しがっているかを推測し、時には高度な駆け引きも必要。ペルシャ風のカラフルなタイルが見た目にも楽しい、奥の深いボードゲームだ。

  • ゲームデザイナー:Michael Kiesling
  • 製作年:2017年
  • 対象年齢:8歳以上
  • プレイ人数:2~4人
  • プレイ時間:30〜 45分
  • https://www.planbgames.com

アズール

目指せ!世界一のステンドグラス職人 Sagrada
サグラダ

サグラダ

バルセロナのサグラダ・ファミリアのステンドグラス職人となり、最も美しい窓を創り上げることを目指すゲーム。プレイヤーは毎ターン、半透明のサイコロで表現された色ガラスを二つ選び、自分のステンドグラスにはめ込んでいく。ただし同色や同じ数字を隣接させてはならないなど、配置には細かな制約がある。ゲームが進むにつれて配置はますます難しくなるが、道具カードを使えばガラスを加工したり交換したりできる。10ラウンド終了後、最も得点の高い人が勝利!

おすすめポイント

半透明のサイコロが並んでいく様が美しい、目でも楽しめるゲーム。ルールはシンプルで初心者でも楽しめるが、設計図の難易度調整や豊富なカードの組み合わせにより、何度遊んでも新鮮な体験ができる。

  • ゲームデザイナー:Daryl Andrews、Adrian Adamescu
  • 製作年:2018年
  • 対象年齢:8歳以上
  • プレイ人数:1~4人
  • プレイ時間:30〜45分
  • https://pegasus.de(ドイツ語版)
  • www.engames-s.com(日本語版)

サグラダ

経営を通して人生を体験する AGRICOLA
アグリコラ

アグリコラ

17世紀のヨーロッパを舞台に、プレイヤーたちは農民として自分の農場を経営。資材を集めて家を建てる、家族を増やす、畑を耕すなどして、農場を豊かにしていく。だが、家族が増えるとその分多くの食料が必要になったり、食料の確保ばかりしていると農場発展が進まなかったりと、現実の経済活動のようなジレンマに悩まされる。最終的に、最もバランスがとれた農場をつくったプレイヤーが勝利する。

おすすめポイント

要素が多く、やや複雑な中上級者向けゲームだが、慣れてくるとどんどん知的興奮が高まってくると評判だ。農場経営という架空の設定を通して、実は経営センスが問われている?! 初めての人は、経験者とプレイするのがおすすめ。

子ども・ファミリー向け

わが子のボードゲームデビューに Verfühlt nochmal!
もう1回触ってごらん!

もう1回触ってごらん!

HABA社が手がける、3歳から楽しめる手さぐりゲーム。いたずら好きな妖精たちが部屋を歩き回り、おもちゃを隠してしまった! プレイヤーは、おもちゃが入った「魔法の袋」を触って、カードに描かれた形と同じおもちゃを当てていく。さらに家のおもちゃの形を空白カードに描けば、自分たちのオリジナル問題カードを作ることもでき、遊びの幅がぐっと広がる。たくさん当てられた子が勝ち。

おすすめポイント

ドイツを代表する木製おもちゃメーカーHABAのゲームならではの、優しい色合いと木の手触りが魅力。遊びを通して、感覚や想像力が育つのもポイント。

  • ゲームデザイナー:Heinz Meister
  • 製作年:2019年
  • 対象年齢:3歳以上
  • プレイ人数:2~4人
  • プレイ時間:10分
  • www.haba-play.com

もう1回触ってごらん!

かわいいオバケに惑わされる Geister Treppe
オバケの階段

かわいいオバケに惑わされる

子どもたちがオバケを驚かそうと廃墟の階段を上っていくが、逆に魔法でオバケにされてしまうという、愉快なストーリーのすごろく。サイコロを振ってオバケの目が出たら、誰かのコマに白いオバケを被せる。そのうち全員がオバケになり、ゲームが進むにつれて、どれが自分のコマだったか記憶があやふやに。誰か1人が階段を上りきったところでゲーム終了。オバケを外して現れた、元のコマの持ち主が優勝だ。

おすすめポイント

自分のコマだと思ってゴールしても、オバケの中身を覗いてみたら、違う人のコマ……なんてことも。シンプルなルールながら、記憶力、観察力、そして運の良さが必要で、ゴールするまで勝敗が分からないのもポイント。

  • ゲームデザイナー:Michelle Schanen
  • 製作年:2003年
  • 対象年齢:4歳以上
  • プレイ人数:2~4人
  • プレイ時間:15~30分
  • https://www.dreimagier.de

夜の森で動物探し Die Mäusebande
ネズミの仲間たち

ネズミの仲間たち

年間ゲーム大賞2025の子ども部門でノミネートされたゲームで、歯の妖精が歯痛で夜の間に子どもたちの歯を集められないため、プレイヤー(ネズミ)たちが代わりに歯を集める……というユニークな設定。裏に動物の子どもが描かれた森のカードを並べ、ヒントを頼りに動物たちを探していく。見つけたらその動物の大きさの歯を宝箱へ、失敗したら月を一つずつ減らす。月が全部なくなる前に、協力して全ての歯を集めよう。

おすすめポイント

6歳以上のプレイヤー向けには、悪者と魔法アイテムのカードを追加して、少し難しくすることができる。タイムリミットとなる月の数を少なくすれば、さらに難易度アップ!

  • ゲームデザイナー:Christophe Lauras
  • 製作年:2025年
  • 対象年齢:4歳以上/6歳以上
  • プレイ人数:2~5人
  • プレイ時間:20分
  • www.gamefactory-games.com

ネズミの仲間たち

ズルをしないと勝てない?! Mogel Motte
いかさまゴキブリ

いかさまゴキブリ

ゴキブリやクモ、蚊、アリなどのムシが描かれた8種類のカードを順番に出していき、手札を最初に無くした人が勝ち、という単純なルールのカードゲーム。しかし、唯一「蛾のカード」は捨てることも誰かに渡すこともできない。そのためゲームであがるには、警備員役のプレイヤー(持ち回り)にばれないようにカードを床に落としたり、服の中に隠したりと、いかさまをしなければならないのだ。

おすすめポイント

このゲームの最大の特徴は、一般のゲームでは絶対にしてはいけないことを、ルールとして行えるということ。ズルをすることに慣れていないと、プレイ中はドキドキしっぱなし!

  • ゲームデザイナー:Emely Brand, Lukas Brand
  • 製作年:2011年
  • 対象年齢:7歳以上
  • プレイ人数:3~5人
  • プレイ時間:15~25分
  • https://www.dreimagier.de

少人数〜大勢でも楽しめる

幻想的な雰囲気に包まれて Waldschatten Spiel
森の影あそび

森の影あそび

本物のキャンドルに火を灯して暗い森の中でかくれんぼをする、幻想的なクリスマスの雰囲気にぴったりなゲーム。オニを1人決め、残りはこびとになって木の陰に隠れる。キャンドルに火をつけて部屋を暗くしたら、オニはサイコロを振ってキャンドルを動かし、こびとを探す。こびとたちは影の中を移動し、全員同じ木の下に集まったらこびとチームの勝ち。オニがこびと全員を照らして動けなくすれば、オニの勝ちだ。

おすすめポイント

まるで本当に森の中にいるようなワクワク感を味わいながら、子どもたちは、風や光など、自然への好奇心を掻き立てられる。キャンドルで火傷しないよう、オニ役は大人がやるのが◎。

  • ゲームデザイナー:Walter Kraul
  • 製作年:1985年
  • 対象年齢:5歳以上(表面)、7歳以上(裏面)
  • プレイ人数:2~8人
  • プレイ時間:30分
  • https://spielzeug-kraul.de

森の影あそび

大人数にぴったりのパーティーゲーム Just One
ジャスト・ワン

ジャスト・ワン

2019年の「ドイツ年間ゲーム大賞」を受賞した、協力型の言葉当てクイズゲーム。各プレイヤーの手元にフリップとペンを置き、回答者を1人決めてお題カードを選択。ほかのプレイヤーはフリップにヒントとなる言葉を書くが、ほかの人と同じ言葉を書いてしまうとヒントを発表できなくなる。回答者は発表されたヒントから連想して言葉を当てる。プレイヤー間の勝敗が無く、みんなでハイスコアを目指すのが特徴だ。

おすすめポイント

ほかの人と同じヒントを書いてはいけないため、誰とも被らないようなクリエイティブな言葉のチョイスを考えるのが面白い。参加人数が多いほど「ヒントの被り」が起こりやすいので、大人数でわいわい楽しもう。

  • ゲームデザイナー:Ludovic Roudy, Bruno Sautter
  • 製作年:2018年
  • 対象年齢:8歳以上
  • プレイ人数:3~7人
  • プレイ時間:20分
  • https://asmodee.de
最終更新 Dienstag, 09 Dezember 2025 12:17
 
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Schlitzer Burgen Weihnacht

Burgen Weihnacht

1991年以来、古城の街シュリッツのクリスマスマーケットでは、「世界最大のキャンドル」が灯ります。高さ42メートルの主塔が巨大な赤い布で包まれ、頂には何百もの電球からなる炎が輝きます。歴史的な広場を見下ろすようにして立つこのキャンドルは、城のあるシュリッツの風景と美しく調和。クリスマスシーズンは塔へはエレベーターで昇ることができ、人気の展望スポットです。

2025年の開催日

  • 11月29日(土)~30日(日)
  • 12月5日(金)~7日(日)
  • 12月13日(土)~14日(日)
  • 12月20日(土)~21日(日)

Burgenstadt Schlitz
Burgenstadt Schlitz
https://www.schlitz.de/tourismus/feste-maerkte/burgenweihnacht/

 

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