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便秘とのお付き合い

ここ数年にわたり便秘で苦労しています。便秘の原因は何でしょうか。また、上手い対処法はあるでしょうか。

便秘って何?

日本内科学会では「3日以上排便がないか、毎日排便があっても残便感がある」状態を「便秘(Verstopfung)」と定義しています。丸1日排便がないとお腹がはって苦しい人もいれば、毎日排便があるのに残便感が強い人もいて、排便感覚は人それぞれ。排便間隔や回数にかかわらず、便秘の症状を伴うと「便秘症」と呼ばれます。

便秘に伴う症状は?

最も多いのは腹痛です。腹が張る、胸がつかえる、食欲不振、めまい、頭痛を伴うこともあります。排便の時の力みにより肛門周囲の静脈に圧力が掛かることでできる「いぼ痔」や、硬い便により肛門壁が裂けてできる「切れ痔」を生じやすくなります。ただし、便秘 = 硬い便というわけではありません。

習慣性便秘の原因

日本人の習慣性便秘の中で最も多いのが、大腸の機能が低下した弛緩(しかん)性便秘です。大腸の運動や緊張が低下し、大腸内での便の通過速度が遅くなるため、その間に水分の吸収が進んで便がより硬くなるのです(図1)。

図1

便秘で悩む女性が多いのはなぜ?

疫学調査によると、世界の女性5人に1人、男性10人に1人が便秘だと自覚しています。便秘の頻度は年齢と共に増えますが、若い世代ほど女性の比率が高くなっています。女性は女性ホルモンの影響とお腹の中の解剖学的特徴により、男性より便秘が起こりやすいと考えられています。さらに妊娠中は胎児による圧迫も便秘の原因になります。

日常生活における便秘の対処法(表1)

十分な食事・水分量の摂取
食物の大腸の通過時間には、食事の量、食物繊維の量が関与します。私たちの体の60~65%(大人)は水分、その水分維持に大腸からの水分の吸収は欠かせません。食事量が少ないと時間を掛けて便から目一杯水分を吸収しようとします。一方、食事中の食物繊維は便量を増し、便内に水分を保ち排便を容易にします。実際、食物繊維を多量に含むドイツの黒パン(Dreikornbrot、Mehrkornbrotなど)を食した後は便量が増えたという体験をした人も多いでしょう。

運動不足の解消
腸管の動きは副交感神経によって支配されています。適度な運動は交感神経と副交感神経を刺激し、腸の動きを活発にするのに役立ちます。実際、座りっきりの長時間フライトでは排便が上手く行かないという人も少なくありません。また、普段から排便の助けとなる腹筋を鍛えておくことも大切です。

トイレは我慢しない
排便を我慢する生活環境が続くと、骨盤内の神経反射が鈍くなり、便が直腸内に入っても便意を感じないか、うまく力めない人もいます。直腸内に便が溜まることから直腸便秘と呼ばれています。本来は浣腸に頼る排便習慣のある老人、肛門の病気にみられるタイプです。

表1 便秘になりやすい生活とは
・トイレを我慢してしまう
・食品としての食物繊維をあまり摂らない
・毎日1~2食を抜く、食事量も少量
・食事以外の水分は紅茶・コーヒー程度
・散歩は余りしない、運動もしない
・腹筋体操はしていない
・便秘薬を連用しがち(習慣性になる種類あり)

便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群とは?

小腸や大腸の機能をコントロールする自律神経系の調節反応の変調をきたす、過敏性腸症候群(IBS)でも便秘がみられます。痙性(けいせい)便秘と呼ばれ、腸管の動きが激しすぎるため、便を先に送ることができずに便秘が起こります。

便の変形を伴う急性便秘は要注意!?

最近急に便秘になった、便が細く変形がみられるようになった、便に血が付着するようになった、という時は要注意です。 大腸がん・大腸ポリープなど、腸管内の突出物により便の通過が妨げられた時にみられます。

便秘を生じる病気は?

自律神経障害を伴う糖尿病、未治療の甲状腺機能低下症では腸管の動きが遅く、便の通過時間が長くなるため便秘がちとなります。糖尿病患者では、自律神経障害の進行とともに下痢と便秘が不定期に繰り返されるような便通異常も出現します。

便秘をきたす薬はありますか?

腸管の動きを抑える腹痛止め、 コデインという物質を含む咳止め薬や風邪薬、一部の抗うつ剤、パーキンソン病の薬は、大腸内での便の通過を遅くします。紅茶や緑茶など、タンニンという物質を含む飲食物を大量に摂っても便が固くなります。

便秘の治療薬は?

水分を保持して排便を促すマグネシウム製剤、大腸の蠕動(ぜんどう)運動を改善する生薬のセンノシド製剤や、ビサコジル製剤、大腸からの水分の吸収を抑える浸透圧性下剤のラクツロースなどがあります。植物の抽出成分から作られた市販薬も幾種類か市販されています。どのようなタイプの便秘改善薬が良いかは、かかりつけの医師に相談してみましょう。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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