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コロナ禍のドイツの花粉症

ドイツで暮らして数年、今は毎年シラカバの花粉症に悩まされています。鼻水がひどくマスクをしていると苦しく感じることも少なくありません。良い対策はあるでしょうか? またコロナワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?

Point

  • ・多いのは春のシラカバ、初夏のイネ科植物
  • ・花粉症で疲労感、集中力低下も
  • ・花粉症でもコロナワクチン接種可
  • ・ウイルス除去の空気清浄機も有用
  • ・抗ヒスタミン薬の副作用は眠気
  • ・減感作療法で効果がある場合も

ドイツでの花粉症

● 春のシラカバ(Birke)

樹木による花粉症(Heuschnupfen、Pollenallergie)で最も多いのは、4~5月のシラカバ(Birke)花粉症です。ブナ(Buche)、ナラ(Eiche)も春に花粉が飛びます。

● 初夏のイネ科植物(Gräser、Süßgräser)

5~8月にはイネ科植物の花粉が飛び交います。遠くには飛ばないため(飛散範囲は数十メートルほど)、その場に行かなければある程度防ぐことができます。

● 秋の草本植物(Kräuter)

草系ではヨモギ属のオウショウヨモギ(Beifuß)、イラクサ(Brennnessel)、ブタクサ(Ambrosie)です。

● 冬(1~3月)のヘーゼル(Hasel)

ヘーゼルナッツの木として知られるハシバミ属のヘーゼルの花粉症は、ピークが2月中旬~3月初旬にみられます。

ドイツの花粉カレンダー(一部)
ドイツの花粉カレンダー(一部)

● 花粉症はドイツで最も多いアレルギー疾患

ドイツに暮らす大人の30%以上がアレルギー疾患を患い、その中で最も多いのが花粉症(14.8%、約1200万人)です(2016年のAllergo J Int誌掲載のロベルト・コッホ研究所とシャリテー大学病院の調査)。

● ドイツに数年住んでからの発症

ドイツにはスギ(Sicheltanne、Sugi)、ヒノキ(Hinoki-Scheinzypresse)がないため、スギ花粉症はみられません。在独3~4年目に花粉症を経験するケースが多いですが、かつてドイツと同系統の花粉が飛ぶ地域に暮らしていた人は、来独後すぐに花粉症になることも。

花粉症の症状

● 4大症状

①くしゃみ(Niesen、Niesreiz)、②鼻水(laufende Nase、Fließschnupfen)、③鼻詰まり(Nasenverstopfung、 verstopfte Nase)、④目の痒みと発赤(juckende, rote Augen)です。また花粉症は、季節性アレルギー性鼻炎(Rhinitis)、季節性アレルギー性結膜炎(Konjunktivitis)とも呼ばれます。

● 全身の不調も

疲労感(Müdigkeit)、睡眠障害(Schlafstörungen)、集中力低下(Konzentrationsstörungen)、作業能率の低下(verminderte Leistungsfähigkeit)、食欲低下(Appetitlosigkeit)を伴うことがあります。

● 花粉皮膚炎

例えばシラカバやイネ科植物の花粉が皮膚に接触して、発赤や痒みなどが生じることがあります。花粉皮膚炎(Pollen Dermatitis、Airborne Contact Dermatitis)と呼ばれます。

● 続発しうる病気

花粉症は気管支喘息(Asthma)の誘引となったり、鼻炎から副鼻腔炎(Sinuitis)を併発したりします。額の部分の重苦しい不快な痛み、片側の頬の痛みが現れたら副鼻腔炎が疑われます。

コロナ禍での花粉症

● 風邪との違い

毎年同じ季節に目の痒み、涙、鼻水、くしゃみが見られる場合は花粉症が、発熱、のどの痛み、咳や痰が主症状の場合には風邪や上気道炎が疑われます。

● 新型コロナウイルス感染症との違い

新型コロナウイルス感染症は花粉症とも風邪とも合併しうるため、症状のみから判断することは容易ではありません。鼻水や目の症状を伴わない嗅覚消失や味覚変化は、新型コロナウイルスの感染を疑わせます。

● 花粉症でもワクチンは接種できる?

花粉症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患、食物アレルギー、医薬品のアレルギー歴のある人もワクチン接種を受けることができます(パウル・エールリヒ研究所[PEI])。

● 副反応が出やすいのでは?

花粉症の有無と副反応の因果関係は指摘されていません(前述のPEI)。

● 血栓症との関連は?

アストラゼネカ社のワクチン接種をした人で報告された静脈血栓症(前述のPEI)は、ワクチンによる血小板(血液凝固に関係する血球)の機能の変化が関係すると推測されています(4月9日と16日のNEJM誌)。花粉症の有無との関係は指摘されていません。

コロナ禍での花粉症対策

● FFP2マスクは有用

花粉の大きさは10~100μm、FFP2マスクはさらに小さい0.04μmの粒子を捉えるため、花粉の除去にも有用です(3月9日のÄrzteZeitung)。

● 空気清浄機(Pollenfilter)

室内の花粉や塵除去のための空気清浄器具も有用です。ウイルス除去用のエアフィルター機器(例えば、PreSafe Air ®など)を使用すると、窓を閉めていても室内を漂う花粉とウイルスを取り除くことができます。

● 目や鼻の洗浄

外出から戻ったら水で目の周りや鼻腔に付着した花粉を取り除きましょう。鼻腔洗浄器具も有用です(WEPA Nasen Dusche®、EMSER Nasendusche®など)。

● 鼻のかみ方

ティッシュで片方の鼻を押さえて反対側の鼻水を出し、続いて逆側をかむという作業を繰り返すのが良いとされています。両側の鼻を同時に強くかむと鼓膜に圧がかかったり、感染した鼻水が耳管内に押し込まれたりします(2019年の日本のウェザーニュースより)。

● 花粉情報アプリの活用

地域の花粉飛来情報を知らせるアプリも参考になります。無料のPollenflug-Vorhersage(Hexal社)は、花粉症の原因となる樹木や草花の写真も載っています。

花粉症の治療

● 抗ヒスタミン薬(Antihistaminika)

花粉症治療の中心となる薬で、アレルギー反応で放出されるヒスタミンの作用(鼻水、涙、痒みを生じる)を抑えます(例えば、Cetirizin、Loratadin、Fexofenadinなど)。副作用に眠気がみられます。

● 点眼薬・点鼻薬(Augentropfen、Nasenspray)

抗ヒスタミン薬の点眼・点鼻薬には、眠気などの副作用はみられません。点眼薬は目の周囲を水で洗い流してから、点鼻薬は一旦鼻をかんでからの方が効果的です。

● ロイコトリエン阻害薬(Leukotrienantagonist)

アレルギー治療薬のMontelukast製剤(例えば、Singulair®錠など)は、鼻詰まりの原因となるロイコトリエンという物質の作用を抑えます。抗ヒスタミン薬ほどの眠気はみられません。何日か服用を続けて徐々に効果が高まります。

● ステロイド製剤

1回投与で2~3カ月有効なステロイド製剤(Volon A ®など)が用いられることがあります。コロナ禍にあっては感染防御の観点からも、ステロイド製剤の安易な使用には留意が必要です。

● 妊婦・授乳婦と抗アレルギー薬

妊娠中はうっ血性鼻炎を生じ易くなっています。抗ヒスタミン薬は乳汁中へ移行し、動物実験で胎盤の通過が報告されているため、妊婦や授乳中の女性では、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみに用いられます。抗ロイコトリエン薬も動物実験で乳汁中への移行が報告されています。

● 減感作・脱感作療法(Hyposensibilisierung、Desensibilisierung)

花粉症の抗原物質を3年ぐらいかけて少量から増やしながら投与することで、体を抗原に慣らしていく治療法です。皮下注射(subkutane)と舌下投与(sublinguale)による方法があります。例外を除き、妊娠中の治療開始はすすめられていません。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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