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Fr. 01. Jul. 2022

ドクターの診察室
ドクターの診察室: 健康に関する悩み・質問にDr. 馬場が答えます!

コロナ快復後も続く「ロングCOVID」とは?

3カ月前に新型コロナウイルスに感染し、快復者となりましたが、今も体のだるさが続いています。同じ頃に感染した知人は、最近かなりの量の髪の毛が抜けているそうです。コロナ感染と関係があるのでしょうか?

Point

  • コロナ快復後にみられる症状
  • 疲労感、脱毛、息苦しさなど多様
  • 多くは時間の経過とともに改善
  • 焦らずに対応、十分な睡眠を
  • メンタル面への配慮も大切
  • AUの発行と一定期間の収入

ロングCOVIDとは

● 快復したのに不調が続く

新型コロナウイルスの感染から「快復」したのに症状が続いたり、新たな症状が現れたりする場合があります。「ロングCOVID」(Long-COVID、Post-COVID)または新型コロナウイルスの「罹患(りかん)後症状」、「後遺症」、「遷延症状」と呼ばれます。

● ロングCOVIDの定義

WHOはコロナ感染後、少なくとも2カ月以上続き、ほかの病気による症状では説明のつかないものを「罹患後後遺症」(Post-COVID-19-Zustand)とし、ICD10(国際疾病分類)に新たなコード(U09.9)として追加しました。

● 主な持続症状

倦怠(けんたい)感、筋力低下、息切れやせき、睡眠障害、思考力・記憶力低下、頭に霧がかかった感じ(Gehirnnebel)、味覚・嗅覚障害、脱毛など多彩です。症状の持続が不安感や不眠の原因になることもあり、快復者の生活の質(Quality of Life)に影響します。

● 軽症のコロナ感染者でも

コロナ感染時の重症度とロングCOVIDの症状は必ずしも一致しません。自宅隔離した無症状から軽症までの感染者2050名を対象としたイタリアとオーストリアの共同調査によると、感染1カ月以上で約半数に不調がみられました(2021年8月のmedRxiv誌の査読前論文)。

● ロングCOVIDは感染者の何割に出る?

入院後の快復者を調べたイタリアの調査では2カ月後で87%に何らかの症状が(2020年8月のJAMA誌)、入院後の快復者を発症110日後に調査したフランスのデータでは55%に倦怠感、約30%に集中力低下や睡眠障害が残りました(2020年8月のJ Infect誌)。酸素吸入や人工呼吸器を必要とした重症患者も多く含んだ武漢の調査では、6カ月後でも快復者の76%に何らかの症状がみられました(2021年1月のLancet誌)。

● 小児のロングCOVID

大人に比べて少ないものの皆無ではありません(2020年1月のmedRxiv誌)。自宅隔離者のみを対象としたノルウェーの調査では、6カ月以上症状が続いた15歳以下の子どもが13%(16~30歳では52%)でした(2021年9月のNature Med誌)。一部の入院患者も含む英国の調査では、5~11歳児で症状が28日以上続いたのは約3%となっています(2021年10月のLancet誌)。ただし、低年齢ほど自覚症状を言葉にできていない可能性もあります。

● ロングCOVIDの背景は?

①肺などの臓器への恒久的ダメージ、②感染後の炎症の持続、③ウイルス感染による血圧調整や免疫調節への影響、④集中治療室(ICU)滞在の影響(集中治療後症候群)などが挙げられています。

快復後も続く主な症状

ロングCOVIDへの対応就業不能証明書
◎ ◯は比較的多い症状

全身の症状 呼吸の障害 精神的な影響 その他
◎疲労感
◯脱力感
◎息切れ
◯せき
胸痛
◎不眠
◯不安感
集中力低下
記憶力低下
◎嗅覚障害
◯味覚障害
脱毛
腹痛、下痢

● 全身倦怠感の持続(Post-COVID-Fatigue)

快復後にも全身のだるさ、回復しない疲労感、筋力低下が続くことがあります。症状はウイルス感染との関係が考えられている「慢性疲労症候群」(chronische Fatigue Syndrom、Erschöpfungssyndrom)に似ています(2021年6月のPNAS誌)。

● 肺機能(Lungenfunktion)の低下

肺胞(はいほう)細胞に傷が生じ、酸素や二酸化炭素の交換機能が低下します。新型肺炎患者では退院後3カ月以上のCT検査で半数以上に肺の変化が認められました(前記の実態調査)。肺の機能回復には長期間を要します。

● 脳(Gehirn)・神経(Nerven)への影響

集中力および注意力の低下(Konzentrations- und Wahrnehmungsstörungen) 、記憶力の低下、うつ症状などメンタルへの影響が生じることがあります(2021年のNature誌、Science誌)。神経のどの部分に障害が生じているのか、詳細は解明されていません。

● 味覚と嗅覚の障害(Geschmacks- und Geruchsverlust)

味覚障害は1カ月後までに84%が改善、嗅覚障害は約60%が改善しますが(厚生労働科学特別研究事業「COVID-19後遺障害に関する実態調査」)、約5分の1では障害が数週間から数カ月間残ります(2022年2月のNZMJ誌)。

● 脱毛(Haarausfall)

脱毛は感染者の14~15%に起こります(2021年1月のLancet誌、前記の実態調査)。脱毛は感染後2~3カ月後に顕著となり、半年ほど続くとされています(2021年8月のIr J Med Sci誌)。日本の実態調査では、脱毛者の3割以上が6カ月後も続きました。

● 心臓(Herz)・血管(Blutgefäß)の障害

血管の炎症や血栓(血液の塊)は血流障害を残し、心臓を栄養する冠動脈に血栓ができると心筋にダメージが生じます。ウイルスが一時的に心筋の炎症(心筋炎)を起こすこともあります。

ロングCOVIDへのアプローチ

● 個々の症状

コロナ感染後も続く身体的症状と心の負担は大きいものです。もしロングCOVIDが疑われる場合には、まず掛かりつけのハウスアルツト(Hausarzt/-ärztin、家庭医)に相談してください(BZgAのロングCOVIDのフライヤーより)。

● ロングCOVIDの専門外来も

ドイツの各地の大きな病院(Krankenhaus)と大学病院(Uni-Klinik)にロングCOVIDの専門外来(Post-Covid Sprechstunde、Post-Covid Nachfolge Ambulanz、Long-Covid Sprechstunde、Post-Covid Ambulanzなど)が設けられています。

● 自宅での身体運動(リハビリテーション)

呼吸に合わせて体をひねったり、体の側面をストレッチしたりします。腹式呼吸の練習、軽い歩行、テーブルの端につかまってのハーフスクワットなどを決して無理のない程度に毎日行います(新型コロナウイルス感染症「診療の手引き暫定版」2021年より)。

● 無理をしないで十分な睡眠を

感染前と違い全ての作業や動作に時間がかかるかもしれません。焦らずに、現在の状況を受け入れるように努めます。体を動かし過ぎたりせず、場合によっては人の手助けを得てください。体を動かした後は十分な休息・睡眠が大切です。

● メンタルヘルス

快復後も症状が続くことがストレスとなり、気分の落ち込みや不眠に悩む場合もあります(2021年9月のmedRxiv誌の査読前論文)。気持ちが折れそうと感じたら、メンタルヘルスの専門家(医師はPsychiater、臨床心理士はPsychologe)やハウスアルツトに相談しましょう。

● 自己判断による服薬の危険

症状の改善が思わしくないためネットで調べた薬を使用したり、サプリメントを大量に取ったりする人もいます。思わぬ副作用や薬物相互作用を生じることもあるため(2022年のLancet誌)、ハウスアルツトから助言をもらうと良いでしょう。

● 職場での対応

ロングCOVIDのため感染前と同じように働けなくなる人もいます(Long COVID Deutschland [LCD])。そのような場合は、①ハウスアルツトから就業不能証明書(Arbeitsunfähigketsbescheinigung、AU)を発行してもらい、②加入している疾病保険機関に連絡します。 6週間(42日間)は収入が保証され、それ以降78週間までは病欠としての給与が支払われます。

ロングCOVIDへの対応就業不能証明書

個々の症状 ・ハウスアルツトの助言、対症療法
・ロングCOVID の専門外来
自宅で ・焦らないこと
・軽い運動(歩行など)、ストレッチ
・十分な睡眠、休息
・民間療法にのめり込まない
こころのサポート ・家族、友人・同僚のサポート
・メンタルの専門医
・臨床心理士の助言
収入の確保 ・ハウスアルツトから AU発行
・疾病保険機関に連絡
 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0152-05412673)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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