ジャパンダイジェスト

手足口病に関するQ&A

質問:夏に一時帰国した際、日本で手足口病が流行っていると聞きましたが、どんな病気ですか? 予防法はありますか? 大人がかかる可能性もあるのでしょうか?

Point

  • 手足口病はウイルス感染症です。
  • 原因となるウイルスはいくつもあります。
  • 乳幼児に多く、流行のピークは6~9月。
  • 通常は自然に治ります。
  • 便からのウイルス排出は長く続きます。
  • 特別な治療法はありません。
  • 予防ワクチンもありません。

手足口病ってどんな病気

●ウイルス感染症です
手足口病(Hand-Fuß-Mund-Krankheit)は、ウイルスの感染によって起こる感染症です。原因となるウイルスは1種類ではなく、10種類以上ものウイルスが手足口病の原因となります。原因ウイルスの違いにより、現れる症状も多少異なります。夏風邪の「ヘルパンギーナ」(後述)とは兄弟のような、子どもが夏に発症しやすい病気の1つです。

ウイルス

●乳幼児に発症
手足口病の発症患者の大半(90%)が、5歳以下の乳幼児です。原因ウイルスが1種類ではないため、何度も感染することがあります。また、大人が発病することもあります。

●口、手足の発疹と水疱
主に口の中、口の周り、手のひら、足の裏に赤い発疹(Ausschlag)や水ぶくれ(Wasserblase)がみられるのが、手足口病の特徴です。ウイルスの種類によっては、お尻や全身に発疹がみられるものもあります。発症の初期段階では、あせもや水ぼうそうと見間違える場合もあります。発熱は、約3分の1の子どもにみられます。

口、手足の発疹

●吐き気や下痢を引き起こすことも
手足口病の原因ウイルスの中には、夏の胃腸風邪ウイルスの一種も含まれます。そのため、吐き気やおう吐、下痢などの胃腸症状がみられることがあります。

●数日で自然に改善
手足口病の潜伏期間(Inkubationszeit)は3~6日間。この時期が最も感染力が強いといわれています。発熱は2~3日で下がり、発疹も3~4日程度で消え、多くの場合は自然に治ります。しかし、まれに重症化することもある、侮れない病気です。

手足口病の経過と感染力

●重症化する場合もある
ごくまれに、ウイルスが中枢神経系に入って髄膜炎(Meningitis)や脳炎(Enzephalitis)を合併したり、心筋炎(Myokarditis)という重篤な心臓病を起こすこともあります。1998年に台湾で手足口病が流行した際は、脳炎により78人もの子どもが亡くなりました。

●感染経路は3ルート
つばや咳を介する「飛沫感染」、手からの「接触感染」、排泄物(便)中のウイルスが口に入ってしまう「経口感染」により拡大します。特に、保育所や幼稚園など、集団生活の場所で感染が広がることが少なくありません。

●初夏から秋にかけて流行
毎年、夏にピークを迎える流行がみられますが、年によって流行の規模が異なります。近年では、2011年と今年に、過去最多規模の流行がみられました。この時期には、ヘルパンギーナやプール熱(咽頭結膜熱)の流行も同時に発生し、手足口病と合わせて「夏風邪トリオ」と呼ばれています。

手足口病の流行

●ウイルスの排出には1カ月かかる
症状は数日間で治まりますが、ウイルスの排出はその後も長く続きます。飛沫感染の原因となる呼吸器からは1~2週間、便からは2~4週間もウイルスの排出が続きます。症状が治まった後も、乳幼児のおむつ交換の際は便の取り扱いに注意が必要です。

手足口病の予防と治療

●特効薬はありません
手足口病に対する特別な治療法はありません。発熱時の水分補給など、症状に応じた対症療法が主体となります。ほとんどは軽症ですので、安静を保つことで自然に回復します。ただし、高熱が続く、頭痛がみられる、おう吐を繰り返す、呼び掛けに応じない、水分を取ることができない、ぐったりしているといった症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診してください。

●予防ワクチンもありません
子どもがかかりやすい流行性ウイルス感染症の場合、予防ワクチンが揃っていることが多いのですが、手足口病は単一のウイルスによるものではないため、手足口病の予防ワクチンはまだ開発されていません。

●手足口病の予防のために
手足口病に感染していながら、自覚しないほど症状が軽い患者や、感染しても発病しない(不顕性感染)患者からも、ウイルスが排出されていることがあります。夏の流行時期には、普段から手洗いを徹底し、おむつ交換の際は排泄物をきちんと処理するよう心掛けましょう。

手足口病の予防と留意点

●ステロイド軟膏に要注意
湿疹に対して効果のあるステロイドの入った軟膏は、皮ふ局所の免疫を抑えるため、手足口病の原因ウイルスの増殖に手を貸すことにもなりかねません。塗布することで、症状が悪化することもあるので注意が必要です。

●食事は薄味で軟らかく
口の中の発疹を刺激しないよう、熱いもの、硬いもの、味の濃いものは避けるようにします。歯ブラシは痛みを増長させることが多いので、食後は軽くうがいを促すだけでも良いでしょう。

●口内炎を来す病気いろいろ
ヘルパンギーナの典型的な症状は、高熱とともに口の奥の方に小さな水疱ができるというもの。破れると強い痛みを伴います。単純へルペスでは、口唇付近や舌に口内炎ができ、歯肉炎を起こすこともあります。アフタ性口内炎は、頬の内側や舌に口内炎がみられます。発熱は伴いません。

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

同コーナーでは、読者の皆様からの質問を受け付けています。
ドイツニュースダイジェスト編集部
Fax: 0211-357766 / Email: info@newsdigest.de

Nippon Express ドイツ・デュッセルドルフのオートジャパン 車のことなら任せて安心 習い事&スクールガイド バナー

デザイン制作
ウェブ制作