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ドイツ中興の祖 ゲアハルト・シュレーダードイツ中興の祖
ゲアハルト・シュレーダー
著者 熊谷徹

ISBN: 978-4-8222-5008-9
発行元:日経BP社

読者の皆様の中には、「欧州の多くの国が今もユーロ危機の影響で苦しんでいるのに、なぜドイツだけは経済状態が良いのだろう?」と思われている方も多いと思います。例えば、昨年のドイツの失業率は5.3%で、欧州連合(EU)平均の半分以下でした。隣国フランスが貿易赤字に苦しんでいるのに対し、ドイツは貿易黒字を増やしています。

その理由は、2003年にシュレーダー首相(当時)が実行した社会保障制度・労働市場改革「アゲンダ2010」です。彼は、一時400万人を超えていた失業者数を大幅に減らすことを最大の目標に掲げました。そのため、失業保険や年金保険の給付を大幅に削減したり、公的健康保険の自己負担を増やしたりすることによって企業の社会保険料負担を削り、これによって少なくとも統計上は、2005年からの7年間に失業者の数を約180万人減らすことに成功しました。

しかし、シュレーダーはそのために国民や所属する社会民主党(SPD)から批判され、第2期目の半ばで首相の座を追われてしまいました。シュレーダー改革の成果は彼の予言通り、2010年以降に表れました。ドイツは長い間、改革が掛け声だけで終わり、なかなか実行され ない国でした。「ドイツでも改革が可能だ」ということを全世界に示したことは、シュレーダーの最大の功績です。

この改革の背景について、ドイツ在住のジャーナリスト、熊谷徹さんが本を書かれました。「アゲンダ2010」については、低賃金労働者の比率を増やし、所得格差を拡大したという批判もあります。働いていても、収入が少ないために国からの援助を受けなければ生活できないワーキング・プアの問題も浮上しています。このため今日のSPDでは、「アゲンダ2010」という言葉がタブーにすらなっています。本書はシュレーダー改革のプラス面だけではなく、影の面にも注目しています。メルケル政権はシュレーダーの社会保障削減を部分的に逆戻りさせているほどです。

彼の人物像や今日の政権政策の背景を知る上でも、参考になる本です。


 
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