ジャパンダイジェスト

ドイツの夏と健康

初めて過ごすドイツの夏です。日本では熱中症が問題になっていますが、ドイツでは健康上どのような注意が必要でしょうか。

寒暖の変化

7月は38℃近い暑さが続いたのに、8月上旬は最高気温が20℃前後の涼しさ。来週はどんな気温に変化するのか、カレンダー通りには予想できないのがドイツの夏です。気温の日内変動幅も大きく、日中は半袖・半ズボンでも夜は温かい上着が必要ということもよくあります。寒暖の変化に起因する体調異常に留意し、夜の外出や小旅行の際は暖かめの衣服も用意しましょう。

知らない内に脱水状態

ドイツは日本に比べて湿度が低く、背中に汗をかきながら歩くという経験はあまりありません。しかし、自覚がなくても体内からは「不感蒸発」として、肺や皮ふから絶えず水分が失われています。不感蒸発は体重60kgの人で1日に約900ml、気温が30℃以上の時は1℃上がるごとにさらに15 ~ 20%、量が増えます。スポーツや長時間のハイキング、南欧地域に旅行する際には、喉が乾いていなくても適宣水分を補うようにしましょう。特に小さい子どもと高齢者には注意が必要です。

熱中症は無縁ですか?

発汗による体温調節がうまくいかずに体の中に熱がたまり、生じる病態が熱中症ですが、気温の低いドイツでも必ずしも無縁ではありません。今年の7月のようにヨーロッパでも数年に一度は猛暑が訪れます。最上階の住居、炎天下での重労働、筋肉から大量の熱を発生する激しいスポーツなど、高い外気温の中で体温調整の限界を越えた場合に発症します。大切なことは、体温を効果的に下げることです。昔の日本の「行水」のように、バスタブに生温い水を入れて10 ~ 20分つかるだけでも体温の有効な調整に役立ちます(表1)。濡れたタオルを体に直接載せるだけでも気化熱で温度が下がります。

表1 熱中症の予防に役立つ方法
・喉が乾いていなくとも水分の補給に配慮
・通気性の良い服装
・炎天下でのスポーツ、筋肉労働はできるだけ控える
・猛暑日はバスタブ「行水」やプール(Schwimmbad)が効果的
・十分な睡眠時間に配慮

日焼け

ドイツは冬の日照時間が短いこともあり、日光浴を楽しむ人が多く、日焼けはおしゃれの1つにもなっています。北緯に位置するドイツでの紫外線指数自体は日本より低めですが、夏の日照時間が長いため晴れた日は1日で結構な日焼けをすることがあります。日焼けは、中波長紫外線(UVB)の影響で短時間の間に皮ふが赤くなる日光皮膚炎(Sonnenbrand)と、長波長紫外線(UVA)の働きでメラニンが皮ふに沈着して褐色になるSonnenbräuneがあります。一般に日本人の方が白人より多くのメラニンを持っており、メラニンが多いほど紫外線に対する保護能力が高いと考えられています。2009年にWHOの外部組織である国際がん研究機構(IARC)から紫外線と皮膚がんとの関連が示され、不要に日焼けすることに注意が喚起されました。

日焼け止めクリーム

日焼け止めクリーム(Sonnencreme)は紫外線による皮膚炎症を予防するためのものです。商品に記載されているSPFとは皮ふの炎症と関係するUVBを遮断する作用の強さの指標です。一方、PAはメラニン誘導と関係するUVAをブロックする指標です。サンオイルは炎症を起こすUVBを遮断する作用はあるものの、UVAに対しては効果がありません(そのため、炎症を起こさずに肌を黒くすることができます)。SPFやPA値の非常に強い日焼け止めクリームは、製剤成分による肌荒れや炎症を起こすこともあるので、過度の使用や長期連用には注意が必要です。

夏の花粉症

夏から秋にかけても花粉の飛来が多くなる季節です(表2)。特にイネ科の草花による花粉症が増えてきます。ドイツに来て数年、風邪を引いた様子でもないのに、目の痒み、流涙、くしゃみなどが続くようでしたら、花粉症の可能性も考えてみましょう。花粉症は春だけの病気ではありません。


表2 ドイツにおける夏から秋にかけて飛来する花粉
    7月 8月 9月 10月
モミ Tanne        
ライムギ Roggen        
コムギ Weizen        
オオムギ Gerste        
ボダイジュ Linde        
エンバク Hafer        
ニワトコ Holunder        
トウモロコシ Mais        
アカザ Gänsefuß        
イネ科植物 Gräser        
マツ Kiefer        
ヨモギ Beifuß        
アキノキリンソウ Goldrute        
イラクサ Nessel        

シーズン・ピーク  シーズン後  可能性あり

夏バテと旅行バテ

高温・多湿の状況下で体温を一定に保とうとする調整機構への負担、外の高温と屋内の冷房の差からの体調不良、さらに暑さから夜間の不眠も加わり、食欲不振・易疲労・倦怠感が出現するのが夏バテの正体と考えられています。そのため、低湿・涼夏で夜間の気温が下がり、冷房設備も少ないドイツでは本来の夏バテは少ないようです。一方、夏休みだからと、目一杯スケジュールを盛り込んだ旅行から戻ってくると、「旅行バテ」こと「ウアラウプ病」にもなりかねません。

旅先で病気に対応

健康保険証(健康保険組合のカード)は必ず持参しましょう。健康保険組合によってはドイツ国外での疾病がカバーされていなかったり、特約になっている場合もありますので、国外を旅する予定の時は確かめておきましょう。 薬を服用している人は薬を忘れずに。また、かかりつけの医師(Hausarzt)の連絡先も持参しましょう。

休養の必要性

ドイツの人は学校が夏休みになると、「民族大移動」と呼ばれる長期休暇に出発します。ドイツに暮らす私達の場合、取引先や日本の本社との関係で長い休みは取りづらいという場合も少なくありません。実際には、適度な休暇で日常とは違った生活を送り、気分転換をした方が仕事の効率も良くなるとされています。家を預かる側にとっても毎日の家事から離れることは、同じように大切なことです。この夏、皆さんはどちらに行かれましたか?

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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