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Mo. 01. Mär. 2021

晩秋のシュラハテンゼー湖畔を歩く

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11月2日からの部分的ロックダウンにより、劇場やミュージアムなどの文化施設はしばらく閉鎖されることになった。イベントについて書くのは難しい状況だが、幸い当連載のテーマである「散歩」は引き続きできる。11月半ばの土曜の午後、単調になりがちな日常から少しでも抜け出そうと、家族で地下鉄U3の終点クルメ・ランケ駅に向かった。

シュラハテンゼーの湖畔を散策する人々
シュラハテンゼーの湖畔を散策する人々

駅から閑静な住宅街が続くフィッシャーフュッテン通りを10分ほど歩くと、森に突き当たる。ベルリン西部最大の森の一つであるグルーネヴァルトの入り口だ。ちょうどここはクルメ・ランケとシュラハテンゼーという二つの湖の境。地図を見ると、北側のフンデケーレゼー、グルーネヴァルトゼーから南のシュラハテンゼーまで、底の浅い小皿のような形状でそれらが一体となっている。いずれも約1万5000年前の氷河期の雪解けにより生まれた湖だ。

湖へと続く土手道は湿った落葉でぎっしり埋まり、土の感触を味わいながら歩く。それだけで気持ちがすっと軽くなった気がする。やがて見えて来たのが湖畔にあるフィッシャーフュッテ(漁師の小屋)という歴史あるレストラン。10年以上前、人に連れられて一度だけここに来た。湖を眺めながらの食事はすてきな時間だった。残念ながら現在店内での営業は認められていないが、屋外で飲み物やソーセージが売られ、人々は憩いの時間を楽しんでいる。

ここを起点に湖畔を歩いてみることにした。シュラハテンゼーは交通の便が良い湖で、二つのS バーンの駅がほぼ隣接している。東側の岸辺を歩くと、シュラハテンゼー駅まで近いが、せっかくなので細長い湖の端まで歩こうと西側の岸辺を選んだ。

道はよく整備されており、ジョギングする人やイヌの散歩をする人の姿も目立つ。すでに落葉の時期はほぼ終わり、黄色の華やかさからは遠のいたものの、沈みゆく太陽の光によって湖上と枯れ技が照らされ、濃淡の美が生まれる。これはこれで悪くない。

S バーンのニコラスゼー駅近くで出会った夕暮れ
S バーンのニコラスゼー駅近くで出会った夕暮れ

湖の中ほどに1枚の絵画の写真が飾られていた。表現主義の画家、ヴァルター・ライスティコウ(1865-1908)が1895年に同じ地点から描いたAbendstimmung(夕暮れ時の印象)という作品。木の本数が違うほかは、125年前の風景とほとんど変わりなく、偶然にも沈む太陽の位置までほぼ同じだ。絵の時代に迷い込んだような気分になった。

大きな葉っぱを見つけながら歩く息子は次第に疲れてきたが、左右の木々の奥からS バーンの音が聴こえてくると、少し元気を取り戻す。ライスティコウがあの絵を描いた当時、今日のS1とS7の原型となる線はすでに通っていたので、彼は湖畔を歩きながら蒸気機関車の音を耳にしていたはずだ。

湖の端から出て、高級住宅街をしばらく歩き、ゴール地点であるニコラスゼー駅に向かう。そこから見た夕焼けの赤みがかった幻想的な色合いは、日が落ち始める前の色味のない風景となんと対照的だったことだろう。125年前の湖畔の風景との出会いもあり、思いがけずドラマティックな散策となった。

インフォメーション

シュラハテンゼー
Schlachtensee

ツェーレンドルフ地区にある湖。5.5キロもの湖畔の周囲は遊歩道として整備されており、ジョギングコースとしても人気が高い。飲料水に近い澄んだ水質のため、夏は海水浴も楽しめる。最寄り駅はS1のシュラハテンゼー駅。駅前から半島のようにせり出した部分までは、パウル・エルンスト公園としてレクリエーションエリアになっている。

ディ・フィッシャーフュッテ・アム・シュラハテンゼー
 Die Fischerhütte am Schlachtensee

シュラハテンゼーの湖畔にあるレストラン。湖の周辺に住宅が建ち並ぶようになるのは19世紀末以降だが、ここの飲食店としての歴史は1723年にさかのぼる。ドイツ料理を味わえるレストランに加えて、湖畔に面したテラスも。素晴らしいロケーションゆえ結婚式のパーティーなどにもよく利用されるという。そばには子どもの遊び場もある。

オープン:月曜〜日曜9:00〜19:00(現在は要確認)
住所:Fischerhüttenstr. 136, 14163 Berlin
電話番号:030-80498310
URL:www.fischerhuette-berlin.de

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(ダイヤモンド社)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
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