Hanacell

世界を動かすビジネスリーダーに聞く!ドイツ発グローバル時代を生き抜くチカラ

海外進出が、大企業だけではなく、中小企業や個人にとっても必要不可欠な選択肢となっている時代。欧州の中心部に位置する地の利を活かして、ドイツを活躍の拠点としているビジネスパーソンが見いだした海外での挑戦の意義や魅力とは?


第13回

日独の健康への願いを繋ぐ
Yakult Deutchland GmbH

松井 康亮 氏松井 康亮 氏
Matsui Kosuke

プロフィール


エリアプロモーション・プロジェクトリーダー。大学時代に祖母と暮らした経験から高齢化問題に関心を持つ。宅配を通じて定期的に独居高齢者宅を訪問するヤクルトのビジネスモデルに興味を抱き、株式会社ヤクルト本社に入社。2014年よりドイツヤクルト販売で勤務。
https://yakult.de

腸の働きを助けてくれる乳製品乳酸菌飲料で、定期的に自宅やオフィスにヤクルトレディーが商品を届けてくれる……。「ヤクルト」は日本人であれば説明不要の誰もが知っているメーカーだ。病気にかからないための予防医学、腸を丈夫にすることが健康で長生きすることにつながるという健腸長寿、1人でも多くの人に手軽に飲んでもらえるような価格設定。「乳酸菌シロタ株」を発見した代田博士が提唱するこの3つの柱が事業の原点である同社は、現在アジアをはじめ、欧州、南米、北米、中東などさまざまな地域に拠点を構え、グローバルに事業を展開している。

ドイツの傾向を理解し、現地に入り込むチカラ

ドイツに進出してから20年以上が経過した現在、スーパーマーケットでも目にすることが多いヤクルトは、同地にも根付いている。しかし、ドイツの市場の状況は一筋縄でいくような簡単なものではなかった。

「新しいものにはチャレンジしてみるという日本の消費者の傾向とは違い、ドイツには伝統に忠実な人が多いように感じています。そのため、その商品が自分にとって本当に必要なものなのか、信頼できるものなのかをよく吟味した上で、十分に親しんでからでないと購入しない傾向にあるようです。また、企業の発信する情報を鵜呑みにせず、さまざまな媒体から幅広く情報収集するのも、ドイツ人消費者の特徴。苦戦を強いられるマーケットであることは渡独前から承知していました。現地の方たちの信頼を得るためにもう一度原点に立ち返り、地道にヤクルトを浸透させたいという思いでドイツにやって来ました」

顧客とコミュニケーションを図る際に必須となるドイツ語も、現場に出て使わざるを得ない状況の中で取得していった。

「ドイツに来て2、3カ月後にはミュンヘンで開催されたイベントに参加し、まだ慣れないドイツ語でプロモーションをしました。社内の現地スタッフも英語は使わずドイツ語で話しかけてくれ、根気良く私のドイツ語を理解しようと努めてくれたことも大きかったです」。対話の意思を示し、積極的にドイツ語を使う。これが一番早くドイツ語を身につける方法だと松井さんは話す。

地道な活動で広めるチカラ

ヤクルトの原点である草の根的なプロモーション活動は、顧客と密接にコミュニケーションを取るための中核となる活動だ。

「プロモーションの一環として無料配布などのサンプリングを行っています。2017年7月よりエリアマーケティングプロジェクトと題して、ラーティンゲン、ハイリゲンハウス、ヴュルフラートでローカル広告を打ち出したり、試飲活動を行っています。これらの活動により店頭販売を効率良く延ばせる方法を探っている段階です。対象地域の中でも、ハイリゲンハウスは恒常的に前年比の2倍の売上を達成しています。このように効果が目に見えるとやりがいを感じますね。最近ではボーフムやヴィッテンなどの4地域をプラスして計7都市でサンプリングの活動を行っています。各地域で効果が表れるようになれば、エリアも拡大していく予定です」

松井さんが活動するなかで心がけている信条が、相手の立場に寄り添うこと。「お年を召した方であれば、自分が子どもや孫の立場になって考えた場合、この先どのように健康に過ごしてほしいかなどを想像します。その上でヤクルトが長寿国・日本で生まれたこと、80年以上もの長い歴史があることなど、ファクトの部分を具体的にお伝えします」。食に関しても合理的に考えるドイツの人々の傾向を踏まえて、食に関する動向を知るためのリサーチにも余念がない。

「15年以上も前から1日1本飲んでくださるお客様も多くいます。長年にわたって飲み続ける理由を聞いてみると、整腸作用を体感されているというお声が多いです」

アイデアを持ち続けるチカラ

松井さんがドイツ企業を訪問し、サンプリングを行う様子
松井さんがドイツ企業を訪問し、サンプリングを行う様子

ドイツにおけるヤクルトの認知は70~80%と高い。今後はその認知度を購入につなげていくことが課題だという。「畑を耕し種をまくように地道にプロモーションを行い、そしていつか実がなるように1日1本を習慣化してくださる方が増えていくことが理想ですね。ヤクルトはこのように着実にファンを増やす、農耕型マーケティングのスタイルです」。

一度ファンになると長きにわたって信頼をおいてくれるドイツの国民性を大切にし、その地に足を運んで現地の人々とコミュニケーションを取り、消費者の声に耳を傾ける。ヤクルトレディーにも見られるような地域に根差した活動こそが、ヤクルトの本質でもある。

「もともと人と同じことをするのが好きではありません。なので、自分の意思やアイデアを考えながら宣伝活動を行えることはありがたいことです。欧州地域にはヤクルトレディーはいないのですが、日本だけでなくドイツにおいても高齢化は一つの大きな社会問題。弊社のホームページで載せているヤクルトレディーの活動に関するビデオをきっかけに、何かしらの社会貢献ができるアクションを起こせないか模索しています」

自身の原点を忘れずに活動する、松井さんとヤクルトの挑戦はこの先も続く。

 
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