ドイツワイン・ナビゲーター


ぶどうが育つところ テロワール

醸造家やワイン関係者と話をするとき、「テロワール(Terroir)」という言葉を頻繁に耳にします。もともとフランスの農業用語で、ドイツでもフランス語の単語をそのまま使っています。便宜上「土壌」と訳されることが多いのですが、実際には土壌のほかにも様々な要素を含んでいます。簡潔にまとめると、「あるぶどう畑の総合的な環境」と言えるでしょう。つまり「テロワール」には、高度、方角、傾斜などの地形的要素、日照時間、気温、降水量などの気候(クリマ)的要素、そして土壌の構成や性質のすべてが含まれます。

そのうち、気候にはメゾクリマ(Mesoklima)とミクロクリマ(Mikroklima)の2つがあります。メゾクリマとは、あるぶどう畑全体の気候、つまりその畑を抱える山、谷、斜面全体の空間の気候のこと。一方、ミクロクリマは、正確には非常に限定された空間の気候、例えば個々のぶどうの木、葉、そして房の周囲の環境を指しています。メゾクリマを人為的に変えることは困難ですが、ミクロクリマは、例えば夏場に葉を除いたり、房の周囲に空間を作って風通しを良くしたりするなど、人の手である程度改善することができます。

ある「テロワール」の下で、ぶどうの品質を最大限に生かす形で醸造すると、出来上がるワインはそのテロワールを反映してくれます。それは、そのワインのアロマや酸、タンニンなどに表現されるのです。それぞれの地域固有の伝統品種を使用すること、その地域特有の伝統的な栽培方法や醸造方法を遵守することなどの要素も広い意味でのテロワールに含まれます。テロワールには造り手の意志も深く関わっているのです。

例えばモーゼル地方・ザール地域の、南向き急斜面を形成する粘板岩土壌の畑で育つリースリングからは、その優れたテロワールを反映し、香り高く活き活きとした酸を持つワインが生まれます。そのワインをブラインドでテイスティングしてみるとき、「ああ、これはきっとザールのリースリングだ」と思わせるようなワイン、熟練したテイスターが時にぶどう畑の名前まで言い当てられるようなワイン、それこそがテロワールの表現に成功しているワインです。そのようなワインには、草花や果実にたとえられる香りのほかに、ミネラルを連想させる香りと味の要素が感じられることも多いです。

Weingut Pawis パヴィス醸造所
(ザーレ・ウンストルート地方)

パヴィス醸造所

東西ドイツが統一した1990年、ザーレ川とウンストルート川が合流するフライブルク近郊にて、ベルナール&ケルスティン・パヴィス夫妻がスタートした醸造所。趣味で始めた0.5ヘクタールの畑に先代から継いだ畑が加わって、現在では11ヘクタールにまで成長した。また、2005年にはチャイプリッツの旧修道院の一部を購入して改築を行い、2007年に美しい醸造所が完成したばかり。リースリングのほか、ブルグンダー種の美味しさに定評がある。

Weingut Pawis
Auf dem Gut 2, 06632 Zscheiplitz
Tel.034464-28315
www.weingut-pawis.de


2008 Weißer Burgunder Großes Gewächs
2008年産 ヴァイサーブルグンダー、グローセス・ゲヴェックス

(辛口) 19,80€(写真は2007年のもの)

2008 Weißer Burgunder
Großes Gewächs

特級畑フライブルガー・エーデルアッカーの南向き斜面で栽培されたぶどうから造られたヴァイサーブルグンダー(ピノ・ブラン)。この畑は、ブルゴーニュに似た石灰岩の風化土壌。収穫後のぶどうを軽く破砕した状態で4時間放置し、一部をオーク樽で熟成させている。黄金色が美しく、ほんのり蜂蜜とトロピカルフルーツの風味が感じられる魅惑的なワイン。肉料理と合わせる場合は、軽くグリルするだけのシンプルな調理法がぴったりです。
最終更新 Dienstag, 25 August 2015 12:16
 

ラインを遠く離れて: ザーレ=ウンストルート、ザクセン

旧東独地域に位置するザーレ=ウンストルート地方では、ザーレ川とウンストルート川流域のテラス状の畑でぶどうが栽培されています。ブランデンブルク州に属する飛び地のぶどう畑ヴァハテルベルク(Wachtelberg)は北緯52.22~52.26度と、クヴァリテーツワインの生産地として最北に当たります。ぶどうの植生期間が長く、果実が非常にゆっくりと熟すため、とても繊細な味のワインが出来上がります。

栽培品種はリースリング、ミュラー=トゥルガウ、ジルヴァーナー、ヴァイスブルグンダーなどの白品種が中心。特にリースリングやヴァイスブルグンダーから、すっきりとした辛口の高品質のワインが生産されています。土壌は貝殻石灰岩、斑砂岩が中心で、とりわけヴァイスブルグンダーに適しています。

この地方には、数百年前に造られた「トロッケンマウアー(石壁)」と呼ばれる、ぶどう畑を形作る石垣や、ぶどう畑に点在する東屋などがあり、機能的に区画整理される以前の懐かしいぶどう畑の風景が残っています。

古文書によると、ザーレ=ウンストルート地方では、およそ1000年前からぶどうが栽培されていたそうです。ワイン造りの中心地フライブルク(Freyburg)では、毎年9月に同地方最大のワイン祭りが開催されています。

同じく旧東独地域のザクセン地方も、北緯51度のドイツ最北のワイン生産地。ドレスデン、ラーデボイルからマイセンを過ぎる辺りまで、エルベ川沿いの斜面にぶどう畑が広がっています。この地方も、古文書などから、900年に及ぶワイン造りの伝統があり、一時は現在の10倍もの面積のぶどう畑があったことが分かっています。

世界に名高い磁器の窯元があるマイセン市は、ザクセン地方のワインの発祥地としても知られており、古くから教会や修道院、領主らによってワイン造りが奨励されてきました。

エルベ川流域の南斜面のぶどう畑では、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、ゲヴュルツトラミーナー、グートエーデル、主にモーゼル地方で古くから栽培されているエルプリング、そして、フランスのアルザス地方産で、現在ではザクセン地方でしか栽培されていないゴルトリースリングなどが栽培され、白ワインのバラエティーが豊かな産地です。主に花崗岩、斑岩の風化土壌から生まれるワインには気品があります。

また、ピルナからドレスデンを抜け、マイセンを経て愛らしいワイン村ディースバー・ゾイスリッツへと至る全長55キロのザクセン・ワイン街道は、雄大なエルベ川の景観も楽しめる非常に美しいワイン街道です。

ドレスデンには、日本人ソムリエ沼尻慎一さんの経営するワインショップ、DWG Handelがありますので、ぜひ訪ねてみてください。日本への発送も請け負っておられます。

DWG Handel
An der Frauenkirche 13, 01067 Dresden
Tel.0351-2092931
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営業時間:10:00~19:00(水曜定休)

 
Weingut Schloss Proschwitz シュロス・プロシュヴィッツ醸造所
(ザクセン地方)

シュロス・プロシュヴィッツ醸造所(ザクセン地方)
©Weingut Schloss Proschwitz

エルベ河畔の古都マイセンの高台に位置するシュロス・プロシュヴィッツ醸造所は、ザクセン地方に現存する最古の醸造所。オーナーのドクター・ゲオルグ・プリンツ・ツア・リッペは、ザクセン地方を本拠地とする侯爵家の出身で、東西ドイツ統一が実現した1990年以降、侯爵家の所有だった醸造所および宮殿を買い戻し、多額の投資を行って現代に蘇らせた。ぶどう畑シュロス・プロシュヴィッツは、同醸造所のモノポール。高品質のワインは年々評判を上げている。

Weingut Schloss Proschwitz
Dorfanger 19, 01665 Zadel über Meißen
Tel.03521-76760
www.schloss-proschwitz.de


2008 Schloss Proschwitz Goldriesling trocken
2008年産 シュロス・プロシュヴィッツ・ゴールドリースリング (辛口) 9,50€

2008 Schloss Proschwitz Goldriesling trocken

ゴールドリースリングは、1900年頃にアルザス地方で交配され、栽培されていた品種。その後ザクセン地方にもたらされ、今では同地方を代表する品種として知られるようになった。早熟品種であるため、北限の地でありながら9月半ば頃に収穫でき、軽やかな味わいに仕上げられている。熟した洋梨やバナナのような甘い香りと味がチャーミング。口の中にほんのり甘さが広がるものの、後味はすっきりとした辛口。軽い前菜やサラダ、チーズにぴったりのワイン。
最終更新 Dienstag, 25 August 2015 12:15
 

個性派の生産地: ミッテルライン、ナーエ、ヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ

ユネスコ世界遺産にも登録されているビンゲンからコブレンツへ至るライン峡谷と、その北に位置するレマーゲン辺りまでが、ミッテルライン地方と呼ばれる全長100キロに及ぶワイン生産地域です。ライン川が最も美しい姿を見せてくれる場所で、狭隘な谷の斜面にぶどう畑が切り開かれています。古城や城跡が多く、ほぼ完全な状態で市壁が残っているオーバーヴェーゼル、かつてワイン取引の中心地であったバッハラハなどの美しいワイン街が点在し、風光明媚かつワインも美味しいという、ぜいたくな産地です。

この辺りの畑は粘板岩土壌で、生産されるワインの9割近くが白品種。主にリースリングが栽培されており、数多いシュトラウスヴィルトシャフトやグーツシェンケ(醸造所直営の居酒屋)で、ワインと軽い食事を楽しむことができます。

ナーエ地方では、ビンゲンでライン川と合流しているナーエ川と、その支流であるグラン川、アルゼンツ川流域を中心にぶどうが栽培されています。この辺りは太古の時代に極端な地殻変動が起こったため、土壌が変化に富んでおり、同じ畑であっても100メートルごとに岩石の構成が全く異なるということが珍しくありません。ナーエ地方でも白ワインの生産量がほぼ8割を占め、やはりリースリングが主要品種。土壌の多彩さゆえに、その味わいも実に多彩です。

同地域には、バート・クロイツナハからバート・ミュンスターへ至るザリーネンタール(ザリーネの谷)と呼ばれる美しい保養地があります。かつては岩塩も採れたそうで、塩分を含んだ鉱泉が湧いており、枝状架(ザリーネ)と呼ばれる、鉱泉を滴らせて水分を気化させ、塩を採取するための、小枝を組んだ壁状の装置が各所に見られます。この設備は現在、塩の採取のためではなく、呼吸器官などの治療に利用されています。枝状架周辺の空気は塩分をたっぷり含んでいるため、その近くで佇んだり、周辺をゆっくり散歩したりするだけで治療効果があるそうです。またこの地方にも、知る人ぞ知る「ナーエ・ワイン街道」があるほか、「ドイツ宝石街道」の中心地で、かつて鉱石の採掘で栄えたイーダー・オーバーシュタインまで足を伸ばす楽しみもあります。

オーデンの森の最西端に位置するヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ地方は、プファルツ地方同様、いち早くアーモンドが開花する温暖な地域です。旧ローマ街道である「ストラータ・モンターナ(ベルクシュトラーセ)」沿いにぶどう畑が点在し、標高150メートルほどのなだらかな山々が連なる、優美な風景が広がっています。オーデンの森は、東から吹き付ける冷たい風からぶどう畑を守っています。

この地域のワイン造りの中心地は、「ワインと花の街」として知られるベンスハイム。ここでも、生産されるワインの78.9%が白ワインで、主にリースリングが栽培されています。土壌は主に黄土(レス)で、出来上がるワインは軽やかな味わいです。ベンスハイム近郊には、ユネスコ世界遺産のロルシュの修道院など、観光の楽しみも豊富にあります。

Weingut Simon-Bürkle ジモン・ビュルクレ醸造所
(ヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ地方)

ジモン・ビュルクレ醸造所(ヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ地方)

ヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ地方は、オーデンの森が冷たい東風を遮ってくれるため、温暖でワイン造りに適した土地。この地方の中心地ベンスハイムに近いツヴィンゲンベルクのジモン・ビュルクレ醸造所は、1991年にクルト・ジモンとヴィルフリート・ビュルクレが共同でスタートさせた若い醸造所。クルト亡き後の2003年以降は、その妻ダグマー・ジモンとヴィルフリート・ビュルクレが醸造所を運営している。リースリングとブルグンダー種を中心とする高品質のワインで頭角を現している気鋭の醸造所だ。

Weingut Simon-Bürkle
Wiesenpromenade 13, 64673 Zwingenberg
Tel. 06251-76446
www.simon-buerkle.de


2006 Diorit Riesling Trocken
2006年産 ディオリート・リースリング(辛口) 16,80€

2006 Diorit Riesling Trocken

ツヴィンゲンベルクに近い、標高517メートルのメリボクス山の南斜面のぶどう畑で栽培されているリースリング。メリボクス山は花崗岩(かこうがん)、閃緑岩(せんりょくがん)から成っており、ジモン・ビュルクレ醸造所は、それぞれの土壌を活かしたグラニート(花崗岩)・リースリングとディオリート(閃緑岩)・リースリングをリリースしている。このディオリート・リースリングの土壌となっている閃緑岩は花崗岩に似た深成岩で、リースリングの土壌としてはめずらしく、ほかに類のないほど力のあるリースリングに仕上がっている。
最終更新 Freitag, 21 August 2015 17:34
 

赤ワインの大地: アール、ヴュルテンベルク、バーデン

アール地方は、ボンやデュッセルドルフから日帰りで訪れることのできるワイン産地として、近年脚光を浴びています。この地方でもローマ時代にぶどう栽培が始まりました。現在栽培されているぶどうの84.4%が赤品種で、「赤ワインの楽園」と呼ばれています。アール川流域の粘板岩土壌の急斜面で育てられている赤品種は、主にシュペートブルグンダーとその突然変異種であるフリューブルグンダー。フリューブルグンダーは、その名の通り早熟のブルグンダー種で、シュペートブルグンダー種、つまり晩熟のブルグンダー種より2週間ほど早く収穫することができます。原産地フランスでは、ほぼ消滅してしまい、スローフード協会が保護品種に指定しているほどですが、ドイツでは少しずつ増えている品種です。白品種ではリースリングが主流です。

アール川はライン川に向かって蛇行している小さな川で、峡谷の急傾斜に造られたぶどう畑の景観は見事です。畑仕事の機械化は困難で、手仕事が中心。そのためワインの品質の高さと美味しさには定評があります。ぶどう畑の中を縫うように赤ワイン・ハイキング道も整備されており、赤ワイン派の方には見逃せない地域です。

ヴュルテンベルク地方も、赤ワインの生産量が全体の70.2%を占め、「赤ワインの故郷」と呼ばれています。ぶどう畑はネッカー川とその支流域、そしてボーデン湖のほとりに点在し、赤品種では主にトロリンガー、レンベルガー、シュヴァルツリースリング、シュペートブルグンダーが栽培されています。中でもトロリンガーは軽やかな味わいで、日々のワインとして地元の人々に愛されています。白品種は、ここでもリースリングが優勢です。

ローテンブルクに近いヴァイカースハイムから、シュトゥットガルトの南に位置するメッツィンゲンまでの500キロに及ぶヴュルテンベルク・ワイン街道は、ドイツの知られざるワイン街道の1つ。作家のシラーや詩人で思想家のヘルダーリンはヴュルテンベルク産のワインを好んだといわれ、この地域にはマールバッハのシラーハウスなど、シラーゆかりの地がいくつかあります。

バーデン地方は、ドイツ最南端のワイン生産地域。バーデン・バーデンなどの保養地で有名な地域ですが、ハイデルベルクからボーデン湖までのライン川右岸沿い約400キロにわたってぶどう畑が連なっています。ライン川左岸にはフランスのアルザス・ワイン街道が通っており、1日で両地域を訪れることも可能です。バーデン地方は「ブルグンダー種の産地」として知られ、広大な産地ゆえ、赤ワイン用ぶどうの栽培面積ではドイツ最大です。

同地方では、パワフルなグラウブルグンダー、エレガントなヴァイスブルグンダーのほか、アール地方とは異なる力強い味わいのシュペートブルグンダーが造られています。特に、火山岩土壌の丘陵地カイザーシュトゥールの辺りはドイツで最も温暖な地域で、世界的に評価の高い優れたシュペートブルグンダーが生まれています。また、ドイツ唯一のグートエーデル(仏語名シャスラ)の栽培地としても知られています。

Weingut Bernhard Huber ベルンハルト・フーバー醸造所
(バーデン地方)

ベルンハルト・フーバー醸造所(バーデン地方)

バーデン地方のフライブルク市に近いマルターディンゲンで、高品質のワインを生産しているベルンハルト&バーバラ・フーバー夫妻。今から700年前、ブルゴーニュからやって来たシトー派の修道士たちが、この辺りでシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール種)を栽培し始めたと言われており、フーバー醸造所は当時の修道院の醸造所の跡地にある。入念に手入れされた美しいぶどう畑から、完璧なぶどうだけを収穫している。素材への厳しい眼が、彼らの生み出す偉大なワインの秘訣。栽培品種の7割近くがシュペートブルグンダー。特級畑別、そして樹齢別に7種類のシュペートブルグンダーをリリースしている。

Weingut Bernhard Huber
Heimbacher Weg 19, 79364 Malterdingen
Tel. 07644-1200
www.weingut-huber.com


2005 Spätburgunder, Alte Reben, trocken
2005年産シュペートブルグンダー 「アルテ・レーベン」(辛口) 28,90€
(Mövenpick Weinkeller 販売価格)

2005 Spätburgunder, Alte Reben, trocken

樹齢20年から40年のシュペートブルグンダーから造られたワイン。「アルテ・レーベン」は、ドイツ語で古木を意味する(フランス語の「ヴィエーユ・ヴィーニュ」)。ドイツでも近年、樹齢の高い木に実るぶどうを別に収穫し、醸造する生産者が増えてきた。ぶどうは樹齢20年を過ぎる頃から、実るぶどうの数が減りはじめ、一房への凝縮度が高まる。加えて、地中深くまで張った根から1つひとつの房にもたらされる養分はますます豊かになり、よりコクのあるアロマを持つぶどうが得られる。バリック樽で18カ月熟成。凝縮した味わいながら、エレガントで優しい味。
最終更新 Freitag, 21 August 2015 17:32
 

今、最も注目度の高い生産地域: ラインヘッセン、プファルツ

ラインヘッセン地方もプファルツ地方*も、ローマ時代からぶどうが栽培されていたと言われる伝統的なワインの生産地。現在は、非常にダイナミックで革新的な動きが見られる、目が離せない地域です。1970年代頃までは、いずれも大量生産ワインの産地というイメージがつきまとっていましたが、そんなマイナスイメージも、高品質のワインを造ろうと地道な努力を重ねてきた醸造家たちの力によって、すっかり塗り替えられました。

ラインヘッセン地方と言えば、「ラインフロント」と呼ばれるライン川沿いのぶどう畑のワインのほか、甘口の大衆ワイン「リープフラウミルヒ」が有名でした。しかし近年では、内陸部のゆるやかな丘陵地帯のぶどう畑からも偉大なワインが誕生しています。また、リープフラウエン教会周囲の本来のリープフラウミルヒの畑では、偉大な辛口のリースリング造りが復活しています。

ラインヘッセン地方は、無数のゆるやかな丘に覆われているため、「千の丘陵地」の異名を持っています。ぶどう畑の所々には、イタリア南部の風景を彷彿させるトゥルッロと呼ばれる石造りの小屋が見られます。ラインヘッセン地方を代表するワインと言えば、エレガントなリースリングとジルヴァーナー。またヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、そしてシュペートブルグンダーの質の高さには定評があります。

同地域は、ドイツのビオワイン発祥の地でもあります。1955年にはすでにビオワインを造り始めた醸造家がおり、1983年に地域のビオワイン団体が発足。その2年後、ドイツで唯一、ワインに限定したビオ生産者団体の全国組織「エコヴィン(ecovin)」が活動を開始しました。

プファルツ地方には、北端のボッケンハイムから南端のフランスとの国境の街シュヴァイゲンまで全長85kmにおよぶドイツワイン街道が通っています。そしてこの街道沿いに醸造所とレストランが集中し、食文化の豊かさとレベルの高さではドイツの先端を行っています。

ところで、ドイツビールの祭典がミュンヘンのオクトーバーフェストなら、ドイツワインの祭典は3月あるいは4月に行われるノイシュタットのアーモンド開花祭を皮切りに、11月の聖マルティン祭まで、ワイン街道筋で行われる数多くのワイン祭と言っても良いでしょう。そのハイライトは、9月あるいは10月にノイシュタットで行われるぶどう収穫祭です。

プファルツ地方の西側には、プフェルツァーヴァルトというシュヴァルツヴァルトに匹敵する巨大な森がひろがり、ぶどう畑を悪天候から守っています。また、プファルツ地方も、昔からリースリングの質の良さで知られています。このほかラインヘッセン地方同様、ブルグンダー種が地域を代表する品種です。同地域においては赤ワインの生産量が37.7%を占めています。また、気候が温暖であることから、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、シラーなどフランスの赤品種も栽培され、成果を収めています。

*プファルツはファルツと表記することもあります。

Weingut Göhring ゲーリング醸造所(ラインヘッセン地方)

ゲーリング醸造所(ラインヘッセン地方)
©Volker Oehl

ラインヘッセン、フレアスハイム=ダールスハイムの家族経営の醸造所。ぶどう畑は14ヘクタール。ヴィルフリード、マリアンネ夫妻と息子アルノが共同でワイン造りに従事している。醸造所の主力品種はリースリング、グラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダー種など。特筆すべきは、アルバロンガ種から造られる高級甘口ワイン。長年交流がある同村のトップワイナリー、ケラー醸造所のクラウス・ケラーは、昔からアルバロンガ種から造られる甘口ワインのポテンシャルを確信していたが、ゲーリング醸造所はそれを実証している。コストパフォーマンスも良い注目のワイナリー。

Weingut Göhring
Alzeyer Straße 60, 67592 Flörsheim-Dalsheim
Tel. 06243-408
www.weingut-goehring.de


2008 Muskateller trocken
2008年産ムスカテラ(辛口) 5,00€

2008 Muskateller trocken

アルノは、引退したミュラー=カトワール醸造所の名醸造家ハンス=ギュンター・シュヴァルツの最後の弟子の1人。その後カナダでも修業を続け、2005年から実家のワイン造りに加わった。ハンス=ギュンターのワイン哲学を引き継ぎ、特にムスカテラ、ショイレーベにおいて、そのスタイルが受け継がれている。2008年のムスカテラはクリーン、そしてピュアで、パイナップルをかじるようなフレッシュなワイン。
最終更新 Freitag, 21 August 2015 17:31
 

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