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ロンドンのゲストハウス
Sa. 24. Aug. 2019

BMW・ダイムラーが自動運転技術で提携へ

運転しなくても、車が自動的に目的地まで連れて行ってくれる――。人工知能やセンサー、画像解析技術の急速な発達が、自動車に革命的な変化をもたらそうとしている。自動運転技術は、人間のミスによる事故をなくすとともに、身体の不自由な人やお年寄りの行動範囲を大きく広げ、モビリティーに革命をもたらすテクノロジーだ。

試運転をしている、米・ウェイモ社による自動運転車試運転をしている、米・ウェイモ社による自動運転車

「戦略的な提携」

こうしたなか、ドイツの大手自動車メーカーBMWとダイムラーは、今年2月28日に自動運転技術に関して提携することを発表した。両社は高級車部門のライバルである。「なぜ、この2社が提携しなくてはならないのか?」と、不思議に思った人も多いだろう。この背景には、21世紀の自動車業界に迫りつつある大変化を前にした、メーカーの苦悩がある。

ダイムラーとBMWはこの提携を「長期的かつ戦略的な協力関係」と呼ぶ。両社はまず運転支援システム、高速道路での走行、自動駐車機能の共同開発に着手し、2020年代前半には自動運転機能を実用化する。

BMWで開発部門を担当するクラウス・フレーリッヒ取締役は、共同声明で「われわれは、2つのテクノロジー企業のノウハウを結集させる。柔軟で、ほかの製品にも利用でき、他社を締め出さないプラットフォームの下で自動運転技術の実用化を加速する」と述べた。フレーリッヒ氏が「排他的ではないプラットフォーム」という言葉を使っていること、さらに共同声明が「ダイムラーとBMWはほかのテクノロジー企業との提携の可能性も探る」と述べていることから、この提携がダイムラーとBMWの2社だけではなく、他社の参加をも想定していることは明らかだ。

規模の経済による効率性の追求

一方ダイムラーの開発部門担当取締役で、今年5月にCEOに就任したオラ・ケレニウス氏は「各メーカーが別々の技術を開発するより、信頼性の高い総合システムを開発する方が、顧客にとっての利益は大きくなる」と述べた。つまり、ケレニウス氏は複数のメーカーに共通のシステム、もしくは自動車業界全体が同じシステムを使うほうが、効率が良いと考えているのだ。

ダイムラーとBMWの提携の最大の動機は、効率性だ。ドイツの日刊紙フランクフルター・アルゲマイネで自動車業界の取材を担当しているヘンニヒ・パイツマイヤー記者は、両社の提携の背景として、各メーカーの間で「自動運転車などの新技術の開発にかかる莫大な費用が、深刻な問題になりかねない」という認識が広がっていることを挙げる。

ドイツ自動車連合会(VDA)は、「今後3年間だけでも、ドイツの自動車業界が自動運転車とコネクテッド・カーの研究開発に注ぎ込まなくてはならない費用は、180億ユーロ(2兆3400億円・1ユーロ=130円換算)に上る」と見ている。巨額の研究開発費用を単独ではなく、他社と共同で負担すれば効率性を飛躍的に高められることは言うまでもない。

米国に水をあけられたドイツ企業

だが、自動車業界の事情に詳しい学者の間には、「提携の真の理由は、ドイツのメーカーが米国のIT企業に対して遅れを取っているから」という声もある。デュースブルク=エッセン大学のフェルディナンド・ドゥーデンへーファー教授は、ある新聞とのインタビューで「グーグルの自動運転技術はドイツのメーカーに比べて何光年も先を進んでいる。米国の監督官庁が公表している、人間が関与しない自動運転車の走行距離に関する統計を見れば明らかだ」と警告。

同教授は、「ハンドルやブレーキペダルがない自動運転車の技術をマスターしているのは、世界でグーグルだけ」と断言。ドイツのメーカーが単独でグーグルに追いつくことはもはや不可能なので、各社共同で自動運転技術を開発するべきと主張している。同氏は「自動運転車の開発はメーカーの存続を左右する問題」と指摘し、VWにも提携に踏み切るよう促している。

確かに米国のIT企業はドイツのメーカーよりも一歩先を進んでいるように見える。グーグルの親会社アルファベット傘下のウェイモ社は、2017年7月にアリゾナ州の公道で、自動運転車の実験を開始した。事前登録した市民モニターは、自動運転車を注文して乗ることが可能。ウェイモはモニターからその意見や感想を集めて、着々と製品を改善しつつある。同社は、昨年12月に市民が料金を払ってタクシーとして使える自動運転車「ウェイモ・ワン」の運行も始めた。

ウェイモ・ワンを頻繁に使うある市民は、米国のメディアに対して「たくさんの人が歩いている駐車場などを除けば、走行はスムーズで快適だった。料金も普通のタクシーに比べて高くない」と語っている。ウェイモは、ウェブサイト上で「自動運転車を公道で1000万マイル(約1600万km)、シミュレーションで70億マイル(約113億km)走らせた」と説明する。

ドイツで、これほどオープンな形で市民を参加させて自動運転車の実験を行っているという話は聞いたことがない。ドイツ企業の実証試験があまりメディアで報じられないのは、米国とドイツの自動運転に関する法律の違いや、秘密保持という目的のためかもしれないが、ウェィモのオープンな姿勢には、先行企業の余裕が感じられる。

BMWとダイムラーの提携は、両社の力を結集させることによって、米国のIT企業との差を縮めようという努力の表れなのかもしれない。

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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