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ドイツでおいしいコーヒーに出会うには?ドイツ在住の日独バリスタに聞く

ドイツ在住の日独バリスタに聞いた ドイツでおいしいコーヒーに出会うには?

ドイツの食と言えば、ビール・ソーセージ・じゃがいもの「三種の神器」が思いつく。ところが実際にドイツに住んでみると、街中にカフェが多く、コーヒーがとても身近な飲み物であることに気づいたという人もきっと多いはず。そんなドイツのコーヒー事情について、デュッセルドルフで活躍する日独のバリスタ2人に話を聞いた。さあ、ドイツでおいしいコーヒーを探す旅に出かけよう。(Text:編集部) 

参考資料:『COFFEE BOOK コーヒーの基礎知識・バリスタテクニック・100のレシピ』(誠文堂新光社)

ドイツでコーヒーが愛される理由

ドイツでのコーヒーの人気はさまざまな統計によって明らかになっている。なんとコーヒーの1人当たりの年間消費量は、ビールのそれを上回っているのだ。では、コーヒーがドイツで愛される背景には何があるのだろうか。それは歴史をひも解くことで見えてくる。

そもそも欧州にコーヒーがやってきたのは、17世紀頃だった。すでにコーヒーで貿易していたアラブ人たちがインドに種子を密輸し、さらにオランダ人貿易商がそれを国に持ち帰り移植したのが始まり。18世紀初頭になると、オランダに加えてフランスや英国が南米の植民地でコーヒー栽培をスタートさせる。ドイツでは、フリードリヒ大王が早くからコーヒー商売に目をつけ、国営の焙煎所でしか焙煎を許可しないなど、厳しく取り締まられていたそう。

コーヒーがドイツの市民にも飲まれるようになったのは、フリードリヒ大王亡き後の産業革命の時代。工場では1日中ストーブに「コーヒースープ」が火にかけられ、人々の体を温め、集中力や活力を高めたといわれている。その後、コーヒーはおいしく飲みやすくなるようにその都度改良され、市民の人気を獲得していった。また、第二次世界大戦後、再びコーヒーを飲めるようになったことは豊かさの証であり、コーヒーはドイツ人にとって戦後復興のシンボルでもある。

参考:ドイツコーヒー協会「Deutschland Wird Zum Kaffeeland」

  • ドイツ人は1人当たり年間 162ℓのコーヒーを飲む。
    コーヒーを飲む人のうち、毎日何度も飲むが 57.1%
    毎日飲むが 24.6%
    週に何度か飲むが 10.0%

    Quelle: Tchibo, brand eins Wissen und Statista / Kaffee in Zahlen

  • ドイツ国内のコーヒー1杯の平均価格は 1.91ユーロ
    スイスの 3.25ユーロに比べて1ユーロ以上も安い

    Quelle: Tchibo, brand eins Wissen und Statista / Kaffee in Zahlen

  • ドイツ人は1人当たり年間 6.65㎏ のコーヒーを 自宅で消費する。
    欧米諸国中では 8位、1位はフィンランドの 10.35㎏

    Quelle: Das Statistik-Portal / Wo die größten Kaffeeliebhaber zuhause sind

日独バリスタ対談日本もドイツもコーヒーが「熱い」!

若松さん(左)と、ピーターソンさん

  • 若松信孝さん(わかまつのぶたか)
    デュッセルドルフ在住の日本人バリスタ。ドイツでコーヒーに目覚め、ラテアートを独学で学び始める。ラテアートの大会へ出場経験も。Die Kaffeeにメインバリスタとして勤務。
    Instagram:@barista_nobi
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  • カイ・ピーターソンさん
    デュッセルドルフ在住のドイツ人バリスタ。東京のスペシャリティコーヒー専門店で働き、ハンドドリップを学ぶ。Copenhagen Coffee Labに店長として勤務。
    Instagram:@kai_rista
    このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください

日独のコーヒーの違い

  • 日本
    ● ハンドドリップが主流
    ● お客さんが新しいものが好きな傾向に
    ● カフェの敷居が高い ハンドドリップ
  • ドイツ
    ● エスプレッソマシンが主流
    ● お客さんがストレートに意見を言う傾向
    ● カフェが身近な存在 エスプレッソマシン

いまさら聞けないコーヒーのこと

Q:カフェラテとラテマキアートの違いは?
A:スチームミルクかミルクフォーム、または両方が入っているなど、その組み合わせによって名称が変わる。また、店によって配分も異なる。

コーヒー

Q:最近よく聞くスペシャリティコーヒーとは?
A:原産国や生産者はもちろんのこと、種子の状態からカップまでのすべての段階で徹底した管理がなされ、厳選された豆だけが使われた最高品質のコーヒーのこと。
参考:日本スペシャリティコーヒー協会ホームページ

Q:軟水と硬水で味が変わるのは本当?
A: 硬水のドイツでは軟水の日本と比べて、 コーヒーの味がとげとげしく感じられる 傾向に。硬水の場合は豆を細かく挽い た方が良い。ドイツで軟水を使いたい場合は、市販の軟水(Volvicなど)を使用 するのがおすすめ。


ドイツでバリスタとして働く若松さんとピーターソンさん。やはりドイツではコーヒーが身近な飲み物だと感じている。

ピーターソンさん(以下、P) 特にハンブルクは港があるので昔からコーヒーが人気で、博物館もある。ほかにもウィーンのコーヒー文化や第二次世界大戦後にイタリアから移民労働者がたくさん来たり、いろいろな影響がありそう。

若松さん(以下、W) お店のお客さんが言ってたんだけど、朝起きて飲むコーヒーは力の源だったり、友だちと一緒にリラックスするときに飲んだり、生活になくてはならないものだと。日本で言うと、緑茶のような存在なのかな。カイくん(ピーターソンさん)はいつからコーヒーを飲むようになったの?

P 17歳の頃、学校の食堂やキオスクで飲むようになったのが始まり。でも、そのときは全然こだわりとかがなくて……。

W 自分も日本ではコンビニで缶コーヒーを飲んでいたくらいで、本格的に飲み始めたのは欧州に来てから。日本のカフェのコーヒーは高いから、敷居が高いと感じる人が多い印象だね。

P 日本のカフェで働いていたとき、日本人の方がドイツ人よりもこだわりが強いと思った。コーヒーの質だけじゃなくて見た目やサービスも大事で、スタッフのトレーニングも厳しかった。ドイツのおもしろいところは、お客さんが厳しい(笑)。いつもと違う味、とか自分の意見を言うんだよね。

W ああ、それすごい分かる! 日本で「おいしい」と言われるとお世辞かなって思うんだけど、ドイツでは逆においしくないものはおいしくないとはっきり言ってくるから、「おいしい」は本当なんだと思う。

P 僕ははっきり意見はしないけど、コーヒー豆の生産国や焙煎方法についてバリスタに聞くことはある。気になる焙煎所とかスペシャリティコーヒーの生産者を調べておいて、外国を旅行したときに実際に訪ねることも。

W 本当によく勉強してるね。今度バリスタ仲間でカッピング(コーヒーのテイスティングのこと)をしたいと思っているんだけど……

若松さんとピーターソンさん対談中

コーヒーへの愛が止まらないお二人。そもそもバリスタになったきっかけとは。

W 日本でバーテンダーをしていた20代後半の頃、初めての海外旅行でドイツに。カフェやレストランをまわるうちに、日本とは違う時間の流れ方やサービスの仕方に衝撃を受けてね。それで、ワーキングホリデーでデュッセルドルフに来たんだ。当時働いていたカフェでラテアートというものを知り、夢中になったのが最初のきっかけかな。

渡独して2年目に、東日本大震災が発生。津波の映像を見て、とてもショックだった。ちょうどその年に、なでしこジャパンがW杯で優勝したのを覚えてる?日本を元気づけた彼女たちを見て、自分もいつかドイツで認められるバリスタになって、力の源であるコーヒーを被災地の人に届けたい。そう決意して、バリスタの資格を取得したんだ。その後、今の職場のメインバリスタとして働きはじめて5年目になるよ。

P 僕は学生時代にカフェでバイトしていたんだけど、本当に興味が出てきたのは日本に留学したときから。留学中も東京のカフェで働いてた。始めたばかりで友だちがいなかったとき、いろいろなカフェの人がお店に来てくれて、自分が休日のときは逆にその人たちのお店に行くようになったんだ。いろいろなコーヒーやバリスタと出会って、コミュニティーもどんどん広がったよ。  

どうせ働くなら、人を幸せにする仕事をしたいと思っていて。お客さんが仕事に行く前にカフェでポジティブな気分になってもらいたいし、自分自身も雰囲気のいいところで働きたい。コーヒーよりも人が好きなんだよね。

W デュッセルドルフやケルンにも同じ大会に出場しているバリスタが何人もいて、みんな顔なじみ。ベルリンやミュンスターにもいいバリスタがいるね。

P うんうん。僕たち2人もそうだけど、敵というよりもみんな仲間。

W そうだね。大会ではまだ結果が出せていないけど、いつもほかの出場者から刺激をもらってる。

ラテアート 若松さん 若松さんがラテアートの大会で描いたラテアート3点。白鳥の親子(右下)のモチーフは子ども連れのお客さんに出すと喜ばれる、と言う若松さん

コーヒーで誰かを幸せにしたい、という気持ちはお二人の共通するところ。一方で、若松さんはラテアート、ピーターソンさんはハンドドリップが得意だ。

W ドイツのカフェはエスプレッソマシンが主流だけど、日本はフィルターコーヒーが人気だね。このフィルターコーヒーがメインなのが、米国から始まったコーヒーの「サード・ウェーブ」。農園や焙煎の違いまでこだわり抜き、丁寧にハンドドリップで入れる。ドイツでも部分的にその波が来ているけど、日本ほどではないかな。スターバックスが流行した「セカンド・ウェーブ」の時代は、深煎りのコーヒーにミルクを注ぐタイプ。それに対して、サード・ウェーブは比較的浅煎りのものが多いよね。

P 浅煎りだから、酸味が出やすい。よくドイツにも日本にも酸味が苦手という人がいるよね。焙煎や淹れ方を間違うと嫌な酸味が出るんだけど、それは僕も好きじゃない。本当にいい酸味というのは、フルーツティーとかジュースみたいな、すごく甘くて香りも強い。酸味が好きじゃない人にも、ちゃんとしたコーヒーを試してもらいたいな。特に日本人は新しいものが好きだし(笑)。

W エスプレッソも本当においしいものは、ドライフルーツにチョコがついたような感じで、デザートを食べたような余韻が残る。酸味=酸っぱいではない、というのはバリスタとして伝えたいことだね。

P それに、バリスタの仕事はコミュニケーションも大事。コーヒーは苦くて濃い、と思っている人もいるから、何も言わずにフィルターコーヒーを出すと「酸っぱい!」というのが第一印象になってしまう。でも、最初に「これはベリー系の甘味がありますよ」と説明すれば、第一印象は全然違うものになる。

W 道しるべをあげるような感じかな。自分の場合はラテアートを楽しみに来てくれる人もいる。忙しいときでも、一人ひとりがその人の一杯を楽しんで帰ってもらえるように「おいしくな~れおいしくな~れ」といつも頭の中で唱えるようにしてる。

P コーヒーの味をつくるのは、カップの中とお客 さんの頭の中だと思う。バリスタに自信があるかどうかも大切で、すごく失礼なバリスタだったらコーヒーもおいしくないはず。プロとして、技術とコミュニケーションの二つをうまく使っていきたいな。

W ちょっとしたお客さんへの気配りとかも、カイくんはきっと日本で学んできたんだろうね。ちなみに「フォース・ウェーブ」が2018年にすでに来ているという噂。特定のバリスタが抽出したコーヒーを飲みたい、というニッチなところまで来ているそう。

ピーターソンさん ハンドドリップ 豆から湯量までを慎重に計量しながら丁寧にハンドドリップをするピーターソンさん。コーヒーを入れる数分間はとにかく集中するとのこと

その後、ピーターソンさんのハンドドリップで、いくつかコーヒーを試すことに。

P 僕は結構香りが強いアフリカ系が好きで、これはケニアの豆でレッドベリー系の香り。

W うーん、フルーティー!紅茶のようだね。

P こっちはコスタリカの豆。うちのお店が直接取引しているところだから、生産プロセスもすごくこだわって生産されてる。(飲みながら)ケニアよりも味がダイレクトな感じ。

W あ、本当だ。甘味が強いね。なかなか日本人以外には伝わらないんだけど、ブラジルの豆って、たまにあんこのような甘味を感じる。そういうのって、ドイツでもある?

P あるある。ケニアの豆でルバーブの香りってあるんだけど、日本ではあまりなじみがないよね。じゃあ、次はエアロプレスで……

若松さんとピーターソンさん対談中

まるで調香師のようなバリスタの会話は、この後もしばらく続いたのであった。次ページは、そんなお二人直伝のおいしいコーヒーを飲むポイントをご紹介!

最終更新 Donnerstag, 29 September 2022 08:53
 

ドイツでコーヒーをもっと楽しむ秘訣

ドイツ在住の日独バリスタに聞いた ドイツでおいしいコーヒーに出会うには?

ドイツの食と言えば、ビール・ソーセージ・じゃがいもの「三種の神器」が思いつく。ところが実際にドイツに住んでみると、街中にカフェが多く、コーヒーがとても身近な飲み物であることに気づいたという人もきっと多いはず。そんなドイツのコーヒー事情について、デュッセルドルフで活躍する日独のバリスタ2人に話を聞いた。さあ、ドイツでおいしいコーヒーを探す旅に出かけよう。(Text:編集部) 

参考資料:『COFFEE BOOK コーヒーの基礎知識・ バリスタテクニック・100のレシピ』(誠文堂新光社)

ドイツでコーヒーをもっと楽しむ秘訣

ドイツのコーヒーの魅力が分かったところで、実際にカフェで豆を選んだり、おうちで楽しむ方法をご紹介。考えすぎず、ときには感覚に頼ってもみても。自分だけの最高の一杯に出会えるかもしれない。

おいしいコーヒー豆選び

豆の種類や原産国、焙煎方法で味の可能性は無限大。コーヒーの種類を勉強するのもいいけれど、まずは気になったものから試してみては?

1スーパーではなく専門店へ

スーパーで販売されているコーヒー豆は、粒の大きさがまばらで均等に焙煎されていないことも。カフェなどの専門店なら、原産国だけでなく生産者も明記されたスペシャリティコーヒーをはじめとする、大切につくられたコーヒー豆がたくさん並んでいる。

2バリスタをフル活用しよう

自分の好みの味を伝えてぴったりなコーヒーを選んでくれるのは、バリスタの仕事の一つ。今まで出会ったことのない味に出会えるかも。下記のドイツ語も参考に、バリスタとのおしゃべりも楽しんで!

豆選びのためのドイツ語

深煎り dunkele röstung
浅煎り helle röstung

酸味 Säure
ほど良い酸味 angenehme Säure
バランスの取れた ausgewogen
強い kräftig

口当たり Textur
軽い leicht / fein
爽やか erfrischend
なめらか cremig
濃厚な dick

フレーバー(表現の一例) Geschmack
ベリー系 beerig
ナッツ系 nussig
甘さ系 süß
スパイス系 würzig

3深煎りはエスプレッソ向き

焙煎時間の長い深煎りのコーヒー豆は、苦味が出やすいためエスプレッソに向いている。夏にはアイスコーヒーにしても◎。一方、浅煎りの場合は酸味や香りが出やすい傾向がある。店によって焙煎方法も違うので、あくまで参考程度に。

4どう飲むかで豆の挽き方が変わる

ハンドドリップでフィルター越しに淹れるのか、エスプレッソマシンで圧力をかけて淹れるのかで、水が挽いた豆の間を通る速さが異なるため、それぞれに合った挽き方を選ぶ。お店で挽いてもらう場合は、自宅でどう飲むかを伝えればOK。

5賞味期限は挽いてから1~2週間

コーヒー豆は挽くと酸化が進むため、その都度飲む量を自宅で挽くか、挽いてからできるだけ1~2週間に消費するのがベスト。冷蔵保存はほかの食べ物の匂いがうつるのでNG。遮光できて密閉性のある容器に入れるか、光が入らないところで保存しよう。

挽き具合の目安

エスプレッソマシン 細挽き(Feine Mahlung)
フィルター 中粗挽き(Mittelfeine Mahlung)
フレンチプレス 粗挽き(Grobe Mahlung)

若松さんおすすめのブレンド

Espresso Xenia (ニカラグア × インド)
チョコレートのような香り。深煎りでミルクとの相性が良く、ミルクコーヒーが好きな方におすすめ。抽出はエスプレッソマシンだけでなく、フィルターでも。

Brasil San Rafael (ブラジル)
ナッツのような香りで、酸味が少なくマイルドで飲みやすい。日本人のリピーターも多い。抽出はハンドドリップなど、フィルターで飲むのがおすすめ。

Bobby Blend (エチオピア × インド)
若松さんのオリジナルブレンド。ダークチョコレートに、レモンのような酸味が◎。抽出はモカエクスプレス(直火エスプレッソメーカー)やハンドドリップで。

若松さんおすすめのブレンドいずれもDie Kaffeeで購入可

おいしいコーヒーグッズ選び

コーヒー豆のおいしさを最大限に引き出すには、器具選びも手を抜かずに! これからグッズを集めるためのヒントにどうぞ。

1日本製グッズがドイツでも人気

ドイツ生まれのメリタのコーヒー器具が定番だが、日本生まれのハリオ(写真)の人気が急上昇中で、バリスタの大会でも使用されるほど。注ぎ口がコントロールしやすいケトルは若松さんのおすすめで、Die Kaffeeでも購入可能。一方、ピーターソンさんはKINTOを愛用。欧州ではオンラインショップなどで手に入る。

HARIO:www.hario.com
KINTO: www.kinto.co.jp

日本製グッズ

2持ち運べて便利なエアロプレス

もともとアウトドア向けに考案された比較的新しい抽出方法。ピクニックや旅行先に持っていけば、いつでもコーヒーを楽しめる。ピーターソンさんは豆の種類によって、あえてエアロプレスを使用するほど愛用。Die Kaffeでも購入可能。

エアロプレス

3家で挽くならコーヒーミルにも予算をかけて

安価な電動ミルだと豆の挽き具合にブレがあるため、予算に余裕がある場合はできるだけ質の良いものを(ピーターソンさん)。ただし、高価なものは手入れも大変なのでハンドミルもおすすめ(若松さん)。

4エスプレッソマシンなら「デロンギ」がおすすめ

多くのカフェで愛用されているデロンギは、エスプレッソの国・イタリアのメーカー。家庭用のマシンでも安定したクレマ(表面の泡)のエスプレッソが抽出できる。おいしいミルクの泡立てには練習が必要(若松さん)。

デロンギ

おいしいハンドドリップ

ゆっくり時間のあるとき、家族や友人にコーヒーを振るまいたいときは、ぜひハンドドリップで。ピーターソンさん直伝の丁寧においしく入れるための3つのコツをご紹介。

ハンドドリップ

1ドリッパーを温める

ペーパーフィルターの紙の匂いを取るため、フィルターをドリッパーにセットし、お湯を流しなつつ温める。カップもお湯を入れて温めておくとなお良し。

2お湯の温度は80~90度

沸騰したお湯はNG。少し冷ましてから淹れると、ちょうど良い味に抽出できる。抽出温度によって味が変わったり、好みもあるのでいろいろと試してみるのが◎。

3始めの20~30秒は蒸らす

お湯を注ぐと豆からガスが発生するため、味がきちんと出るように豆がお湯に浸ったら注ぐのをストップ。20~30秒待ち、その後何度かに分けて注ぐ。

コーヒー1杯分のレシピ:豆16g:湯250ml *豆6gに対して100mlが目安

ピーターソンさんのおすすめ

  • KENYA
    対談の最後でお二人が試していたケニアの豆。カシスジュースのような香りにバニラの甘さがある。KENYA
  • COSTA RICA
    コスタリカの農家と直接やり取りをして生産している豆。アーモンドとプラムのようなドライフルーツの香りが特徴。COSTA RICA
  • ETIOPIEN
    ウォッシュド(水洗式)で精選されたエチオピアの豆。アールグレイとレモンの香り。アイスコーヒーはアイスティーのよう。ETIOPIEN
  • BRASILIEN
    砂糖の入っていないダークココアパウダーのような香りが特徴のブラジルの豆。ミルクと一緒にコーヒーを飲む人におすすめ。BRASILIEN

*いずれもCopenhagen Coffee Labで購入可

若松さんが働いているカフェ

Die Kaffee Privatrösterei

Die Kaffee Privatrösterei
– Olga Sabristova
月曜~金曜9:00-19:00、 土曜8:00-18:00、日曜定休
Schwerinstr. 23, 40477 Düsseldorf
die-kaffee.de

数々の受賞歴がある自家焙煎カフェ。常時20種類以上のコーヒー豆のほか、コーヒーグッズも販売している。毎週土曜は、近くの公園のマーケット帰りのお客さんでいっぱい。

ピーターソンさんが働いているカフェ

Copenhagen Coffee Lab

Copenhagen Coffee Lab
Benrather Str店
月曜~金曜8:00-19:00、土曜9:00-18:00、日曜9:00-16:00
Benrather Str. 18-20, 40213 Düsseldorf
http://copenhagencoffeelab.com

デンマーク・コペンハーゲンに本店を構えるカフェ。デュッセルドルフに4店舗、デュースブルクに1店舗ある。オリジナル焙煎のコーヒー豆の販売のほか、デニッシュパンなどおやつも充実。

最終更新 Dienstag, 27 September 2022 11:49
 

「包装法」で暮らしが変わる?プラスチックごみゼロ宣言

使い捨てSTOP「包装法」で暮らしが変わる?プラスチックごみゼロ宣言 プラスチックごみ
ゼロ宣言

2018年10月、欧州議会にて2021年からの使い捨てプラスチック製品の販売を欧州連合(EU)内で規制する法案が可決。それを受け、ドイツでは今年1月1日よりリサイクル不可のプラスチック容器などに規制を設ける法律「包装法(Verpackungsgesetz)」が施行された。環境問題に対して意識が高いドイツにおけるプラスチック製品・ごみの現実や対策を通じて、ドイツで暮らす私たちが考えるべきこと、実践できることなどこれからの生活のヒントを探る。
(text&interview:見市 知)

プラスチック製品の規制Q&A

Q1 なぜ包装法のような法案が出てきたの?

テイクアウトのコーヒーやランチの利用、小分けにされた食品など手軽で便利になったライフスタイルによって発生する包装ごみの量は、ドイツで年間181万6000トン、1人当たり220kgと言われている(2016年連邦統計庁調べ)。このうち最も問題視されているのが、リサイクルされずに海洋に漂うプラスチックごみの存在だ。昨年10月の欧州議会では、2021年からストローや皿、フォークやナイフ、柄の部分にプラスチックを用いた綿棒などの使い捨てプラスチック製品の販売をEU域内で規制する法案を可決した。これに先駆けて米大手コーヒーチェーンのスターバックスも、プラスチック製ストローの段階的な使用禁止方針を発表。使い捨てプラスチックに代表されるごみ問題への厳しい対応は、いまや世界的な流れとなっている。

海の汚染にもつながる、海洋に漂うプラスチックごみ海の汚染にもつながる、海洋に漂うプラスチックごみ

Q2 ドイツにおける包装ごみ問題の深刻度は?

包装ごみの年間排出量は2016年の調査によるとEU平均が年間1人当たり167kg、これに対してドイツは220kg。一方、プラスチックごみに限定した場合には、EU平均が年間31kgなのに対しドイツは37kgに(2015年ユーロスタット調査)。ちなみにプラスチックごみのリサイクル率はEU平均が40%なのに対し、ドイツは49%と平均を上回る。同調査でプラスチックごみの排出量が最も多いのがアイルランドの60.7kg(リサイクル率は34%)、最も少ないのがブルガリアの13.9kg(同61%)となっている。環境保護の意識が高いイメージのドイツにおいて意外な数字だが、テイクアウトのコーヒーや食事に用いられる使い捨て容器、オンラインショッピング利用の人気などが、 包装ゴミが多い理由として挙げられている(連邦環境庁調べ)。

包装ごみ年間排出量/プラスチックごみ年間排出量

Q3 施行された包装法によって変わることは?

包装法により、包装や容器に対して義務付けられるリサイクル率の段階的な引き上げを実施。2019年にはガラス瓶がこれまでの75%から80%に、紙類は70%から85%に、アルミニウムは60%から80%に、プラスチックなどの化学合成物質は36%から58.80%に引き上げられる。2022年には第2段階として、これらの数値をさらに引き上げる予定だ。スーパーマーケットなどの店舗においては、飲料品のボトルが再利用可能なものであるかどうかの表記を、消費者が一目で分かるように明示することが義務付けられる。さらに今後、連邦政府によりパッケージ管理中央センターが設置され、メーカーは商品パッケージに関する申告が義務化される。

リサイクリング義務付け率

製品 2018年まで 2019年から
ガラス瓶 75% 80%
紙類 70% 85%
アルミニウム 60% 80%
化学合成物質
プラスチック製品含む
36% 58.80%

Q4 物価上昇など、消費者の負担は?

包装法の目的は、プラスチックごみを減らすこと。そのため連邦政府はプラスチックなどの包装に課税するのではなく、リサイクルの促進をうたっている。また、一定条件の下で使い捨て容器にもデポジットが義務付けられるが、値上がりするのはデポジット料の部分。メーカーがプラスチック製品を減らし、またはリサイクル可能にすることを通してシステムが強化され、そして消費者がこれに賛同し、リサイクル・システムを機能させていくことが重要となる。リサイクル業者のDer Grüne Punkt(グリューネ・プンクト)などでは、環境に優しいリサイクル可能なパッケージに対して、メーカー側が負担する手数料が引き下げられる仕組みを導入している。

リサイクル可能なボトルリサイクル可能な表示がなされている製品

Q5 プラスチックを使わずに生活することは可能?

2018年1月のシュピーゲル・オンライン版に、マーラ・ファイゲル記者が30日間の「プラスチック断食」にチャレンジした記事が掲載された。なかでもプラスチック回避が最も困難だったのが、プラスチック容器やマイクロプラスチックが用いられていることが多い化粧品や洗剤だったと言う。しかしパッケージフリーショップや自然派ショップを活用し、布製の買い物袋やガラス容器を買い物時に持参、30日間プラスチックを使わない生活を実現させた。ファイゲル記者は「プラスチックを回避して生活することは、簡単ではないけれど可能だ」とコメント。「人はプラスチック製品に依存して生きている。プラスチックに頼らずに生きることは、自分の使っているものに対してより自覚的になることだ」とも述べている。

プラスチック容器プラスチック容器が主流の化粧品は回避が難しい

Q6 包装ごみ問題に対するドイツ人の意識は?

2018年11月に実施された連邦消費者センター連盟の委託で行われたエムニート研究所の世論調査によると、96%が包装ごみを減らすことを重要だと捉えているという結果に。回答者の5人に1人が「週に1回は何らかのテイクアウト用容器を利用する」という。一方で、62%の人が「テイクアウト用容器をほとんど利用しない」と答えたほか、以下のような回答があった。

  • 値引きと引き換えに自分専用容器の持参を支持71%
  • 使い捨て容器の使用を禁止するべき57%
  • テイクアウト用容器にデポジットを適用するべき55%
  • テイクアウト用容器を有料化するべき157%
  • 再利用容器の使用に対して、財政支援を行なうべき50%

梱包ゴミについてのアンケート

パッケージフリーショップのオーナーに聞く! エコな暮らしのヒント

Frau Ramona Dornerルタナトゥア オーナー
ラモーナ・ドーナーさん
Frau Ramona Dorner


rutaNatur

Prinzregentenstr. 7, 86150 Augsburg
https://rutanatur.de

rutaNatur壁一面に並ぶバルク・ビンズ

プラスチックごみ問題に対する意識が高まる中、ドイツで今、静かな広がりを見せているのが「パッケージフリー運動」だ。これは、ゼロ・ウェイスト運動の流れを汲む、プラスチックごみを減らすライフスタイルの提唱として始まったもの。ドイツで最初のパッケージフリーショップは2014年、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の州都キールに誕生した「ウンフェアパックト(Unverpackt: ドイツ語で「無包装」の意味)で、ここでは定期的にワークショップも開催しており、同様のコンセプトでお店を開きたい人たちのために有料で、具体的なアドバイスと基本情報を提供している。現在、ドイツ国内にあるパッケージフリーショップの数は70軒以上を数える。その一つが、南ドイツのアウグスブルクにある、パッケージフリーショップ「ルタナトゥア(rutaNatur )」だ。

量り売りによって無駄なごみを出さないがコンセプト

市街中心部の片隅の、ちょっと目立たない通りにある「ルタナトゥア」。「偶然通りかかって入ってくるお客さんは少ないです。大半がこの店の存在を知って目指してくる人たち」と、オーナーのラモーナさんは語る。小さな店舗の中で目を引くのが、壁一面にずらりと設置されているバルク・ビンズと呼ばれる円筒形の透明なケースだ。ナッツや米などの穀類、コーヒー豆やパスタなどを、客がセルフサービスで自由に量り、買うことができるというシステム。これは、パッケージフリーショップのシンボル的な存在でもある。店の中央には有機栽培農家がつくった野菜や果物。このほか、小麦粉や砂糖、クッキーやチョコレートも量り売りされている。客はめいめいが、自宅から空き瓶やタッパーウェアを持参、または店で容器を購入することもできる。

「パッケージフリー」のコンセプトは食料品だけではない。仕切りで隔てられた隣のコーナーには、生活用品がずらり。石けんや固形シャンプー、竹を素材に用いた歯ブラシ、そして再生紙で作られたトイレットペーパーもビニール袋に入れずにむき出しの状態で並んでいる。

パッケージフリーショップ rutaNatur
パッケージフリーショップ rutaNatur

環境問題について意識を持つことが第一歩

オーナーのラモーナさんは10代の頃から環境問題や食の 安全などに人一倍関心を持っていた。数年前、旅行代理店に 勤めていたときにキールの「ウンフェアパックト」の存在を知 り、ワークショップに参加。2016年8月に「ルタナトゥア」を オープンさせた。

ルタナトゥアの客層は、「食や環境に対して意識的で、多様な年齢層の人たち」。しかし意識の持ち方はさまざまで、「自分はベジタリアンだけれど、子どもの食事は自由にさせている」と言う30代の母親や、「合成洗剤は使わない。ベーキングパウダーで洗濯する」と言う大学生の女性も。また、「子どものアレルギーをきっかけに、食や環境に気を遣うようになった」と言う50代の男性もいた。

竹を用いた歯ブラシ環境に関して意識が高い人が多く来店する

ルタナトゥアで扱っている食品はすべて品質に配慮したエコ認定されたものなので、通常のスーパーマーケットの商品よりもやや割高だ。たいがいの食品をこの店で調達するという常連の女性に「家計に響きませんか?」と尋ねたところ、「野菜は季節のものを買えばお手頃だし、必要なものは自家製でまかなっているので」との答え。彼女はここで大豆を買って、自宅で自家製豆乳を作っているのだという。また、「自分で食べる野菜は家の庭で育てています」という大学生にも出会った。

ラモーナさんによると、客からの要望も多く、今後力を入れて行きたいと考えている商品は化粧品類。ラモーナさん自身はプラスチックをほとんど使わない生活を実践しているが、「パッケージフリー運動は厳格な思想ではなく、各自が無理のない範囲で生活に取り入れれば良いこと。自分自身が暮らしている環境に対して、より意識的になるのが第一歩」と話してくれた。

竹を用いた歯ブラシ竹を用いた歯ブラシ

最終更新 Freitag, 01 Februar 2019 13:46
 

【保存版】ドイツのスープ事典

【保存版】スープ事典 - ドイツを味わい尽くそう!

冬本番を迎え、ほかほかのスープで身体を温めたい!という人も多いはず。ドイツのスープは野菜やお肉、パスタなどが入り、具だくさんでバラエティー豊か。季節ごとにも楽しめるスープの魅力をたっぷりと紹介する。 (Text:編集部)

ドイツでスープを楽しむための
4つのトリビア

スープトリビア 1 毎週土曜日はスープを食べる日

夕飯は「Kaltes Essen(ハムやパンなどで軽く済ませる冷たい食事)」が好まれるドイツだが、スープは別。ドイツスープ研究所の統計によると、ドイツの80%の消費者が土曜の夕食時にスープを食す傾向にあるという。なお、平日は29%にとどまっている。ちなみにドイツの「スープの日」は11月19日。参考:n-tv「Samstag ist Suppentag」

スープトリビア 2 スープ人気の秘密は「時短料理」だから?

ドイツでスープが愛されるのは、健康に良いだけではなく、調理に時間がかからないことも大きな理由の一つ。かつては、何時間もかけてFond(煮汁)を取るところからスープが作られていたが、忙しい現代人はインスタントや缶詰に頼る傾向にあるそう。またスープ製品は国産が好まれ、輸入品は全体の5%。参考:Deutsches Suppeninstitut

スープトリビア 3 Eintopf(煮込料理)はスープじゃない?

ポットにさまざまな具材を入れて煮込むアイントプフは、日本の「鍋」や「シチュー」と同じようなメニュー。アイントプフとスープとの違いは、メインディッシュとなりえるか、サイドメニューや前菜となるか。また、お肉と多様な野菜をじっくり時間をかけて煮込むことも、アイントプフの特徴。参考:EAT SMARTER「Suppe, Brühe, Eintopf: So löffeln Sie richtig!」

スープトリビア 4 ドイツでプチトレンド「Suppenfasten」

ほとんど固形物を含まないスープのみを食べるスープ断食(Suppenfasten)が、ドイツではプチトレンド。この健康法には守るべき規則がいくつかあり、例えばインスタントスープはNG、1日30〜40分のウォーキングを推奨など。レシピや成功のポイントはウェブや本にさまざまな情報が掲載されている。参考:ELLE.de online「In zehn Tagen bis zu zehn Kilo abnehmen? Das verspricht Suppenfasten」

統計で見るドイツのスープのあれこれ

ドイツで人気のスープ

Quelle: Deutsches Suppeninstitut / Suppen-Zeit & Suppen-Hits

粉末タイプ

  • 1位:チキンスープ
  • 2位:春の素材を使ったスープとアスパラガスクリームスープ
  • 3位:トマトスープ

すっきりとした味わいでアレンジも自在なチキンスープが人気No.1。アスパラガススープは粉末タイプだからこそ、いつでも楽しめるのが人気の理由か。

缶詰タイプ

  • 1位:グラーシュ
  • 2位:ビーフンスープ
  • 3位:えんどう豆のスープ

ハンガリー生まれのグラーシュはドイツでも人気が高い。一から作るのは手間がかかるが、缶詰タイプなら肉や野菜の素材感も楽しめ、調理も簡単。

  • 1人当たりの消費量は年間約100皿分
    Quelle: Deutsches Suppeninstitut
  • 毎年12月〜翌3月までに年間生産量の40%のスープが消費される
    Quelle: Deutsches Suppeninstitut
  • ドイツ人が好きな食べ物でスープは5位
    Quelle: Die Welt / So essen die Deutschen(2017年)

定番から変わりものまで勢ぞろい スープ図鑑

スーパーの棚やレストランでよく見かけるものから、ちょっと珍しい種類まで、ドイツでよく食べられているスープをピックアップ。濃いめの味付けはご愛敬!
参考:DW「Leckere Suppen aus Deutschland」、Deutsches Suppeninstitut

定番スープ

季節を問わずドイツ人から愛されている定番のラインナップ。自分好みの具材を入れるなど、アレンジは自由自在。

じゃがいもスープ
Kartoffelsuppe

じゃがいもスープ

さまざまな種類が揃うドイツのジャガイモを使えば、味わいや食感がバラエティー豊かに。ピューレ状のさらりとした味わいにしたい場合は、煮崩れしやすいたタイプの「Mehlig kocheende」を。ゴロゴロとした食感を味わいたい場合は、煮崩れしにくい「Vorwiegend festkochende」タイプがおすすめ。

トマトスープ
Tomatensuppe

トマトスープ

世界初のトマトスープレシピは、1957年に米国人のEliza Leslieが考案した。一般的なのはトマトをピューレ状にし、生クリームやチキンストックを加える、なめらかな口当たりのもの。サワークリームやクルトンを加えても◎。スペイン生まれの冷たいトマトスープ、ガスパチョはドイツでも夏に親しまれている。

豆スープ
Bohnensuppe

豆スープ

豆を使用したスープの起源は、1430年頃、マルティヌス5世に支えていた宮廷料理人のヨハネス・ボッケンハイムが残したレシピによるもの。レンズ豆や白豆、エンドウ豆など、さまざまなバリエーションがある。エンドウ豆がベースのスープにジャガイモ、玉ねぎ、ソーセージやベーコンなどを加える「Erbsensuppe」は、ドイツ北部で親しまれている(写真下)。


チキンスープ
Hühnersuppe

チキンスープ

欧米では風邪をひいた際に家庭で振舞われることが多く、日本のおかゆ的存在。チキンやお好みの野菜を加えたシンプルなものから、麺や餃子を加えたボリューム満点なものまで、アレンジも自由自在。ドイツでは、デュラム小麦を粗く精製したセモリナから作られるパスタを具として入れるのが一般的。

グラーシュ
Gulaschsuppe

グラーシュ

ハンガリー生まれのグラーシュは、牛肉と野菜を牛肉のブイヨンと赤ワインでじっくり煮込んで作るアイントプフで、ドイツのレストランやクリスマスマーケットでも定番メニュー。故郷ハンガリーではパスタやクネーデルと一緒にいただくのだそう。ドイツ国内では地域による違いはほとんどなく、全国的に人気。

季節限定スープ

旬の時期がやってくると、決まってドイツ人が食べたくなる季節限定のスープ。毎年の楽しみになったら、あなたも相当なスープ通かも?

白アスパラガスのスープ(春)
Spargelsuppe

白アスパラガスのスープ

ドイツの美味、 ヴァイス・シュパーゲル(白アスパラガス)は、4月から6月にかけての短い期間だけ出回る。茹でたヴァイス・シュパーゲルにオランデソースをかけていただけるのもおいしいが、ぜいたくにスープで楽しめるのは、ドイツならではだ。生クリームを加えて作れば、より濃厚な味わいに仕上がる。

かぼちゃのスープ(秋)
Kürbissuppe

白アスパラガスのスープ

アメリカでは11月の感謝祭で振舞われるかぼちゃのスープは、ドイツでも秋に味わうことができる定番。ひょうたん型ののかぼちゃ「スクワッシュ」を使ったスープも。ドイツで出回っている品種でスープに向いているのは、深い味わいと良い香りがポイントの「ホッカイドウ」がおすすめ。 ほくほく甘みのあるテイストに。

ご当地スープ

この材料で一体どんな味になるんだろう? と思わず眉をひそめるようなスープも……。旅行先で見つけたら、ぜひお試しあれ。

ビールスープ(バイエルン)
Biersuppe

ビールスープ

「バイエルンでは食事中にビールを飲み、スープとしてビールを食す」と言われるほど、ビールが欠かせないバイエルン。ビールスープの作り方は、バターでとろとろと煮込んだ玉ねぎに小さくカットしたトーストを投入、さらにブイヨンとビールを入れ、最後に刻んだネギを添えてできあがり。家にあるビールでぜひ試してみて。

洋ナシのスープ(ラインラント)
Birnensuppe

洋ナシのスープ

スープに果物……ちょっと想像しにくいけれど、洋ナシは意外にも塩味とマッチするため重宝する。そして、ラインラントは言わずと知れたワインの産地。モスト(白ワイン原料となる果汁)と生クリームを使ってできる卵色のスープは、黄金色の洋ナシにぴったりだ。シナモンや砂糖を入れて、甘く仕上げることも。

フレーデルスープ(南ドイツ)
Flädle-Suppe

フレーデルスープ

たくさん入った細長い具の正体は、なんとパンケーキ。オーストリアからやってきたフレーデルスープは、バイエルンを中心に南ドイツで食されている。レシピが簡単なのも人気の理由。スープの出汁に細切りにしたパンケーキを入れ、残りものがあればそれも投入。塩胡椒、スパイスで味付けしたらできあがり。

グリースクネーデルスープ(バイエルン)
Grießknödelsuppe

グリースクネーデルスープ

バイエルンでもう一つ忘れてはならない定番が、このグリースクネーデルスープ(またはGrießnockerlsuppeとも)。ナツメグがアクセントのグリースクネーデル(セモリナ団子)をスープに浮かべていただく。バイエルンの人にとっておばあちゃんの味でもあり、病気になったときに飲むスープとしても親しまれている。

魚介スープ(ハンブルク)
Fischsuppe

魚介スープ

ドイツで一番大きな港のあるハンブルクは、ドイツのスープの街とも言われる。試すなら、ぜひ魚介のスープを。基本的にどんな魚介もスープとの相性はいいが、特にハンブルク風のカニのスープ(写真)は昔から人気。その一方で、腎臓のスープ、かめもどきスープ、牡蛎のスープは、現代ではほとんど食べられないそう。

最終更新 Dienstag, 11 Januar 2022 16:07
 

2019年に記念年を迎えるドイツの偉人

2019年に
記念年を迎える偉人
ドイツの著名アーティストたちの軌跡

新年を迎えるにあたり改めて過去を振り返ると、そこにはさまざまな発見や学びがあるもの。今年は世界中でファンが多いドイツ出身の芸術家5人に焦点を当て、その軌跡をたどる。
(Text:ドイツニュースダイジェスト編集部)

2019年はバウハウス誕生100周年 20世紀芸術と造形教育に
大きな影響を与えた総合的教育機関

バウハウス

1919年、ドイツのテューリンゲン州ヴァイマルにて設立された総合的教育機関。建築家のヴァルター・グロピウスやミース・ファン・デル・ローエなど、ドイツを代表する建築家たちが学長を務めた。ナチスによる弾圧で1933年に閉校を余儀なくされたが、閉校までの14年の間に20世紀芸術と造形教育に大きな影響を与え続けた。100周年を迎えた今年は、4月6日に本拠地だったヴァイマルにバウハウス美術館が新たにオープンするのをはじめ、ドイツ各地で展覧会やイベントが企画されている。

没後50年

世界三大モダニズム建築家の一人
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ
Ludwig Mies van der Rohe 1886〜1969年

ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトとともに20世紀のモダニズム建築を代表する建築家。「Less is more.(少ないことは、より豊かなこと)」という建築スタイルを確立した。1886年3月にアーヘンに生まれたミース・ファン・デル・ローエは、地元の職業訓練学校で製図を学んだ後、建築事務所に入り本格的に建築を学ぶ。1929年に開催されたバルセロナ万国博覧会ではドイツ館の「バルセロナ・パビリオン」を設計し、著名な建築家の仲間入りを果たす。1930年からは「バウハウス」の3代目校長に就任。ドイツの「ベルリン美術館 新ナショナルギャラリー」も彼の作品。

没後50年

バウハウスを創立した建築家
ヴァルター・グロピウス
Walter Gropius 1883〜1969年

ヴァルター・グロピウス

奇しくもミース・ファン・デル・ローエと同年に亡くなったヴァルター・グロピウスも、モダニズム建築を代表する建築家の一人。造形美術学校「バウハウス」の創立者であり、1919年から1928年まで初代校長を務めた。1883年5月ベルリンに生まれたグロピウスは、ベルリンやミュンヘンの工科大学で建築を学ぶ。1911年の作品、「ファグスの靴型工場」は、後のバウハウス校舎の構想にもつながるような鉄とガラスを用いた初期モダニズム建築であった。代表作には、「 ヴァイマル・バウハウス校長室のインテリア」(1923年)などがある。

生誕200年

女性音楽家の礎を築く
クララ・シューマン
Clara Schumann 1819〜1896年

クララ・シューマン

ドイツを代表する女性ピアニスト、作曲家。また、作曲家のロベルト・シューマンの妻でもあった。1819年9月、当時のザクセン王国ライプツィヒに生まれたクララは、9歳のときにライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会で、モーツァルト・ピアノ協奏曲のソリストを務め、プロデビューを果たす。以後、19世紀において最も名高いピアニストに。夫のロベルト・シューマンとの苦難多き人生を歩むことになりながらも、若い頃に共作をするなど、夫婦としてともに試練を乗り越えた。また、ロベルト・シューマンはクララを主題にした楽曲も残している。

没後50年

激動の時代を生き抜いた画家
オットー・ディクス
Otto Dix 1891〜1969年

オットー・ディクス

ドイツで第一次世界大戦後に始まった芸術運動、「即物主義」を代表する画家の一人。ゲーラで生まれたディクスは小学生の頃から画家としての片鱗を示していた。第一次世界大戦では従軍し、惨状を目の当たりにした彼は戦争という悲しい現状をスケッチに落とし込み、多くの作品を残す。終戦後はドレスデンとデュッセルドルフでアートを学ぶ。1920年にはベルリンの国際ダダ見本市に参加し、高い評価を受ける。鋭い観察眼で矛盾に満ちたドイツの実状を作品に昇華し続けた。代表作には、銅版画連作「戦争」や、油彩「大都会」などがある。

没後10年

世界的に活躍したコンテンポラリーダンサー
ピナ・バウシュ
Pina Bausch 1940〜2009年

ピナ・バウシュヴッパータール舞踊団による「春の祭典」

ドイツのコンテンポラリーダンスを世界に広めたダンサー、振付師。ドイツ西部・ヴッパータール・タンツ・テアターの芸術監督を務めた。1940年7月ゾーリンゲンに生まれ、14歳からエッセンのフォルクヴァンク芸術大学でドイツ表現主義舞踊の権威であるクルト・ヨースに師事。米国で活動したのち、1962年にドイツに帰国。世界中で公演を行うかたわら、フェデリコ・フェリーニ監督の映画『 そして船は行く』(1983年) に出演。2002年にはペドロ・アルモドバル監督作品『 トーク・トゥ・ハー』の冒頭で代表作「カフェ・ミュラー」を自身が踊っている。

ベルリンの壁崩壊から30周年 今を生きるアーティストとともに進化する街

ベルリンの壁崩壊から30周年

2019年11月9日、ベルリンの壁が崩れてからちょうど30年の節目を迎える。28年以上も東西を分断していた壁は、民主化を求めた旧東ドイツの市民たちの手によって崩壊に至った。現在は自由に東と西の行き来ができるベルリンだが、30年近く経っても東西の街並みやカルチャーには違いが見られ、さまざまな価値観がぶつかり合い、今なお発展途上の街であることがうかがえる。そんな刺激的なベルリンには世界中からアーティストやクリエイターが集まり、常に新しい発想に溢れている。壁亡き後のベルリンから、次はどんな「偉人」が輩出されるだろうか?

最終更新 Freitag, 05 April 2019 11:18
 

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