ジャパンダイジェスト

痛風とドイツでの食生活

ビールや肉類は痛風によくないと聞いていますが、ドイツでの食事では何に気をつければ良いでしょうか?

痛風の語源は?

痛風(Gicht)は文字通り、風があたっても痛くなることからきています。「痛疾風」という表現もあったようです。贅沢な食生活で発症することから「帝王病」の異名があり、実際アレクサンダー大王、カルロス5世、フリードリヒ大王、ルイ14世が痛風であったといわれています。しかし現在は「帝王病」というより一般的な成人病の1つとなっています。

原因は何ですか?

痛風は血液中の尿酸(Harnsäure)の値が高くなることにより惹起されます。血液中の尿酸値が高い状態(表1)を高尿酸血症といいます。この状態自体は無症状ですが、 尿酸が関節内で溶け切らずに結晶(針のような形)として析出し、これに体の防御機構である白血球が反応すると、激しい炎症とともに痛風発作を起こします。

高尿酸血症は、1)尿酸が多く作られ過ぎる場合、2)腎臓からの尿酸の排泄がうまくいかない時に起こります。

表1 尿酸の正常値と高尿素血症
血中濃度高尿酸血症 7.0mg/dl 以上基準値
男性 4.0 - 7.0 mg/dl
女性 3.0 - 5.5 mg/dl

(日本医師会、臨床検査のABCより)

発作が起きるとどんな症状が出ますか?

夜間に突然、多くは足の親指の付け根の激痛として発症します(図1)。関節部位の腫れ、発赤、痛みの炎症の3主徴を伴い、発作は通常24時間以内に最大となります(表2)。発作時の痛みは靴を履けないどころか靴下すら履けない程になります。痛さを我慢できた場合は、特別な治療を施さなくとも1~2週間で自然消退します。ほとんどの場合が1つの関節(単関節炎)だけにみられます。

痛風は発作の数時間~1日前から同部位の鈍痛、違和感などの前兆があるといわれています。多くの場合、数カ月から数年の間隔で発作が繰り返され、放置すると次第に発作の頻度が増していきます。

発症場所
通風の起こりやすい箇所

表2 典型的な痛風発作の特徴
1 尿酸値が高い
2. 足の親指の付け根の間接に激痛、腫れがある
3. ひとつの関節だけ症状がある
4. 症状が出てから1日以内にピークに達する
5. 以前にも同じような症状があった
6. 片足の親指の付け根、または足首の関節の炎症

どんな時に発作が起こりますか?

発作は運動後、長時間歩行後、飲酒や幅の狭い靴による圧迫などが誘因となります。また、血中尿酸値の上昇、下降の変動が大きいと起こりやすいといわれています。連日の暴飲暴食が発作の原因となるだけではなく、高尿酸血症の治療薬により急激に尿酸値が低下した時にも起こることがあります。

痛風は中年男性だけの病気?

圧倒的に男性が多い(90~95%)という際立った特徴がある疾患です。年齢的にはかつては50歳代の男性に最も多くみられましたが、最近はピークが30歳代に移ってきており、若い方も注意が必要です。

1960年以前の日本では痛風は非常に稀な病気でした。しかし現在の患者数は30~50万人といわれています。わずか10年前と比べても約2倍に増えています。痛風予備群とも言える高尿酸血症の人は国内で約500万人と推定され ています。

どうして痛風は女性に少ないのですか?

女性ホルモンは腎臓からの尿酸の排泄を促す作用があるため、血中の尿酸値はいつも女性の方が男性より低くなっています(表1)。従って痛風発作も起こりにくいのです。しかし、閉経後は女性ホルモンの分泌が減り尿酸値は少し上昇してきます。女性の痛風の大部分は閉経期が過ぎてから発病しています。

足の親指や足関節に発作が多いのはなぜですか?

尿酸の結晶がたまりやすい部位には、温度が低い、よく動かしたり負担がかかりやすい、酸性度が高い、たんぱく質が少ないなど共通の特徴があります。足先は体重がかかるだけではなく、体温も若干低く、尿酸の結晶化が起こりやすいと考えられています。

高尿酸血症を放置するとどうなりますか?

何度も痛風を繰り返すと、10年程度で慢性痛風関節という状態となり症状が持続するようになります。また尿酸塩が腎臓にも沈着し、痛風腎と呼ばれる腎障害を起こします。痛風患者の80~90%に何らかの腎臓障害がみられるといわれています。また、過剰の尿酸塩は足の親指、耳たぶ、肘頭などにも沈着し、痛風結節と呼ばれる皮下のかたまりが生じることがあります。

高尿酸血症は糖尿病や高血圧など他の生活習慣病を合併していることが多く、最近は心筋梗塞や狭心症などの病気との関わりが議論されています。

肉類の多食は良くない?

痛風はアルコールや肉食を好む人に頻発します。痛風患者の80%は1日1食は肉食を、60%は1日2回以上の肉食をとっており、また毎日3合以上飲む酒豪家の80%が発症しているという調査結果があります(日本医師会編、食事指導のABC)。特に動物の内蔵類(レバーなど)はプリン体を多く含むので血中尿酸値上昇に関わると考えられています。

摂取を控えるべきプリン体とは何ですか?

高尿酸血症と診断されると必ず「プリン体」の摂取を控えてください、と指導されます。「分かりました」と言って病院を出るものの、一体「プリン体とは何?」と思われる方も多いのではないでしょうか。

プリン体とは私たちの体の細胞の核に含まれるDNA(遺伝子)の主成分で、正式には「プリンヌクレオチド」。生きていく上でなくてはならない物質です。新しい細胞ができて古い細胞が壊される時に、この「プリン体」と呼ばれる物質も壊されます。プリン体が分解されてできるのが尿酸です。尿酸はプリン体の老廃物ということになります。食べ物からのプリン体もわずかですが尿酸の産生を促すことになります。日本人の高尿酸血症の多くは腎臓での尿酸の排泄低下が原因といわれています。出口(排泄)に制限があるため、プリン体摂取過剰は尿酸値上昇に関わってくることになるのです。

食品100g当たりのプリン体含有量が200mg以上のものを高プリン食と言います。高プリン食の代表は動物の内蔵、魚の干物、乾物です(表3)。また肉料理の場合、プリン体は肉汁に溜まるので、たとえ美味しい肉汁でも控えた方が良いでしょう。ちなみにお菓子のプリンはプリン体とは関係がありません。

表3 プリン体の多い食品と少ない食品(1人前食べた場合)
1人前の分量中 食品
きわめて多い 鶏レバー、あん肝、イサキ白子、牛焼肉レバー、干し椎茸など
多い 牛ヒレステーキ、豚ロースステーキ、サンマやマグロの切り身、アジ干物など
少ない じゃがいも、米飯、鶏卵、パン、牛乳、 ソーセージ、キャベツ、豆腐など

ビールは良くない?

アルコールは体内での尿酸産生を促す作用があります。また、アルコールが体内で分解されてできる「乳酸」は腎臓からの尿酸の排泄を阻害します。ビールに含まれるプリン体量は特に多いわけではありませんが、ワインなど他のアルコールよりは多く、飲む絶対量が多いことは良くないと考えられています。ちなみに蒸留酒にはあまり含まれていません。日本では「プリン体カット」のビールも出てきているようですが、ドイツの美味しいビールを前にあなたはどうされますか。

ドイツの食事での注意は?

痛風には遺伝的な体質と生活習慣病を伴いやすい体質、特に肥満が関係するとされています。肥満気味の方は体重の適正化で血中尿酸値も改善してきます。まず大切なことは、和食であれドイツ料理であれ食べる総量を制限し標準体重を保つことです。そして、尿酸値が高いと言われた方や痛風の診断を受けたことのある方はビール、肉類は控えめに召し上がりましょう。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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