Hanacell

夏の休暇を健康に過ごすために

この夏休みに、家族4人で地中海の島へ旅行します。小さい子どもがいるのですが、熱中症などが心配です。また上の子は8月に南ドイツでのキャンプ旅行に参加します。ダニ脳炎の予防接種を受けた方がよいでしょうか?

Point

  • 気温の日内変動、日差変動が大きい
  • 涼しく感じても水分補給が大切
  • 夏は足水虫の増殖期
  • ここ数年の南欧は暑さが増している
  • 熱中症? の時はぬるい水風呂
  • 旅行時に多い風邪症状、消化器症状
  • 森林地帯ではダニ脳炎にも留意

温度の変化、水分補給

日中は暑く、夜は冷える欧州の気候

欧州の夏は、年によって気温が大分違います。また朝は涼しく、午後は暑く、夜遅くは冷えるという日内変動のほか、気温の日差変動も大きく、同じ週でも日によって著しく変化することがあります。たとえ日中暑くとも、夜まで外出する際は上着を忘れずに。

自覚しない暑さ、空気の乾燥

ドイツの夏は、日本のようにムッとした蒸し暑い日は多くありません。気温30度でも、風通しのよい木陰では涼しく感じることも。そのような状況でも皮ふからは不感蒸泄と呼ばれる現象で、汗に水分が失われています。定期的な水分補給を忘れないようにしましょう。

休暇旅行に多い風邪と消化器症状

意外と多いウアラウプ病

ドイツでは、旅行者の5人に1人が休暇病(ウアラウプ病、Freizeitkrankheit)になるといわれています(2023年7月のWDRの記事)。風邪と消化器症状が最も多くみられ、旅行中の飲食、気温の変化、過労が関与すると考えられています。

アルコール、慣れない脂肪の多い食事

旅先でのアルコール多飲には注意が必要です。連日ビールやワイン、さらに食後のカクテルと続けていると、休暇から帰る頃には胃の不調で苦しむことにも。おいしく感じるやや脂っぽい食事も、長く胃酸分泌を刺激して胃もたれの原因になります。

水虫が悪化する季節

足の湿度が関係

水虫(Fußpilz、Tenia Pedis)は、白癬菌というカビによる感染症(真菌症)です。温度15度以上、湿度70%以上になると増殖するのが特徴です。実際、日本では梅雨の時期から夏にかけて水虫が発症、増悪しやすくなります(2012年のMed Mycol J誌)。

裸足になる時は注意

プールやサウナ、スポーツクラブのシャワー、日本の温泉施設や銭湯は水虫感染のリスクのある場所です。水虫の人が10分ほど素足で歩いただけで、白癬菌をまき散らすことになります(詳しくは夏に増える水虫に注意)。

キャンプ前にダニ脳炎予防接種を

ダニ脳炎とは

ダニ脳炎(Frühsommer Meningoenzephalit=FSME)とは、マダニ(Zecke)によって媒介されるウイルス感染症です。ドイツでも年間200~500人の発症があり、いったん発症すると中枢神経系の後遺症を残すことが少なくありません(ダニ脳炎ってどんな病気?参照)。主な感染危険地域は南ドイツ、スイス、オーストリア、中欧の山林部で、地球温暖化に伴い危険地域の北上も見られています(ロベルト・コッホ研究所「2014年4月報告書」)。

ダニ脳炎の予防接種

ダニ脳炎は根本的な治療法はないため、2回の予防接種(Impfung)が最も効果的です。1年後に追加接種を受けると3年間の予防効果(99%)が得られます(Illing、Ledi著「Impfungen」URBAN&FISCHER社)

南欧に旅行する人へ

暑さを覚悟して

年によって大きな違いはあるものの、ここ2~3年のイタリア、ポルトガル、スペインでは日中の外出も躊躇したくなる暑い日もみられています。水分の補給と、ある程度スケジュールを柔軟に変更することも大切です。

日焼け止めクリームを忘れずに

海辺に上半身裸でいると、強い太陽の光によって皮ふが急に真っ赤になる日光皮膚炎(Sonnenbrand)を生じ、痛みのためシャツを着られないほどになることもあります。日焼け止めクリームを忘れずに、特に子どもは大人よりも肌が薄く敏感であるため注意しましょう。

熱中症予防に行水や濡れタオル

万が一猛暑に遭遇し、熱中症(温調節がうまくいかずに体の中に熱が貯まる病態)を疑う症状がみられたら、冷たすぎない少し温かめの水を張ったバスタブに10~20分間浸かりましょう。効果的に体温を下げられます。また濡れたタオルを肩、背中やお腹に直接被せると、気化熱が奪われ体温を下げることができます。

一時帰国する人は

長旅と時差による消耗

ドイツの自宅を出発して日本の目的地に着くまではおよそ20時間、座席にほぼ固定された状態での移動は大仕事です。フライト中はできるだけ睡眠を取れるように、カフェイン類(コーヒー、紅茶、緑茶、コーラ)とアルコールの摂り過ぎに注意しましょう。

熱中症対策を十分に

真夏の日本は湿度、気温ともドイツではほとんど経験しない厳しさです。湿度が高いため、水分補給と発汗だけによる体温調節には限界がある場合も。路上で頭痛を覚えたらエアコンの効いた近くの店内に逃げ込むか、実家などであれば前記の水風呂を活用しましょう。

夏の感染症

日本の夏の感染症としては、「夏風邪」と呼ばれるヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)が挙げられ、子どもに多いウイルス性感染症です。また今年5月には日本での百日咳の発症例が過去最多と報告されました。どの年代でも感染する病気ですが、特に赤ちゃんで重症化することがあります。予防接種をしておくと安心です。

旅行時に持参するもの

保険証を忘れずに

ドイツ国内旅行ではもちろん、加入している疾病保険カード(Krankenversichertenkarte)は必ず持参します。ドイツ国外でのけがや病気もカバーされるかどうか、事前に確かめておきましょう。

服薬中のお薬

服用中の薬は、途中で錠数が不足しないように十分な準備が大切です。ロストバゲージのようないざという時に備えて、機内への持ち込みバッグの中にも1~2日分の薬を入れておくとよいでしょう。

旅先で使うかもしれない薬

鎮痛解熱薬(Fiebermittel、Schmerzmittel)、下痢止め(Mittel gegen Durchfall、Durchfallmittel)、吐き気止め(Mittel gegen Übelkeit, Antiemetikum)、人によっては痔薬(Hämorrhoidensalbe)が、いざという時の役に立ちます。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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