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膀胱炎(ぼうこうえん)

1年に数回ほど膀胱炎になります。何か問題があるのでしょうか。

膀胱とは

膀胱(Harnblase)は、腎臓で作られた尿を貯めておく柔軟性に富んだ柔らかい袋で、内側は粘膜(膀胱粘膜)と呼ばれる比較的傷つきやすい薄膜に覆われています。膀胱容量は個人差があるものの、平均500ml程度です(図1)。ちなみに、昔のラグビーボールはブタの膀胱から作られていたとも言われています。

膀胱の位置
女性の尿道は4cmほどしかなく、
男性に比べて細菌の上行性感染が起きやすい

膀胱炎とはどんな病気ですか

膀胱炎(Zystitis、Blasenentzundung)は、膀胱内に細菌が入りこみ繁殖することによって起こる炎症性疾患です。また、医学的には、尿1cc当たりに含まれる細菌の数が10万個以上の場合を細菌尿といいます。細菌尿の有無は、膀胱内での細菌感染の目安となります。細菌尿の原因としては、大腸菌が最も良く知られています。膀胱炎は20~30歳代の、特に女性に多くみられますが、決して恥ずかしい病気ではありません。

どのような症状が見られますか

膀胱粘膜に細菌が付着・増殖し、炎症を起こすと、その炎症の刺激で、おしっこをする時の不快感、排尿痛、下腹部の不快感、排尿後にもまだ尿が残っている感じ(残尿感)、尿量が少ないにもかかわらず、すぐトイレに行きたくなる(頻尿)、などの自覚症状が見られます。他覚所見としては、尿が濁ったり(尿混濁)、血液が混じったりすることがあります(血尿)。

表1 急性膀胱炎の主な症状
● トイレが近くなる ● 排尿時の不快感 ● 排尿時の痛み ● 残尿感
● 下腹部の不快感 ● 尿の濁り● 血尿
(程度によって症状は異なります)

どうして女性に多いのですか

膀胱炎は、女性なら一度は経験すると言われるほど女性に多い 疾患です。なぜなら、女性の尿道は3~5cmと男性に比べて短く、そのため外陰部の大腸菌などが体内に入りやすいためです。ほとんどが尿道を通って感染します。

誘因は何ですか

性行為の後(ハネムーン膀胱炎)や、過労や不眠などで細菌感染に対する防御機構が低下した時に起きやすくなります。よく一般に言われるように、トイレを我慢したからといって膀胱炎になるわけではありませんが、一旦、膀胱内に入った細菌にしてみれば、尿は温かく栄養分の多い培地のようなものですから、細菌繁殖の良い条件となります。

表2 日常生活の注意
1.細菌を入れない 3.抵抗力を維持する
● 清潔に保つ
● パートナーも清潔に保つ
● 性生活の後の洗浄
● 排便後は前から後ろに拭く
● 過労をさける
● 十分な睡眠をとる
● 極端なダイエットをしない
2.細菌を増やさない 4.症状の軽減のため
● トイレに行くのを我慢しない
● 水分を多く摂る
● 刺激の強い香辛料・食べ物は
控える
● 適切な抗菌薬の服用

検査と診断は

「排尿時の痛み」「尿回数の増加」「尿の濁り」が膀胱炎の3つの特徴です。またこれらの症状に加えて、尿所見として尿中の細菌の有無、炎症によって増える尿中の白血球数の増加、膀胱粘膜からの出血による尿中赤血球の有無を確認します。ただし、すでに抗菌薬の服用を開始している場合や、生理中の尿所見は必ずしも当てにならないことがあります。検査前に必ず、医師にその旨を話すようにしましょう。

急性と慢性

3日間ぐらいの経過で治癒する一過性の「急性」、臨床経過が長い「慢性」に分けられるほか、膀胱炎感染を起こしやすい基礎疾患がない「単純性」と基礎疾患のある「複雑性」に分けられます。このうち、多くの女性が経験するのは「急性単純性膀胱炎」(以下、急性膀胱炎)です。

大腸菌が最も多い原因

急性膀胱炎の原因となる細菌の4分の3を占めるのが大腸菌です。これは肛門や外陰部に付着した大腸菌が入り込むためです。次に多いのが、表皮ブドウ球菌、腸球菌です。

治療法は

急性膀胱炎は感染症で、通常は抗菌薬(抗生物質)を1~3日間服用することで、症状は劇的に良くなります。

男性も膀胱炎になりますか

男性の単純性膀胱炎は稀で、女性9に対し1の割合です。必ず尿 道炎の症状が先に見られ、男性で膀胱炎症状を訴える場合には、前立腺炎や慢性の複雑性膀胱炎などが考えられます。慢性複雑性膀胱炎は、外傷や手術、神経疾患などで膀胱の機能が低下する神経因性膀胱、膀胱の腫瘍、尿道カテーテルの長期使用の場合に来たす病気です。

その他、膀胱の病気には何がありますか

膀胱神経症
頻尿、残尿感などの膀胱炎症状を繰り返し訴える方に見られます。昼間は5~30分毎にトイレに行くものの、夜間や何かに熱中しているときには尿意を訴えず、意識すれば意識するほど我慢できなくなるなどの特徴があります。尿検査でも異常が見つかりません。このような場合、手持ちの抗菌薬の服用を安易に繰り返すと、菌交代現象を起こしたり、必要な常在菌が死滅して真菌性膣炎の原因になったりします。少なからず、心理的な要因が関与しているとも考えられています。

間質性膀胱炎
主に20~60歳代の女性に見られる膀胱の炎症疾患で、アレルギーの関与も疑われていますが、原因はまだ明らかではありません。「尿意の切迫感」と夜間も続く「頻尿」、そして特に充満時に見られる膀胱部の痛みが特徴的です。辛みの強い刺激物や、精神的なストレスも病状の変化に関係します。

クラミジア膀胱炎
性行為感染症であるクラミジア感染による膀胱炎です。男性では尿道のかゆみと排尿痛、女性では初期には症状が乏しいもののオリモノの増加や、放置しておくと子宮頸管や膀胱まで炎症が広がります。治療には、マクロライドやテトラサイクリン系の抗生物質が用いられます。

急性腎盂腎炎
膀胱内の細菌が上行性に腎臓に達した場合に併発します。脇腹から背中にかけての痛み、発熱、寒気などを訴え、吐き気などの消化器症状を伴うこともあります。また、感染している側の腎臓部分の背中を叩くと痛みがあります。同じように抗菌薬で治療しますが、症状は膀胱炎に比べて重篤です。

役に立つドイツ語
膀胱炎  Blasenentzundung, Zystitis
残尿感 Restharngefühl
排尿時の痛み、不快感 Schmerzen und Brennen beim Wasserlassen
下腹部の痛み Schmerzen im Unterlieb
頻尿 Häufiger Harndrang
細菌尿 Bakteriurie
血尿 Hämaturie
 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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