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東京フィルハーモニー交響楽団ヨーロッパ・ツアー2025 フィルハーモニー・ベルリンに東京フィルがやって来る!

東京フィルハーモニー交響楽団は、1911年に創立された現存する日本最古のオーケストラ。長い歴史と伝統、そして革新によって国内外で評価されてきた同楽団が、10年ぶりにヨーロッパにやって来る。その初日を飾るのが、世界最高峰のコンサートホールとして名高いフィルハーモニー・ベルリンだ。東京フィルがヨーロッパの地でどんなサウンドを響かせるのか、出演者の声と共にご紹介。(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

東京フィルハーモニー交響楽団

世界的マエストロとのツアー チョン・ミョンフンと東京フィル

ツアー全公演を指揮するのは、東京フィル名誉音楽監督で2027年より世界最高峰の歌劇場ミラノ・スカラ座の音楽監督にも就任予定のチョン・ミョンフン。2001年に東京フィルの公演に初めて登場して以来、25年にわたって楽団と関係を深めてきた世界的マエストロだ。7カ国8都市の名門ホールをめぐる今回のヨーロッパ・ツアー開催は、「東京フィルという素晴らしいオーケストラをもっと世界に知らしめたい」というチョン・ミョンフンの熱い思いによって実現した。

さらに東京フィルは、ツアーのモットーに「音楽がつなぐ、分断を越えた未来へ―響き合う世界のために」を掲げ、文化的外交の担い手として、さらに海外でのプレゼンスを高めていくことを目指している。

チョン・ミョンフンと東京フィル

クラシック初心者でも親しみやすいドラマ溢れるプログラム

今回の演目は、チョン・ミョンフンが得意なレパートリーの中から、ドラマ性があり、幅広く愛されてきた作品がピックアップされている。ベルリン公演のメインは、シェイクスピアの悲劇を題材にした、プロコフィエフ作曲のバレエ音楽「ロメオとジュリエット」。さらに、現代版の「ロメオとジュリエット」としても知られるミュージカル「ウエスト・サイド物語」よりシンフォニック・ダンス、そしてシンフォニック・ジャズの代名詞である「ラプソディ・イン・ブルー」が演奏される。

バレエ、ミュージカル、ジャズと、ジャンルを問わずに演奏をしてきた東京フィルならではの演目で、クラシック初心者も親しみやすいプログラムになっている。

ジャズとクラシックの懸け橋ピアニスト 小曽根真が登場!

ピアニスト 小曽根真

「ラプソディ・イン・ブルー」で登場するのは、ピアニストの小曽根真。ニューヨークを拠点にジャズとクラシックの両分野で活躍する同氏は、独特な存在感を放ち、唯一無二の演奏で世界中の人々を魅了している。今回の演奏会に際して、小曽根は次のように語る。「『ラプソディ・イン・ブルー』はジャズピアニストにとっては、オーケストラと一体となれる最高のレパートリー。聴衆の皆様や素晴らしいホールの響きにインスパイアされ、毎回違ったアドリブ演奏が生まれるのもこの作品の醍醐味です」。

また、かつて共演した世界的指揮者アラン・ギルバートは、小曽根について「ガーシュインの名作を完璧に解釈し、毎回新たな境地へと導いてくれる」と述べ、「マコトの『ラプソディ・イン・ブルー』は決定版」とも語っている。クラシック音楽の聖地ベルリンでこの名作にどんな魔法がかかるのか、注目の公演になること間違いなしだ。

東京フィルハーモニー交響楽団
ヨーロッパ・ツアー2025 ベルリン公演

ピアニスト 小曽根真

日時: 10月28日(火)20:00
会場: フィルハーモニー・ベルリン
指揮: チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)
ピアノ: 小曽根 真
演奏: 東京フィルハーモニー交響楽団
曲目: バーンスタイン/「ウエスト・サイド物語」よりシンフォニック・ダンス
ガーシュウィン/ラプソディー・イン・ブルー(ピアノ:小曽根 真)
プロコフィエフ/バレエ音楽「ロメオとジュリエット」より
料金: 85€/80€/75€/70€/65€/60€/50€
学生割引あり(一律25€)

チケット販売
Konzertdirektion Hans Adler
月~土9:00~20:00、日・祝日14:00~20:00
Tel:030-826-4727

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東京フィルでは、ヨーロッパ・ツアー2025に関連してクラウドファンディングを実施中!

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事実は小説より奇なり 英国・ドイツで本当に起こった20の珍事件

私たちの世界は、フィクション顔負けの奇妙で驚くべき出来事があふれている。ましてや、異なる歴史や文化を持つ国に暮らしていれば、その驚きもひとしおだ。本特集では、英国とドイツで実際に起きた珍事件を、歴史的な出来事から現代の時事ニュースまで幅広く紹介する。予測不可能で奇妙な展開から、思わず笑ってしまうユニークなエピソードまで、どれも一筋縄ではいかない実話ばかり。きっとあなたも誰かに話したくなるはず! (文:英国・ドイツニュースダイジェスト編集部)

歴史的ミステリー

1 UK英国 リチャード3世の遺骨が
500年後に駐車場で見つかる

薔薇戦争(1455-1485)時代の王であるリチャード3世は、二人の幼い甥をロンドン塔に幽閉したり、シェイクスピアの「リチャード三世」による否定的な描写もあったりで、冷酷で残忍なイメージが強くもたれている。その遺体は500年以上行方不明だったが、なんと2012年に英中部レスター市内の駐車場の地下から発見された。遺骨の分析から、頭部に複数の致命傷を負っていたことや、実際に脊椎側弯症を患っていたことが明らかに。15年にはレスター大聖堂に埋葬された。遺骨の発見に尽力したのは歴史家フィリッパ・ラングレー氏。同氏はリチャード3世を支持し、その治世や評価を擁護する歴史家や研究者を指すリカーディアン(Richardian)の 一人だ。

参考:リチャード3世協会ウェブサイト

現在はレスター大聖堂に眠るリチャード3世現在はレスター大聖堂に眠るリチャード3世

2 UK英国 英国版ロズウェル事件!?
1980年に起きたUFO遭遇

1980年12月、英東部サフォークのレンドルシャムの森で数人の米空軍兵が、金属のような外観で色とりどりの光を放つ謎の物体を目撃。不規則な動きをする光が、数日にわたり森の中を移動したり空に浮かんだりする様子も報告された。地面には着陸の痕跡が残され、放射線反応も記録されたという。現場近くにはNATOの軍用基地があり、当時は米空軍が駐留していた。この事件については、当時中佐だったチャールズ・ホルト氏による公式報告書「ホルト覚書」が英米両政府に提出されている。「英国版ロズウェル事件」と呼ばれるほど有名だが、真相は今も明らかになっていない。現在レンドルシャムの森には、UFO目撃があったとされる場所をたどる散策ルートがある。

参考:BBC「Rendlesham Forest UFO: Are we any closer to the truth 40 years on?」

レンドルシャムの森レンドルシャムの森

ウッドブリッジの旧空軍基地ウッドブリッジの旧空軍基地

3 UK英国 犬が次々に飛び降りる
謎の多いオーバートン橋

スコットランド西部、ダンバートン近郊のオーバートン橋は、美しい19世紀の石造りのアーチ橋。しかし1950年代から、300匹近い犬がこの橋から飛び降りて命を落とすという奇妙な現象が報告されてきた。この現象が注目を集めるようになったのは2000年代以降。犬たちは全て橋の同じ側の、特定の箇所から飛び降りるという。しかも、突然興奮した様子で橋の欄干に向かって走り出し、ためらうことなくジャンプしてしまうのだそう。命を落とすケースも少なくなく、「犬の自殺橋」という異名まで付けられた。地元では超常現象との関連を疑う声もあるが、動物行動学者たちは橋の下に野生のミンクの巣があり、その強い臭いが犬の本能を刺激している可能性を指摘している。

参考:Independent「 ‘Dog Suicide Bridge’: Why do so many pets keep leaping into a Scottish gorge?」

オーバートン橋オーバートン橋

4 UK英国 切り裂きジャックの正体
21世紀になって明らかに?

「切り裂きジャック」は、署名入りの犯行予告を新聞社に送りつけるなどした劇場型犯罪の元祖。1888年8月31日~11月9日までの約2カ月間に、分かっているだけでも5人の売春婦が狙われ、特定の臓器を取り除かれた死体が発見された。事件現場はいずれもロンドン東部のホワイトチャペル周辺。厳重な捜査網が敷かれたにもかかわらず、犯人は捕まっていない。臓器摘出の跡などから、犯人は医者だったのではないかといわれているが、真相は謎に包まれたままだ。しかし2019年、ある被害者の遺体のそばにあったショールでDNA鑑定が行われた。それによると、すでに被疑者の1人として浮上していた当時23歳のポーランド人理容師アーロン・コスミンスキーが犯人である可能性が高いという。

参考:Metro「The Polish barber who could have been Jack the Ripper」

ホワイトチャペル周辺であった切り裂きジャックの犯行と思われる七つの現場ホワイトチャペル周辺であった切り裂きジャックの犯行と思われる七つの現場

5 Germanyドイツ ライン川の城に眠る少女の伝説
イディリア・ダッブの悲劇

ライン川中流域には数々の伝説が息づくが、そのなかでも19世紀に実際に起きたとされる少女の悲劇が、今なお人々の心を捉えている。1851年、スコットランド出身の17歳、イディリア・ダッブは家族とドイツを旅行中、城跡のスケッチを行うために一人で高さ約20メートルの塔に登ったが、観光用に設けられていた木製階段が崩落して取り残された。助けを呼ぶも誰にも気づかれず、塔の上で4日間、脱水症状によって(と推測されている)命を落とした。その遺骨と彼女が孤独の中で死の間際まで書いていた日記が発見されたのは9年後の1860年、塔の修復作業中のことだった。現在、城では150本以上のろうそくを灯す夜の「キャンドル・ツアー」が開催されており、イディリアの物語は訪れる人々の胸に静かに刻まれている。

参考:Rheinland-Pfalz Tourismus GmbH「Das Schicksal der Idilia Dubb Geheimnisvolle Burggeschichten vom Rhein」

ライン川の城

6 Germanyドイツ デュッセルドルフの吸血鬼
ペーター・キュルテン

1930年5月24日、「デュッセルドルフの吸血鬼」と呼ばれて世間を震撼させていた連続殺人犯が逮捕された。その人物は、当時46歳のペーター・キュルテン。少なくとも9人を殺害し、その血を飲んだといわれている。幼少期から暴力と貧困に満ちた環境で育ったキュルテンは、放火、暴行、強姦、窃盗、横領など多数の前科を持っていたが、殺人犯としてはノーマークだった。彼は常にスーツの手入れ用のブラシを持ち歩き、魅力的で教養のある人物のように見えたため、被害者らも油断したという。さらに犯行時には化粧をしており、生存者の証言から、警察は犯人がキュルテンよりも10~20歳年下だと推測していた。最終的に、別の犯罪で逮捕されたのをきっかけに連続殺人を自白し、死刑判決を受けた。

参考:WEB.DE「Er trinkt das Blut seiner Opfer – und wird nur durch einen Zufall gefasst」

「デュッセルドルフの吸血鬼」と呼ばれたペーター・キュルテン(1883-1931)「デュッセルドルフの吸血鬼」と呼ばれたペーター・キュルテン(1883-1931)

7 Germanyドイツ 世界を騒がせた
「ヒトラーの日記」贋作事件

1983年4月、雑誌「シュテルン」は「ヒトラーの日記」とされる記事を発表したことで、世界から注目を浴びた。1970年代、シュテルンの記者でナチス研究をしていたゲルト・ハイデマンはイラストレーターのコンラッド・クジャウと知り合った。クジャウによれば、戦争末期に飛行機墜落によって失われたと思われていたヒトラーの個人的所有物が、戦後に東ドイツで発見されたという。その中にあったとされる「ヒトラーの日記」は、クジャウを通じて高値で取引された。しかし間もなくして、日記がクジャウによる贋作だったことが発覚。実際は演説や教科書からの引用が多く、歴史修正主義的な内容だったという。ハイデマンは懲役4年8カ月、クジャウには懲役4年6カ月が言い渡された。

参考:NDR「Vor 40 Jahren: Urteile nach Skandal um die "Hitler-Tagebücher"」

雑誌「シュテルン」の記者会見で話すゲルト・ハイデマン雑誌「シュテルン」の記者会見で話すゲルト・ハイデマン

世間を驚かせた犯罪

8 UK英国 ゴヤの絵を盗んだ
テレビ受信料反対派

1961年8月21日、ロンドンのナショナル・ギャラリーでスペインの巨匠ゴヤが1812~14年に描いた「ウェリントン公爵の肖像」が盗まれた。警察は当初、国際的な犯罪組織の関与を疑い、犯人はなかなか特定されなかった。だが事件から4年後の1965年5月、定年退職した元バス運転手ケンプトン・バントンが、絵画をバーミンガム駅の手荷物預かり所に預け、その預かり証を英タブロイド紙「デイリー・ミラー」に郵送。6週間後には自ら警察に出頭した。裁判でバントンは、絵画を返却する代わりに政府が14万ポンドを寄付し、テレビ受信料を払えない人々の支援に充てるべきだと訴えた。絵画が無傷で戻されたことや、行為が抗議の一環とみなされたことから、美術品の窃盗罪は成立せず、額縁のみの窃盗で有罪となり、3カ月の実刑判決が下された。

参考:The National Gallery「Hugh Courts' papers relating to the trial of Kempton Bunton」、BBC「The bus driver who confessed to stealing a Goya masterpiece」

9 UK英国 高齢者の熟練犯罪集団が
高級宝飾品で強盗

中世以来、宝飾を扱う店舗や職人の工房が軒を連ねるロンドンの高級宝飾品店街ハットン・ガーデン。その88〜 90番地にある地下の貸金庫に強盗が入ったのは、2015年のイースター4連休中のことだった。犯人たちは連休を利用して、厚さ180センチのコンクリート壁に産業用ドリルで穴を開けて金庫室に侵入。貸金庫から金品を奪い去った。CCTV映像には作業用ヘルメットをかぶった男たちが手際よく金品を運び出す様子が記録されていた。細部に至るまで計画された、この大胆な犯罪による被害総額はおよそ1400万ポンド。しかも実行犯の6人は最高齢76歳を含む高齢の熟練犯罪集団だった。グループはその後逮捕されたが、回収された盗難品は約430万ポンド分にとどまっている。この事件は世間に大きなインパクトを与え、「Hatton Garden: The Heist」(2016年)や「The Hatton Garden Job」(2017年)など複数の映画の題材にもなった。

参考:Tavexbullion「The Infamous Hatton Garden Safe Deposit Heist」

右手が事件のあった貸金庫会社の建物右手が事件のあった貸金庫会社の建物

10 UK英国 5人で5000万ポンド以上
英国最大の給付金詐欺

イングランドとウェールズで、ブルガリア国籍の5人が2016〜2021年の間に約5390万ポンドを不正受給していたとして有罪を認めた。偽の雇用証明や賃貸契約書、給与明細、医師の診断書などを駆使し、数百件の生活保護申請を偽装。犯人らは、これらの偽書類を含む「申請パック」を自宅に保管し、第三者のための虚偽申請を助ける仕組みまで構築していた。犯人宅からは現金、高級車、ブランド品が押収された。労働年金省(DWP)とクラウン検察局(CPS)の合同捜査により摘発。政府は給付金詐欺対策を強化しており、2022/23年度には約180億ポンドの不正支出を防止。今後5年間でさらに6億ポンド規模の削減を見込んでいる。

参考:GOV.UK「Fraudsters behind £53.9 million benefits scam brought to justice in country’s largest benefit fraud case」

11 Germanyドイツ 「クッキーモンスター」が犯人!?
黄金ビスケット盗難事件

2013年1月、ドイツ・ハノーファーでビスケット「ライプニッツ」でおなじみのバールセン社から、重さ約20キロの金メッキ製巨大ビスケット像が何者かによって盗まれた。事件後、犯人は「クッキーモンスター」のコスプレ写真とともに慈善団体への寄付を要求。バールセン社は恐喝には応じなかったが、約2週間後に像はハノーファー大学の前に再び姿を現した。犯人は不明のままだが、この事件でバールセン社は国内メディアに600回近く取り上げられ、広告効果は170万ユーロ相当とも。一方で同社は慈善団体への寄付を実施し、結果的に騒動は社会貢献に転じた。現在、黄金のビスケット像は再び元の場所に戻され、監視カメラに守られており、この奇想天外な事件は今もなお語り継がれている。

参考:stern「Keks da, alles gut?」、「Krümelmonster beschert Bahlsen Millionenwert」

黄金ビスケット盗難事件

12 Germanyドイツ 警察官が事故車から
チーズ180キロをねこばば

2019年9月の高速道路の事故現場。現場を確保すべき立場にあった警察官が、なんと横転したトラックからチェダーチーズ約180キロを持ち帰るという前代未聞の行動に出た。この警官は引き揚げ業者に声をかけ、20キロ入りのチーズパック9個(総額約5000ユーロ相当)を要求。うち数個は警察署に、残りは家族や知人に分けたとみられる。本人は「チーズは廃棄される運命だった」と釈明し、「自分はチェダーを食べない」とまで主張したが、ラインラント=プファルツ州の裁判所はこれを一蹴。「制服と武器を所持したまま、任務中に窃盗を働いた」として、州警察の信用を著しく損なったと判断。刑事訴訟と罰金に加え、最終的に懲戒免職が確定した。

参考:LTO「Polizist fliegt raus wegen Käse-Klau」

チーズ180キロをねこばば

13 Germanyドイツ 古民家で40万マルクを発見
逆に罰金1万ユーロが科せられた夫婦

とある夫婦が、ヘッセン州ヘルプシュタインにある古民家を購入。元の所有者は亡くなっており、大掛かりな片付けと改修が必要だった。そして2023年12月、夫婦はベッドサイドテーブルの中にコーヒーとお菓子の包み紙に入った現金を発見する。その額なんと38万6680マルク、約20万ユーロに相当する大金だった。夫婦はそれを改修費用に充てようと考え、虚偽の紛失届を提出。その後、現金が全く関係のない場所で見つかったとして自分たちのものにする計画だったが、不信に思った警察当局が捜査を開始。結局、裁判に発展し、夫婦は大金を手に入れるどころか1万ユーロの罰金が科せられたのだった。裁判所によると、最初から警察に届け出るべきだったという。

参考:hessenschau「Geld bei Haus-Renovierung entdeckt: Ehepaar findet 400.000 D-Mark - und wird verurteilt」

古民家で40万マルクを発見

珍裁判・法律エピソード

14 UK英国 無許可でレモネードを売った
5歳少女に150ポンドの罰金!?

2017年7月、ロンドン東部の通り角で、小さな手作りのレモネード屋を開いた5歳の少女が、まさかの犯罪者扱いを受ける騒動があった。音楽フェスティバルが開催された週末、マイル・エンドの住宅街で1杯50ペンスでレモネードを売っていた少女に、タワーハムレッツ区の取締官が接近。「無許可営業」として150ポンドの罰金を言い渡した。父によると、娘は「人を笑顔にしたい」との思いで屋台を開いたが、娘は泣きながら「悪いことをした」としがみついてきたという。その後、世論の批判を受けた同区は謝罪声明を出し、「担当者には常識ある判断を求めている。今回の対応は誤りだった」とし、罰金は即座に取り消された。

参考:The Guardian「Girl, 5, fined £150 for running homemade lemonade stall」

レモネード販売

15 UK英国 「プリングルズはポテチじゃない」
その主張は認められず課税対象に

英国で販売されているスナック菓子「プリングルズ」が、付加価値税(VAT)の課税対象に当たるかどうかが争点となった訴訟で、控訴裁判所は2009年5月「課税対象とするのが妥当」との判断を示した。そもそも英国では、基本的な食品は付加価値税が0%だが、スナックなどの嗜好品には20%かかる。一方で、軽食になるようなケーキや一部のビスケット類は0%。このケースの発端は2008年7月、高等法院が製造元の訴えを支持し、プリングルズを「ジャガイモの含有率が42%と比較的低く、成形された粉末生地から作られることなどを理由に、ケーキやビスケットに類似する」と判断したこと。これを受け、課税対象外との判決が一度は下された。しかし、税務当局がこの判決を不服として控訴。市場関係者の間では「合理的な線引き」との評価がある一方、「食品分類の基準には依然として曖昧さが残る」との声もある。

参考:BCC「Pringles lose Appeal Court case」

プリングルズはポテチじゃない

16 UK英国 ボールが家に直撃!
クリケット場 vs 新住民の裁判

イングランド中部、ノッティンガムシャー州リンビーにあるクリケット場。その隣に新築住宅を購入したミラー夫妻は、試合中に飛んでくるボールが庭や窓に当たり、安心して暮らせないとして、地元クリケットクラブの代表ジャクソン氏を相手取り提訴した。一審のノッティンガム高等法院はプレー差止めの仮処分を出したが、1977年の控訴審でロンドンの控訴院はこれを覆す。クリケットは地域社会にとって有益な活動であり、完全な禁止は行き過ぎだとして、クラブの過失や権利侵害は認定しつつも、損害賠償の支払いのみに留めた。この裁判は、「後から引っ越してきた住民にも静穏な生活を求める権利はあるのか?」という争点とともに、個人の権利と地域の伝統とのバランスを問う例として、現在も引用されている。

参考:LawTeacher「Miller v Jackson – 1977」

クリケット場 vs 新住民の裁判

17 Germanyドイツ まずい料理は誰の責任?
ザウアーブラーテン事件

ザクセン州アウアーバッハ地方裁判所は2002年、あるレストラン客が「ザウアーブラーテン」(ドイツ風酢煮込み肉料理)の味に不満を訴えて支払いを拒否した事件で、料理の出来が契約通りであったことを証明する責任は店側にあるとする判決を下した。事件の発端は、被告となった客が13.80マルクのザウアーブラーテンを注文し、提供された料理のソースが豚肉のローストソースのように「小麦粉っぽくて味が薄い」と感じたこと。会計では98.50マルクのうち85マルクだけ支払い、残りの料理代金の支払いを拒否した。レストラン側は未払い分を求めて提訴。しかし裁判所は、店側が料理が「契約通り適切に調理・提供された」ことを明確に証明できなかったとして、訴えを退けた。

参考:urteile.news「Sauerbraten-Fall: Zur Beweislastverteilung bei der Frage der Schmackhaftigkeit eines in einem Restaurant servierten Sauerbratens」

ザウアーブラーテン事件

18 Germanyドイツ 野鳥を守るため
猫に数カ月の外出禁止令

2022年7月9日〜8月31日まで、ドイツ南部ヴァルドルフ市で、絶滅危惧種カンムリヒバリの保護を目的に、猫の外出が禁止された。ライン=ネッカー郡によると、市内にはわずか3組の繁殖ペアしかおらず、特に飛べないひなが猫に襲われる危険が高いため、種の存続のための厳格な措置を取ることにしたという。違反すれば500ユーロの罰金、鳥を傷つけた場合は最大5万ユーロが科されるルールだった。ただし、カンムリヒバリの生息地を通らない猫や、リード付きでの散歩は例外とされ、猫を禁止区域外の親族に預けることも認められた。ヴァルドルフ市長は「現実的でない」と懸念を示したが、市として郡からの命令を覆すことはできなかったという。野生動物の保護とペットの自由をめぐる議論は今後も続きそうだ。

参考:Der Spiegel「Kreis verhängt monatelange Ausgangssperre für Katzen – zum Schutz der Haubenlerche」

猫に数カ月の外出禁止令

19 Germanyドイツ 連邦最高裁判所が判決
「ビルケンシュトックは芸術ではない」

2025年2月、連邦最高裁判所は世界的サンダルメーカー「ビルケンシュトック」の商品は「芸術ではない」との判決を下した。同社は自社のサンダルは芸術であることを主張し、定番モデルの類似品を販売する3社を訴えていた。本件を担当した弁護士は、「同社のサンダルは、サンダル界のポルシェのようなものだ」と発言。創始者のカール・ビルケンシュトック氏は存命で、もしビルケンシュトックが芸術と認められれば、死後70年までは著作権で保護されることになるはずだった。一方で、意匠権(物品や建物のデザインの知的財産権)は20年で失効する。同社はすでに意匠権を失っており、今回訴えられていた3社は販売継続が認められた。

参考:WDR「Bundesgerichtshof: Birkenstock-Sandalen sind keine Kunst」

ビルケンシュトックは芸術ではない

20 Germanyドイツ 恋のおまじない効かず
「魔女」を相手取って裁判

2005年、元恋人との復縁を望む女性が「魔女」に恋のおまじないを依頼。女性は1000ユーロ以上を支払い、魔女は数カ月にわたって毎月の満月の前に「愛の儀式」を実施した。ところが、いつまでたっても恋人は戻ってこない。失望した女性は、魔女を自称する人物を相手取り、返金を求めて訴訟を起こすことに。女性は「魔女がそのおまじないが成功することを保証した」と主張したものの、魔女はこれを否定。儀式を遂行しただけで、必ずしも効果が得られるわけではないことも警告したと述べた。さらに、自分は本来は魔力を持っていることも主張したという。ミュンヘン地方裁判所は魔女の魔力は認められないと判断し、依頼主には1000ユーロが返金されることになった。

参考:JURios「Hokus Pokus Zivilrecht: Hexe hat keinen Anspruch auf Bezahlung eines Liebeszaubers」

「魔女」を相手取って裁判

 

中世からの伝統技術を今に伝える ドイツ木組みの家街道

ロマンティック街道やメルヘン街道をはじめ、ドイツではテーマごとにさまざまな観光ルートが整備されている。本特集で取り上げるのは、ドイツの伝統的な木組みの建物が立ち並ぶ「ドイツ木組みの家街道」。中世からの街並みが残っていたり、木組みの家が現代の生活に馴染んでいたり、この街道はありとあらゆる表情を見せてくれる。この木組みの家の魅力に光を当てるとともに、木組みの家街道上にあるぜひ訪れてみたいエリアをピックアップ! (文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

ドイツ木組みの家街道

昔も今も木組みの家が魅力的な理由

ドイツらしい建物といえば、美しい木組みの家が挙げられるだろう。木組みは、モミやトウヒなどの木材を水平もしくは斜めに組んで骨格を造り、その隙間を粘土やレンガで埋めて壁を造る建築技術だ。地域ごとに特徴はあるものの、ドイツ全土や周辺の国々に見られる伝統建築である。

木組みの家が建てられるようになったのは14世紀ごろ。ドイツには森林が多く存在し、粘土も豊富であり、木組みの家に必要な資材が手に入りやすかった。人口増加に伴い、できるだけ容易で安価に建てられる住宅への需要を背景にして、木組みの家は各地で建てられるようになったのである。一方で、安価な粘土は洗練された建築資材とはいえず、貧しさと結びつくものでもあった。そのため、人々は壁に色を塗ったり絵を描いたりすることで、人から貧しいと思われないようにしたのだという。さらに木彫りや碑文を添えるなど、木組みの家の装飾はいっそう創造的で豊かになっていく。

19世紀になっても農村部では木組みの家が主流だったが、その後の近代化によって衰退する。しかし天然素材を使っていることや壁の蓄熱性など、サステナビリティの観点から、昨今あらためて木組みの家が注目されている。木組みの家を改築したり新しく建てたり、その技術はしっかりと継承されており、現在ドイツにはおよそ250万棟の木組みの家がある。

「ドイツ木組みの家街道」(Deutsche Fachwerkstraße)は、そんな木組みの家を未来へとつなげていくために、100以上の都市が協力して組んだ観光ルートだ。次項目では、木組みの家街道のおすすめスポットをご紹介。地域ごとの多様性が反映された木組みの家を見に出かけよう。

参考:Planet Wissen「Handwerk: Fachwerkhäuser」、『ドイツの家と町並み図鑑』(エクスナレッジ)、CAPAROL「Zauberhaftes Fachwerk」、ninasfachwerkliebe.de

木組みの家のタイプは3つ

ニーダーザクセン様式

ゾーストのHaus zur RoseゾーストのHaus zur Rose

北ドイツで広く見られるタイプ。柱の間隔が短い。梁の色は黒、壁の色は白がスタンダード。ユニークな装飾が施されている建物も多い。

フランケン様式

ローテンブルクのマリエン薬局ローテンブルクのマリエン薬局

斜めに重なる聖アンデレ十字架、円形のロゼットなど、遊び心のある装飾が特徴。アレマン様式と共に、梁は赤や茶色を基調としていることが多い。

アレマン様式

エスリンゲンの旧市庁舎エスリンゲンの旧市庁舎

明確な構造線と柱の間隔が広いのが特徴の一つ。木組みの家街道では「ネッカー川~黒い森・ボーデン湖」、アルザス地方やスイスでもよく見られる。

北から南まで100都市以上!木組みの家街道へ出かけよう

1990年に開通したドイツ木組みの家街道は、北から南まで100都市以上が参加し、八つのルートで構成されている。鉄道や車での旅はもちろん、サイクリングロードが整備されているところも多い。近隣の人は週末に少しずつ訪ねてみるのも◎。今回は選りすぐりの都市を取り上げる。

参考:Deutsche Fachwerkstraße、Reisereporter「Die Deutsche Fachwerkstraße führt entlang der schönsten Häuser」、WEB.DE「Das sind die schönsten Altstädte Deutschlands」

ドイツ木組みの家街道マップ

木組みの家の名所ぞろい エルベ川~ハルツ地方 19都市/全長1083km

最も美しいといわれる木組みの家街道。何世紀も前に建てられた木組みの家々を至る所で見ることができる。所有者、住民、自治体それぞれが木組みの家の価値を理解し、愛情を持って歴史的建築物の保存に力を入れている。

クヴェトリンブルク
Quedlinburg

クヴェトリンブルク

ハルツ地方のクヴェトリンブルクは1000年以上の歴史があり、かつてハンザ同盟にも加盟していた。80ヘクタールに2000軒以上の木組みの家が立ち並び、ユネスコ世界遺産にも登録されている必見スポットだ。

アインベック
Einbeck

アインベック

アインベックの木組みの建物は、色鮮やかな彫刻やロゼットの装飾が特徴的。また古くからビールの街としても知られ、写真のようなアーチ型の入口のある木組みの建物でビールが醸造されていた。

フランケン様式を堪能できる ヴェスターヴァルト~マイン川 10都市/全長182km

フランケン様式の木組みの家が多く立ち並ぶこのルートでは、史跡やかつての公国の居城、交易地点、クナイプで有名な温泉エリアなどを巡る。フランクフルト郊外にある人気野外博物館「Neu-Anspach Hessenpark」もこのルートに入っている。

リンブルク
Limburg an der Lahn

リンブルク

木組みの家が所狭しと並ぶ曲がりくねったリンブルクの旧市街は、このルートのハイライト。特にフィッシュマルクトは撮影スポットとして人気。七つの尖塔を持つリンブルク大聖堂(St. Georgs-Dom)もお見逃しなく。

イトシュタイン
Idstein

イトシュタイン

見どころの一つは、1615年に建てられたフランケン様式のキリンガーハウス(写真左)で、現在は市立博物館になっている。黒と青と黄色を基調とした「傾いた家」や、1170年からこの街を見守る「魔女の塔」にも行ってみよう。

中世の繁栄が垣間見える ライン川~マイン川・オーデンヴァルト 12都市/全長235km

ヘッセン州南部を巡るこのコースでは、1450~1550年頃に建てられた後期ゴシック様式の木組みの家を中心に見ることができる。多様な装飾や精巧にデザインされた窓など、中世における都市の繁栄が垣間見える。

ミヒェルシュタット
Michelstadt

ミヒェルシュタット

この街で見逃せない木組みの建物は、1484年に建てられた後期ゴシック様式の市庁舎。かつては裁判所として機能し、面取りされた切妻屋根と美しい出窓が中世独特の雰囲気を醸し出している。

ミルテンベルク
Miltenberg

ミルテンベルク

「マイン川の真珠」ともいわれるミルテンベルク。市場広場「Schnatterloch」は、色鮮やかな木組みの家が並び、まるで映画のセットのよう。ランドマークのミルテンブルク城も訪れて。

南西ドイツの多様性が楽しめる ネッカー川~黒い森・ボーデン湖 31都市/全長798km

南西ドイツを周遊するこのルートでは、それぞれの魅力溢れる31の都市で、フランケン様式とアレマン様式の木組みの建物を堪能しよう。また肥沃な農地とブドウ畑、広大な森林や渓谷……と田園風景と自然を楽しめるのもポイントだ。

ショルンドルフ
Schorndorf

ショルンドルフ

ダイムラーの生誕地として知られるショルンドルフは、ヴュルテンベルク地方で最も古い街の一つで、ほとんどの建物が築300年以上を誇る。写真は、同地で最も美しい木組みの家といわれている「Dr. Palm'sche Apotheke」。

ゲンゲンバッハ
Gengenbach

ゲンゲンバッハ

黒い森(シュヴァルツヴァルト)で最も美しい木組み造りの街の一つ。1905年に街並み保存のための都市計画条例が制定され、古くから景観を守ってきた。クリスマス時期は市庁舎が世界最大のアドベントカレンダーになることでも知られる。

歴史を受け継ぎ、未来へ住み継ぐプロジェクト現代の「暮らしの場」としての木組みの家

木組みの家のような歴史的建物を「暮らしの場」として選ぶには、ロマンだけでは解決できない課題と、専門的な知識が必要となる。その実現を支えているのが、南ニーダーザクセン州の5都市が連携して行っているプロジェクト「Wohnraum5Eck」だ。歴史を受け継ぎつつ、現代の住まいに求められる快適性をどう叶えているのだろうか。

参考:Wohnraum5Eck、Stadt Einbeck「Wohnraum5Eck」

伝統住宅を未来へつなぐ「Wohnraum5Eck」とは?

数百年の歴史を持つ木組みの家は、現代のパッシブハウス設計に通じる要素を備え、環境負荷を抑えながら快適な室内環境を実現できる点でも高く評価されている。一方で、構造の歪みや現行の建築基準との整合といった問題もある。そうしたなか、ニーダーザクセン州南部で進められている「Wohnraum5Eck」プロジェクトが、伝統的な木組みの家を住まいとして再生する動きを後押ししている。

プロジェクトの中核となるのが、住宅情報プラットフォーム「Hausbörse」だ。家屋の所有者は改修準備が整った物件を簡単に掲載でき、購入希望者は自分の理想に近い物件を探すことができる。これにより、売り手と買い手のマッチングが円滑に進み、歴史的建物の再活用が促されているのだ。 数百年の歴史を持つ木組みの家は、現代のパッシブハウス設計に通じる要素を備え、環境負荷を抑えながら快適な室内環境を実現できる点でも高く評価されている。一方で、構造の歪みや現行の建築基準との整合といった問題もある。そうしたなか、ニーダーザクセン州南部で進められている「Wohnraum5Eck」プロジェクトが、伝統的な木組みの家を住まいとして再生する動きを後押ししている。

安心して始められる改修と暮らしの魅力

木組みの家の改修には、構造補強や伝統工法、断熱性の向上、補助金の申請など、専門的な知識と手続きが不可欠となる。Wohnraum5Eckでは、地域の専門家によるネットワークを通じて、最新情報や具体的な支援を一元的に提供しており、初心者でも安心して改修に取り組める環境が整えられている。また木組みの家に住む魅力の一つが、その多くが歴史地区や街の中心部に位置していること。商店や学校、公共交通といった生活インフラも徒歩圏内にそろっていることが多く、都市的な利便性を享受できるのだ。

木組みの家に住むことは、単なる「古い家の所有」ではない。過去と現代をつなぐ責任と楽しみを引き受け、専門家の助けを借りながら改修を計画し、地域のコミュニティに根ざして暮らしていくことを意味する。Wohnraum5Eckのようなネットワークを活用すれば、個性的な住まいと持続可能な生活が手に入るだけでなく、地域文化の継承にも貢献できる。歴史に学び、現代技術を取り入れ、地域とつながりながら、自分だけの物語を紡ぐ。Fachwerk5Eckの取り組みは、その理想を現実に変えるために背中を押してくれるだろう。

Fachwerk5Eckのリノベーション事例 ❶

ドゥーダーシュタット
建築年:1835年

この住宅改修の大きな特徴は、使っていなかった屋根裏部屋を断熱改修したことで、空間のゆとりと機能性が飛躍的に向上したことにある。建物は3階建て・全6部屋で構成され、平均天井高2.50メートルを確保。上層階はメゾネット構造でつながっており、立体的で開放感のある居住空間を実現させた。最上階からは庭を望むことができ、光や景色を暮らしに取り込む工夫が施されている。また、1階にはバリアフリー仕様のオープンキッチン付きリビング・ダイニングを設置し、テラスや庭へもスムーズに出られるなど、生活動線に配慮した設計となっている。改修期間は約2年。伝統的な構造を活かしつつ、現代の住まいに求められる要素を高水準で備えた好例である。

ドゥーダーシュタット

Fachwerk5Eckのリノベーション事例 ❷

アインベック
建築年:1758年

長らく放置されていた建物を、約2年半をかけて現代的な住環境へとよみがえらせた事例。まずは古い内装や断熱材の撤去から始まり、建築家や職人が連携して構造や素材を見極めつつ、慎重に再構築が進められた。台所では梁の腐食が見つかり、亜麻仁油による保護処理が施された。床材やタイルなどは可能な限り保存され、建物の趣を残しつつ耐久性も確保。断熱性やエネルギー効率を高めるために、最新の断熱材と高性能窓を導入したほか、バリアフリー対応の浴室や、新しい階段・ドアなども、元の建物の個性と調和するよう設計された。さらに、ドイツ復興金融公庫の補助金により省エネ改修も実現。伝統と快適性、そして持続可能性を兼ね備えた再生プロジェクトとなった。

アインベック

 
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木組みの家が立ち並ぶ中世都市歴史の中を歩くディンケルスビュール

フランケン地方に位置するディンケルスビュールは、ロマンティック街道の要所として知られ、中世の街並みが美しく残る街。そんなディンケルスビュールを知らなかったという人も多いかもしれない。知ればきっと訪れてみたくなる、この街の魅力をご紹介する。(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

歴史の中を歩くディンケルスビュール

中世へタイムトラベル

中世へタイムトラベル

ディンケルスビュールへの入口は、重厚な塔と門。旧市街にはカラフルな木組みの家がいくつも立ち並び、曲がりくねった路地を歩けば、まるで中世へタイムトラベルしたかのような気分に。欧州屈指の美しさを誇る旧市街は、美術史家たちから「ドイツで最も保存状態のいい中世都市の一つ」として評価されている。ロマンチックな街角や活気溢れる市場など、さまざまな場所を探索してみよう。

それぞれの季節に魅力いっぱい

それぞれの季節に魅力いっぱい

年間を通じて楽しめるのは、ディンケルスビュールの魅力の一つ。春は街中が花々に包まれ、7月は歴史的なお祭り「Kinderzeche」、9月には遺産が公開される「Dinkelsbühler Denkmaltag」、11月は魚の収穫祭「Fisch-Erntewoche」が1週間にわたって開催、そしてアドベントシーズンは街全体がクリスマス一色に光り輝く。そのほかイベント情報は、公式ホームページをチェック!

800年の歴史が息づく街

800年の歴史が息づく街

要塞の壁に住んでいるといわれる「壁の精霊」(Mauergeist)を探したり、博物館「歴史の家」(Haus der Geschichte)で魔女裁判について学んだり、800年の歴史が息づくディンケルスビュールならではのアクティビティも人気だ。歴史がそのまま現代につながっているこの場所は、まるで街全体が野外博物館のよう。自分の足で歩いて、その歴史を五感いっぱいに体感しに行こう。

INFO

Touristik Service Dinkelsbühl

Touristik Service Dinkelsbühl

Altrathausplatz 14, 91550 Dinkelsbühl
Tel: 09851-902-440
Email: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
www.tourismus-dinkelsbuehl.de

 

ワーホリ・留学以外の選択肢シリーズ 1 実技と理論をじっくり学べる
ドイツの職業訓練
「アウスビルドゥング」

アウスビルドゥング

ドイツに住んでみたい……。そんな思いを抱く人の多くは、まずワーキングホリデー制度や語学留学を思い浮かべるかもしれない。しかしドイツにはそれ以外にも、職業訓練やボランティア活動、オペア留学、フリーランスなど、さまざまな形で滞在する方法がある。本シリーズでは、そんなドイツにおけるさまざまな滞在方法や制度、その実体験をご紹介。第1回は、実技と理論をバランスよく学びながら手に職を付けることができる、ドイツの職業訓練制度「アウスビルドゥング」に注目してみよう。 (文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

参考:www.ausbildung.de、Bundesagentur für Arbeit「Situation am Ausbildungsmarkt 2023/24」

アウスビルドゥングとは?

アウスビルドゥング(Ausbildung)とは、ドイツにおける職業訓練制度であり、特定の職業に必要な知識と技能を体系的に学ぶもの。約330の国家認定職業が存在し、修了時には試験を経て正式な職業資格を取得することができる。学術的な一般教育とは異なり、実務に直結した専門教育である点が特徴。2023/24年度の統計では、43万2000人がアウスビルドゥングを行っており、外国人研修生の割合も年々増加している。修了後は、研修先から仕事のオファーを受けることも少なくなく、さらに大学進学や専門的な継続教育を通じてキャリアアップを図ることも可能だ。

主な形式として、デュアル型(Duale Ausbildung)、学校型(Schulische Ausbildung)、およびデュアル・スタディ(Duales Studium)の三種が存在する。デュアル型では、訓練生は企業での実務経験と職業学校での理論教育を交互に受ける。学校型は専門学校での学習を中心に、一部実習が組み込まれる形式であり、特に福祉・医療・IT分野に多い。デュアル・スタディは大学での学術教育と企業での実務経験を組み合わせた制度であり、学士号と職業資格を同時に取得できる。

訓練期間は形式と職種により異なるが、デュアル型と学校型はいずれも通常2〜3年半程度。デュアル・スタディは3〜4年程度が一般的であり、より高い学術的要件が求められる。報酬面では、デュアル型とデュアル・スタディでは企業から月数百ユーロの給与が支払われる。一方、学校型では多くの場合、報酬は支給されず、学費が発生することもある。また、子育てや健康上の理由がある場合にはパートタイムでの訓練(Teilzeit-Ausbildung)も認められており、その場合は通常より6〜12カ月長くなる。

アウスビルドゥングで人気の職業

女性

男性

アウスビルドゥングを受ける人の年齢層

アウスビルドゥングを受ける人の年齢層

アウスビルドゥングを受ける外国人の割合

アウスビルドゥングを受ける外国人の割合

ドイツで手に職を付ける!私たちのアウスビルドゥング奮闘記

なぜ職業訓練を選んだのか?言葉や文化の壁はどう乗り越えたのか? その先のキャリアは?実際にデュアル型アウスビルドゥングを経験した日本人の方々に、そのリアルな体験を伺った。

30歳からスタート
物流のプロを目指して

お話を聞いた人

M.Sさん

ドイツ人パートナーとの同居を機に渡独し、ノイスにて物流・ロジスティクスのアウスビルドゥングを修了。現在は、サプライチェーンコーディネーターとして日系企業に勤務。

Qアウスビルドゥングを選んだ理由は?

ドイツで使える資格が欲しいと思ったことと、ドイツ語の語学力向上のため。その背景には、ドイツ人と結婚し、ドイツ人家族の一員としてここで生活するという決意がありました。ロジスティクスの職業訓練を選んだのは、渡独する直前まで勤めていた会社が、港湾サービスを提供する海運会社だったことから、この業界に興味を持っていたためです。

Qどのように準備を進めましたか?

まずは語学学校に通い、A1からC1のコースを修了しました。文書でのやり取りが多い商業分野では、最低B2レベルのドイツ語が推奨されているようですが、実際にはアウスビルドゥングを始めた当初、C1レベルを持ってしても授業についていくことが非常に難しく感じました。

C1合格後は、アウスビルドゥングの求人をウェブサイトでひたすら探して応募するという段階へ。応募した日系企業で面接を受けさせてもらえることになり、やる気だけでも伝えるために短期インターンシップを自ら提案しました。惜しくもコロナ禍により、1週間の予定だったインターンシップは3日間で打ち切りになりましたが、後日、採用通知を受け取ることができました。

口頭面接試験用の勉強道具口頭面接試験用の勉強道具

Q研修先での仕事内容や、職業学校での授業内容は?

1~2年目は、週2回学校へ通い、そのほかの平日はフルタイムで勤務。3年目は週に1回のみ学校へ行き、研修先への出勤日と労働時間が増えました。研修先では、1年目は海上貨物部の輸入部と輸出部、2年目は航空貨物部の輸入部で従事。3年目は、倉庫部にて二つの顧客を専門に任されることに。職場にはアウスビルドゥング担当者が2人いて、相談があればいつでも気軽に尋ねることができ、1年ごとにフィードバックを設ける時間もありました。

職業学校では、ロジスティクスや国際輸送、規制や保険など幅広い内容を学びました。定期的に試験や課題があるため、プライベートな時間はほぼ勉強していた記憶があります。

Qアウスビルドゥングで楽しかったことは?

社会へ出て約10年後、思いもよらず再び学生として新しいことを学べる状況に喜びを感じました。またアウスビルドゥングを通じ、友人が増えたこともうれしかったです。印象に残っているのは、校外学習の一環として、ドイツとオランダの職業学校生を対象とした物流競技大会に学校代表者として参加したこと。1泊2日の長期戦で、一つの課題にグループで取り組み、最終的にプロの審査員たちに判定され勝者を決めてもらいます。

大会で出された課題は、ドイツからシンガポールへの産業機器の輸送を、効率性かつサステナビリティに着目し、費用、輸送距離、納期に合わせた移動時間、ボリューム、二酸化炭素排出量なども計算した上で、ベストな輸送法を2ページの資料と共に4分間でプレゼンするというものでした。このシチュエーションは、まさに新規のお客さんへのプロジェクト提案を疑似体験するためのものです。結果としてチームで優勝し、トロフィーと表彰状を持って帰ることができました。

オーバーハウゼンでの遠足の様子職業学校のクラスメートと先生で卒業直前に訪れた、オーバーハウゼンでの遠足の様子

Q反対に、大変だったことは?

文化の違いで驚くことは山ほどありましたが、アウスビルドゥングに着目して言うと、日本とは授業体系が全く違い、発言しなければ授業態度が悪いとみなされることでしょうか。研修生は自ら考え、いくつもの答えを導き出し、時にはグループディスカッションをします。日本と違う授業スタイルに感銘を受けると共に、慣れるまでにずいぶん時間がかかりました。

Qこれからアウスビルドゥングをする人へのアドバイス

アウスビルドゥングは専門性に着目しているため、始める前に、本当にその分野を学びたいのか真剣に考えることが大切だと思います。あとは忍耐と努力が、最後の試験まで導いてくれるのではないでしょうか。長期でかつ給料が非常に少ないため、事前に十分な貯金をしておくことと、周りの人の応援や理解は大きな助けになります。トライアンドエラー、自分を信じて前へ進んでください。

研修先からもらったお花就業最終日に研修先からもらったお花

ソーセージが好きだから
毎朝3時起きでも頑張れる

お話を聞いた人

Kさん

ソーセージが好きすぎて渡独。ワーキングホリデー制度を利用してドイツに1年間滞在した後、2024年から肉屋でのアウスビルドゥングを開始。

Qアウスビルドゥングを選んだ理由は?

もともとソーセージを食べることが大好きで、ソーセージの本場であるドイツに関心を持ちました。ワーキングホリデー制度で渡独した1年間は、ドイツ語を学びながらオクトーバーフェストやクリスマスマーケットなど、ドイツ各地のおいしいソーセージを堪能。しかし、ドイツで働くつもりはなく、1年たったらすっぱり日本に帰るつもりでした。

そんななか、ドイツで知り合った日本人の方からアウスビルドゥングのことを聞き、それがきっかけで自分でもこの制度を調べ始めることに。ソーセージが好きでドイツに来たので、もしアウスビルドゥングをやるなら肉屋以外に選択肢はありませんでした。

研修先のまかない、ソーセージとフライドポテト研修先のまかない

Qどのように準備を進めましたか?

アウスビルドゥングについて調べると、ビザ取得のためにB1レベルの語学証明が必要だと分かり、ドイツ語の勉強に力を入れました。外国人局にアウスビルドゥング用の滞在許可証を申請し、実際に企業と契約を結ぶまで4カ月ほどかかったと思います。

研修先探しでは、インターネットの求人サイトからもたくさん応募しましたが、ネットの求人は返信が来るまでに1週間〜1カ月かかることも多く、なかなかテンポ良くやり取りが進みませんでした。今の研修先は、直接訪問した後にメールで履歴書を送りました。その後、2日間のProbearbeit(試用労働)をして、本採用に至りました。

Q研修先での仕事内容や、職業学校での授業内容は?

研修先

  • 豚の半身の解体
  • 鶏の解体
  • 豚肉・牛肉を分類する作業
  • 清掃など

職業学校

  • 数学
  • ドイツ語
  • 英語
  • 栄養学
  • 調理実習:実際の肉屋で提供されるような肉料理をグループワークで作ります
  • 体育:周りは16〜20歳の子がメインなので、体育はついて行くのに必死です

Q1日のスケジュールや生活リズムを教えてください。

研修先
3:00 起床
4:30 家を出る
5:00 出勤
7:00&9:00 小休憩
12:00 昼休憩(1時間)
残りの業務を片付け、清掃して終了
14:00 買い物
15:00 帰宅
シャワー・家事など
18:00 自由時間
19:00 就寝
職業学校
3:00 起床、テスト勉強など
6:00 家を出る
7:45 1時間目開始
(朝食休憩1回・小休憩1回)
12:45 午後の授業開始
16:00 授業終了(終了時間は曜日による)
帰宅、テスト勉強や家事など
18:00 自由時間
19:00 就寝

Qアウスビルドゥングで楽しいことや、大変なことは?

楽しいことは、何といってもおいしいソーセージが食べられることです。また、自分の仕事を褒めてもらえたり、自分で自分の変化に気づくことができたとき、うれしいです。あるとき上司が、数あるソーセージやサラミを見分けるのが難しいと感じていた私に、製品を覚えられるようにとオリジナルのノートを作ってくれました。このノートは今でも宝物です。

大変だったのは、やはり言葉の壁。特に最初の1カ月は「大変だった」という一言では言い表せないほど辛かったです。上司や同僚と目を合わせて話すと緊張してしまい、余計に話せなくなってしまうことも……。アウスビルドゥング1年目が終わった今でも緊張しますが、少しずつ慣れてきています。あとは基本的に肉体労働なので、ものすごく疲れます。肉体・精神の両方が追い込まれるなかで、どちらにも筋肉がムキムキついていくのを日々感じています(笑)。

研修先にて、肉を解体する様子研修先にて、肉を解体する様子

Qアウスビルドゥング後の進路は?

いつか自分のお店を開きたいです。

Qこれからアウスビルドゥングをする人へのアドバイス

ドイツ語に関しては、資格取得のための勉強だけではなく、ネイティブとの日常会話も織り交ぜてやっておくべきだったなと強く思います。私は元来の豆腐メンタルということもあり、1年目は辛い日も多々ありました。でも、アウスビルドゥングを通して根性がついたと思うので、並大抵のことには怖気付かなくなってきた気がします。軽い気持ちでおすすめできる選択肢ではありませんが、興味のある人は飛び込んでみても良いのではないでしょうか!

アウスビルドゥング開始までのステップ

アウスビルドゥングを始めるまでには、語学や企業への応募など、さまざまな準備が必要となる。ここではデュアル型アウスビルドゥングを参考に、研修開始までのステップを確認しよう。

STEP 1
情報収集と研修先探し

  • 自分の興味、適性、将来のビジョンを考え、希望する職業の研修先を探す
  • 各企業の応募条件や開始時期を確認。デュアル型の開始時期は通常8月または9月
  • 求められる学歴や語学力、身体的条件などを調べる

STEP 2
応募書類の作成

  • Lebenslauf(履歴書)
    学歴、職歴、スキルを簡潔に記載
  • Anschreiben(志望動機書)
    なぜこの職業か、なぜこの企業かを書く
  • Zeugnisse(証明書類)
    卒業証明書、語学証明(B1以上推奨)などを添付• 必要に応じて翻訳・認証を取得

STEP 3
研修先への応募、面接

  • 希望する研修先へ応募する。メールや電話での問い合わせのほか、直接訪問して応募書類を渡すのも有効
  • 面接や適性試験に招待されることもある
  • 企業によっては短期インターンを義務付けられることもある

STEP 4
訓練契約の締結

  • 採用が決まったら「Ausbildungsvertrag」(訓練契約)を結ぶ
  • 訓練期間、勤務日と休日、給与、退職条件など、契約内容をしっかり確認する

STEP 5
ビザ・生活準備(ドイツ国籍以外の場合)

  • アウスビルドゥング用の滞在許可証(Ausbildungsvisum)を申請
  • 必要な書類:訓練契約書、語学証明、賃貸契約書、健康保険の加入証明など
  • 住居、保険、銀行口座などの生活基盤を整える
  • 手続きには数カ月かかることもあるため、早めに準備する
 

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