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ロンドンのゲストハウス
Do. 22. Aug. 2019

苦戦!ドイツの自動車業界

自動車産業は、ドイツだけでなく欧州諸国にとって経済の屋台骨の1つだが、ユーロ危機による不況が、この重要な業種に大きな影を投げ掛け始めた。

欧州自動車工業連合会(ACEA)によると、今年9月に欧州連合(EU)で新しく認可(販売)された乗用車の数は、前年に比べて10.8%減少した。特に減り方が著しいのが、不況が深刻化している過重債務国。ギリシャでは新車の認可台数が前年比48.5%減、スペインでは36.8%、ポルトガルでは30.9%、イタリアでは25.7%も減った。

比較的経済状況が良いとされてきたドイツでも、認可台数が前年比10.9%減。縮策で苦しむ南欧諸国以外でも、市民が将来を心配して財布の紐を固く締めているのだ。9月の認可台数は、2009年を除けば、2005年以来毎年減少している。2005年9月には、1カ月間で約140万台が売れていたが、今では約110万台である。

メーカー別に見ると、大衆向けの乗用車を主力としたメーカーの苦戦が目立つ。例えばフランスのルノー・グループの9月の認可台数が昨年に比べて29.5%も減ったほか、イタリアのフィアット・グループでも18.5%の減少。フランスのPSAグループも8.1%ダウン。またGMグループも16.2%減っている。

各社では販売台数の落ち込みによって収益性が圧迫されているため、リストラに踏み切る方針だ。例えば、フォードはベルギーと英国の3カ所の工場を閉鎖して、従業員数を約6200人減らす。GMグループに属するオペルも認可台数が15.6%減ったため、新型車の開発部門をPSAと統合する方針を打ち出した。

自動車王国ドイツでも、フォルクスワーゲン(VW)グループが苦戦。旗艦であるVW社と銀行危機に苦しむスペインのSEAT社が振るわなかった。だが、VWでは中国など外国での生産比率がドイツ国内を上回っているので、企業全体で見ると、1月から9月までの販売台数が前年同期に比べて12.9%増えた。VWでは、1月から9月までの国内での生産台数が8.3%減ったのに対し、外国での生産台数は14.6%増えている。同社が外国で組み立てた車の台数は約176万台で、ドイツ国内の3.3倍。私は今年6月に北京へ出張したが、タクシーはすべて中国で組み立てられたVW車。道を走っている乗用車にも、ドイツ車が目立った。中国の富裕層だけでなく、急激に拡大しつつある中間層にとっても、ドイツ車はステータス・シンボルなのだ。

これまでドイツの多くの自動車メーカーは、国内需要の落ち込みを外国、特に新興国への輸出によって補てんしてきた。しかし最近では、ブラジルなどの新興国が自動車に高い関税をかける例が増え、輸出も頭打ちになり始めている。今後は中国やブラジル、インドなどでの現地生産が一段と重要になるだろう。

だがこのことは、ドイツ国内での雇用が減ることを意味する。VWグループでは、すでに外国での従業員数がドイツ国内のそれを上回っている。同社の上海工場の年間生産台数は、ヴォルフスブルク本社工場を上回っている。リーマンショックやユーロ危機など様々な変動にさらされる今日の自動車メーカーは、グローバル化によって、生産ポートフォリオを地域的に多様化させておく必要があるのだ。先行きが不透明な時代には、グローバル化を進めた企業ほど、不況のショックを和らげることができる。

ほかのドイツ企業に目を向けると、ダイムラーが認可台数を前年比6.9%減らしたのに対し、BMWグループは4.4%増やしている。この背景には、BMWがダイムラーに比べて四輪駆動車などで魅力的な製品を充実させていることなどがあると言われている。

ちなみに日本企業もEU域内で苦戦する中、トヨタ・グループが9月に認可台数を前年同期比で0.8%増やしたのが注目される。

さて、ACEAの統計には表れていないが、さらに気になるのが自動車メーカーの収益状況である。現在、自動車市場では価格競争が激化している。そのことは、VWグループが第3四半期の販売台数を前年同期比で12.9%、売上高を26.6%増やしたにもかかわらず、業務利益を19%減らしたことに表れている。VWで業務利益がこれほど大きく減ったのは、リーマンショックの影響が色濃く表れていた2009年以来のことである。こうした現象は、高級車を主力にしているダイムラーにも見られる。同社の第3四半期の売上高は前年同期に比べて8%増えたのに、当期利益は11%減っているのだ。欧州の自動車業界は、2007年頃から生産能力の過剰に悩んできた。現在欧州の自動車メーカーは毎年1500万台を超える車を生産できるが、実際に売れる数は1200万台に満たない。

急激に景気を悪化させ、比較的短期で終わった前回のリーマンショックと異なり、欧州の債務危機・銀行危機による今回の不況は、長期化すると見られている。ドイツを始め、欧州の各国政府は自動車産業の救済に乗り出さざるを得ないだろう。

7 Dezember 2012 Nr. 943

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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