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青少年のスポーツ障害

2020年の 東京オリンピックが決まり、子どもたちもスポーツの練習に熱が入っているようです。最近、練習が終わった後に膝が痛いと訴えることがありますが、スポーツと関係があるのでしょうか。

Point
• 子どものスポーツ障害は、まれなものではありません。
• 過度なトレーニングや長時間の練習、過密なスケジュールが
 関係しています。
• 成長期のスポーツ障害は大人になってからも障害を残すことがあります。
• 異変を感じたら、スポーツ医学を専門とする整形外科へ。

成長期の骨格は?

成長期の子どもの骨の両端には成長軟骨(骨端軟骨、骨端線とも呼ばれます)があり、ここで新しい骨が作られます。この部分は、成長期においては構造的に弱い場所とも言えます。

図1. 成長期の子どもの骨
図1. 成長期の子どもの骨
骨の端にある成長軟骨で骨が作られ、身長が伸びます

筋力に乏しく、体が硬い

身長が一番伸びる時期を過ぎると、しばらく後になって筋肉と骨の量が増加していきます。そのため、13〜14歳頃までの子どもは身長だけ伸びても、骨や筋肉がまだ十分ではありません。筋肉量が身長の成長に追い付かないため、屈伸時の柔軟性に欠けることがあります。

子どもに起こるスポーツ障害(Sportverletzung)

使い過ぎ症候群
特定の筋肉や骨に繰り返し負荷が加わって起こる「使い過ぎ症候群(Überlastungsbeschwerden)」は、子どもの骨の成長に影響を及ぼし、大人になっても腰痛や関節障害といった後遺症を残すことがあります。

早めの対応を!

外傷もないのに痛みが長引く場合は、スポーツ医学(Sportmedizin)を専門とする整形外科(Orthopädie)で一度診てもらうと良いでしょう。

各スポーツに特徴的な外傷と障害

サッカー
テレビで観るサッカー選手の動きは華麗ですが、運動量が多く、急なダッシュや急停止、さらにはグラウンド上で相手選手との激しいコンタクトもあります。打撲や足関節の捻挫(Verstauchung)、膝関節の十字じん帯損傷(Kreizbandriss)、ボールを繰り返し蹴る動作による足首の障害「フットボーラーズ・アンクル(Fußballer Sprunggelenk)」、長時間走行による足の疲労骨折(Ermüdungsbruch)、さらに腰痛もまれではありません。骨折の例を挙げると、子どもでは大腿部の骨折が多く見られます。

テニス
サーブなどを繰り返すことで生じる「テニス肩」、ラケットを持ち打つ動作を繰り返すことで起こる「テニス肘(Tennisarm、Tennisellenbogen)」が有名。子どものテニス肘は、肩や手の筋肉がまだ十分強くないことや、重過ぎるテニスのラケット、ガットの張力が強過ぎることなども一因となります。狭いコート内での瞬発的な動作も、膝や足首に負担を掛けます。

水泳
肩の使い過ぎによる「水泳肩」が有名です。肩の周囲の腱が傷付いたり、腱の付着部位の骨の表面が剥がれ、剥離骨折を起こすことで生じます。

ランニング
長距離走を繰り返すことで生じる「ランナー膝(Läuferknie)」は、膝の皿(膝蓋骨)の裏側と大腿骨の下の部分が擦れ合うことで痛みが生じます。また、すねに沿った筋肉が傷付くことで起こる「シンスプリント(Schienbeinkantensyndrom)」、または「疲労骨折」が知られています。

ゴルフ
代表的な障害は「ゴルフ肘」。腰のスウィングを繰り返すため、腰痛が生じることもあります。

野球・ソフトボール
投球動作の繰り返しから生じる「リトルリーグ肩」、肘の使い過ぎによる「野球肘」、ボールが指先に当たった衝撃で生じる「マレット骨折」などが知られています。

表1 競技別・部位別に見るスポーツ障害
種目ひじひざ足くびけが骨折
サッカー    
テニス    
ゴルフ          
野球  
水泳      
ランニング        
ホッケー  

けがへの対応

外傷時の応急処置
骨折も出血もない打撲では、痛む部位を冷やして安静にしましょう。出血があれば止血と消毒を。骨折が疑われる場合には速やかに医療施設へ。頚椎部の損傷が疑われる場合は絶対に首を動かさず、救急車を呼びましょう。

練習復帰までは慎重に
筋肉や腱の傷が治るには、それなりの日数が必要です。早過ぎる練習復帰は回復を遅らせるだけでなく、新たなけがの誘因にもなります。 子どもは症状をはっきりと訴えないこともあるので、注意が必要です。

スポーツ障害は整形外科へ
スポーツ障害が疑われる場合は、骨のレントゲン撮影や、関節や背骨のMRI検査を受けることをお勧めします。医師からは練習休止期間の指示も出されるでしょう。

スポーツ障害のリスク因子

年齢不相応のトレーニング
年齢と身体の発達に即した練習プログラムが大切です。筋肉が十分に発達していない子どもに、大人と同じような筋力トレーニングをさせるのは無意味です。

過度の練習
長時間にわたる練習はけがの元です。小学生を対象とした日本体育協会の調査によると、週14時間以上の練習は、スポーツ外傷を引き起こす一因となるようです。

不十分な休息
 休憩や、水分とミネラルの補給は頻繁に。練習や試合が過密にならない日程作りが大切です。

不十分なウォーミングアップとクールダウン
 練習や試合の前には十分なウォーミングアップを行い、終了時にはクールダウンを必ず行いましょう。これらの省略は身体に負担を残し、けがの要因となります。

過剰な指導に要注意!
子どもへの ① 教え過ぎ、② 鍛え過ぎ、③ 評価のし過ぎ、は百害あって一利なしです。今の時代、科学的なデータを取り入れた指導方法も大切です。

保護者の理解も大切
自分の子どもに将来スポーツ選手になってほしいという期待から、親が極端な言動に走ると、子どもにとって心理的負担になることがあります。

運動後のリフレッシュ、そして勉強も
激しい運動で汗をかいた後はシャワーを浴び、リフレッシュしましょう。本業の勉強も忘れずに。

表2 スポーツによる事故を防ぐための注意点
1 足に合った靴や適切なウェアの着用
2 体型や技術レベルに合った用具の使用
3 足に安全面重視の指導者(コーチ)
4 年齢とレベルに合った練習プログラム
5 練習中の適切な休憩と水分・ミネラルの補給
6 十分なウォーミングアップとクールダウン
7 長時間練習、無理強いは避ける

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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