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角田鋼亮さん角田鋼亮さんインタビュー

「のだめカンタービレ」をご存知だろうか。2006年のテレビドラマ化で大ブレークした、二ノ宮知子著作のコメディ漫画だ。クラシック音楽をテーマに、音大生の野田恵を中心とする個性あふれるキャラクターが繰り広げる青春もので、今春にはスペシャル版「のだめカンタービレ・新春スペシャル IN ヨーロッパ」も放送され話題となった。指揮者を目指す千秋真一の迫力ある指揮シーンに、目が釘づけになった人も多いと思うが、なんとその指揮指導をしたのが、今回ご紹介する角田鋼亮さんだ。現在、ベルリン音楽大学「ハンス・アイスラー」(Hochschule für Musik Hanns Eisler Berlin)に在学。今月27日に迫ったコンサートの準備で多忙な角田さんに、指揮の魅力、今後の夢などを語っていただいた。(編集部)

角田鋼亮(つのだこうすけ)
1980年、名古屋市生まれ。3歳よりピアノ、8歳から作曲を学び、中学・高校時代には母校のオーケストラ部で指揮を担当する。東京藝術大学音楽学部指揮科で指揮法を松尾葉子、佐藤功太郎各氏に師事。卒業後、進学した同大学大学院で2004年、クルト・マズア氏によるマスタークラスの受講生に選ばれる。05年4月、同大学院を休学し、渡独。同9月にベルリン音楽大学「ハンス・アイスラー」に入学、指揮をクリスティアン・エーヴァルト、合唱指揮をエバーハート・フリードリヒ各氏に師事する。

指揮を始めたきっかけを教えてください。

通った中学校、高校にオーケストラ部があり、顧問の先生が指揮者として誘ってくれたのがきっかけです。

指揮の楽しさとはどんなところでしょうか?

目に見えないモノ(音)を、身振りや手振りで形にしていくところがおもしろいですね。一つの曲は、作曲家の意志やその時代背景などを表すものです。曲、作曲家が大前提にあり、彼らのメッセージを聴衆に伝える。そして、その中間地点に立っているのが指揮者とオーケストラなんです。オーケストラを動かし、聴衆に音楽を伝えるのは難しいですが、やりがいがあります。

好きな作曲家は?

僕はドイツの音楽が好きで、作曲家ではモーツァルト、シューマン、メンデルスゾーン、マーラーがいいですね。感覚的、感情的なものを直接、音に表すフランス音楽と違って、ドイツ音楽は基本的に、思想的、哲学的、宗教的なものを形にしていると思うんです。そのプロセスや背景をたどっていくのが好きです。どういう考えを基に音楽をつくったのか、思いを巡らすのはとても楽しいですね。

現在はベルリン音楽大学「ハンス・アイスラー」で学んでいらっしゃいますが、ベルリンの街の印象は? また、角田さんにとってベルリンとは?

音楽的な刺激を受ける場所、自分のスタイルを確認できる場所、でしょうか。自分がこうありたいというものが詰まっていますね。さまざまな芸術の交流地点で、新旧が混ざり合い、都市と自然が共存している。その中で、いまの音楽が生まれていくのを見ることができる所だと思います。それから街中で、演奏会のポスターや、指揮者の大きなポスターが貼ってあるのを見かけると、音楽が身近にあるんだなと感じます。地下鉄でジプシーが演奏しているのも新鮮ですね。

留学中の「ハンス・アイスラー」と日本の大学との違いはありますか?

実践練習の回数が違います。断然多い。日本だと大体年1回のペースでオーケストラと対面して練習しますが、こちらでは月1回のペースです。指揮者を育てる環境がより整っているのは、ドイツだと思います。

角田さん
大学主催の「DirigentenWerkstatt INTERAKTION」にて

ドイツに来て今年で3年。ドイツ語は上達されましたか?

まだまだベルリン訛りは出ませんが(笑)、何とかなってきています。ちなみに、指揮を振る際は音楽用語があるので、普段の言葉とは違うんですよ。だから、その際は、「フォルテ」「ピアノ」などのイタリア語に逃げる場合がありますね。指揮をしているときには、一生懸命なのであまり意識しませんが、後になって、伝わらなかったもどかしさを感じることもあります。でも、口で説明するより体で表現しているので、ドイツ語ができなくてもいいのかも(笑)。

ベルリンがとても気に入っていらっしゃる様子の角田さん、ほかに好きな街はありますか?

街中に水のある風景が好きなので、ハンブルクやドレスデンは気に入っています。

好きなドイツの食べ物は?

ソーセージも好きですが、特にマウルタッシェンが大好きです。スープに入れるバージョンがいちばん好きで、スーパーで買ってきては自分でスープに入れています。ケバブも好きで、よく食べますね。

ところで、あの大ヒットTVドラマのスペシャル版「のだめカンタービレ・新春スペシャル IN ヨーロッパ」で、指揮者を夢みる音大生、千秋真一の指揮指導をされました。どういうご縁だったんですか?また、役を演じた玉木宏さんとの交流は?

知り合いに紹介されたのがきっかけです。玉木さんとは歳も近く、背格好も似ていたからでしょうか。彼は僕の指導をとても熱心に聞いてくれ、最後は役者としてではなく、一人の指揮者として彼と接しているような気分でした。彼が本番の時は、僕まで緊張してしまいましたね。

東京藝大在学中には、「モーツァルト・オーケストラ」を結成されました。現在は「クラング・フォーラム」と名前を変え、活動されています。

音楽を美術、建築、演劇とコラボレーションさせていきたいんです。音楽は基本的に、現代音楽以外は再現技術で、作曲家の意志があるので、あまり演奏を変えることはできません。なので、他の芸術と組み合わせることによって、別の視点から音楽を捉え、音楽の幅を広げていければと思っています。

今月27日には、ブランデンブルク交響楽団とのコンサートが行われます。意気込みを聞かせてください。

僕が指揮を務めるのは、カロル・シマノフスキ作曲「ヴァイオリン協奏曲第1番op.35」です。シマノフスキはあまり演奏されない作曲家ですが、この曲は神秘的かつ官能的で、オリエンタリズムに溢れた曲です。その部分を上手く表現できたらいいですね。

読者のみなさんがオーケストラのコンサートをより楽しめるように、指揮者の立場からアドバイスをいただけますか?

指揮者は、オーケストラよりも1拍前に音楽の情報を出しています。オーケストラを先導しているわけです。音が出る時点で情報を出すのでは遅くなってしまいます。その点を鑑賞していただけると、どう音楽が流れていくのか、方向性やキャラクターがわかって楽しめるのではないでしょうか。指揮者によって、作りたいバランス、音響構造が変わってくるので、違う指揮者で同じ曲を聞いて比べてみるのも一興かもしれません。また最近は、古典派の音楽は昔の弓を使って演奏するなど、演奏に幅が出てきています。昔は「語る音楽」でしたが、いまは「歌う音楽」です。音色も、流麗で均等に出されるようになっていて、そこを敢えて、昔に戻る試みをしているオーケストラもあります。気をつけて聴いてみると、音の違いに気がつくこともできるはずです。

27歳という若さで、すでに数多くの功績を上げている角田さん。音楽に対する情熱や意気込みに溢れ、かつ、とても謙虚なお人柄で、時折見せるあどけなさに、親しみやすさも感じさせてくれる方でした。今後の益々のご活躍が楽しみです。

「Podium Jugend Künstler Klassik-Sonderkonzert」

ベルリン音楽大学ハンス・アイスラー修了生たちの修了コンサート。ブランデンブルク交響楽団共演。

会場 Brandenburgertheater Großes Haus,
Grabenstrasse 14, 14776 Brandenburg/Havel
(Tel. 03381-5110)
日時 4月27日(日)15:00
曲目 Richard Strauss, Don Juan/Karl-Amadeus Hartmann, Kammerkonzert für Klarinette, Streichquartett und Streichorchester/ Karol Szymanowski, Konzert für Violine und Orchester Nr.1 op.35
チケット 8ユーロ(割引5ユーロ)
ウェブ www.brandenburgertheater.de
 
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