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ドイツニュースダイジェスト1000号記念特集

BMWデザイン部門
エクステリア・クリエイティブディレクター

永島譲二氏 インタビュー

永島譲二永島譲二
Joji Nagashima

1955年、東京生まれ。米国ウェイン州立大学工業デザイン修士課程修了。1980~86年オペル(ドイツ)、86〜88年ルノー(フランス)にてデザイン開発に携わり、88年からBMW AG(所在地ミュンヘン)デザイン部門へ。現在、同社のエクステリア・クリエイティブディレクターを務める。

世界屈指の高級車ブランドBMW デザイン部に在籍し、Z3ロードスター、5シリーズE39型(ともに1996年)、3シリーズE90型(2005年)、3シリーズGT(2013年)などのデザインを手掛けてこられた永島譲二さん。35年にわたり今日まで、カーデザイン界の第一線で活躍されていらっしゃいます。そんな永島さんの魅力に迫るべく、お仕事の話を中心にインタビューにお答えいただきました。 (インタビュー・構成 / 山口理恵)

「魅力ある自動車を造るルールは何もない。
そこがデザインのもっとも難しく、もっとも面白いところ」

5シリーズE39型 (写真提供 / BMW)
5シリーズE39型(写真提供 / BMW)

カーデザイナーを志したきっかけは?

子どもの頃から自動車が好きで、自動車の絵ばかり描いていました。中学校のときに初めて自動車デザインの専門的なコンペに応募し、その頃から、将来は自動車デザイナーになろうと思うようになりました。

永島さんが現在されているお仕事について、詳しく教えてください。

自動車のデザインは一般的に、ラフなアイデアスケッチから始まり、それが次第に詳しく具体的なスケッチとなってアイデアがある程度まとめられます。次にコンピューターによる3Dデジタルのモデルが作られ、このコンピューターモデルを検討して修正を加えたところで、実際の自動車と同じ大きさのクレイモデルを製作します。これにさらに修正が加わり、最終段階まで進みます。通常、以上のプロセスはコンペによって行われ、段階ごとに審査があり、選ばれたプロポーザル(提案)のみが先に進める形となります。仮に、始めは10のプロポーザルがあったとしても、最終的には1つの案に絞られます。私の現在の仕事は、こうした各段階のすべてにおいて全プロポーザルを監督し、デザイナーたちを指導する役目です。

「デザインする」ということにおいて、一貫して貫かれてきたことはありますか?

自分のポリシーとしては、魅力のある自動車を造るということ。当たり前に聞こえるでしょうが、自動車というのは美しければそれで必ず魅力的になるかといえば、そんな単純なものではありません。また、ファッション的に新しければ必ず魅力的になるかというとそれも違うし、機能的に優れていれば間違いなく魅力ある車になるかというと、それも違います。

例えば、ロンドンタクシーは、どう見ても美しい形でも新しい形でも機能的な形でもないですが、世界中の人があの車はいつまでもあのまま変わらずにいてほしいと願っている。それは、あの車のどこかに大きな魅力があるからでしょう。しかし一方、それとはまったく違う意味で、スポーツカーやレーシングカーにも魅力を感じさせるものがある。つまり、これを満たせば魅力あるものを造れるというルールは実は何もないので、そこがデザインのもっとも難しく、もっとも面白いところなのだと私は考えています。

現在、エコカー販売市場が急拡大しています。デザインする側にとってのメリット、デメリットというのはあるのでしょうか?

エコカーと一口に言ってもいろいろありますが、電気自動車に限って言うならば、デザイン上の代表的デメリットは大量のバッテリーを限られた寸法内に収めなくてはならないことです。メリットはデザインにとってはあまりないと言ってよく、ガソリンエンジンのようには冷却気が必要とされないので、フロントの造形に多少の自由度が与えられることぐらいでしょうか。

Z3ロードスター(写真提供 / BMW)
Z3ロードスター(写真提供 / BMW)

少しプライベートなことについても教えてください。永島さんが愛用されている「お気に入りのデザイン」のものなどはありますか?

何もありません。自分で使うものは、デザインなど気にしていません。

ドイツ国内でお気に入りの場所は?

かつて住んでいたヴィースバーデンです。ヴィースバーデンは戦災を受けなかった保養地で、古く美しい町並みが今でも見られます。かつてのドイツがいかに高い文化を持ち、軍政時代にいかにそのすべてが失われたかがよく分かります。

最後になりますが、もし、自動車に限らず、工業製品をデザインする機会があるとしたら、何かデザインしてみたいものはありますか?

何でもしてみたいです。(デザインするものが)何であれ、納得できる品が市場に出てほしいですから。

 
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