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ドイツのおすすめボードゲーム - おうち時間がもっと盛り上がる!

おうち時間がもっと盛り上がる! 本場ドイツのボードゲームで遊ぼう

ドイツは実は、ボードゲーム大国であることをご存知だろうか? 実際、ゲーム(Spiel)という言葉から、電子ゲームより「ボードゲーム」を思い浮かべるドイツ人も少なくない。平日の夜や週末に家族でプレイしたり、友人同士で「Spielabend(ゲームナイト)」を企画したりと、ドイツではボードゲームが余暇の過ごし方の一つとして定着している。そんなドイツボードゲームの魅力を徹底解剖。新たな趣味に、ボードゲームを始めてみるのはいかが?(Text:編集部)

参考:SPLENDID RESEARCH「Studie: Deutschland spielt Gesellschaftsspiele」、 staista「Ein Brettspiel kommt selten allein」、有田隆也(名古屋大学)「ドイツボードゲームの教育利用の試み–考える喜びを知り生きる力に結び付ける–」、ドイツ年間ゲーム大賞:www.spiel-des-jahres.de

ドイツボードゲームの9つの特徴

  • ❶ 対象は子どもから大人までと幅広い
  • ❷ 比較的ルールが単純で分かりやすい
  • ❸ プレイ時間は およそ15分~2時間程度
  • ❹ 言葉による説明ではなく、絵や図形が用いられている
  • ❺ 多様性に富んだゲームのテーマ。ただし戦争を題材にしたものは少ない
  • ❻ 運だけで勝てないし、戦略だけでも勝てない
  • ❼ 交渉や協力プレイなど、ほかのプレイヤーとのコミュニケーションが必要
  • ❽ ゲームのパーツに木が使われるなど、素材やデザインに配慮がある
  • ❾ 途中で誰かが脱落することは少なく、全員が最後まで楽しめる

ドイツはボードゲーム大国

ドイツは、毎年数百のボードゲームが新たに発売されている、言わずと知れたボードゲーム大国。街のおもちゃ屋やボードゲーム専門店はもちろん、書店やカフェなどでもボードゲームを見かけることが多い。また、親戚の集まりや友人たちとの飲み会で、誰かがボードゲームを引っ張り出してきて、みんなで盛り上がることもしばしばだ。

実際、SPLENDID RESEARCHによる2017年の市場調査では、18~69歳の回答者1024人のうち、29%のドイツ人が「頻繁に」、33%が「たまに」ボードゲームで遊ぶと回答。世代別に見ると、最も頻繁にボードゲームで遊んでいるのは30~39歳(38%)。60~69歳の回答者でも、5人に1人がよくプレイすると答えた。さらに興味深いのは、回答者のうち39%が、これまでにボードゲームに白熱しすぎてわれを失ったことがあると告白。ドイツ人のボードゲームへの熱量が伝わってくる。

また、ボードゲームは家族間のコミュニケーション手段としても人気だ。親がボードゲームにかけるお金は、1年あたり平均64ユーロで、これはおよそ2~3個のボードゲームを買える金額。2017年にYouGovが行った調査では、2000人のドイツ人を対象に「自分の家(世帯)にいくつボードゲームがあるか」という質問がされ、31%が「1~5個」、29%が「6~10個」と回答。「1個も持っていない」という世帯はわずか2%で、ボードゲーム文化がいかに生活の中に浸透しているかが明らかになった。しかし、今日のようなドイツのボードゲーム文化が普及したのは1970年代ごろからと言われ、その歴史はまだ比較的浅い。

各家庭のボードゲームの保持数

批評から生まれたゲーム大賞

ドイツに限らず「ボードゲームの歴史」という点から見れば、最も古いものは紀元前3500年ころのエジプトで遊ばれていた「セネト」というゲームで、マス目のある盤上で2人のプレイヤーがレースを行うものだった。それらは世界各地に広がって独自の発展を遂げ、紀元前700年ごろには中国で囲碁が誕生。6世紀にインドで生まれたチャトランガは西洋でチェス、日本で将棋へと発展した。7世紀ごろの日本には、すでに「すごろく」もあったという。ボードゲームで扱われるテーマは時代とともに変化していき、20世紀ごろからは、ボード上で軍事作戦や不動産経営などを行うシミュレーションゲームも登場した。

ドイツでは、新聞やラジオなどで本や映画が盛んに批評されているのと同様に、ボードゲームについての批評もあったそう。その延長として1979年に設立された「ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)」が、その後のドイツボードゲームの発展に大きく寄与した。この賞は、評論家やジャーナリストなどの専門家が、過去1年間に発売された中から優秀なゲームを選ぶもので、大賞を受賞したゲームは、ライセンス料を支払うことで「年間ゲーム大賞」のロゴをパッケージに印刷する権利が与えられる。中立の立場を守るためにスポンサーなどは一切付けず、ロゴのライセンス料のみで運営されているため、ゲーム制作者・購入者からの信頼も厚い。この賞の存在によって、ドイツの玩具業界は質の高いボードゲームをつくることに力を入れ、「ドイツボードゲーム」という独自のジャンルを発展させた。

ゲーム大賞2019年のドイツ年間ゲーム大賞を受賞した「ジャスト・ワン」制作者のザウター氏(左)と、グリュッタース文化メディア担当大臣(右)

「考える楽しさ」を味わおう

ドイツのボードゲームは非常に多様性に富んでいるが、そのどれにも共通するのが、「人が生きること」や「世の中がどのように動いているか」について、ボードゲームが扱う題材やメカニズムを通して疑似体験できることだろう。プレイヤーたちは、与えられたルールの中で競争や交渉、協力、時にはだまし合いなど、さまざまなコミュニケーションで互いに影響し合い、ストーリーを展開させる。ゲームとして楽しみつつ、そのなかで行われる思考やコミュニケーションは、現実社会で私たちが行っているものに限りなく近いのだ。

一方でドイツボードゲームには、戦争を題材にしたものはほとんどなく、直接的にほかのプレイヤーを攻撃したり、脱落させたりするルールも少ない。これは、ドイツが2度の世界大戦で敗戦国となったことや、ナチスの過去との決別とも関係があると言われ、1950年代にアメリカでシミュレーション・ウォーゲームが誕生したときも、ドイツでの人気は高くなかった。ゲームのテーマや目的を「戦争」や「争いごと」以・・外にするという暗黙の了解もまた、誰もが楽しめるような工夫あふれるゲームづくりへとつながったのだ。

ドイツボードゲームはもともとコンピューターとの相性が良く、最近ではオンライン化も進められたことで、より幅広いファンを獲得しつつある。しかしドイツボードゲームの醍醐味は、人と人とが対面してコミュニケーションを行い、「考えること」をともに楽しむことにこそある。普段の生活が慌ただしく、パソコンや携帯電話の画面を通したコミュニケーションが増えている私たちに、ドイツボードゲームは、大切な人との心温まる豊かな時間を提供してくれるだろう。

子どもから大人まで夢中 おすすめドイツボードゲーム6選

遊びを通して想像力や記憶力、コミュニケーション力など、さまざまなスキルを鍛えられるボードゲーム。人と人が1つのテーブルを囲み、面と向かって遊べるので、子どもの教育にはもちろんのこと、家族や友人との絆を深める役割も。今回は、家族みんなで遊べるものから、友人たちとわいわい盛り上がれるものまで、ドイツでも特に人気のボードゲームを厳選してご紹介しよう。

買う前にここをチェック! ❶対象年齢 ❷プレイ人数 ❸プレイ時間

幻想的な雰囲気に包まれて Waldschatten Spiel 森の影あそび

Waldschatten Spiel
Waldschatten Spiel

本物のキャンドルに火を灯して暗い森の中でかくれんぼをする、幻想的なクリスマスの雰囲気にぴったりなゲーム。オニを1人決め、残りはこびとになって木の陰に隠れる。キャンドルに火をつけて部屋を暗くしたら、オニはサイコロを振ってキャンドルを動かし、こびとを探す。こびとたちは影の中を移動し、全員同じ木の下に集まったらこびとチームの勝ち。オニがこびと全員を照らして動けなくすれば、オニの勝ちだ。

おすすめポイント
まるで本当に森の中にいるようなワクワク感を味わいながら、子どもたちは、風や光など、自然への好奇心を掻き立てられる。キャンドルで火傷しないよう、オニ役は大人がやるのが◎。

ゲームデザイナー:Walter Kraul
製作年:1985年
対象年齢:5歳以上(表面)、7歳以上(裏面)
プレイ人数:2~8人
プレイ時間:30分
https://spielzeug-kraul.de

かわいいオバケに惑わされる Geister Treppe オバケの階段

Geister Treppe

子どもたちがオバケを驚かそうと廃墟の階段を上っていくが、逆に魔法でオバケにされてしまうという、愉快なストーリーのすごろく。サイコロを振ってオバケの目が出たら、誰かのコマに白いオバケを被せる。そのうち全員がオバケになり、ゲームが進むにつれて、どれが自分のコマだったか記憶があやふやに。誰か1人が階段を上りきったところでゲーム終了。オバケを外して現れた、元のコマの持ち主が優勝だ。

おすすめポイント
自分のコマだと思ってゴールしても、オバケの中身を覗いてみたら、違う人のコマ……なんてことも。シンプルなルールながら、記憶力、観察力、そして運の良さが必要で、ゴールするまで勝敗が分からないのもポイント。

ゲームデザイナー:Michelle Schanen
製作年:2003年
対象年齢:4歳以上
プレイ人数:2~4人
プレイ時間:15~30分
https://www.dreimagier.de

ズルをしないと勝てない?! Mogel Motte いかさまゴキブリ

Mogel Motte

ゴキブリやクモ、蚊、アリなどのムシが描かれた8種類のカードを順番に出していき、手札を最初に無くした人が勝ち、という単純なルールのカードゲーム。しかし、唯一「蛾のカード」は捨てることも誰かに渡すこともできない。そのためゲームであがるには、警備員役のプレイヤー(持ち回り)にばれないようにカードを床に落としたり、服の中に隠したりと、いかさまをしなければならないのだ。

おすすめポイント
このゲームの最大の特徴は、一般のゲームでは絶対にしてはいけないことを、ルールとして行えるということ。ズルをすることに慣れていないと、プレイ中はドキドキしっぱなし!

ゲームデザイナー:Emely Brand, Lukas Brand
製作年:2011年
対象年齢:7歳以上
プレイ人数:3~5人
プレイ時間:15~25分
https://www.dreimagier.de

経営を通して人生を体験する AGRICOLA アグリコラ

AGRICOLA

17世紀のヨーロッパを舞台に、プレイヤーたちは農民として自分の農場を経営。資材を集めて家を建てる、家族を増やす、畑を耕すなどして、農場を豊かにしていく。だが、家族が増えるとその分多くの食料が必要になったり、食料の確保ばかりしていると農場発展が進まなかったりと、現実の経済活動のようなジレンマに悩まされる。最終的に、最もバランスがとれた農場をつくったプレイヤーが勝利する。

おすすめポイント
要素が多く、やや複雑な中上級者向けゲームだが、慣れてくるとどんどん知的興奮が高まってくると評判だ。農場経営という架空の設定を通して、実は経営センスが問われている?! 初めての人は、経験者とプレイするのがおすすめ。

ゲームデザイナー:Uwe Rosenberg
製作年:2007年
対象年齢:12歳以上
プレイ人数:1~5人
プレイ時間:30〜150分
https://lookout-spiele.de(ドイツ語版)
http://hobbyjapan.games(日本語版)

大人数にぴったりのパーティーゲーム Just One ジャスト・ワン

Just One

2019年の「ドイツ年間ゲーム大賞」を受賞した、協力型の言葉当てクイズゲーム。各プレイヤーの手元にフリップとペンを置き、回答者を1人決めてお題カードを選択。ほかのプレイヤーはフリップにヒントとなる言葉を書くが、ほかの人と同じ言葉を書いてしまうとヒントを発表できなくなる。回答者は発表されたヒントから連想して言葉を当てる。プレイヤー間の勝敗が無く、みんなでハイスコアを目指すのが特徴だ。

おすすめポイント
ほかの人と同じヒントを書いてはいけないため、誰とも被らないようなクリエイティブな言葉のチョイスを考えるのが面白い。参加人数が多いほど「ヒントの被り」が起こりやすいので、大人数でわいわい楽しもう。

ゲームデザイナー:Ludovic Roudy, Bruno Sautter
製作年:2018年
対象年齢:8歳以上
プレイ人数:3~7人
プレイ時間:20分
https://asmodee.de

美しいタイルを敷き詰める AZUL アズール

AZUL

プレイヤーがタイル職人として王宮の壁をきれいに装飾するという、華やかで美しいゲーム。テーブル中央のタイル工房から交代でタイルを選び取り、自分の図案ボードに並べていく。工房からタイルがすべて無くなったら、ボードの右側にある王宮の壁にタイルを貼る。これを数ラウンド繰り返し、誰かが横一列にタイルを5枚並べたところでゲーム終了。タイルを貼った個数やデザインによって得点が加算される。

おすすめポイント
ルールが簡単なため初心者でも気軽に遊べる一方、ほかのプレイヤーがどのタイルを欲しがっているかを推測し、時には高度な駆け引きも必要。ペルシャ風のカラフルなタイルが見た目にも楽しい、奥の深いボードゲームだ。

ゲームデザイナー:Michael Kiesling
製作年:2017年
対象年齢:8歳以上
プレイ人数:2~4人
プレイ時間:30〜 45分
https://www.planbgames.com

AZUL

最終更新 Donnerstag, 15 Juli 2021 13:51
 

ドイツ生まれの良質なおもちゃ - 認証マーク付きおすすめ玩具メーカー6選

子どもの遊びの世界を広げる ドイツ生まれの良質なおもちゃ

肌触りの良い木のおもちゃ、ファンタジーを膨らます人形……ドイツ製のおもちゃは昔から高く評価され、世界中の子どもたちに愛されてきた。それは、常に子どもの視点に立っておもちゃを作り続けてきたからかもしれない。そんな子どもの遊びの世界を広げ、成長を見守ってくれるドイツ生まれのおもちゃの魅力を紹介しよう。 (Text:編集部)

おもちゃの街からおもちゃの国へ

ドイツ製のおもちゃの4分の1は、おもちゃの街・ニュルンベルクで生産されている。ニュルンベルクでは15世紀以来、職人たちがドールハウスやブリキ玩具、木製のおもちゃなどを作り続けてきた。特にブリキ玩具は質が高く、外国にもコレクターがいたほど。フランス国王ルイ16世もブリキの兵隊をコレクションしていたとか。

19世紀になって、ニュルンベルクの玩具業界は工業生産を開始し、おもちゃ生産の黄金時代を迎える。その後、二つの世界大戦によって一度は衰退するものの、ニュルンベルクは「おもちゃの街」として息を吹き返すことに。その証として、1950年に「Spielwarenmesse シュピールヴァーレンメッセ(ニュルンベルク国際玩具見本市)」の開催地に選ばれたのだ。毎年2月に開催される同メッセは、世界最大のおもちゃ見本市として知られ、今年は68カ国から2843社の玩具メーカーが参加。また、デンマークのレゴと並んで人気のブロック玩具「プレイモービル」をはじめとしたドイツ生まれの玩具メーカーが、ニュルンベルクやその郊外に本社を置いている。

シュピールヴァーレンメッセ2020年のシュピールヴァーレンメッセの様子

ドイツにおける良質な玩具の条件

戦後復興と共に、再び人々の生活が豊かになり始めた1950年代。安価なおもちゃが市場に出回るようになり、数あるおもちゃの中から子どもの成長にとって本当に必要な玩具を選ぶことが難しくなっていった。そこで、1954年にドイツで誕生したのが「spiel gut シュピールグート(直訳で、良く遊びなさい)」と呼ばれる認証マークだ。このマークは、医学、教育、デザイン、心理学などの専門家によって、優良と判断されたおもちゃに与えられる。審査する専門家のほとんどが子育て経験者で、連邦家族・高齢者・女性・青少年省の助成を受けながら運営されている。毎年、0~14歳までを対象としたおもちゃ600点ほどが審査されており、これまでにドイツ国内外のおもちゃ8000点以上が登録されてきた。

厳しい審査を受けて認証を取得したおもちゃの中には、ドイツの伝統的な木製のおもちゃをはじめ、しっかりとした理念を持ったドイツ玩具メーカーの商品が数多く存在する。実際の審査基準は、例えば以下のようなものだ。

認証マーク:シュピールグート

認証マーク:シュピールグート spielgut

審査基準

  • 対象年齢が子どもの年齢や発達段階に見合っているか
  • 子どもの創造力を育むものか
  • 子どもが遊びを工夫できたり、遊びのバリエーションが豊富か
  • 素材や加工は安全か
  • 創造力を邪魔しないデザインか
  • 子どもが理解できる構造か
  • すぐに壊れない耐久性があるか
  • 環境に優しい素材を使用しているか

「人間は遊ぶことで成長します」と述べるのは、ニュルンベルクのおもちゃ博物館のDr. カーリン・ファルケンベルク館長。人間は元来遊ぶ存在であり、遊びは人間の行動や考え方、発展の原点となると彼女は言う。また、シュピールグートの審査員でもあるアウクスブルク大学のDr.フォルカー・メーリンガー氏は、社会学的観点から玩具や遊びを研究。同氏の研究チームの報告によれば、就学前の子どもは最大で1万5000時間の遊びを通じて成長する。特に「ごっこ遊び」は親になりきったり、カウボーイやインディアンを演じることで、子どもはそれぞれの役割を知ったり、他者への共感を学ぶのだという。まさに、シュピールグートで選ばれるおもちゃは遊びの世界を広げ、子どもの成長を促すといえるだろう。

シュピールグートの使命は、優良なおもちゃに光を当てることのほか、遊びがどれほど重要か、そのためにどんなおもちゃが必要かを、多くの保護者に示すことである。現在、ドイツの玩具業界では毎年30億ユーロ以上の売上があり、年々成長している。これは、子ども1人当たり年間290ユーロに相当。しかし英国のある調査によれば、子どもは所有するおもちゃの5%でしか遊ばないという。子どもにとって最良の環境を用意するには、親が子どもの興味や成長に合わせておもちゃを選択し、子ども部屋に置く玩具の数を減らすべきとの意見もある。そんなとき、シュピールグートのおもちゃ選びの基準は、親たちにとって大きなヒントになるはずだ。

時代を反映するこれからのおもちゃ

近年の動向としては、バービー人形が義足を付けていたり、車椅子に乗っていたり、さまざまな肌の色を持つものが登場している。実際に、障がいのある子どもとそうでない子どもがこのような玩具で遊んだとき、相互理解に役立ったとする研究報告もある。しかし、ある大手玩具メーカーの商品3000点を調査したところ、75%の人形やフィギュアが白い肌であり、眼鏡をかけていたのは全体の1.2%、車椅子に乗った人形はたったの1体だったという。多様性が叫ばれるこの時代に、おもちゃの世界でもバリエーションを豊かにしていくことが、今後さらに求められるだろう。

また、良質なおもちゃが大切にされている一方で、ドイツで販売されている玩具の8割は中国製だ。安価であるゆえ、工場労働者は劣悪な条件のもとで働かされている場合が多く、国内産の玩具を購入すべきとの声も。さらに昨今の環境問題の視点から脱プラスチック化が進んでおり、天然素材の玩具を購入する傾向がみられる。

消費者として今できることの一つは、教育的価値の高い玩具であることはもちろん、さらにサステナブルな視点を持った製品を選ぶこと。ドイツの街中には小規模の玩具店が多くあり、厳選したおもちゃを扱っている所も少なくない。お店に直接出かけて店員に相談したり、各商品を詳しく説明しているネット通販サイトを利用すれば、良質な玩具を見つけやすくなるはずだ。大切な子どもたちへのプレゼント選びに、ぜひ利用してみては。

参考:ニュルンベルク公式ホームページ「Toy City Nuremberg」、spiel gut e.V. 公式ホームページ、Deutschlandfunk「„Der Mensch entwickelt sich, indem er spielt“」、mdr.de「Warum zu viel Spielzeug Kindern schadet」

シュピールグートを取得! ドイツのおもちゃメーカー6選

上記で紹介した認証マーク「シュピールグート」を取得してきた、ドイツ生まれの玩具メーカー6社をピックアップ。信念を貫き、国内外の子どもの成長を見守り続けてきたメーカーから、それぞれおすすめのおもちゃもご紹介。プレゼント選びのご参考にも!

選び抜かれた天然素材のおもちゃ Selecta セレクタ

創業年:1968年
創業場所:ヴァッサーブルク(バイエルン州)
www.selecta-spielzeug.de

セレクタが創業以来最も大事にしていることは、高品質で厳選された木のおもちゃを作ること。社名はラテン語で「厳選されたもの」の意で、ほぼ100%ドイツ国産の素材を使用している。「子どもが楽しんで自主的に遊ぶこと」を大切にしながら、目で追う、つかむ、引っ張る……など、赤ちゃんから幼児までそれぞれの成長段階に合わせた製品を展開。メモリーゲームやサイコロゲームなど、幼児が初めて遊ぶためのボードゲームもあり、その質の高さから「ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)」の受賞歴がある。

おすすめのおもちゃ
Rondello ロンデーロ

対象年齢:3カ月~
サイズ:直径7.5cm

ロンデーロ

触る、なめる、音を聞く、見るなど、赤ちゃんのあらゆる感覚を刺激してくれるカエデ製のラトル。小さな手に合ったサイズで、もちろん口に入れても安全。ゴムでつながれたカラフルなボールに赤ちゃんはきっと夢中になるはずだ。出産祝いにもおすすめ。

子どもの学びを手助けする Glückskäfer グリュックスケーファー

創業年:1950年
創業場所:ロイトリンゲン(バーデン=ヴュルテンベルク州)
www.nictoys.de

グリュックスケーファーのおもちゃ作りは、もともと金属製品工場の一事業として始まった。当初から子どもたちの学びを手助けする機能的なおもちゃを作ることが特徴で、高品質で教育に役立つ玩具メーカーとして発展していった。カラフルな木のおもちゃはもちろんのこと、金属を使用した砂遊び用のバケツやスコップ、本物さながらの鍋やフライパンなどのままごと道具は同社の人気商品だ。2011年以降はニック社に製造販売を委託し、半世紀以上愛され続けてきた製品を子どもたちの元に届けている。

おすすめのおもちゃ
Email-Pfanne mit Holzgriff 木製持ち手付フライパン
Email-Henkeltopf mit Deckel ホーロー蓋付鍋
Küchengeräte-Set Email ホーロー台所ツールセット

対象年齢:3歳~
サイズ:鍋12cm、フライパン12cm、ツール各15~17cm

グリュックスケーファー

大人が台所で料理をしている姿を見て、子どもは真似をしたり手伝いをしたがるもの。そんな時期が訪れたら、グリュックスケーファーのホーロー製のお鍋やフライパンの出番。本物のような台所道具で、子どもたちはますます大人の気分が味わえるはず。

今にも動き出しそうなぬいぐるみ Kösen ケーセン

創業年:1911年
創業場所:バート・ケーセン(ザクセン=アンハルト州)
www.koesener.de

100年以上の歴史があるケーセンは、ドイツを代表する人形工房「ケテ・クルーゼ」としてスタート。その後経営者が変わると、アーティストやデザイナーと協力しながら、高品質でナチュラルな動物のぬいぐるみを制作するように。今にも動き出しそうなリアルなぬいぐるみは、動物を精密にスケッチするところから製作が始まり、柔らかく抱きやすいように40以上のパーツで構成されている。ぬいぐるみにあえて表情を付けていないのは、子どもが望む表情を想像できるようにするため。一緒に遊びながら、子どもたちの気持ちにそっと寄り添ってくれるのがケーセンの魅力だ。

おすすめのおもちゃ
Shiba-Inu Koro 柴犬のコロ

対象年齢:0歳~
サイズ:28x10x22cm

Shiba-Inu Koro

ペットシリーズからご紹介するのは、昨今世界中で見かけるようになった柴犬。ぎゅっと抱きしめたくなるかわいさで、大人への贈り物にも喜ばれそう。子どもと一日中遊んで、汚れてしまってもご安心を。ケーセンのぬいぐるみは全て30度以下の水で手洗い可能。

シュタイナー教育が原点に Ostheimer オストハイマー

創業年:1943年
創業場所:ウンターヴェッセン(バイエルン州)
www.ostheimer.de

独自の教育法を取るシュタイナー教育のおもちゃ作りをしていたオストハイマー夫妻が創業した、木彫りの人形メーカー。戦後に米国から安価なプラスチック製人形が流入にしたことによって一度倒産するが、現在に至るまで柔らかな雰囲気の人形を作り続けている。子どものファンタジーをさらに膨らますような、控えめかつ美しいデザインと色味が特徴だ。農場や森の動物のほか、おとぎ話をモチーフとした人形やドールハウスもあり、思わずコレクションしたくなる。工房では障がいのある人とない人が共に働き、常に最高品質の製品を手作業で作り出している。

おすすめのおもちゃ
Bremer Stadtmusikanten ブレーメンの音楽隊

対象年齢:3歳~
サイズ:ロバ10cm、イヌ7cm、ネコ5cm、ニワトリ6cm

ブレーメンの音楽隊

グリム童話でお馴染みの「ブレーメンの音楽隊」をモチーフにした、ロバ、イヌ、ネコ、ニワトリの木製フィギア。読み聞かせのお共にはもちろん、ごっこ遊びにも一役買ってくれそう。一体ずつの購入もできるので、少しずつ集めても◎。

自分で組み立てるダンボール・トイ Calafant カラファント

創業年:2006年
創業場所:ブレーメン
www.calafant.de

リサイクル可能なダンボールから作られたカラファントのおもちゃは、人形遊び用のドールハウスから子どもが実際に中に入れる隠れ家まで、バリエーション豊か。創業者のシマンスキー氏は漫画家で、自身の子どもたちのためにダンボール製のおもちゃを作っていたことが、製品開発の原点だそう。組み立てには接着剤や道具は一切不要で、子どもたちは自分自身でおもちゃを作り出すところから楽しむことができる。白地がベースになっているため、好きな色を塗ったり絵を描いたりと、子どもたちの創造力をどこまでも広げてくれる。

おすすめのおもちゃ
CALACASA カラカサ

対象年齢:2歳~
サイズ:91x79x97cm

CALACASA カラカサ

子どもが2~3人入れるプレイハウスで、ホームページでは「一等地にある個性的なデザインの一戸建」というお茶目な説明書きが。パン屋さんか郵便局か、それとも隠れ家なのか、想像は膨らむばかり。畳んで収納することもできる。

ファースト・トイから家具まで HABA ハバ

創業年:1938年
創業場所:バート・ローダッハ(バイエルン州)
www.haba.de

約1900名の従業員からなるハバは、木製のおもちゃ製造から始まった老舗玩具メーカー。「子どものための発明家」を自称し、15人以上のデザイナーとゲームエディターがオフィスでも休暇先でも常に新しいおもちゃの開発に情熱を注いでおり、毎年およそ500の新作商品を世に送り出している。ファースト・トイをはじめ、発達段階に合わせたラインナップのほか、子ども部屋をもっと楽しくするテントやランプなどの家具も展開。また、ドイツのおもちゃの定番であるボードゲームにも力を入れており、数々の名作を生み出してきた。

おすすめのおもちゃ
Erstes Spielen スターターセット

対象年齢:4歳~
サイズ:基尺4cm

HABA ハバ

ビー玉を転がして遊ぶ「クーゲルバーン」は、ハバのロングセラー商品の一つ。立方体や円柱、ドミノなどで自分だけのオジリナルコースを作ったら、ビー玉をセットしてスタート。慣れてきたら、音が出る階段などの別売りパーツも一緒に楽しんで。

最終更新 Donnerstag, 14 Mai 2020 14:04
 

ドイツ人は「過去」から何を学ぶのか? - 第二次世界大戦の終結から75年

第二次世界大戦の終結から75年 ドイツ人は「過去」から 何を学ぶのか?

2020年5月8日、欧州における第二次世界大戦の終結から75年を迎えた。ナチスによる残虐な犯罪をはじめとしたドイツの負の歴史については、現在も世界中で学ばれている。一方、ここドイツではその歴史経験をどのように語り、次の世代へどのように伝えてきたのだろうか。この75年という節目に、ドイツにおける歴史教育や記憶文化について取り上げながら、ドイツ人の「過去」との向き合い方、そして、「過去」を現代にどのように活かしているのかを探る。

虐殺されたシンティ・ロマのための記念碑ベルリンにつくられた「虐殺されたシンティ・ロマのための記念碑」

ナチスの犯罪とは?

第二次世界大戦以前から、ナチスはユダヤ人に対して人種差別的な思想を持ち、ユダヤ人を迫害する政策を次々と打ち出していた。1942年には「ユダヤ人問題の最終的解決」と題した政策で、欧州におけるユダヤ人の絶滅計画を立て、それを実行。これがいわゆるホロコースト(ギリシャ語で「焼かれたいけにえ」の意)といわれる大量殺戮だ。ユダヤ人はゲットーへの強制移住にはじまり、次々と強制収容所に移送され、人体実験や過酷な労働を強いられた。また、子どもや高齢者、病気の者は労働不可能とみなされ、約300万人がガス室で殺害されたという。1931~1945年の間に殺害された欧州のユダヤ人は、およそ570万人(諸説あり)。もともと900万人いたという欧州のユダヤ人の3人に2人が犠牲となった。

ナチスの犠牲者は、ユダヤ人だけではない。シンティ・ロマや障がい者もユダヤ人と同じく「劣った民族」として迫害の対象となった。さらに、捕虜となったソ連軍の兵士たちは放置され、飢餓や病気などで200~300万人が死亡したといわれる。また、数百万人単位の非ユダヤ系ポーランド市民やソビエト市民が強制労働させられ、殺害された。ほかにも、共産主義者、エホバの証人、同性愛者なども強制収容所に移送され、その多くが命を落としている。

ホロコーストをはじめとするナチスによる残虐な犯罪は、第二次世界大戦が終わってからの軍事裁判や生存者の証言によって徐々に明らかにされてきた。そして、戦後復興とともに、ドイツ人も少しずつ自国の過去に向き合っていくことになるのだった。

参考:Bundeszentrale für politische Bildung 公式サイト、United States Holocaust Memorial Museum 公式サイト

国別ホロコースト犠牲者(ユダヤ人)

ポーランド 300万人
ソヴィエト連邦 100万人
ルーマニア 35万人
ハンガリー 27万人
チェコスロヴァキア 26万3000人
ドイツ 16万5000人
リトアニア 16万人
オランダ 10万2000人
フランス 7万5000人
ラトビア 6万7000人
オーストリア 6万5500人
ユーゴスラビア 6万5000人
ギリシャ 5万9000人
ベルギー 2万8500人
イタリア 7000人
ルクセンブルク 1200人
エストニア 1000人
ノルウェー 758人
デンマーク 116人
アルバニア 100人
合計 570万人
*最大610万人とする研究もある

*ナチスによる迫害の歴史 Quelle:Arbeitskreis Zukunft braucht Erinnerung「Opferzahlen des Holocaust」

ナチスによる迫害の歴史

1933年 1月 ヒトラー(1889-1945)が政権を獲得
10月 国際連盟を脱退
1938年 3月 オーストリアを併合
11月 「水晶の夜」※ユダヤ人排斥事件
1939年 9月 ポーランドに侵攻=第二次世界大戦勃発
1940年 2月 ユダヤ人の強制移送が始まる
4月 デンマーク、ノルウェーに侵攻
5月 ルクセンブルク、オランダ、ベルギーに侵攻
9月 イタリアと日本と三国同盟を結ぶ
1941年 2月 ブルガリアに侵攻
4月 ユーゴスラビア、ギリシャに侵攻
10月 ユダヤ人のゲットー強制移住
1942年 1月 「ユダヤ人問題の最終的解決」
東欧からドイツへ、強制労働者の移送開始
1944年 8月 ワルシャワ蜂起
1945年 1月 アウシュビッツ=ビルケナウ絶滅強制収容所が解放される
4月 ヒトラーが自殺
5月 ナチスドイツが降伏=欧州における第二次世界大戦終結

ドイツの現代史教育が迎えた
5つのターニングポイント

戦後から今日に至るまで、ドイツではナチスについての批判的な歴史教育が徹底的に行われてきた。ここではドイツの中等教育で歴史がどのように教えられてきたか、その変遷をたどる。終戦から75年経った今、過去から生じる責任を誰がどのように引き受けていくのか。時代や社会の激しい変化に遭遇しながらも、過去について「考えること」を諦めないドイツの姿を見つめてみよう。

参考資料:http://bibliothek.gei.de、Zeit Online「Was geht mich das noch?」、川喜田敦子「ドイツにおける現代史教育」、ラインハルト・リュールップ「ナチズムの過 去と民主的な社会」、サーラ・スヴェン「戦後ドイツと日本の教育における教科書」、近藤孝弘「欧州統合と歴史教育」、テオドール・アドルノ「アウシュヴィッツ以後の教育」

ドイツの歴史教育の特徴

ドイツの歴史教育の特徴

  • ギムナジウムの場合、歴史教育は1年目*(日本の小学5年生)に開始し、卒業までの8年間で現代史までを学ぶ。 *各州により若干異なる
  • 教科書はドイツ史が中心で、外国の歴史はドイツにとって重要とみなされるもののみ(ギリシャ・ローマ、フランス革命、アメリカ独立など)。
  • 一つひとつの事項が、写真や資料を用いて非常に詳しく述べられている。ある教科書の例では、フランス革命44ページ、産業革命に42ページ、ナチス時代68ページなど。
  • ナチス時代については、「ファシズム」概念からナチス政権成立までの経緯、反ユダヤ主義などのイデオロギーを詳細に解説。当時の人々の生活やジェンダー観についての項目もある。
  • 教科書はあくまで補助的な役割で、授業では自主性を重んじ、思考力や判断力を養うことに力点が置かれている。調べ学習や施設見学なども多い。

1ドイツ現代史教育の黎明期
終戦~西ドイツ創設まで

第二次世界大戦の終戦後、ドイツでは学校で歴史の授業を行うことが一旦連合国によって禁止された。その後、1947年までに学校での歴史教育が再開。連合国側が戦後ドイツの統治について定めたポツダム協定をもとに、「ドイツの教育はチズムや軍国主義の教義が完全に払拭され、民主主義理念の成果ある発展が可能となるように規制されねばならない」ことが歴史教育でも基本方針とされた。

しかしナチスの過去はドイツにとってあまりにも近すぎる歴史であり、連合国による「非ナチ化」政策に対し、国内では強い反発があったという。そのような理由もあって、西ドイツ創設期の歴史授業では、第二次世界大戦の内容に触れる場合でも時系列的な説明にとどまり、ユダヤ人をはじめとするホロコーストについてはほとんど言及されなかった。

またこの時期の教師、親、子どもたちは、ナチスを歴史の授業で扱うことに大きな戸惑いや抵抗、拒否反応を示していたといわれている。そのため仮に歴史の教科書にナチス時代のことが記述されていたとしても、実際の授業はそれ以前の第一次世界大戦やワイマール共和国期までで終えることが多かった。一方で、ドイツ人の間でも少しずつ、ドイツの歴史においてナチスをどう受け止めるべきかという議論が活発化していく。

2過去を正面から受け止める
1950年代後半~70年代

そんななか、ドイツの現代史教育を変える決定的な事件が起きる。1959年12月~1960年1月にかけて、西ドイツ全土のユダヤ人墓地が一斉に荒らされたのだ。犯行件数は470件を超え、墓荒らしに加担した大多数は青少年。西ドイツ社会に大きな衝撃をもたらすとともに、若年層の歴史についての知識不足が問題視された。

これらの犯行に対し、1960年1月30日にドイツ教育制度審議会が「反セム主義的暴行事件に関する声明」を発表。戦後教育が十分に行われていない現状を厳しく批判し、若者たちの民主主義的な態度を育成するために、ナチスの過去に関する教育を充実させるべきと、初めて明確に打ち出した。さらに、1961年にイスラエルで行われたアイヒマン裁判*や、1960~70年代にかけて連邦議会で議論された「ナチ犯罪に対する時効廃止」などの影響もあり、歴史の教科書も次々と大幅な改定が行われることに。

例えば、西ドイツの代表的な歴史教科書の「Europa weitet sich zur Welt」では、1952年版ではユダヤ人迫害について触れられているのはわずか2行。その後、同じ出版社が1967年に出した「Europa und die Welt」という新版の教科書では、「ユダヤ人迫害」という独立した節が立てられ、5ページにわたって詳しい説明がされ、第二次世界大戦中のユダヤ人迫害については、別の項目の中でさらに詳しく触れられるようになった。

アイヒマン裁判アイヒマン裁判……ナチスのユダヤ人虐殺の責任者アドルフ・アイヒマン(1906-1962)が1960年5月、逃亡先のアルゼンチンで捕らえられ、翌年4月から行われた裁判。この裁判を傍聴していたドイツ出身のユダヤ人哲学者のハンナ・アーレント(1906-1975)は、アイヒマンはただ命令に従っていただけの「普通の平凡な人間」であり、悪の本質は「人間の思考停止」にあると分析した

3「ナチスの犯罪」から「ドイツ人の責任」へ
1980年代~2000年ごろ

教科書の改定などにより、ナチスの過去を子どもたちに詳細に教えるという点では、一定の成果を出すことができた。しかし世代交代や社会情勢の変化によって、1970年代後半にはヒトラーブームや青少年のネオナチ化が再び活発に。その原因は、「ヒトラーを知らない世代」の子どもたちは、授業でナチスの過去を歴史的な事実として知ることはできても、自分たちの実感として学び、考えることができていなかったからだと考えられている。

というのも、1970年代までの教科書はホロコーストに関する説明自体は大幅に増えたものの、虐殺はあくまで「ナチス」の独断であったかのような説明が多く、一般のドイツ人がどのようにナチスに協力したかについては触れられることがなかった。実際、当時の教科書の文章では、虐殺の行為主体は「ヒトラー」「ナチス」「親衛隊(SS)」であるか、もしくは「多くのユダヤ人が絶滅収容所で命を失った」のように、受動表現や無生物主語の文型が多かったという。

「何のためにナチスの過去を学ぶのか?」。終戦から30年以上が経って再びこの問いを突きつけられたドイツは、「一般のドイツ人(=自分たち)の責任」について教育するという道を選んだ。教科書は、ヒトラーやナチ党幹部の動向だけではなく、ナチス支配下の人々の生活や態度にも言及するよう大幅に変更。それまで政治史や外交史が中心だった教科書には、新たに日常史や地域史という視点が加えられ、より生徒たち個人の経験に引きつけた内容になった。そしてこの時点から、一般の人々がホロコーストに協力したこと、知っていたのに何もしなかったこと、さらには知ろうとしなかったことまで含めて、世代を超えて「ドイツ人の責任」を問い続ける姿勢が確立された。

メリル・ストリープ主演「ホロコースト」1979年に西ドイツで初めて放映された、米国のテレビドラマ「ホロコースト−戦争と家族−」。当時の西ドイツメディアでは、ドイツ市民が何の抵抗もなくナチスに協力する姿がこれほどはっきりと描かれたことはなかった

4移民国家ドイツで、ナチスをどう教えるか?
1990年代~現在

ナチスの過去と徹底的に向き合ってきたドイツだが、近年ドイツが移民社会・多文化社会となったことで、いわゆる「ドイツ人」的な歴史認識を共有することが難しくなってきた。それまでの教育は、政治的な立場は多様であっても、文化的には単一の人々を前提としていたからだ。

これまでの現代史教育では「加害者vs被害者」という二項対立を軸に、「加害者(=ドイツ)の責任」を自覚させることに焦点を当ててきた。しかし移民を背景に持つ子どもたちは、ナチス支配の犠牲者の子孫でもなければ、加害者、協力者、傍観者の子孫でもない。また、ある教育現場では、この「加害者vs被害者」という構図が「ドイツ人vs外国人」という学校内での対立を必要以上に強めてしまったというケースも。そのような状況は、子どもたちに過度なショックやストレスを与えることになってしまう。

そのため今日では「責任」に加え、「相互理解」や「対話」が歴史授業の新たなキーワードに。当時の加害者と犠牲者の視点を対比して学ぶだけでなく、生徒たちがホロコーストに対する考えを共有し合うことで、お互いの考え方やアイデンティティーを理解しようというのだ。特に移民家庭の若者たちにとって、ドイツがナチスの過去とどう向き合うかを知ることは、ドイツ社会そのものを知るための重要なきっかけとなる。それは取りも直さず、多様な集団が一つの国で共生していくために重要な視点といえるだろう。

西ドイツの教育1960年の時点では、西ドイツの子どものうち両親または片親が外国人である割合はわずか1.3%だったが、1997年には20%に。
2020年現在、ドイツ全人口のおよそ25%が移民を背景に持つ

5欧州レベルでの「ナチスの過去」への取り組み
1970年代~現在

欧州統合の進展により、ナチスの過去に関する歴史教育はドイツという枠組みを超え、欧州史全体に関わる問題として捉え直そうとする機運が高まっていく。例えばドイツとポーランドは1972年に共同の教科書委員会を設立。旧交戦国同士であった両国の関係史を、お互いに受け入れられる形で教えるための話し合いを続けてきた。

また、歴史上何度も戦争を繰り返してきたドイツとフランスは、平和的な関係を築くためのプロジェクトとして2006年に『ドイツ・フランス共通歴史教科書』を発行。一国単位での歴史解釈を超えた取り組みとして注目されるとともに、将来的に欧州という枠組みでホロコースト教育を実現するための礎になった。

これらの活動の目的は、ホロコーストの記憶を国際社会で維持することで、大量虐殺や人種主義、外国人嫌悪などに対して共同で立ち向かうこと。欧州各地での極右政党の台頭や、自国第一主義の風潮が広がる昨今、ホロコースト教育はドイツだけでなく欧州でも、人権教育の一環として必要性が高まっているのだ。

ドイツ・フランス共通歴史教科書
ドイツ・フランス共通歴史教科書
ドイツ・フランス共通歴史教科書
『ドイツ・フランス共通歴史教科書【近現代史】』は日本語版も出版されている
発行元:明石書店、2016年2月発行 ISBN 978-4-75034-306-8

道行く人の意識に歴史を刻む
ドイツの記憶する文化

「記憶文化」とは何か

虐殺されたヨーロッパ・ユダヤ人のための記念碑虐殺されたヨーロッパ・ユダヤ人のための記念碑

「記憶文化(Erinnerungskultur)」という言葉を聞いたことはあるだろうか。戦後に誕生した比較的新しいドイツ語で、特にナチスによる犯罪を未来の世代の意識の中にとどめようとするものやことを指す。もともとは当時を知る人々の証言によって、歴史や記憶が伝えられてきたが、その世代の数が少なくなるにつれて、過去に関して記録するという試みがますます活発になった。その結果、ドイツ各地には非常に多くの追悼施設や記念碑がある。

よく記憶文化の例として挙げられるのが、2005年にベルリンのブランデンブ ルク門の横につくられた「虐殺されたヨーロッパ・ユダヤ人のための記念碑」だ。およそ2700個もの大きな石碑が立ち並ぶ巨大なモニュメントで、ホロコーストの犠牲となったユダヤ人を悼むための場所である。ほかにもナチスによる犯罪の現場、ナチス政権の政策決定の場、抵抗の場、市民が犠牲となった場所などが「記憶する場所(Erinnerungsort)」として残されている。そこにはモニュメントだけでなく、博物館や記念館、看板などが設置され、記憶文化はさまざまな形で街中に存在しているのだ。

参考:ドイツの実情「国家と政治 生きた記憶文化」(FAZIT Communication GmbH・ドイツ外務省)、姫岡とし子「ドイツの歴史教育とホロコーストの記憶文化」

記憶する場所を表す言葉

Denkmal / Ehrenmal
原料は主に石、鉄、青銅などの耐久性のある素材。基本的には20世紀以前の人物像や戦勝記念碑など、国の誇りや人物の功績をたたえてつくられたもの。

Gedenkstätte / Mahnmal
20世紀以降に負の歴史を記憶に刻み、犠牲者を悼むためにつくられたもの。ホロコーストや東西分断時代の記憶を伝えるものが多い。

参考:HanisaulLand Politik für dich「Denkmal / Ehrenmal / Mahnmal / Gedenkstätte」、Goethe-Institut「Erinnerungskultur Das Pathos Vermeiden」

小さな声をどう記憶していくか

ドイツの街を歩いていると、ユダヤ人を追悼するモニュメントや施設を目にしたことのある人は多いだろう。最後に、ユダヤ人のほかにナチスの犠牲となった人々の声にどのように耳を傾け、記憶してきたのかを紹介する。

戦後も闘い続けた同性愛者たちの声

同性愛者の追悼

1935年、ナチスは刑法第175条に基づき、同性愛を犯罪として認定した。その後、5万件を超える有罪判決が下され、刑務所行きとなって去勢されたり、そのうち数千人は強制収容所に送られ、ほとんどが命を落としたといわれる。同性愛者の迫害は戦後も続き、刑法第175条は1969年まで変更されることがなかった。そのため、東西分断時代も同性愛者は記憶文化から排除されてきたのだ。

同性愛者のための追悼碑を建てる動きが出てきたのは、1990年代に入ってから。2008年になってやっと「ナチズムにより迫害された同性愛者の追悼碑(Homosexuellen-Denkmal)」が、ベルリンの「虐殺されたヨーロッパ・ユダヤ人のための記念碑」のすぐそばに建てられた。デザインを手がけたのは、ベルリンで共に活躍するノルウェー人のIngar Dragset氏とデンマーク人Michael Elmgreen氏。ユダヤ人のための記念碑のデザインを基調とし、小窓から中をのぞくと、同性愛者がキスをする映像が映し出されているのが見える。

ナチズムにより迫害された同性愛者の追悼碑
Homosexuellen-Denkmal

Tiergarten Ebertstraße, 10117 Berlin
www.stiftung-denkmal.de

尊厳を奪われた女性たちの声

ブランデンブルク州のラーヴェンスブリュックに、ナチス・ドイツ領土内最大の女性強制収容所があった。収容所は段階的に拡張され、6年間で約12万人以上の女性を収容。女性たちは頭部と陰部の毛を剃られた上、囚人番号と囚人服を渡され、女性らしさや人間らしさが奪われたという。強制労働はもちろん、人体実験や強制不妊、拷問、強制売春もあり、射殺やガス室での殺害も行われた。

ラーヴェンスブリュック強制収容所はソ連軍によって解放され、兵舎として利用された。その後、東ドイツが火葬場(クレマトリウム)や独房棟などを保護し、1959年に記念碑を設置した。ドイツ再統一後は、ブランデンブルク州記念碑財団が運営。2013年に、生存者の声などを集めた大規模な展示が公開され、女性強制収容所の歴史を記憶する場所として知られている。

ラーヴェンスブリュック強制収容所跡
Mahn- und Gedenkstätte Ravensbrück

Straße der Nationen, 16798 Fürstenberg/Havel
www.ravensbrueck.de

今なお記念碑のないポーランド人たちの声

ポーランドでは600万人の市民が犠牲になったといわれる。しかしドイツには、ユダヤ人を追悼する記念碑などが存在する一方で、ポーランド人のための記念碑はない。これに対し、ポーランドは長らく不満を抱いていた。

2017年、ベルリンにポーランド人のための追悼碑を建てようとする動きがあった。しかし、ほかにもナチスの犠牲者が存在する国が多数あり、国ごとに記念碑を建てるのは現実的ではないとする声が上がった。また、ベルリンとワルシャワに博物館をつくるべきだとの意見もある。昨年8月には、ポーランドのモラウィエツキ首相がドイツから十分な賠償を得ていないとして、改めて戦争賠償を求める姿勢を見せた。その一方で、同年9月にドイツのシュタインマイヤー大統領がワルシャワで演説し、ポーランド国民に許しを求めたことは記憶に新しい。対ポーランドの戦後処理は、戦後75年経ってもなお議論され続けている。

参考:Deutsche Welle「Polen-Denkmal in Berlin?」

最終更新 Dienstag, 28 Januar 2025 10:58
 

ドイツでますます進化中!?生き方が見える ベジタリアンの世界

ドイツでますます進化中!? 生き方が見える
ベジタリアンの世界

昨今、ベジタリアンが増えているドイツ。次々に新しいベジ商品が登場し、業界の売上も急成長中だ。そもそもベジタリアンとはどんな人々なのか、なぜ肉を食べないのか……それらを解き明かすと、食べ方だけではない「ベジタリアンの生き方」が見えてくるかもしれない。(Text:編集部)

ドイツの10人に1人*がベジタリアン

ベジタリアンもしくは肉をほとんど食べない人 8.6%
ヴィーガンもしくは動物性食品をほとんど食べない人 1.3%

*上記の割合の合計が9.9%のため

ドイツの10人に1人*がベジタリアン

ドイツのヴィーガンは女性と若者に多い

女性 81%
男性 19% 
20〜29歳 60%

ドイツのヴィーガンは女性と若者に多い

ベジ商品の売り上げがぐんぐん成長中

ドイツ国内におけるベジタリアンおよびヴィーガン製品の売上高

2017年 7億3600万ユーロ
2018年 9億7800万ユーロ
2019年 12億1900万ユーロ

ドイツ国内におけるベジタリアンおよびヴィーガン製品の売上高

ベジタリアンがもっと分かるQ&A

参考:ProVeg e.V. 公式Pウェブサイト

Q1ベジタリアンって、肉以外の卵や牛乳もNGなの?
A1何を食べるか食べないかは、人それぞれ。

ベジタリアンと一言にいっても、その信念や食べられるものの種類はさまざま。まずは、どんなベジタリアンの人がいるのかを知ろう。

参考:NPO法人日本ベジタリアン協会、Ratgeber Vegan「Unterschied zwischen Vegetarier, Veganer, Frutarier und Flexitarier – wer is(s)t was?」

フルータリアン Frutarier
食べられるもの:野菜や果物の実など

植物の命を絶やさない食材のみを食べる。例えば、リンゴの実は収穫してもリンゴの木は死なないが、ニンジンなどの根菜は死んでしまうのでNG。

ヴィーガン Veganer
食べられるもの:野菜、植物性食品

動物に苦しみを与えることをできるだけ避けるため、動物の肉、卵、乳製品を食べない。また動物製品を身に付けない。ピュア・ベジタリアンともいう。

ラクト・オボ・ベジタリアン Lacto-Ovo-Vegetarier
食べられるもの:野菜、植物性食品、乳製品、卵

ラテン語でラクトは「乳」、オボは「卵」の意味。欧米のベジタリアンのほとんどがこのタイプだといわれる。卵を食べない場合は、ラクト・ベジタリアン。

ペスコ・ベジタリアン Pescetarier
食べられるもの:野菜、植物性食品、乳製品、卵、魚

ペスコはラテン語で「魚」の意味。穀物菜食を中心とする日本発祥の「マクロビオティック」はここに分類される。また、乳卵を食べない場合もある。

フレキシタリアン Flexitarier
食べられるもの:野菜、植物性食品、乳製品、卵、魚、たまに肉

毎日は肉を食べなかったり、特別な日などのみ肉料理を食べる「ときどきベジタリアン」を指す。日本では「ゆるベジ」などと呼ばれることもある。

Q2ドイツの人がベジタリアンになる理由は?
A2動物福祉のほかに、環境保護や健康のためという人も。

18世紀の啓蒙主義の時代に始まった欧州における近代のベジタリアニズム(菜食主義)。その時代から動物の尊厳を守るために肉を食べなくなる人が現れ、現在のドイツも動物福祉を理由にベジタリアンを選択する人が目立つ。

植物性製品を購入する理由

42% 動物福祉のため

命を尊ぶことは、ベジタリアニズムの根源でも。動物の権利に重きを置き、豚・鶏・牛などの家畜が劣悪な飼育環境や食肉処理の過程で苦しむことを避けるため、肉を食べないという選択をするが多い。

28% 環境保護など倫理的な理由

肉の消費量を減らすことで、家畜が排出するメタンガスなどの温室効果ガス量、飼料栽培に必要なエネルギー量を抑えることが可能といわれる。昨今の環境保護運動により、ドイツの若者たちの間でベジタリアンが増加傾向にある。

11% 健康のため

動物性食品を摂らないことは、肥満などの生活習慣病の予防につながるだけでなく、糖尿病や骨粗しょう症のリスクを下げるともいわれている。ただし個人差があるため、栄養バランスの取り方(詳しくはQ3)は注意して。

Q3ベジ生活を始めてみたいけど、肉を食べなくても大丈夫?
A3特にヴィーガンはビタミンB12が不足するといわれている。

ベジタリアンでもノンベジタリアンの場合でも、栄養バランスを取るのは重要なこと。ProVeg e.V.では、ハーバード大学公衆衛生学部によって開発されたヴィーガンのための栄養プレートを参考とすることを推奨している。あくまで目安となるため、本格的にベジタリアン生活を始めたい人は栄養士など専門家に相談するのがベター。また、特にヴィーガンの人が不足するといわれる栄養素がビタミンB12。これが不足すると、赤血球に異変が見られる巨赤芽球性貧血などの障がいにつながる可能性がある。ビタミンB12は基本的に動物性食品から摂るため、ベジタリアンの場合は積極的に摂取する工夫が必要だ。

ProVeg e.V.が推奨するヴィーガンのための栄養プレート

ヴィーガンのための栄養プレート

ビタミンB12不足を防ぐには?

ProVeg e.V.では、ビタミンB12のサプリメントが推奨されている。マルチビタミンの場合、ほかの栄養素によって分解される可能性があるため、単体で摂取することが望ましい。また、ビタミンB12が配合された歯磨き粉も販売されている。

Q4食べること以外に、ベジタリアンとしてできることは?
A4綿や麻を使用したヴィーガンファッションを取り入れる。

ヴィーガンやベジタリアンは食の分野だけでなく、本来はライフスタイルそのものを指す。毛皮の製品を使用しないことも、そのアクションの一つ。でも実は、私たちの周りは動物由来のファッションに溢れている。例えばウールやカシミヤなどは、動物の毛を刈り取ることで原料ができる。毛はいずれまた生えてくる、と安心することなかれ。実は刈り取る際に動物たちにストレスを与えるだけでなく、けがをさせるリスクも。動物の尊厳を守るため、右記のような服やアイテムを選ぶこともヴィーガンの生き方の一つだ。

  • 生分解性合成繊維

    ペットボトルからリサイクルされた合成繊維や、本革の代わりに合成皮革などを使用する。それらの製品が環境汚染に加担していないかどうかもポイント。

  • 天然繊維

    綿や麻は、ヴィーガンファッションにとって欠かせない素材。そのほか、生分解できる大豆などの植物由来繊維や、コルクを使用した財布やバッグなどの製品もある。

  • 木材や竹など

    木材や竹、紙、石などの素材から作られたサングラス等のファッション小物も人気が高まっている。ほかにも、海藻が新たな繊維として注目されている。

最終更新 Dienstag, 07 April 2020 15:26
 

ドイツのベジタリアン事情 - 人気のベジタリアン食材

ドイツのベジタリアン事情 今をときめく
ベジタリアン食材

ドイツで生活していると、ベジタリアンとノンベジタリアンの人が一緒に食卓を囲む機会も多いのではないだろうか。ここではそんな場面を想定し、ベジタリアン・ヴィーガン食材の認証マークの違い、さらにみんなで食卓を楽しく囲むためのおすすめベジ食材を紹介する。(Text:編集部)

主なベジタリアン・ヴィーガン食材の目印

Vegan-BlumeVegan-Blume

英国ヴィ―ガン社会協会が1990年に生み出した世界初のヴィ―ガンラベルで、食品や化粧品、衣料品に付与される。ちなみにこの団体は、1944年に「ヴィーガン」という言葉とその定義をつくったことでも有名だ。ドイツでもこのマークの製品が流通。
認証元:Vegan Society England www.vegansociety.com

V-LabelV-Label

欧州で最も一般的に使用されている国際的なラベルで、商品の内容によってマークの下に「ヴィーガン」もしくは「ベジタリアン」と記載される。ドイツではProVeg e.V.が母体となって、ラベルの認証および付与を行なっている。
認証元:ProVeg e.V. https://proveg.com

Vegan-LabelVegan-Label

ドイツヴィ―ガン社会協会によって付与されるラベルで、前述の二つよりも基準が厳しい。製品の包装にも動物性成分や添加物を禁止し、さらに生産から包装までの全ての工程が、ヴィ―ガン食品が生産される工場でのみ行われる必要がある。
認証元:Vegane Gesellschaft Deutschland e. V. www.vegane.org

ドイツのスタートアップが熱い!
おすすめベジ食材

ベジタリアン大国とあって、数多くのスタートアップ企業が食材づくりに情熱を注いでいるドイツ。食品開発だけでなく、それらを使った自由な発想のレシピをウェブサイトなどで無料公開しているのが特徴だ。ベジタリアンの人はもちろん、ノンベジタリアンの人も料理の幅が広がるかも?

little Lunch
オーガニックスープ

little Lunch オーガニックスープ

アウクスブルク出身のダニエル、デニス・ギビシュ兄弟が「オフィスでの昼食をより健康で環境に優しいものに」という信念のもと、2014年にオーガニックスープを開発した。同社のスープはヴィーガン対応やグルテンを含まないものが多く、防腐剤や砂糖なども不使用。常温で数カ月以上保存できるので保存食にも◎。出荷時には100%リサイクル可能な段ボールで梱包し、ウェブサイトでは使用後のスープ瓶をアップサイクルする方法まで紹介している。

little Lunch GmbH
本拠地:アウクスブルク
https://www.littlelunch.de

Happy Cheeze
カシューナッツのチーズ

Happy Cheeze カシューナッツのチーズ

2012年にニーダーザクセン州クックスハーフェンで設立されたスタートアップで、ヴィ―ガン用乳製品の加工に力を入れている。カシューナッツをベースにしたヴィ―ガン用チーズを欧州で初めて生産し、これまでにない味覚体験で話題を呼んだ。ただしチーズの製法自体はドイツの伝統にのっとっており、おいしさの秘密は丁寧な工程と数週間の熟成だそう。材料のカシューナッツはもちろんオーガニックで、防腐剤や化学添加物も不使用。

Happy Cheeze GmbH
本拠地:クックスハーフェン
https://www.happy-cheeze.com

KOFU
ひよこ豆の豆腐

KOFUひよこ豆の豆腐

ミャンマーの伝統的な食品「シャン豆腐」からインスピレーションを受けて、ベルリンのスタートアップが開発した「KOFU」。使われているのは、ひよこ豆、水、塩、スパイスのみでシンプルな味わいが人気だ。独自のレシピを豊富に展開しており、アジアをはじめ中東、地中海など、さまざまな国や地域の料理として楽しめる。どんな料理にも合う優れものだが、同社の一番のおすすめの食べ方は「素揚げ」。外はカリカリ、中はクリーミーでやみつきに。

Zeevi Kichererbsen GmbH
本拠地:ベルリン
https://www.kofu.berlin

Sonnenblumen Hack
ヒマワリの種ひき肉

Sonnenblumen Hackヒマワリの種ひき肉

アルゴイのスタートアップSunflowerFamilyが開発したのは、世界初のヒマワリの種から作られたひき肉。ヴィーガンの食事で「肉の代用品」といえば大豆製品が主流だが、Sonnenblumen Hackは100%ヒマワリの種のタンパク質でできており、軽やかな味わいと香ばしさが特徴。水に濡らすだけですぐに使えるので、料理の手間がかからないのがうれしい。彼らがウェブサイトで公開するレシピもぜひチェックしてみて。

SunflowerFamily GmbH
本拠地:アルゴイ
https://sunflowerfamily.de

Nu+Cao
チョコレートバー

Nu+Caoチョコレートバー

大学の同級生だった3人組がドレスデンを拠点に立ち上げたthe nu company。彼らが製造するチョコレートバーは、栄養価が高くて環境負荷の少ないのが特徴で、砂糖の使用料を65%カットしてココナッツの花の蜜で代用するほか、包装にはプラスチック不使用。それでも環境への配慮が十分でないと考えた彼らは、「1 Produkt=1 Baum」という取り組みを開始した。チョコレートバー1本につき9セントをNGO団体のエデン・森林再生プロジェクトに寄付し、これまでマダガスカルに20万本以上のマングローブが植樹されている。

the nu company GmbH
本拠地:ドレスデン
https://www.the-nu-company.com

Bio-Fruchtgummi
フルーツグミ

Bio-Fruchtgummiフルーツグミ

女性2人組がハンブルクを拠点に創業したスタートアップFoodlooseでは、「自然こそが贅沢」をコンセプトに100%オーガニック素材を使用し、ナチュラルで愛情のこもったお菓子を製造している。今回紹介するフルーツグミは、ゼラチンや甘味料、グルテン、砂糖など一切不使用。リンゴ、ラズベリー、マンゴーの自然な甘みとフルーティーな味わいが特徴で、子どもたちに安心して食べさせることができる。また、売り上げの一部は、障がいのある子どもがいる家庭を支援する団体nestwärme e.V.に寄付している。

Foodloose GmbH
本拠地:ハンブルク
https://www.foodloose.net

pläin
植物性ミルク

pläin植物性ミルク

「#ミルク革命(#milchrevolution)」をコンセプトに、食品技術、環境技術、産業工学のプロフェッショナル3人が植物性ミルクを開発。牛乳の風味や舌ざわり、クリーミーさや泡立ちなど、再現率が非常に高いのが特徴だ。ヴィーガンの人は牛乳の代替品として豆乳やココナッツミルクを選ぶことが多いが、Pläinでは「おいしいミルクを味わいたい」という欲求を満たしつつ、自身の健康や環境・動物への配慮を実現できるという。ウェブサイトでは、Pläinとフルーツを使ったスムージーや、ケーキなどのレシピを公開している。

pläin GmbH
本拠地:フライジング
https://plaein.de

Charitea
フレーバーティー

Chariteaフレーバーティー

2009年に3人の友人同士で立ち上げたスタートアップで、オーガニックかつフェアトレードの原材料を使ったお茶やレモネードの開発に取り組んでいる。製品の「Charitea(チャリティー)」という名前の通り、売り上げの一部を発展途上国の農業支援や教育支援などに寄付。人工甘味料や香料、保存料は一切不使用のヴィーガン飲料で、緑茶をはじめ、栄養価の高いマテ茶やノンカフェインのルイボスティーなど、さまざまなフレーバーを楽しめる。どれもすっきりとした味わいで、冷やして飲むのはもちろん、ジンやウォッカなどの蒸留酒と割るのも◎。

Lemonaid Beverages GmbH
本拠地:ハンブルク
https://charitea.com

最終更新 Dienstag, 07 April 2020 18:31
 

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