ドイツワイン・ナビゲーター


ビオワインの世界 4 Bioland(ビオラント)

「Bioland」はマインツに本拠地を置くドイツ最古、そして最大のビオ生産者団体で、20世紀初頭にスイスで起こった「農民郷土運動」に端を発しています。「農民郷土運動」は政党としても活動し、戦後はビオ農業の先駆けとしてドイツとオーストリアに伝播しました。スイスとドイツの運動家たちの長年の交流が実を結び、1971年にバーデン=ヴュルテンベルク州ロイトリンゲン近郊のホーナウに「Bio Gemüse e.V」(ビオ野菜協会)が発足。これがビオラントの前身です。1978年には「Bioland」が登録商標となり、翌年には団体名もそのように変更されました。

「Bioland」は現在、「循環する農業」「豊かな土壌」「動物保護の観点に立った畜産」「ナチュラルで高品質な食品生産」「生態系の多様性の推進」「自然な生活基盤の維持」「生きがいのある未来の保証」という7つの原理を提唱しています。

会員はドイツとイタリアの南チロル地方に分布し、総数は5719、会員農地の総計は27万7093ヘクタールとなっています。主体は農家で、中には養蜂、園芸業者もいます。ワイン醸造所は215軒で、ぶどう畑の総面積は1100ヘクタール(このうち75醸造所、計93ヘクタールがイタリアにあります)。農作物の生産者でない場合(パン製造業、乳製品製造業、精肉業、レストランなど)は、パートナー会員になることが可能です。「Bioland」の設立にはワイン醸造所も参画しており、1985年にワイン用ぶどうの栽培に関する規定、ワインとゼクトの醸造基準が定められました。

「Bioland」は化学合成農薬、化学肥料の使用を禁止するほか、 益虫が充分に生息できるよう年間を通してぶどう畑を多様な植物で緑化することを義務付けています(若い苗、急斜面、痩せた土地などには例外が認められています)。また、ぶどう畑面積の少なくとも1%をエコ・ニーシェ(Öko-Nische)とし、ほかの植物を栽培するなどしてモノカルチャー(単一栽培)化を避けることも義務付けています。醸造においては、逆浸透膜ろ過によるワインの凝縮法など、一部の最先端技術を導入することが禁じられています(EUビオワイン基準は逆浸透膜ろ過を認可)。その他にも、ワインの清澄剤からパッケージの素材に至るまで、細かな基準が設けられています。このような基準は、各ビオ団体に共通しているものもあれば、異なるものもあります。

「Bioland」基準例 ※カッコ〈〉内はEUビオ基準

● 会員は、所有するすべての畑において「Bioland」基準に従って栽培しなければならない(ワイン用ぶどう以外のものを栽培している場合はそれも含む)。〈畑の一部でビオの実践が可能〉

● ボルドー液用硫酸銅の上限は年間3kg/haまで。〈年間6kg/ha〉

● ワインに添加する亜硫酸量(一例)は、辛口白・ロゼワインで150mg/L、 辛口赤ワインで100mg/L(いずれも残糖分2g/L以下の場合。残糖値が高いほど亜硫酸添加量は高くなる)。〈同一〉

Bioland: www.bioland.de
1998年にはビオラント出版を設立し、月刊誌「Bioland」のほか、専門書を発行している。

 
Weingut Heiner Sauer
ハイナー・ザウアー醸造所(プファルツ地方)

ハイナー・ザウアー 一家
ハイナー&モニカ・ザウアー夫妻と
長男ファビアン、次男ヴァレンティン

プファルツ地方南部ベッヒンゲンの醸造所。オーナーのハイナー・ザウアーは、祖父が所有していた2.5ヘクタールのぶどう畑を受け継ぎ、1987年に醸造所を築くと同時に「Bioland」に入会した。プファルツ地方では醸造家たちのビオに対する意識が高く、「Bioland」会員も集中している。若い頃から反原発運動をはじめとする環境保護活動に積極的に参加していたハイナーにとって、ビオは自明のことだったという。現在では、21ヘクタールを擁する中規模醸造所に成長。レス、石灰岩、砂岩、 ロームなどの多彩な土壌で、リースリングを筆頭にブルグンダー種などのフランス品種にも力を入れている。1998年にはスペイン、ウティエル・レケーナ地方の標高約800メートルの地に醸造所「ボデガス・パルメラ」を立ち上げた。そこではボバル種からロゼを、テンプラニーリョとボルドー品種から様々なブレンドの赤を生産し、ドイツでも販売している。

Weingut Heiner Sauer
Hauptstraße 44, 76833 Böchingen
Tel.06341-61175
www.weingut-sauer.com


2012 Godramsteiner Münzberg
Weissburgunder Spätlese trocken
2012年 ゴッドラムシュタイナー・ミュンツベルク、
ヴァイスブルグンダー、シュペートレーゼ(辛口)9.50€

ワインハイナーの所有畑は各地に分散しているが、そのうちの1つがランダウ近郊ゴッドラムシュタインにあるミュンツベルク。石灰岩とマールの混在土壌だ。1990年、ハイナーはこの畑にヴァイスブルグンダー種を植えた。ヴァイスブルグンダーはリースリングやジルヴァーナーのように注目されてはいないが、土壌と造り手によって様々な表現が可能な、愛すべき品種。ミュンツベルクのヴァイスブルグンダーは、ステンレススティールタンク内で醸造され、ピュアで柔らかな味わい。リンゴ、メロン、バナナなどの風味が立ち上る。ハイナーはこのほか、ベッヒンゲンのロームと貝殻石灰岩の混在土壌の畑でもヴァイスブルグンダーを栽培している。こちらのぶどうからは、トノー(Tonneau)と呼ばれる500リットル容量のフレンチオーク樽で寝かせたヴァイスブルグンダー「Schloss(シュロス)」を生産している。オーク派の方はこちらをどうぞ(14.50€)

最終更新 Freitag, 06 September 2013 11:39
 

ビオワインの世界 3 ビオワイン小史

ドイツのワイン生産地の中で、いち早くビオ農法を試みたのがラインヘッセン地方です。第63回の「醸造所ナビ」でご紹介したシュテファン・ザンダーの祖父オットーハインリヒ・ザンダーが1955年にぶどう畑を緑化し、化学肥料と化学農薬の使用をやめたのですが、通常この年をドイツワインの「ビオ元年」と言います。まだ「ビオ」という概念が知られていなかった時代のことでした。

とは言え、産業化の波に抵抗した初のビオ農法は、1924年に人智学の祖ルドルフ・シュタイナー(オーストリア出身)によってすでに提唱されていました。彼がコーベルヴィッツ(現在のポーランド)で開講した「農業講座」が、今日に受け継がれるビオディナミ農法の基本となっており、ワインにも応用されています。

1927年にはシュタイナーの農法を実践する国際組織が結成され、1928年に「デメター(Demeter)」の名称でスタート。1930年にはドイツでも実践され始めました。その後、1941年にナチスがデメターの活動を禁じましたが、戦後すぐに活動を再開しています。

ワイン造りにおいてビオディナミ農法を実践している著名な先駆者は、オーストリア・ヴァッハウ地方ニコライホーフ醸造所のザース家(1971年より)、フランス・ロワール地方クレ・ド・セラン醸造所のニコラ・ジョリ(1980年頃より)です。ドイツでは、1990年代に入ってから徐々にこの農法が知られるようになりました。

時代が前後しますが、ドイツ最古のビオ生産者団体は1971年設立のビオラント(Bioland)。翌1972年には国際有機農業運動連盟(IFOAM/アイフォーム)という国際組織がフランスで発足します。また、1982年には別のビオ生産者団体ナトゥアラント(Naturland)が誕生します。ドイツにおいては、1980年代にビオ農法への意識が急速に高まります。それは緑の党(1979年発足)の新興と時期を同じくしています。

1983年には、ラインヘッセン地方でドイツ初のビオワイン生産者団体、レギオナーラー・エコ・フェライン(Regionaler Öko-Verein)が誕生しました。また、1985年にはエコヴィン(Ecovin)の前身である連邦エコロジカル・ワイン生産協会(Bundesverband Ökologischer Weinbau)が、やはりラインヘッセン地方で産声を上げます。エコヴィンの本格的な始動は1990年、そして1991年には欧州連合(EU)の規定が整います。

EUの規定は当初、ぶどう栽培に対するものだけで、エチケットに表示される場合は「ビオ栽培のぶどうから造られたワイン」と書かれていました。しかし、2012年産からは、すでにご紹介したように醸造段階における規定が整い、「ビオワイン」が公式にスタートしています。

飲み手にとって気になる酸化防止剤(スルフィット/Sulfit)の量は、通常のワインよりもビオワインの方が少なく、EU基準よりもさらに添加量を抑えている醸造所もあります。

次回からは、ドイツを拠点とする代表的なビオ団体を順にご紹介しましょう。

 
Altmannswein
アルトマンズワイン(モーゼル地方)

アルトマンズワイン(モーゼル地方)
アルトマンズワインはフンスリュック山地で暮らす俳優のミヒャエル・アルトマン氏(70)とヘッダ夫人のワインブランド。2人は主にぶどう栽培に専念し、醸造はフリーの醸造家マーティン・ファイデン氏が全面的にサポートしている。ネーフに所有する畑は計1ヘクタール。栽培しているのはリースリング、シュペートブルグンダー、ドルンフェルダーの3品種。リースリングは樹齢約40年、赤品種はミヒャエルの弟ウルリヒの要望で10年前に植えたものだ。急斜面の畑ゆえ、近隣の畑と合同で行われる農薬の空中散布に頼らなければならないが、それ以外は徹底した自然派だ。20年前に畑を購入してからは、除草剤を投入していないので、春になると畑の大部分が野いちごで覆われる。野いちごは刈って放置することで均等に畑に広がり、土壌の浸食も防いでくれるという。「俳優は動きの多い仕事。だからこそ静寂が支配する畑で、1本1本のぶどうと対峙する時間が大切なんだ」とミヒャエル。ぶどう畑は2人にとって、安らぎの場所となっている。

Altmannswein
Michael & Hedda Altmann
Tel. 0151-52513295
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www.altmannswein.de


2012 Der Schoss Riesling
2012年 デア・ショース、リースリング 5.60€

ワインネーファー・フラウエンベルクは、夕方までしっかりと太陽の光が降り注ぐ南向き急斜面の畑。スレート岩および硬砂岩の風化土壌だ。「Der Schoss(「膝」「山の懐」の意)」は、勾配がやや緩やかなY字型の一角のリースリングから造られたもの。醸造は自発的醗酵に任せ、出来上がるワインの味わいも自然任せ。決して華やかではないが、繊細な果実の風味が徐々に立ち上る。ヴィンテージの特徴が活かされた優しい味わいだ。アルトマン夫妻は、フラウエンベルクの最も急勾配の畑からは「Steiler Süden(急斜面の南の畑)」、テラス状の畑からは「Rosengärtchen(バラの庭)」と、計3種類のリースリングをリリースしている。いずれも土壌の個性をしっかりと表現している魅力的なリースリングだ。

最終更新 Montag, 29 Juli 2013 08:07
 

ビオワインの世界 2 ビオ農法とは

今回は、前回大きく3つに分けたワインの農法をごく簡単にご紹介しましょう。

● 通常農法:
非持続的で、生物の多様性が失われていく農法。
・化学合成農薬、化学肥料を使用する。

● ビオ農法:
できるだけ持続可能な生態系、生物の多様性を守ろうとする農法。
・化学合成農薬、 化学肥料は使用しないが、伝統農薬(ボルドー液他)などは使用する。
・オーガニックな植物保護剤と堆肥を使用する。
・遺伝子組み換えを行わず、遺伝子組み換えがなされたものも使用しない。

● ビオディナミ農法:
ビオ農法をより徹底し、持続可能な生態系、生物の多様性を取り戻そうとする農法。
・化学合成農薬、 化学肥料は使用しないが、伝統農薬(ボルドー液他)などは使用する。
・独自の方法で造られるオーガニック調剤(プレパラート)と堆肥を使用する。
・遺伝子組み換えを行わず、遺伝子組み換えがなされたものも使用しない。
・宇宙的側面からもアプローチし、天体の運行を考慮に入れて作業に従事する。

すべてのルールを網羅したわけではありませんが、違いが少し明確になったでしょうか?

上記で「化学合成農薬」と一括して表現したものは、防カビ剤(Fungizid)や除草剤(Herbizid)、殺虫剤(Insektizid)、殺菌剤(Bakterizid)などを指します。ビオは、このような人工的な薬剤と化学肥料を拒否しますが、カビ病防護の伝統農薬である石灰硫黄合剤(ドイツの造り手の間では単に硫黄=Schwefelと言われることが多い)とボルドー液(生石灰と硫酸銅の調剤で、単に銅=Kupferと言われることが多い)の使用は、通常農法より少ない分量で認められています。

ただ、石灰硫黄合剤については炭酸水素ナトリウム、すなわち重曹(Natriumbikarbonat)や炭酸水素カリウム(Kaliumbikarbonat)、フェンネルオイル、 ケイ酸(Kieselsäure)などで代用できるため、使用していない醸造所もあります。しかし、ボルドー液に代わる有効な処方はまだなく、 実験的に使用されている酸化アルミニウム(Tonerde)、 藻類(Algen)はあまり効果がないそうです。

ビオの認証の有無にかかわらず、志の高い造り手たちは、ぶどうをしっかり守りつつ、土壌の汚染を最低限にするため、天候を睨みながら減農薬に挑戦しています。例えば、除葉などの手作業を行い、フェンスの通気性を良くしてカビ病に対処しているのです。ビオの認証を取得していなくても、よりナチュラルなワインを造り、次世代にできる限り健康な土壌を残したいという想いは、多くの醸造家に共通しています。

また、自然の堆肥やコンポストには即効性はありませんが、継続することで土壌は活力を取り戻していきます。健康な土壌ではぶどうの成熟や収穫量のバランスが保たれ、自然の酵母が充分に生育し、よりテロワールを反映したワインが生まれます。ぶどう自体も病気に罹りにくくなり、農薬を撒く人間の健康も守られるのです。

 
Weingut Alexander Laible
アレクサンダー・ライブレ醸造所(バーデン地方)

アレクサンダー・ライブレ醸造所(バーデン地方)
アレクサンダー&コリンヌ・ライブレ夫妻と
長男のルイスくん
 国立ヴァインスベルク研究所付属専門学校を卒業後、モーゼル地方のアルベルト・カルフェルツ醸造所で2年にわたって栽培・醸造責任者を務めた後、コンサルタントとして独立、複数の醸造所のワイン造りを指導した。その後、兄が父親の醸造所を継いだため、アレクサンダーは個人で醸造所を興す。ファーストヴィンテージは2007年、29歳のときだった。母親が自然に対する繊細な感覚の持ち主で、古来の農法を勉強し、常に月の満ち欠けに留意しながら夫のワイン造りを支えてきたという。アレクサンダーは母の影響でビオディナミという概念を特に意識することなく、本能的に自然に寄り添う農法を実践するようになった。使用している農薬はオイディウム(ウドンコ病)対策の石灰硫黄合剤のみ。それ以外は、すべてビオディナミ調剤を使用している。肥料は春先にごく微量の鉱物肥料を使用、その後はレグミノーゼン(マメ科植物)の種を蒔き、植物が窒素を取り込めるようにしている。アレクサンダーはビオ団体に所属せず、EUの認証も取得していない。彼のように現段階で認証を取得していなくても、ナチュラルなワイン造りを実践している造り手は少なくない。

Weingut Alexander Laible
Unterweiler 48, 77770 Durbach
Tel. 0781-2842380
www.weingut-alexanderlaible.de


2012 Weißer Burgunder SL*** trocken
2012年産 ヴァイサーブルグンダー SL(セレクション)*** 辛口 11.00€

ワイン アレクサンダーのワインは、初ヴィンテージがすでにハイレベルのコレクションだった。2009年版「ゴーミヨ・ドイツワインガイド」では、新人賞に相当する「Entdeckung des Jahres」を受賞し、注目を浴びた。彼にとっては、畑の格付けも糖度の高低を基準とした品質等級も重要ではない。「畑仕事においても、醸造においても、非常に上手くいったワインに、最高の3つ星を与えている」と言う。「テロワールよりも人」が彼の信条だ。ヴァイサーブルグンダーSL***は独自評価で3つ星。ナッツの香りが魅力的な、みずみずしい味わいの逸品で、酸味、フルーティーさ、ボディーのバランスも絶妙。収穫時の完璧に熟したぶどうの質感が感じられるワイン。

最終更新 Mittwoch, 12 Juni 2013 13:36
 

ビオワインの世界 1 ビオワイン入門

今回から15回にわたって、ビオワイン(エコワイン)についてお話ししたいと思います。

ワイン造りにおいても、ほかの農産物と同様、大まかに分けて3つの農法があります。非有機農法(化学農法、ドイツではKonventionelle Landwirtschaft=通常農法と言われます)、有機農法(オーガニック農法、ビオ農法、エコ農法)、そしてバイオダイナミック農法(ドイツ語でビオデュナミッシャー・ヴァインバウと言いますが、以後はビオディナミ農法で統一します)です。ビオディナミ農法は人智学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した農法です。

とは言え、すべてのワインをこれら3つのカテゴリーに厳密に分けることは難しく、非有機農法と有機農法、そしてビオディナミ農法との間で、様々なビオ生産者団体が独自の基準を設けて活動しているほか、団体に所属することなく、個人でビオ農法を実践している造り手も大勢います。日本語の「自然派ワイン」という言葉は、これらすべてを統轄して使われていますし、ほかにもIP(Integrierte Produktion=ビオ農法を取り入れた通常農法)、リュットレゾネ(la lutte raisonnée= フランス語で、直訳は熟考された対策。厳格な減農薬農法)という理念を掲げてワインを造っている醸造所があります。近年、注目されている持続可能性(Nachhaltigkeit)という考え方もビオ農法に取り入れられています。ビオワインの現状はかくも多様で、それゆえに全貌がわかりにくくなっています。

EUのビオマーク
EUのビオマーク

ワイン造りの場合は野菜や果物と異なって、ぶどうの栽培までが農業、ワインの醸造段階はアルコール飲料生産となるため、「ビオ農法」という言葉のイメージは実態を反映していません。実際、2011年ヴィンテージまでは、欧州連合(EU)のビオ基準はワイン用ぶどうの栽培に関するもので、公式には「ビオ栽培のぶどうから造られたワイン」でしかありませんでした。しかし、ようやくEUのワイン醸造におけるビオ基準が整い、2012年ヴィンテージからは公式に「ビオワイン」が誕生しています。EU基準を満たし、認証を受けたビオワインは、今後EUのビオマークとコード番号の表示が義務付けられます。2011年産ヴィンテージまでは、EU基準のビオの認証を取得していても、エチケットに表示していない醸造所がありましたが、今後はそれが明瞭になります。

ドイツで活動しているビオワイン生産者団体の基準はEUのビオ基準より厳しいのですが、個々の団体で異なる規定があり、どの団体が一番厳格であるかは、一概に言えません。所属しているドイツ国内のビオ団体の認証を取得した場合、ロゴマークの表示は大抵任意ですが、EU基準よりも厳格な基準を守っていることを示すため、ほとんどの生産者が表示しています。しかしビオディナミワインには、まだ公式な認証はなく、ドイツ国内唯一のビオディナミ団体(デメター)に属し、そのロゴを表示している場合にのみ、それと知ることができます。

これから少しずつビオワインとは何かを解説し、ビオワインの見付け方もご案内していきます。そして、ご一緒にビオワインについて詳しくなっていきましょう。

 
Weingut Sander
ザンダー醸造所(ラインヘッセン地方)

ザンダー醸造所(ラインヘッセン地方)
シュテファン&ザンドラ・ザンダー夫妻
創業250年、ラインヘッセン地方メッテンハイムの家族経営の醸造所。ドイツ最初のビオワイン醸造所として知られる。現オーナー、シュテファン・ザンダーの祖父オットーハインリヒは、1955年に化学農薬、化学肥料を拒否するなど、ドイツで初めてビオ農法に取り組んだ。そのため、この年はドイツのビオワイン元年とも言われる。シュテファンは祖父、そして父ゲアハルトによって守られてきた豊かな土壌を継ぎ、ビオを越えてビオディナミ農法に取り組んでいる。畑では自然の草を放置し、足りない場合には種蒔きをしてモノカルチャー(単一栽培)化を避け(緑化)、その草を刈り取って肥料としているほか、ビオディナミ特有の調剤を希釈して畑やぶどうに撒き、土壌とぶどうが本来の力を発揮できるよう手助けをしている。「理想の畑は森の中のような自然な土壌」とシュテファンは言う。ナトゥアラント、デメター、ルネサンス・デ・アペラシオンの3つのビオ団体会員。

Weingut Sander
In den Weingärten 11, 67582 Mettenheim
Tel. 06242-1583
www.sanderwines.com


2010 Spätburgunder Mettenheimer Michelsberg trocken
2010年 シュペートブルグンダー メッテンハイマー・ミヒェルスベルク 辛口 17.90€

ワインミヒェルスベルクはシュテファンの祖父の代から緑化されている畑。そのためレス土壌でありながら、表土は黒々としており、柔らかで、あらゆる種類の草が生えている。ビオディナミでは自然醗酵が好ましいが、条件ではない。しかし、ミヒェルスベルクのように半世紀以上に渡って化学農薬、化学肥料を使用していない畑から収穫できるぶどうの果汁には農薬の痕跡がなく、自然醗酵は上手く行くという。このシュペートブルグンダーは、透明感のある品の良い果実味に控えめなロースト香や醗酵茶の風味が重なり、酸とタンニンのバランスも良い。自然の恵みがしっかりと感じられるワインだ。

最終更新 Sonntag, 09 Februar 2014 17:47
 

ぶどう畑の土壌 6 土壌のミネラルとミネラリッシュな風味

ドイツでは主にリースリングの形容詞として頻繁に用いられる「ミネラリッシュな風味」とは、一体どんな風味なのでしょうか? 土壌のミネラルとミネラリッシュな風味の関連性について、ガイゼンハイム研究所のペーター・ベーム博士(Dr. Peter Böhm)におうかがいした話を以下にまとめました。

***

ワインの風味には、土壌の性質、土壌が含有するミネラルや水分、天候や温度、ぶどうの木や接ぎ木した根の性質、ミネラルの供給状態、ぶどうの成熟度、アルコールの量や熟成度など、ありとあらゆるファクターが影響している。

例えば、多くの専門家が、粘板岩土壌からはミネラリッシュな風味のワインが生まれると指摘している。また、あるワインから、濡れた岩石のような清冽な香りがして、硬質のミネラルっぽい味がする場合、そのワインに対して、ミネラリッシュという表現が使われる。

ただ、この場合のミネラリッシュというのは、ワインのアロマ成分から得られる感覚で、ワインの中にミネラルが多く含まれているという意味ではない。それは化学分析の結果ではなく、官能検査による香りと味覚の表現だ。個々の土壌が含有する個々のミネラルの吸収過程を化学的に分析することは非常に困難で、人間の味覚にも個人差がある。だから、ミネラリッシュな風味の由来は、はっきりとは分かってない。

土壌のミネラルにはいろいろあり、ぶどうに必要なものとそうでないものとがある。例えば、半導体産業には役に立っても、ぶどうには役に立たないミネラルだってある。岩石に含まれ、風化により分解されて地中の水分に溶け出したカリウム、マグネシウム、鉄などは、植物が成長するために必要なミネラルだ。

植物は硬質の岩場では何もできないけれど、岩石が風化し、細かくなると、水分がミネラル分を溶かすので、吸収が可能になる。また、ぶどうの根も根酸を分泌し、風化岩石に働き掛けてミネラルを取り込む。土中から得られるミネラルは植物の成長に活かされ、その成分はワイン自体には含まれる。

一方、アロマ成分は大まかに分けて炭素系、水素系の物質、酸素などで構成される。収穫量を低く抑えて造られるワインには、アロマ成分が充分に蓄えられている。でも、土壌のミネラル自体はアロマ成分には出てこないため、ミネラリッシュなアロマとの直接の関連性はない。

***

このように、土壌のミネラルとミネラリッシュな風味との間には、直接の関連性はないとのことですが、何らかの間接的な働きかけがあるのかもしれません。それにしても、岩石などに由来するミネラルのイメージが、出来上がったワインの香りに表れてくることを思うと、ワインという飲み物にある種の神秘性を感じます。

 
Weingut Vollenweider
フォレンヴァイダー醸造所(モーゼル地方)

 

フォレンヴァイダー醸造所
モーゼル地方のワイン街トラーベン・トラーバッハで1999年にスタートした気鋭の醸造所。醸造所を興したのはスイス・グラウビュンデン地方出身のダニエル・フォレンヴァイダー。 92年に出会ったエゴン・ミュラー醸造所のワインの味わいに感動し、醸造家になろうと決意した。スイス・ヴェーデンスヴィールの大学で醸造学を修めた後、ニュージーランドのフロム・ワイナリーで1年、モーゼルのドクター・ローゼン醸造所で1年働いた後に独立。まずは、ヴォルフ村のゴルトグルーベに1ヘクタールの畑を入手、すでに植わっていたリースリングの古木に生命を吹き込み、ワインを造り始めた。初ヴィンテージは2000年。今では畑面積も4ヘクタールとなり、中部モーゼル地域を代表する造り手に成長している。

 

Weingut Vollenweider
Wolfer Weg 53, 56841 Traben-Trabach
Tel. 06541-814433
www.weingut-vollenweider.de


2011 Wolfer Riesling trocken
2011年 ヴォルファー・リースリング(辛口)14.50€

 

Wolfer Riesling trocken
ダニエル自身、「シーファーのアロマがとりわけ印象的」と言っているように、フォレンヴァイダー醸造所のワインの中でも特にシーファーの個性が表現されているワイン。清らかでミネラリッシュな味わいだ。ぶどうは、すべてヴォルフ村の対岸にあるゴルトグルーベという畑のもの。この畑は南および南西向きの急斜面で、フォレンヴァイダー醸造所の所有畑の4分の3強に相当する。土壌は灰色、赤灰色のシーファー。栽培しているぶどうの6割が自根(アメリカ品種の台木を使用していない)。約2割が樹齢80~100年という。ゴルトグルーベからはこのほか、ファインヘルプ(中辛口)、カビネット、シュペートレーゼ(共に甘口)が造られている。

 

最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 15:07
 

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