Hanacell

世界を動かすビジネスリーダーに聞く!ドイツ発グローバル時代を生き抜くチカラ

海外進出が、大企業だけではなく、中小企業や個人にとっても必要不可欠な選択肢となっている時代。欧州の中心部に位置する地の利を活かして、ドイツを活躍の拠点としているビジネスパーソンが見いだした海外での挑戦の意義や魅力とは?


第16回

日本への入り口をもっと身近に
日本航空 フランクフルト支店長

戸取健一郎氏戸取健一郎氏
Todori Kenichiro

プロフィール


兵庫県神戸育ち。大学時代に1カ月かけて中国を一人旅するなど、海外に興味のある学生だった。大学卒業後に商社に勤めたのち、29歳で日本航空本社に入社。
主に国際線の営業として、米国、ハワイ、グアムなどのマーケティングも担当してきた。2015年4月にフランクフルト支店に赴任。www.jal.com

日本人なら誰もが知っている航空会社「日本航空(JAL)」。ドイツに初めて支店を置いたのは1960年のこと。今日では日独の直行便の飛行時間は12時間ほどだが、就航当初はフランクフルト、ローマ、カイロ……と6回ものトランジットを経たという。長い歴史を歩んでこられたのは、JALが大切にする価値観にあるようだ。現在、日本航空フランクフルト支店長を務める戸取健一郎氏に話を聞いた。

ドイツで日本らしさを追求するチカラ

ドイツでは、フランクフルトとデュッセルドルフの2カ所に営業所を構える日本航空(JAL)。ドイツの方にも継続して利用していただいているのが自慢、と戸取さんは笑う。あえて「郷に入りては」の原則にとらわれずサービスを提供するのが、JALのこだわりだ。「欧州ならではでなく、一人ひとりに寄り添う日本らしい対応に共感してくださる方が弊社を選んでいると感じます。例えば、空港のカウンターにお見えになったお客様とのパーソナルタッチを大切にしています。空港への到着が遅れてしまったお客様も全力サポートで、空港内を一緒に走ることも。また、日本のビジネスマンの方にはスピーディーに、日本が初めてという外国の方にはガイドブックを提供するなど、きめ細かく対応しています。そのほかお正月にはスタッフが着物を着たり、折り紙を飾るなどの演出も。

2018年9月に実施された芝浦工業大学のドイツ研修より、永井さんの都市計画ワークショップの様子
ラウンジは、JALだけでなくワンワールド加盟の航空会社
の搭乗客も利用できるため、欧州各地の人々から人気

また、フランクフルト空港には欧州で唯一の自社ラウンジがあり、入り口には日本を連想させる桜の絵を飾っています。フランクフルトの人気日本食レストラン『無垢』の『まかないチキンカレー』もご提供しており、これがまた大変な人気。日本へ出かける方に、空港から日本を体験してもらうことを目指しています」

その日本らしさを提供するため、現地スタッフの育成にも力を入れている、と戸取さんは続ける。「社員研修は日本で行い、実際に日本らしさを体験してもらうんです。おじぎや両手でものを渡すような丁寧さが、JALらしさにつながっていると思います。最近では、日本文化や日本語を学ぶ人も増えているので、そういう方を積極的に採用するようにもなりました」

自分の立ち位置を見極めるチカラ

2015年まで日本で活躍されてきた戸取さんは、渡独当初に大きなカルチャーギャップを感じたと話す。「欧州には日本のことを知らなくても幸せな人生を送れる人がたくさんいる……ドイツに来てそのことを思い知らされ、ものすごいショックを受けました。これまでは日本中心の考え方で仕事をしてきたので、まったく逆の立場です。外国でビジネスをするうえでは、まずは自分の立ち位置をきちんと認識し、そこから何ができるのかを考えることが大切なのだと思います。

さらに、外国の方とコミュニケーションする上で大事なのは伝えたいという気持ち。文法を間違えずに話そうとするから、伝わらないこともある。実はこれ、日本人スタッフから教わったことでもあります。異文化に突入するには、根気も必要だと感じますね」

活動域を広げていくチカラ

ドイツ歴の長い日系企業ならではの取り組みも。そこには、戸取さんの持前の行動力が欠かせない。「日本文化を広める活動にも積極的に関わっています。例えば日本がテーマの作文、漫画やコスプレのコンテストへの協力や、俳句を通して子どもたちに日本文化を伝えたり、国際交流促進活動のサポートなども。さらに、日本の折り紙ヒコーキ協会の講習会にスタッフに参加してもらい、何人かが準指導員の資格を取得し、イベントなどで紙飛行機を広める活動もしています。

また、国連が唱えるSDGs(持続可能な開発目標)についても、企業としてできることを模索中。つい先日も、知人の紹介を機にドイツ国際平和村を各職場の代表者を集めて訪問し、そこで私たちに何ができるのかを考える機会がありました。これらの積み重ねが、JALの仕事をより良くしていくのだと信じています」

仕事を越えた活動も大切にする戸取さん。今後の目標を尋ねると、「継続」という言葉が返ってきた。「今会社をリードする社員がリタイアしても、次の世代や現地採用の社員が中心となって動かせる企業になってくれたらと。もちろん大変なこともあるのですが、そんなときは『JAL フィロソフィ』を思い出します。これはJALの経営再建時につくられたもので、人生を豊かにするような平たい教えが多いんです。私が好きなのは『美しい心を持つ』という言葉で、人間として何が正しいのかを判断する基準になっています。少し大袈裟ですが、ドイツで心の支えになっていますよ」

移動手段として日本とドイツの2つの国を結ぶだけでなく、人々の心をつなぎ、日本文化を広める役目も担うJAL。それを支えながら次の世代に手渡していくことは、戸取さんの今後の大きな挑戦になりそうだ。

 
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