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ぶどう畑の土壌 3 堆積土壌

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ドイツにある13のワイン生産地域の土壌は、いずれも異なります。また、同じ地域内であっても土壌は均質ではありません。1つの村内、1つの畑内でも、その土質は異なります。その多彩さゆえに土壌が注目されるのです。今回から3回にわたって、ドイツのぶどう畑の代表的な土壌をご紹介します。

ドイツのすべてのぶどう栽培地域で見られるのが黄土(レス / Löss)と呼ばれる、氷河期の砂塵が風などによって運ばれ、堆積した土壌です。レスという名称は、ギリシア神話の風の神アイオロスから付けられているそうです。 黄土は農業に最適な土壌の1つとされ、含有されるミネラル分が豊富だといわれています。乾燥時は白っぽく、水分を蓄積しやすい土壌で、湿気を含むと黄土色になります。土壌の粒子は細かく、石灰分を多く含んでいます。比較的柔らかい土壌なので、ぶどうの根は無理なく伸びて行きます。

黄土には粘板岩(シーファー / Schiefer)など、ほかの岩石が混在していることもあり、この混在土壌には浸食によるものと、人工的に掘り返すことで改良された土壌(リゴゾール)とがあります。黄土土壌の大部分はシルト(粒子の粗い泥、シュルフ / Schluff)で構成され、粘土(トーン / Ton)も含まれており、香り高く、調和の取れたワインを生んでいます。

このほか、黄土が混在する土壌にローム(レーム / Lehm)があります。ナーエ地方やラインガウ地方、プファルツ地方、フランケン地方などで見られ、混在土壌はレス・レーム(Lösslehm)と呼ばれることもあります。ロームは砂とシルトと粘土の混在する風化堆積土。この土壌は粒子が粗めで、通気性や水はけに優れているそうです。

粘土土壌も、ラインガウ地方やナーエ地方、ラインヘッセン地方、プファルツ地方、バーデン地方など各地方で見られ、第三紀(約6500万年前から180万年前まで)起源の土壌もあります。ライン地方の粘土土壌は、細かい砂塵が静かな内海の底に堆積し、その後、土壌の隆起で海との繋がりが途切れたもの。堆積土は明るい緑色や灰色、青色など、様々な色調を帯びています。粘土は非常に締まった土壌で、保水力に優れていますが、保温性や通気性があまり良くない上、根が伸びにくいという特徴があります。こう書くとネガティブな印象を与えますが、粘土土壌は水分が多いと膨張し、減ると嵩が低くなるため、自力で土壌を耕すような効果があるそうです。石灰質は少なめですが、ミネラル分も窒素も充分に含まれているため、ぶどうの栽培にそれほど困難はないようです。粘土土壌からは、ボリューム感のあるワインが生まれます。

粘土土壌のある地域には、泥灰土(マール、メルゲル / Mergel)あるいはトーン・メルゲル(Tonmergel)という石灰質土壌と粘土から成る土壌も見られます。これも第三紀(この場合は約3000万年から2400万年前)の内海の堆積土壌だそうです。 泥灰土は通常、土壌の深いところにあり、ミネラル分が大変豊かな土壌。粘土土壌よりも通気性に優れています。

 
Weingut Leitz
ライツ醸造所(ラインガウ地方)

オーナーリューデスハイムの伝統ある醸造所。その起源は18世紀まで遡ることができる。第2次世界大戦で壊滅的な打撃を受け、戦後、現在のオーナー、ヨハネス・ライツの祖父ヨゼフ・ライツが醸造所を再建。ヨハネスは、父親が早逝したため、母親が副業として辛うじて維持していた醸造所を20歳の若さで継いだ。当初2.6ヘクタールだった所有畑は、現在では約40ヘクタールに拡大。リューデスハイムの急斜面の名醸畑から、テロワールを反映した、ミネラリッシュで重厚なリースリングを生産する一方、普段飲むのに適した軽やかなリースリングも生み出している。同醸造所は米国、英国、スカンジナビア諸国などへの輸出に力を入れ、辛口リースリングを広めている。2011年、ゴー・ミヨ年間最優秀醸造家賞受賞。VDP会員。

Weingut Leitz
Theodor-Heuss-Straße 5, 65385 Rüdesheim
Tel. 06722-48711
www.leitz-wein.de


2011 Eins-Zwei-Dry Riesling Qualitätswein trocken
2011年 Eins-Zwei-Dry リースリング・クヴァリテーツヴァイン(辛口)8.50€

2011 Magic Mountain Riesling Qualitätswein trocken
2011年 Magic Mountain リースリング・クヴァリテーツヴァイン(辛口)14.90€

2011年 Magic Mountainリースリング・クヴァリテーツヴァイン 2011年 Eins-Zwei-Dry リースリング・クヴァリテーツヴァイン「Eins-Zwei-Dry」は、ラインガウ地方のレスとレームの土壌から生まれるリースリングをブレンドした、ライツ醸造所のベーシックなリースリング。 シンプルかつ画期的なネーミングで辛口リースリングを世界的にアピールしている。リンゴと柑橘系の香味が初々しく、サラダなど毎日の軽い食事にぴったりのワイン。また、「Magic Mountain」はリューデスハイムの岩場の畑から造られるリースリングのブレンドで、フルーティーさに加え、タイムなどハーブの香りが魅惑的。ミネラリッシュで切れ味が良く、シンプルな味付けの肉料理にもよく合う。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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