Jal2024Feb

技術博物館で旧アンハルター駅に出会う

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ベルリンでは毎月第1日曜日にミュージアム・サンデー(Museumssonntag)が開催され、美術館、博物館を無料で見学できる。公式サイトから今月のプログラムを見ていると、技術博物館の鉄道部門で行われる模型運転が目に入り、行ってみることにした。

地下鉄U7のメッカーンブリュッケ駅から運河沿いに沿って5分ほど歩き、博物館に入ると、大勢の家族連れでにぎわっていた。エントランスホールの階段を上がり、右に曲がると、その先が鉄道の展示になっている。毎回来るたび、この展示の充実ぶりには驚かされる。今も稼働する機関車のターンテーブルがあり、車庫には19~20世紀にかけて活躍したドイツの鉄道車両がずらりと並ぶ。その一角に、1939年のベルリン・アンハルター駅を1/87スケールで再現した鉄道模型のレイアウトがあった。

ドイツ技術博物館で再現された1/87スケールの旧アンハルター駅ドイツ技術博物館で再現された1/87スケールの旧アンハルター駅

このレイアウトは、壮麗なアンハルター駅の駅舎から始まる。1880年の完成当時、この駅は欧州で最大規模を誇り、国際的なセンセーションを巻き起こしたほどだった。模型列車が駅構内を出ると、南側に広大な操車場や貨物駅が広がる。現在の技術博物館はまさにこの敷地内にあり、当時のターンテーブルや車庫、一部の線路を産業遺産として保存しているのもそのため。レイアウトでは地下鉄やバス、広告塔、さらに道ゆく人まで緻密に再現されており、息子と一緒に時がたつのを忘れて見入った。

博物館訪問後、この旧アンハルター駅にまた違う角度から「没入」する機会があった。技術博物館は、当駅をバーチャルで復元するプロジェクト「アンハルター駅再訪」を今年5月から公開している。早速ページにアクセスしてみると、広場の前に神殿のような駅舎が構え、馬車や路面電車の音が聞こえてくる。スクロールしながら周囲の風景を360度見渡せるのが楽しい。玄関ホールは、劇場や美術館かと見紛うほど豪華。その先に進むと、頭端式ホームが眼前に広がる。ここからドイツ国内のみならず、ウィーン、ローマ、あるいは地中海に面したコート・ダジュールまでも乗り換えなしで行くことができた。

現在ドイツの駅に改札口はないが、1893年以降、アンハルター駅には改札口が設置され、見送る人も入場券が必要だった。また、駅から豪華ホテル「エクセルシオール」へと結ぶ地下トンネルが存在したことなど、知られざるエピソードにも出会った。

旧アンハルター駅が再び脚光を浴びているのは、この駅の遺構の裏手に将来「亡命博物館」が建設されるからでもある。1942年6月から45年3月にかけて、116本もの列車がここからテレージエンシュタットに向けて発車した。乗客の多くはユダヤ人の年配の女性と男性。早朝、一般の旅客列車と見た目は変わらない巧妙な手段で、ナチは人びとをゲットーへと送った。

„Anhalter Bahnhof Revisited“で再現された往年のアンハルター駅の構内„Anhalter Bahnhof Revisited“で再現された往年のアンハルター駅の構内

アンハルター駅がロマンチックな旅の舞台であったのみならず、亡命、さらには死へと向かう列車の出発点だった歴史も、このバーチャルツアーはさりげなく提示していた。

インフォメーション

ドイツ技術博物館
Deutsches Technikmuseum

クロイツベルク地区にある博物館。2023年に開館から40周年を迎え、ミュンヘンのドイツ博物館と並び、ドイツを代表する技術博物館として名高い。アンハルター駅の鉄道模型は、ミュージアム・サンデーを含めて月に2回程度、博物館友の会のメンバーによって運転されている。入場料は8ユーロ(割引4ユーロ)、18歳以下は無料。

オープン:火~金9:00~17:30、土日祝10:00~18:00
住所:Trebbiner Str. 9, 10963 Berlin
電話番号:030-902540
URL:https://technikmuseum.berlin

「アンハルター駅再訪」
„Anhalter Bahnhof Revisited“

ドイツ技術博物館とダルムシュタット工科大学との協力によるバーチャルツアーのプロジェクト。訪問者は旧アンハルター駅構内のさまざまな場所を見て回りながら、建築様式やそれにまつわる物語に出会うことができる。下記ウェブサイトのほか、現在のアンハルター駅地上に表示されているQRコードから直接ツアーにアクセスすることも可能。

URL:https://anhalter.technikmuseum.berlin

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
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