特集


ドイツのウクライナ難民の状況

自分にできることは何か?「知る」ところから始めてみようドイツのウクライナ難民の状況

ウクライナから100万人以上が避難してきたドイツ。街中でウクライナの人々と出会ったことがある人も少なくないだろう。一体どのような人々がウクライナから逃れてきたのか、どんな支援を受けているのかをご紹介するほか、国内の支援例を取り上げる。

数で見るドイツのウクライナ難民の状況

参考:Mediendienst Integration

ドイツが受け入れたウクライナ難民の数

1056416 ※2022年2月末~2023年1月30日

EU内での受け入れ人数は、ポーランドの156万3386人に次いで、ドイツは2番目に多い。

ロシアのウクライナ侵攻直後、ベルリン中央駅には毎日数千人のウクライナ難民が到着していた。そこでは、宿泊受け入れ可能な市民たちがそれぞれの条件を書いたプラカードを持って駅に立つ姿が見られた ロシアのウクライナ侵攻直後、ベルリン中央駅には毎日数千人のウクライナ難民が到着していた。そこでは、宿泊受け入れ可能な市民たちがそれぞれの条件を書いたプラカードを持って駅に立つ姿が見られた

18歳未満の人数

355031 ※2023年1月23日現在

ドイツの学校に通う子どもの数

203000 ※2023年1月22日現在

ドイツ各地の学校ではウクライナから逃れてきた子どもたちのためにウェルカムクラスを設置し、ドイツ語を学べる環境を整備。しかし教師不足の状態が続いており、すでに引退した教師を現場に呼び戻すケースなどもある。

居住先トップ5

❶ノルトライン=ヴェストファーレン州 21万9000人
❷バイエルン州 14万9000人
❸バーデン=ヴュルテンベルク州 13万1000人
❹ニーダーザクセン州 10万9000人
❺ヘッセン州 8万
※2022年9月現在

ウクライナ難民の男女比

女性 70%
男性 30%

18~60歳のウクライナ人男性は国民総動員令により出国を禁じられているため、女性と子どもが多い。

住居

アパート、一軒家 74%
ホテル、ゲストハウス 17%
難民向け宿泊施設 9%
※2022年12月現在

ドイツで働くウクライナ人の数

12300 ※2022年10月現在

ドイツに避難したウクライナ難民のうち72%が大学もしくは専門学校を卒業しているため、ドイツ全体と比べて高等教育を受けた人の割合が多い。また、ドイツに暮らす15~64歳のウクライナ難民のうち、17%がドイツ国内で仕事をしている。

今後のプラン

ドイツに長期滞在したい 37%
戦争が終わるまでドイツに滞在したい 34%
1年以内にウクライナへ帰る 2%
未定 27%

ウクライナから難民としてドイツへ入国、滞在する場合

● ビザなしの入国および90日間の滞在可
● 一時保護措置により、申請すると1年間の在留資格が与えられ、最大3年間まで延長可
● 宿泊施設、食事、医療のサービスのほか、給付金(例えば、独身もしくは一人親の場合は月367ユーロ)の受け取りが可

語学支援からアーティスト支援までゲーテ・インスティテュート

世界各地でドイツ語講座を開講し、さまざまな催し物を通じてドイツとの文化交流を図ってきたゲーテ・インスティテュート。ゲーテ・インスティテュート・ウクライナは昨年の侵攻以降は休館中で、スタッフはドイツもしくはウクライナ西部へ避難している。一方で、機関としての活動は現在も続いており、本国のゲーテ・インスティテュートと共にドイツ語学習の機会提供やアーティストへの助成金など、ドイツに逃れてきたウクライナ人を支援してきた。 参考:Goethe-Institut(www.goethe.de

Ein Koffer voll mit Büchern (トランクを本でいっぱいに)

ドイツ図書館協会と協力し、ドイツ各地にいるウクライナ難民の子どもたちに本を届けるプロジェクト。ウクライナ人の作家をはじめとしたウクライナ語の絵本や小説が詰まったトランクが全国600カ所の図書館に贈られた。図書館と書籍のリストはホームページから確認できる。

Mein Weg nach Deutschland (ドイツへの道)

ドイツで働きたいウクライナ難民のためのポータルサイト。ドイツ外務省から委託されてゲーテ・インスティテュートが運営している。「1. 私はドイツに(ビザなしで)行くことができますか?」「11. ドイツ語を学ぶ」「13. ドイツで働く」など、ステップ別に必要な情報やお役立ちリンクがまとめられている。ちなみに、ウクライナ人向けにドイツ語初心者のためのオンラインコースが、約5ユーロで提供されている。 www.goethe.de/prj/mwd/de/ukraine.html

Goethe-Institut im Exil (亡命中のゲーテ・インスティテュート)

Goethe-Institut im Exilは、ウクライナ戦争を機に、亡命状態の国々のアーティストたちの発表や交流の場を提供することを目的に企画されたプロジェクト。現在ウクライナ以外にもシリアやイランなどの国々のゲーテ・インスティテュートも亡命状態にある。第一弾は昨年10月6~9日にベルリンで開かれ、ウクライナのアーティストによるパフォーマンスや朗読が披露された。第二弾としてイランのアーティストによるプロジェクトが進行中。

ウクライナの子どもたちを支援したい!日本人支援グループ「ウクライナの友」

昨年6月にデュッセルドルフに暮らす日本人コミュニティーが立ち上げた「ウクライナの友」は、チャリティーコンサートや物資支援など、さまざまなウクライナ支援プロジェクトを実施している。活動を始めたきっかけや支援への思いについて、発起人の岩間倫美さんをはじめ、ウクライナの友のメンバーに話を聞いた。(取材協力:ウクライナの友、Pro Ukraine e.V.)

ウクライナの子どもたちからは、息を吹きかけて回るかざぐるまが人気だったそうウクライナの子どもたちからは、息を吹きかけて回るかざぐるまが人気だったそう

デュッセルドルフに生きる日本人として何ができるか?

「ウクライナの友」の発起人である岩間倫美さんは、在デュッセルドルフ日本国総領館の岩間公典前総領事のパートナーで、ウクライナ総領事と会った際にウクライナから逃れてきた4~18歳の児童養護施設の子ども300名ほど(当時)がノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州に暮らしているという話を耳にした。子どもたちは、戦争が始まってから巡り巡ってドイツ、そしてNRW州へとたどり着いたという。その後、岩間さんは慈善団体「AmericanInternational Women’s Club of Düsseldorf」(AIWCD)主催のチャリティーコンサートに参加。その日はウクライナ総領事の夫も出席する予定だったが、その子どもたちのケアで忙しく参加を断念したことを知る。

自分はコンサートに参加したきりで良いのか。岩間さんは悩んだ末、欧州で3番目の大きさを誇るデュッセルドルフの日本人コミュニティーの一員として、ウクライナの子どもたちを金銭以外でも支援できないかと思うように。そして、デュッセルドルフやその周辺に住む9名の日本人で「ウクライナの友」を発足した。

支援活動には「Pro Ukraine e.V.」の協力も得ている。この団体はNRW州で長くウクライナの子どもたちに人道的支援を行っており、今回避難してきた子どもたちの世話役もしている。ウクライナの友は、上記団体を通してこれまでに食料やマンガの物資支援をするほか、フェイスブックページで日本語による物件情報を呼びかけるなど、メンバーそれぞれができることを持ち寄り、少しずつ支援の輪を広げていった。ここでは、いくつかのプロジェクトをご紹介する。

KUMONプロジェクト

デュッセルドルフの公文式教室の先生であるフックス真理子さんがウクライナの友のメンバーとなり、公文式の教室にウクライナの子どもたちを受け入れることに。個人の希望に合わせ、算数か英語もしくは両科目を教えている。もともと教室には多様な背景を持った子どもたちが多く、当初ウクライナの子どもたちに言葉が通じなかったときには、ロシア人の生徒に通訳をしてもらうことも。子どもたちの世界にはウクライナもロシアもないのだ、と考えさせられたという。

ピアノレッスン

デュッセルドルフ、エッセン、ケルンには音楽大学があり、日本人学生が学んでいるほか、そのまま同地で演奏家として活躍している方も。ウクライナの友のメンバーである富田珠里さんもデュッセルドルフで活躍するピアニストの一人だ。この支援では、昨年9月から富田さんがウクライナから逃れてきたアリーナとミラのピアノレッスンを担当している。楽譜やピアノの寄付があったほか、デュッセルドルフ音楽教室のコンサートにも出演。この取り組みはNHKでも取り上げられ、今も二人はピアノのレッスンに通っている。

昨年11月の発表会に出演した富田さん、アリーナ、ミラ昨年11月の発表会に出演した富田さん、アリーナ、ミラ

ソーラン節ワークショップ

昨年9月30日、International School of Düsseldorf(ISD)に通う日本人の子どもたち16人と、ウクライナの子どもたち20人が集まり、ソーラン節のワークショップを開催した。まずは日本人の子どもたちがお手本を見せ、一緒に一つひとつの動きを練習。ティーンエイジャーだから恥ずかしくて踊らない子も多いのでは……というウクライナの友のメンバーの予想に反して大盛況だったという。ソーラン節を踊った後には、ウクライナの踊りが披露されるなど、互いの文化を知るきっかけにもなった。

全員で記念撮影後、インスタグラムのアカウントを教え合うなど、会が終わってからも子どもたちは積極的に交流していた全員で記念撮影後、インスタグラムのアカウントを教え合うなど、会が終わってからも子どもたちは積極的に交流していた

折り紙ワークショップ

ソーラン節が好評だったことから、昨年11月に折り紙ワークショップを企画。折り紙講師であるマリア・レンズベルク=ペイルさんを招き、日本人の子どもたちとウクライナの子どもたちが参加した。1月に2回目も開催し、継続が期待されている。

なお、これらのプロジェクトの報告や最新のイベント情報は、ウクライナの友のフェイスブックページで随時更新されている。

支援の思いがけない影響

前述のPro Ukraineの代表であるヴェラ・ブッシュさんは、ウクライナの友の活動について次のように述べている。「デュッセルドルフの大きな日本人コミュニティーの友人たちは、ウクライナの子どもたちが(この地で)受け入れられていると感じる素晴らしい取り組みを行っています」。そして先日、Pro Ukraineは支援活動を始めて20年の節目を迎えた。「私たちは長い支援活動のなかで何が必要か、そしてそれがどこへ向かうのか、100%信頼できる人々と協力して行ってきました。そのため、寄付はいつでも最善の支援です」と経済的支援の重要性も話してくれた。

ウクライナの友が企画したソーラン節や折り紙ワークショップでは、参加した日本の子どもたちにも思いがけない影響があったようだ。ウクライナから来た同年代の子どもたちと話したり同じことをやり遂げたりする経験は、日本の子どもたちにとってウクライナを身近に感じたり、親子で戦争について話し合ったりするきっかけに。またウクライナの子どもたちにとっても、自分たちは世界から忘れられていないんだという肯定感につながったという。

ウクライナの子どもたちから「またやってほしい」という声もあることから、ウクライナの友のメンバーの間では「子どもたちはつながりを求めているのではないか」と話しており、そうした機会をもっと作っていきたいという。「支援」は、どうしても一方通行になりがちだ。しかし、こうしたインタラクティブな活動によって、両国の子どもたちがお互いに影響し合う経験を積めることも、これからの時代の支援活動に欠かせないのかもしれない。

各方面で戦争が長期化するといわれているが、ドイツへと逃れてきたウクライナの人々に対しても、今後も長い目での支援が必要だろう。ウクライナについてもっと知ること、何かイベントに参加してみること、信頼できる団体に寄付をすること……一人ひとりの力は小さいかもしれないが、ウクライナ侵攻から1年を節目にあらためて自分に何ができるのかを考え、ぜひ行動に移してみてほしい。

INFO

ウクライナの友:www.facebook.com/friendsofukrainejapan
Pro Ukraine e.V.:www.pro-ukraine.de
ロシアのウクライナ侵攻から1年
ドイツであらためて考えるウクライナのこと >
最終更新 Montag, 27 Februar 2023 16:57
 

ドイツでカーニバルを楽しもう

生真面目なドイツ人が大真面目に羽目を外す ドイツでカーニバルを楽しもう

今年も街中が浮き足立つカーニバルの季節がやって来た。11月11日に始まり、灰の水曜日に終わる「第5の季節」とも呼ばれるこのイベントのハイライトは、2月16~20日の4日間!!老若男女がこぞって仮装し、ここぞとばかりに羽目を外す。欧州の優等生と呼ばれるドイツの意外な一面が垣間見られるだろう。そう、人生は楽なことばかりじゃない、毎日がカーニバルというわけにはいかないからこそ、ドイツのカーニバリスト達は熱く燃え上がるのだ。(編集部:高橋 萌)

カーニバルって、 そもそも何を祝うものなの?
古来、春の到来を祝う風習としてドイツに根付いていたもの。カトリック教会が復活祭(イースター)の前の46日間を断食期間(Fastenzeit)と定めたことから、その前に肉や乳製品などを思いっきり味わっておこう! という食べ納めの祭りとしてカーニバルが再定義された。"carne vale"(ラテン語で「肉よ、さらば!」の意)というわけだ。

カーニバル

カーニバルをもっと深く理解するためのKarneval Kalender 2022/23

11月11日11時11分

聖マルティンの日でもある11月11日をカーニバルシーズンの開始日と定めている地域が多い。デュッセルドルフではこの日、カーニバルの精霊ホッペディッツ(Hoppeditz)が目を覚まし、「第5の季節」の幕開けを知らせる。とは言え、この風習が定着したのは19世紀に入ってから。長いカーニバルの歴史上では、比較的新しい決まり事だ。

11月12日~1月5日

祈りと断食の期間とされるアドヴェント(待降節)を含むこの時期は、カーニバルのお祝いも一時休止。しかし、裏ではカーニバルに向けて着々と準備が進められている。カーニバルのパレードでお披露目される山車の制作などは、この間に佳境を迎えるそうだ。年が開けたら、カーニバルの宴会で忙しくて手が回らないから……。

1月6日(金)

カーニバル

クリスマス関連の最後の祝日1月6日(Heilige Drei Könige)に、カーニバルのイベントが再スタートする。もっとも、19世紀以前は11月11日ではなく、1月6日にカーニバルシーズンが幕を開けたという。ここからは怒涛のイベントラッシュ。灰の水曜日まで連日連夜、宴会(Sitzung)やコスチューム・パーティーなどが開かれ、カーニバル好きがJeckenやNarren(どちらも「道化」の意)と化す。

2月16日(木)

カーニバルのお祭りのハイライト、第1日目。ラインラント地方では「女性のカーニバル(Weiberfastnacht)」と呼ばれ、女性が市庁舎など権力の中枢へ乗り込み、主導権を握ることを高らかに宣言。この日、男性は権力の象徴であるネクタイを切られ、お詫びにキスを贈られる。シュヴァーベン地方では、揚げパンなど油を使った料理をすることから「脂ぎった木曜日(Schmotziger Donnerstag)」と呼ばれている。
注!ラインラント地方在住の男性はこの日、切られても良い古いネクタイを着用しましょう!

2月20日(月)

ローゼンモンターク(Rosenmontag)と呼ばれるこの日、ケルンやマインツ、デュッセルドルフなど各地で大規模なパレードが行われ、カーニバルの盛り上がりは最高潮に達する。「バラの月曜日」とも読まれるが、「Rosen」は植物のバラではなく、rasen(暴れる)から来た言葉とする説も、グリム兄弟の編纂した辞書にある。一部の州以外は公的な祝日ではない。しかし学校や企業、お店などの多くが休業するのでご注意下さい。

2月21日(火)

カーニバル

スミレの火曜日(Veilchendienstag)、ファストナハト(Fastnacht)と呼ばれるこの日、カーニバルのお祭りは最終日を迎える。メンヒェングラットバッハなど、この日にパレードが行われる地域もある。

2月22日(水)

灰の水曜日(Aschermittwoch)は、断食期間が始まる日。デュッセルドルフではカーニバルの聖霊ホッペディッツの葬式が行われる。この日からイースターまで、カトリック教徒は肉を断つことになっており、灰の水曜日にニシンなど魚を食べる風習もある。現代では、本格的な断食の代わりに、お菓子やアルコールなど自分が好きなものを我慢する期間にしている人も多い。また、この日は政治の灰の水曜日(Politischer Aschermittwoch)とも言われ、各地で政治集会が開かれる。

ケルン
ブラジルのリオデジャネイロと同盟を結ぶケルンのカーニバル

ケルンのカーニバル

「アラーフ!」の掛け声が木霊するケルンのカーニバルは、ケルンの3つの星(Kölner Dreigestirn)と呼ばれる、王子と乙女、農夫の3人が取り仕切る。ローゼンモンタークには、7キロの道を4時間掛けて進むパレードがあり、国内外から100万人が詰め掛け、山車に向かって「Kamelle!!(カメレ)」と叫んでお菓子をねだる。今年のモットーは、"200 Jahre Kölner Karneval: Ov krüzz oder quer"。カーニバルは誰にでも開かれているという意味が込められている。

ケルンのカーニバル

注目のイベント

● 野外イベント「Wieverfastelovend」
2月16日(木)11:11~
場所: Alter Markt

● おばけのパレード「Geisterzug」
2月11日(土)
www.geisterzug.de

● パレード「Rosenmontagszug」
2月20日(月)10:00~
場所: 市内中心部


体験!ケルンのSitzung

カーニバルシーズンの楽しみの1つが、各カーニバル協会や団体が主催する大宴会「Sitzung」。コメディアンが時代を皮肉り、ミュージシャンの音楽に乗せて来場者が肩を組んでの大合唱。王様が庶民の仮装をし、庶民が王様になりきる……そんなカーニバルの無礼講の精神を体現するような宴会が連日開催されているが、その1つ、カーニバル協会"Prinzen-Garde"主催のSitzungに参加する機会を得たので行ってきた!

「人生で2番目に大切なこと、それがカーニバル」

クルト・シュトゥンプさん

Prinzen-Gardeの会長
クルト・シュトゥンプさん

1906年創立の老舗カーニバル協会が開くこの宴は、ドレスコードが「Abendgarderobe(正装)」というフォーマルなもの。同協会のシュトゥンプ会長にカーニバルへの想いを語っていただいたのだが、さすがはカーニバル協会を率いる人物、「笑い」を大切にするパワフルな紳士だった。「私の人生で大切なものは、1に家族、2にカーニバル!」と豪語する。「だって考えてもみてください。1月2日から灰の水曜日まで、私の場合は休みが3日間しかない。それ以外は、無償でカーニバルの成功のために日夜活動しているんですよ。好きじゃなきゃやってられない! それに、カーニバルに没頭する期間があるからこそ、人生や仕事における色々な難しい局面に立ち向かえる。そんな風に思っています」。  

深夜0時を越えても一向に終わらない宴、話のオチにつく「ジャッジャーン」という効果音、何度も叫ばれる「Alaaf!」の掛け声……。カーニバルを祝うことが世代を超えて身に染み付いている土地の人々の熱狂ぶりはすごい!!

ケルンのSitzung

ケルン
ホッペディッツが大暴れ個性的なイベント盛りだくさんのカーニバル

デュッセルドルフのカーニバルを特徴付けているのが、精霊ホッペディッツ。11月11日11時11分に当地名産のマスタードの容器から出現し、デュッセルドルフの市民にカーニバルの開始を呼び掛ける。同地のカーニバルを治めるのは、プリンツ(王子)とベネツィア(王女)のカップル。デュッセルドルフのカーニバルは、伝統ある樽運びレース(Tonnenrennen)や女装レース(Tuntenlauf)など、ほかでは見られないイベントが盛りだくさん。今年のモットーは"Och dat noch(Auch das noch)"、「あぁ、またか」というため息にも似たつぶやき。あれもこれも、思うがままにならない世界を笑い飛ばそうというポジティブな意味を含んでいるらしい。永遠のライバルであるケルンとは、野次を飛ばし合う関係。

デュッセルドルフのカーニバル

注目のイベント

● 女性のカーニバル
「Altweiberfastnacht」
2月16日(木)11:11~
場所: Rathaus, Altstadt

● 子どものパレード
「Kinder- und Jugendumzug」
2月18日(土)12:30~
場所: Altstadt

● パレード
「Buntes Kö-Treiben」
2月19日(日)11:00~
場所: Königsallee

● パレード「Rosenmontagszug」
場所: 市内中心部
www.comitee-duesseldorfer-carneval.de


初心者のためのカーニバルのススメカーニバルにどっぷり浸かった日本人

中嶋 総雄さん

デュッセルドルフ日本人学校の元教諭
中嶋 総雄さん

「私自身、もう引退したのですが……」と前置きをし、デュッセルドルフのカーニバルに参加することになった経緯からご説明いただいた。数学教師である中嶋さんが、デュッセルドルフ日本人学校に赴任したのは1972年のこと。自分たちが暮らしている地域の生活文化や社会について、生徒たちにどのように教えていくべきか、開校したばかりの学校には教材もノウハウもなかった。ならば、と、中嶋さんが取った策は、地域の大きな行事の中心にいるSchützenverein(射撃団体)に所属すること。そこから徐々にカーニバル協会との繋がりも生まれた。

「協会のメンバーは無償で、それどころか私財を投じてカーニバルの準備をしていますよ」「山車は、パレードの1日のためだけに手作りしています」。中嶋さんが見てきたカーニバルの舞台裏には、カーニバルを取り巻く熱い人間模様がある。日本でもお祭り好きだった中嶋さんが、ドイツ人の友人から方言(Mundart)の特訓を受け、いよいよSitzungの舞台に上がったのは1983年のこと。それ以来、どっぷりカーニバルに浸かってきた。  

カーニバル初心者に楽しむためのヒントをお願いすると、「Sitzungは、日本人にはハードルが高い。笑いはタイミング。ドイツ語が不自由だとどうしてもテンポが遅れてしまうし、何より、入場料が結構高いんですよ。それよりも、しっかりカーニバルの雰囲気が味わえる野外イベント『Biwak』が断然オススメ!!」とアドバイスをいただいた。羽目を外すドイツ人の中に飛び込む少しの勇気を持てば、カーニバルを通してドイツ社会がもっと身近に感じられそう。

注目のイベント

● 野外カーニバル「Biwak」
2月12日(日)11:00~
場所: Rathaus
デュッセルドルフだけじゃなく、ボンやアーヘンの団体も参加する。歌や踊りを見ているだけでも楽しめる

● 公共放送ARD
「Das Erste, Düsseldorf Helau」
2月21日(土)22:15~00:15
programm.ard.de
Sitzungは、テレビ観戦で雰囲気を味わって

● 野外パレードと樽運びレース
「Tonnenrennen und Umzug」
2月10日(日)12:15~
場所: Niederkassel
樽運びレースはビール樽ではなく、農家の人が肥やし樽を運んだことから来たという説も!

ドイツ各地の個性的なカーニバル

Mainz
マインツ "Mainzer Fastnacht"

ケルン、デュッセルドルフと並び、ドイツ三大カーニバルの地に数えられるマインツ。ここでは、カーニバルではなく、「Fastnacht(断食前夜)」と呼ばれ、「Närrisches Grundgesetz(道化の憲法)」なるものまで定められている。掛け声は、「Helau!(ヘラウ)」
www.mainz.de

Mainz
ロットヴァイル "Rottweiler Fasnet"

黒い森地方のカーニバルは、「Fastnacht(断食前夜)」がちょっとなまって「Fasnet」。ここでは、シュヴァーベン・アレマニア風と言われる独特な雰囲気のファスネットが楽しめる。木製の仮面を着けた市民が練り歩き、「Hu Hu Hu Hu Hu」という掛け声を掛け合う。
www.rottweil.de

Konstanz
コンスタンツ "Konstanzer Fasnacht"

ドイツ南部にあるボーデン湖のほとりに位置し、スイスとも国境を接するコンスタンツ。ここのカーニバルの特徴は、飛び入り参加も大歓迎という開放的な姿勢。2月6日~13日の間、バスなどの近距離交通に乗り放題のチケット「Narrenticket」は11.11ユーロ! 掛け声は、「Ho Narro!!」。シュヴァーベン・アレマニア地方の影響を受け、様々な仮面を被った人で溢れる。
www.konstanz.de

フランクフルト
フランクフルト

http://frankfurt-interaktiv.de

ベルリン
ベルリン

www.festkomitee-berliner-karneval.de

ミュンヘン
ミュンヘン

www.muenchen.de

最終更新 Mittwoch, 15 Februar 2023 09:10
 

ドイツの温泉・サウナめぐり

心と体を芯から温めるドイツの温泉・サウナめぐり

ドイツは、日本などとも並ぶ温泉大国の一つ。天然温泉が噴出する温泉地では保養文化が根付いているのに加え、ドイツ独自のサウナや飲泉の文化など、さまざまな形で温泉を楽しむことができる。本特集では、そんなドイツの温泉・サウナの特徴をはじめ、各地のおすすめ温泉をピックアップ。古くから根付くユニークな温泉文化をのぞいてみよう。(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

参考:本誌852号「日本人の心の故郷「温泉」をドイツで」、本誌911号「ドイツ湯巡り紀行」
※本記事に記載している温泉の効果は、あくまで期待できる効能です。疾病の治療や完治、予防等を保証するものではありません。

ドイツが温泉大国になるまで

古代ローマ人が完成させた「テルメ」

フリードリヒ浴場の地下に残っているローマ時代の公衆浴場の遺跡フリードリヒ浴場の地下に残っているローマ時代の公衆浴場の遺跡

ドイツ語で「温泉」や「公衆浴場」を意味する「Therme」(テルメ)がラテン語の「thermae」に由来している通り、今日に通じる欧州の温泉文化のコンセプトを完成させたのは、古代ローマ人といわれる。それ以前にも、古代ギリシャ人やケルト人は温水が体に良いことを発見していたが、ギリシャ人がスポーツトレーニングの締めくくりとして温泉を重宝したのに対し、ローマ人は個人のリラックスとレジャーのために大規模なスパ文化を発展させた。

初代ローマ皇帝アウグストゥス(紀元前63年-紀元後14年)の時代には、民衆のために対話や講義の場としての円形浴場、さらにスポーツジムや商店を備えた施設を建設。さらにカラカラ帝やディオクレティアヌス帝なども公衆浴場を造り、帝国領各地に広まっていく。ローマ人が発展させたこれらの温泉施設は、ただ入浴するだけでなく、運動や食事、商売などの社会生活と結び付いた、コミュニケーションの場となった。

ドイツで最も有名な温泉保養地の一つであるバーデン=バーデンもまた、「Baden」がドイツ語で「入浴」を意味するように、温泉を軸に発展してきた。遠征していた古代ローマ軍が同地に20カ所の源泉を発見したことから、その歴史が始まったといわれる。ローマ人たちはバーデン=バーデンの街を建設するとともに、紀元後70〜80年にかけて、皇帝の娯楽や自軍の兵士の治療のため、この地に三つの浴場を造ったという。

貴族の娯楽から、誰もが楽しめる楽園へ

女優マレーネ・ディートリヒ(1901-1992)が「世界で最も美しいカジノ」と絶賛したというバーデン=バーデンにあるクアハウスのカジノ女優マレーネ・ディートリヒ(1901-1992)が「世界で最も美しいカジノ」と絶賛したというバーデン=バーデンにあるクアハウスのカジノ

欧州における最初のスパ全盛期は、ローマ帝国の崩壊と共に終焉(しゅうえん)を迎える。ゲルマン民族の侵入によって多くの浴場が破壊され、再建されることはなかった。しかし古代ローマ浴場の伝統は、ビザンティン帝国を征服したアラブ民族に受け継がれ、今日トルコ式風呂といわれる「ハマム」として発展。13世紀に十字軍の兵士がイスラム諸国を遠征した際、アラブの入浴文化から影響を受け、欧州でも温泉文化が徐々に復活していった。

さらに17世紀以降、欧州の温泉文化は復興し、19世紀には黄金期を迎える。ドイツの温泉街には、豪華なカジノやレストラン、シアターなどが複合した「クアハウス」(温泉のある保養施設)が造られ、温泉保養地の高級リゾート化に成功。有名な温泉地に滞在することが人気の旅行スタイルとして確立された。さらにドイツでは医療としての温泉、すなわち「温泉医学」(Balneologie)が発達し、政治家や貴族、裕福な市民は、定期的に温泉保養地に通い、飲泉や入浴による恩恵を受けた。こうして日本やハンガリー、アイスランドと並んで、温泉大国の地位を確立したのだ。

しかし20世紀には世界恐慌や二度の世界大戦によって観光客が激減し、再び温泉の人気は低下。その後1970年代には、石油危機を受けて採掘が活発に行われ、石油ではなく温泉が見つかったことで、各地に新しい温泉施設が誕生した。また同時に、都市的な生活スタイルが浸透したことで腰痛、肥満、疲労など、いわゆる文明病が増加し、温泉は自然療法として再び注目されるようになった。 今日、ドイツには約240の温泉施設があり、多くの市民から健康とリラクゼーションのオアシスとして愛されている。

参考:In die Therme「Geschichte der Thermen」、THERMENPORTAL. de「Thermalbad-Geschichte: Von Thermalquellen zu Thermalkuren」、Stadtgui.de「Die Geschichte der Thermen」

ドイツ屈指の二大温泉保養地

黒い森が育んだ自然豊かな街バーデン=バーデンと、カール大帝をはじめ世界の著名な文豪も賛美した温泉地ヴィースバーデンは、温泉好きなら一度は行ってみたい場所。まずは欧州を代表する温泉保養地として名高いこの二都市を訪ねてみよう。

バーデン=バーデンBaden-Baden

黒い森の北部に位置する、バーデン=ヴュルテンベルク州バーデン=バーデンは、紀元後80年頃から古代ローマ人によって温泉が築かれ、18世紀には上流階級が訪れる華やかな保養地になるなど、高級温泉保養地として欧州屈指の歴史を誇る。音楽家のブラームスやシュトラウス、小説家のマーク・トゥエインなど、多くの著名人が同地を訪れたという。レストランやカジノ、劇場を備えた温泉社交場の「クアハウス」(Kurhaus)をはじめ、ゴルフ場やショッピング街など、保養地ならではの楽しみも満載。

欧州の温泉文化の真髄を堪能フリードリヒ浴場Friedrichsbad

1873年に建てられたフリードリヒ浴場は、ローマ時代から伝わる17の入浴室を順に回るシステムで、水着なしで入浴する。温度の異なるさまざまな温浴を楽しむローマと、熱気浴の伝統を持つアイルランドの温泉文化を融合させていることから「ローマ・アイルランド浴場」(Das Römisch-Irische Bad)の異名も。中央のドーム型浴場(写真)にはフレスコ画や大理石が施され、そこに漂う奥ゆかしい芳香が体を優しく包み込む。さらに美しい建築物の地下では、ローマ時代の浴場遺跡を見学することができる。

Römerplatz 1, 76530 Baden-Baden
www.carasana.de/de/friedrichsbad

古代ローマ浴場の趣が漂うカラカラ温泉Caracalla Therme

古代ローマ時代にカラカラ帝が湯浴みに来たことから名付けられた温泉で、総面積は約4000平方メートル。モダンなガラス張りの巨大な殿堂が目を引く。浴室に足を踏み入れると、大理石が施された壮麗な空間が広がる。地下2000メートルから湧き出る温泉は天然ミネラルを多く含む塩化物泉で、血液の循環促進や保温効果が高い。人工滝や温水と冷水の洞窟、ワールプール、街を一望できるリラクゼーションルーム、フィンランド式サウナ、多彩なウェルネスプログラムなど、訪問者を飽きさせない工夫がいっぱい。

Römerplatz 1, 76530 Baden-Baden
www.carasana.de/de/caracalla-therme

ヴィースバーデンWiesbaden

マイン川とライン川の合流点に掛かるタウヌス丘陵の麓に位置する、ヘッセン州ヴィースバーデン。15の温泉源および鉱泉源を有し、古代ローマ時代から風情豊かなクアパーク(保養地)を中心に温泉観光地として栄えてきた。カール大帝の伝記には「草原の中の温泉」を意味する「Wisibada」という名で登場し、かの文豪ゲーテやドストエフスキーも好んで訪れたという。ヘッセン州立劇場をはじめとする文化の薫り高き街であり、広大なブドウ畑が広がるワインの産地としても有名。

芸術性の高い建築に注目カイザー・フリードリヒ温泉Kaiser-Friedrich-Therme

1913年に当時広まりつつあったアール・ヌーヴォー建築の温泉施設は、フレスコ画などローマ様式の美しい装飾が施された荘厳な雰囲気。特に施設中央に位置する全面タイル張りの浴室の豪華さは、一見の価値あり。古代ローマの公衆浴場にあったテピダリウム(微温浴室)やロシア式の蒸し風呂、フィンランド式サウナなど、さまざまなスタイルの浴場が訪れる人に癒しを与えてくれる。豊富な各種マッサージメニューもぜひお試しあれ。

※節電のため閉鎖中(2023年1月時点)

Langgasse 38-40, 65183 Wiesbaden
www.mattiaqua.de/thermen/kaiser-friedrich-therme

体に良いミネラルが豊富アウカムタル温泉Thermalbad Aukammtal

上質なウェルネスと本格的な健康プログラムを提供している温泉施設。今から2000年以上前に発掘された源泉には、鉄やマンガンなど多くのミネラルが含まれており、造血作用を高めるのに役立つほか、冷え性体質の改善にも大きな効果があるといわれている。屋内外合わせて約4000平方メートルの広々とした施設には、温水プールや7種類のサウナをはじめ、緑に囲まれた屋外エリアや広々とした休憩スペースなどを完備。

Leibnizstr. 7, 65191 Wiesbaden
www.mattiaqua.de/thermen/thermalbad-aukammtal

ドイツ各地のおすすめ温泉・サウナ 8選

バーデン=バーデンやヴィースバーデン以外にも、温泉大国ドイツには名湯がたくさん存在する。ここでは、「Bad」(入浴、湯治場などの意味)と名の付くドイツ各地の街から、選りすぐりの温泉施設をご紹介。お気に入りの温泉を見つけて、ぜひ出かけてみて。

MAP

Bad Bevensen 色と光に満ちた幻想的な世界❶ ヨード・ゾーレ温泉JOD-SOLE-THERME

ニーダーザクセン州バート・べーフェンセンの温泉の泉質は、日本の温泉に多い塩化物泉。これはリュウマチや関節痛、筋肉痛などの症状を和らげる効果があるとされている。総面積約1万2000平方メートルのヨード・ゾーレ温泉内には、色鮮やかな装飾と光に満ちた浴場、そして自然の要素をふんだんに取り入れた開放感溢れるサウナ庭園が広がっている。温泉施設の近くには、樹齢180年の大木を含む約560本の樹木に囲まれた閑静な公園があるので、温泉に入った後は自然散策に出かけるのもおすすめ。

Dahlenburger Straße 1, 29549 Bad Bevensen
www.jod-sole-therme.de

Bad Salzuflen 新感覚の巨大な湯の風船が目を引く ❷ ヴィタゾール温泉VitaSol Therme

19世紀以降、国内でも重要な保養地の一つに数えられてきたノルトライン=ヴェストファーレン州にあるバート・ザルツウフレン。「水による健康」をコンセプトにしたヴィタゾール温泉は、湯治客を居心地の良い夢の世界へいざなってくれる。天井に設置された巨大なバルーン型シャワー「Regenwolken」(雨雲)は同施設の目玉で、ここから噴き出す温泉を浴びれば気分爽快! 暖炉が付いたファイヤーサウナで汗を流した後は、屋外に出て新鮮な空気を吸い、自然との調和が美しい湖水のサウナで一息つこう。

Extersche Straße 42, 32105 Bad Salzuflen
www.vitasol.de

Bad Sassendorf 塩の力で全身リラックス❸ ベーデ温泉Börde Therme

ミュンスターラントとザウアーラントの間に位置するバート・ザッセンドルフ(ノルトライン=ヴェストファーレン州)は、植物由来の有機質を含んだモール泉と塩化物泉の発掘によって知られるように。濃度3.0〜3.4%の天然塩水で、全身のリラックスや免疫力の強化、リウマチや関節炎の痛みを和らげるなど、さまざまな効能があるとされる。ここベーデ温泉の自慢は、プールやサウナエリアはもちろん、「Meersalzgrotte」(海塩の洞窟)。岩塩に囲まれた空間でゆっくり深呼吸すれば、ストレスや皮膚病、呼吸器系疾患の改善が期待できる。

Gartenstraße 26, 59505 Bad Sassendorf
www.soletherme-badsassendorf.de

Bad Waldsee 硫黄泉で肌にシルクの輝きを❹ ヴァルトゼー温泉Waldsee-Therme

郊外の静かな避暑地として地元市民に愛されている、バーデン=ヴュルテンベルク州南東のヴァルトゼー温泉。多種多様な健康促進プログラムを提供しており、街の健康センターとしての機能も果たしている。なかでも積極的に取り入れているのが、入浴剤でおなじみの「クナイプ」の創始者が提唱したクナイプ療法。体全体の体質改善を図ることを目的とした伝統的な治療法だ。地下約1500~2000メートルから湧き出る硫黄泉は豊富なフッ素を含み、古くなった皮膚の角質の除去をする作用があるとされている。

Badstraße 16, 88339 Bad Waldsee
www.waldsee-therme.de

Bad Saarow 快適なマッサージで健康促進❺ ザーロウ温泉Saarow Therme

ブランデンブルク州のエレガントな保養地として知られるバート・ザーロウは、シャルミュツェル湖畔沿いにあり、自然の恵みを存分に受けた景観が魅力。ザーロウ温泉は、日中はガラス張りの壁面から注ぐ陽光が浴場を照らし、屋内は開放感に満ち溢れている。34~36度に設定された温泉では、天然泥を使用したマッサージをはじめ多くの健康プログラムを提供。フィンランド式サウナや塩サウナをはじめ、映画を観られるサウナ、雪で体を冷やすスノーシャワーなど、バラエティー豊かなサウナ施設を完備している。

Am Kurpark 1, 15526 Bad Saarow
https://therme.bad-saarow.de

Bad Kissingen 伝統と格式の温泉保養地❻ キスサリス温泉KissSalis Therme

バイエルン州の南東に位置するバート・キッシンゲンは、温泉愛好家の間では国内でも一際格式高い温泉保養地として有名。その威厳を象徴するかのように、かつての湯治客にはイタリアの作曲家ロッシーニをはじめ、オーストリアの皇后エリザベート、プロイセンの鉄血宰相ビスマルクなどの偉人が名を連ねている。キスサリス温泉は、開放感あふれる温泉エリアが自慢で、プラネタリウム風のサウナや足湯、ビーチ風の休憩室など、趣向を凝らした施設が楽しい。泉質は、保温効果が高く、血液循環を良くするとされている炭酸塩化物泉。

Heiligenfelder Allee 16, 97688 Bad Kissingen
www.kisssalis.de

Bad Griesbach ゴルフ好き必訪のリゾート温泉❼ ヴォールフュール温泉Wohlfühl-Therme

欧州随一のゴルフリゾートでプレーした後、汗を流しに温泉でひとっ風呂……なんて楽しみを提供してくれるのが、バイエルン州パッサウの南西バート・グリースバッハの温泉。「バイエルンのトスカーナ」と呼ばれ、優雅なリゾート地として観光客らに人気が高い。ヴォールフュール温泉は、豊富にフッ素を含んだ炭酸水素塩泉で、肌の不要な角質や毛穴の汚れを取り除くなど、肌質改善にも効能があるとされる。トルコ風呂のハマムや、七色に輝く静寂な岩塩洞窟の中でリラックス。心身の疲れやストレスを吹き飛ばそう。

Thermalbadstraße 4, 94086 Bad Griesbach
www.wohlfuehltherme.de

Bad Füssing 大邸宅風のお風呂でのんびり❽ アインス温泉Therme Eins

同じくパッサウ近郊にあるバート・フュッシンクの温泉は70年以上の歴史を持ち、地下1000メートルから汲み出された硫化水素を含む56度の硫黄泉で、背痛や関節痛の解消など、その効能に魅了されたリピーターは多い。大邸宅を思わせるアインス温泉には、西側に噴水の付いた円形浴場、中央には夜間ライトアップされて幻想的に輝く浴場が設置されている。木の温もりを生かしたログハウス風のサウナでは、ジャガイモクリームを使ったピーリングケアを提供する「ジャガイモ庫サウナ」(Kartoffelkeller-Sauna)も体験できる。

Kurallee 1, 94072 Bad Füssing
www.therme1.de

ドイツの温泉・サウナの特徴&持ち物

特徴

ドイツの温泉は36〜40度程度と、日本の温泉と比べてややぬるめの設定。また男女別で入浴する施設はほぼなく、更衣室も男女共用だ。一般的にはプールゾーンでは水着を着用し、サウナゾーンでは着用不可のところが多い(施設によってはレディースデーなどを設けている場合も)。温泉とサウナだけでなく、休憩室やマッサージ、ウェルネスプログラムなども充実しているので、一日中施設内で過ごすことができる。

持ち物

  • バスタオル

    入浴後に体を拭く用と、サウナ用の2枚を用意する

  • バスローブ

    リラクゼーションルームやレストランで着用

  • 水着

    プールゾーンでは水着着用、サウナでは着用不可の場合が多い

  • サンダル

    床が水で滑りやすいため、 施設内はサンダルで移動する

  • お風呂セット

    シャンプーやボディーソープ、化粧水などは、温泉施設で用意されていない場合が多い

  • ビニール袋

    濡れたタオルや水着を入れて持ち帰るのに役立つ

  • 本や雑誌

    浴室には基本的にスマートフォンの持ち込み不可。のんびりと自分の時間を楽しむべく、本や雑誌を持参するのも◎。

日本と異なるマナーも!ドイツならではのサウナ文化

ドイツでのサウナの入り方

ドイツと日本のサウナの最大の違いは、男女混浴かつ全裸で入浴すること。サウナ内では水着やバスタオルの着用も禁止で、基本的に裸で入浴する(移動や休憩室ではバスローブなどを着用)。男女別の入浴に慣れている人にとっては少々ハードルが高いかもしれないが、ドイツのサウナはリラックスして自分と向き合うための場所。セクシャルな雰囲気もなく、おしゃべり厳禁など、しっかりとマナーが守られている。もちろんサウナエリアでの写真撮影も不可。

特にドイツのサウナで徹底して守られているのが、「サウナ内に汗をつけてはいけない」というルール。これはサウナ内の衛生環境を徹底して保つためだ。サウナ室内では自分が腰掛ける部分だけでなく足裏などにもタオルを敷き、体が直接すのこに触れないように注意しよう。またサウナ内の温度を保つため、ドアはきっちり閉める。以下は、一般的なサウナ施設が推奨しているサウナの入浴方法。初心者の方は無理をせず、またその日の体調に合わせてサウナを楽しもう。

  1. まずはシャワーを浴び、タオルで体をよく乾かす。体が乾いている方が汗をかきやすい。
  2. サウナに入り、タオルをお尻や足の下に敷いて座る、もしくは寝そべる。
  3. 体調や慣れ具合により、8〜15分間入って汗を流す。上段に座るほど温度が高くなるため、サウナ経験が少ない人は中段もしくは下段から始めると良い。
  4. サウナで寝そべっていた場合も、最後の1〜2分は座って血行をよくする。もし体調に異変を感じたらすぐに出よう。
  5. サウナから出たら、すぐにシャワーを浴びたり、プールに飛び込んだりせず、まずは新鮮な空気を吸って、体内に十分な酸素を送る。
  6. シャワーを浴びて汗を洗い流し、プールに入って体を冷ます。その後、体を乾かしたらバスローブにくるまって体を冷やさないようにして20〜30分ほど休憩する。温水のフットバスに浸かるのもおすすめ。水分補給も忘れずに!
  7. これを2〜3回ほど繰り返す。

ドイツ人のサウナ愛「アウフグース」

今年の世界大会は、Satama Sauna Resort & Spaで9月11(月)〜17日(日)に開催予定!今年の世界大会は、Satama Sauna Resort & Spaで9月11(月)〜17日(日)に開催予定!

ドイツのサウナでぜひ味わいたいのが、「アウフグース」(Aufguss)と呼ばれる独特のサービス。もともとドイツ語で「コーヒーなどを沸かす」という意味で、施設スタッフがタオルなどで扇いで入浴者に熱風を送る。たいていのサウナ施設では、アウフグースが行われる時間帯が掲示されており、その時間になると大勢の利用客がサウナに集まり、10〜15分のショータイムが始まる。各施設に人気のアウフギーサー(Aufgießer)がいることも。

ドイツのサウナ愛はとどまるところを知らず、ドイツサウナ連盟では、アウフグースのパフォーマンスやエンターテイメント性を競う世界大会(Aufguss WM)を毎年開催。世界各地からトップクラスのアウフギーサーが集まり、50以上の評価基準によって審査される。

大会では、単に熱波を送る技術を競うだけでなく、アロマをはじめ音楽や照明、コスプレ、小道具、ストーリー性など、あらゆる演出を駆使した一大エンターテイメントを披露。起承転結に違うアロマを使ったり、偉人の生涯や環境破壊をテーマにしたストーリー仕立てのアウフグース、タオルを振り回すと共に披露される華麗なダンス……などなど、圧巻のパフォーマンスに拍手が沸き起こる。ちなみに2022年9月にオランダで行われた世界大会には、初めて日本からも公式参加できることになり、熱波師として活躍する五塔(ごとう)熱子(ねつこ)さんがフリースタイルの個人部門で世界第3位に輝いた。

最終更新 Mittwoch, 08 Februar 2023 10:46
 

ベルリン国際映画祭:ベルリナーレで過去に賞を獲得した日本映画4選

ベルリナーレで賞を獲得!日本の今を知る映画4選

ベルリン国際映画祭では、これまで黒澤明監督や宮崎駿監督などの日本を代表する映画監督をはじめ、日本映画界の若手監督や俳優たちに数々の輝かしい賞が授与されてきた。特に近年のパノラマ部門やフォーラム部門などでは、日本の現代社会を独自の視点で描き出した作品が注目を集めている。ここでは、近年ベルリナーレで高い評価を受けた日本映画をご紹介。

人間の五感に心地よく響く グレート・ラビット

グレート・ラビット

監督・脚本・編集・声・アニメーション:和田淳
公開:2012年
上映時間:7分
http://kankaku.jp

「間」と「気持ちいい動き」をテーマに制作を行う和田淳氏のアニメーションは、ふくよかで温もりのある線が特徴。本作が第62回ベルリン国際映画祭短編部門で「銀熊賞」を受賞したほか、これまで和田氏のアニメーション作品はさまざまな国際映画祭に出品されてきた。この作品に登場するのは、かつて「グレート」と呼ばれていた崇高で神秘的な存在。しかし、時代の変遷とともに人々の思考や思想も変化し、グレートがグレートである由縁がだんだんと不明瞭になっていく……。人や動物などのユニークな動きが柔らかく不思議な世界観を生み出す一方、作品の根底には現代社会に対する普遍的な問いが感じられる。

人間の闇に鋭く迫る FORMA

FORMA

監督・原案:坂本あゆみ 脚本:仁志原了
公開:2013年 上映時間:145分
出演:松岡恵望子、梅野渚、ノゾエ征爾、光石研 ほか
http://forma-movie.com

2人の女性による行き場のない憎しみが連鎖する悲劇の物語を描いた、坂本あゆみ監督の「FORMA」。長編デビューとなった本作は、第64回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門で「国際批評家連盟賞」を受賞し、国内外で高い評価を得ている。物語は、高校の同級生だった保坂由香里と金城綾子が偶然再会するところから始まり、由香里は綾子に誘われて同じ会社で働く。しかし綾子は徐々に由香里に冷たくなり、由香里は次第に追い詰められることに。映画のタイトルである「FORMA」とはラテン語で「本質」。人間の心に潜む「悪意」や「闇」が、斬新なカメラワークとリアルな人物描写で描き出されている。

セクシャル・マイノリティーの一歩先へ 彼らが本気で編むときは、

彼らが本気で編むときは、

脚本・監督:荻上直子
公開:2017年 上映時間:127分
出演:生田斗真、桐谷健太、柿原りんか ほか
http://suurkiitos.com

「かもめ食堂」や「レンタネコ」などで知られる荻上直子監督。自身オリジナル脚本による本作は、第67回ベルリン国際映画祭で、LGBTをテーマにした作品を対象に選出される「テディ賞」の特別賞に輝いた。優しさに満ちたトランスジェンダーの女性・リンコ、彼女の心の美しさに惹かれる恋人のマキオ、そしてマキオの姪で母が家出中の小学生・トモ。3人の奇妙で温かい共同生活の様子が、こまやかな日常描写によって丁寧に描かれている。セクシャル・マイノリティーへの差別や不理解というところにとどまらず、現代のさまざまな家族のあり方や愛情の形について考えるきっかけをくれる作品だ。

ひとりの女性の冒険と成長 37セカンズ

37セカンズ

脚本・監督:HIKARI
公開:2020年 上映時間:127分
出演:佳山明、神野三鈴、大東俊介 ほか
http://37seconds.jp

ロサンゼルスを拠点に活動するHIKARI監督は、本作で長編デビューを果たすとともに、第69回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門で史上初めて「パノラマ観客賞」と「国際アートシアター連盟賞」をダブル受賞。本作の主人公・ユマは、生まれるときに37秒間息をしていなかったことで、脳性麻痺を抱えて車いす生活を送る23歳。漫画家志望だが、現在は親友のゴーストライターとして働き、息苦しさを感じながらも過保護な母とともにひっそりと暮らしている。そんな彼女がさまざまな人と出会うことで自立しようともがき、やがて女性としてドラマティックに成長していく。

最終更新 Montag, 06 Februar 2023 11:05
 

新春号 英国・ドイツ 2国特集 英国・ドイツ・フランスで気持ちをリセット - アフター・コロナの 欧州旅行

新春号 英国・ドイツ 2国特集
英国・ドイツ・フランスで気持ちをリセット
アフター・コロナの欧州旅行

ここ数年、私たちの暮らしから失われてしまっていた旅の感覚。しかし、こんな時代を生き抜いていくには、旅が与えてくれるエネルギーが何よりも必要だ。2023年の英独新年号特集では、コロナ禍のステイホームですっかり固まってしまった心や体を解き放つ、本物の体験ができる英国、ドイツ、フランスでの旅のプランをご提案。2023年の旅行トレンドやアフター・コロナの旅の注意点についても併せて紹介する。 (文:英国・ドイツニュースダイジェスト編集部)

2023年の旅行事情は?

2023年は自分独自の「ニューノーマルな旅」の模索

新型コロナウイルスによる不安は完全にぬぐい切れていないが、Booking.comが世界中に住む人を対象に行った調査「2023年の旅行トレンド予測」*では以下のような結果が出た。

まず、人々は22年に比べ、旅行に対してかなり楽観的な考え方を持ち始めたといえる。旅行意欲が大幅に増してきていると答えた人は73%で、23年に旅行すると答えた人は72%。このような前向きな意見は各国の入国規制が緩和され、渡航者に対し物理的に門戸が開かれたことが要因だろう。旅行の目的としては、ステイホームの多かった過去数年分の反動か、旅先に新しい経験や刺激を求める傾向が大きい(73%)のが特筆すべきポイント。一方、心身を癒やす滞在先(44%)や静かな場所(40%)も根強い人気がある。しかし、48%はインターネットに接続できる環境が整備されていることが、自然の中に身を置く条件だとしている。

一方で、現在の世界不況も無視することはできない。旅行者の多くは、あえてオフシーズンに目的地を訪れたり、移動にも最短距離ではなく長いルートを選ぶことを検討し、予算を節約しようと考えている。またそれとは逆に、数年にわたる旅行制限により休暇に費やすはずだった資金を節約することができたため、49%が23年の旅費にこれまでの分を上乗せする形で旅行を楽しむ予定だという。また、61%は計画的な長期休暇を過ごしたいと回答。予算の使い方としては、短い休暇を何度も取るのではなく、1回か2回の長い休暇を選びたいと考えていることが分かった。

これらからいえるのは、パンデミックや不況に負けず、いかに旅を楽しむか人々が策を練っているということだろう。外国を訪れ、良い意味でのカルチャー・ショックを活力としたい人、仕事や心配事から離れ、旅先で自分を徹底的に癒やしたい人など、23年は多くの人々が旅行への期待を大きく膨らませ、自分が望む旅を楽しもうと考えている。

*2022年8月時点から1~2年以内にビジネスまたはレジャー目的で旅行を計画している32の国と地域の計2万4179人を対象に実施されたもの

ワーケーションの感覚は残っている?

コロナ禍で欧米を中心に多くの企業が、ラップトップ一つで従業員がリゾート地で働きながら休暇を取るワーケーション(worcation)を認めた。ホテル管理システムMewsの調査によると、英国ではパンデミック前の在宅勤務率は5%だったが、22年には16%の就業者がワーケーションを検討していたという。しかしこの傾向は23年には下降気味になる可能性が高い。Booking.comの調査では49%は通常の職場とは異なる場所にいることで仕事の生産性が向上すると理解はしているものの、68%は23年は旅行と仕事を完全に切り離し、休暇として満喫することを望んでいる。

久しぶりの旅行の注意点

パンデミックによる入国制限や規制は各国で大幅に緩和された。英国、フランスでは新型コロナによる規制はほぼ撤廃され、屋内の過密している場所でマスク着用が推奨されているくらい。ドイツでは、23年4月7日まで長距離交通機関や病院等の訪問時に医療用マスクの着用義務がある(22年12月16日現在)。また、20年のブレグジット(英国の欧州連合離脱)に伴い、EU・英国間を出入国する際のパスポート・チェックが義務化された。日本のパスポートを所持する場合はこれまでと変わらないが、チェック対象者数が増加したため、いつもよりゲート通過に時間がかかる可能性があるので注意が必要だ。

英国・ドイツ・フランスの傾向

2023年は世界中の人々が旅行に行きたくてウズウズしていることが分かったが、欧州の3国内では顕著な違いはあるのだろうか。似ているようで案外異なる、その傾向をまとめた。

英国

短期間の旅行で倹約傾向に

金融サービスの比較サイトGo.Compare Travel Insuranceの世論調査によると、英国の人々は生活コストの上昇により予算を抑えた旅行を選択する傾向にあるようだ。22%は2023年の休暇に費やす金額を減らし、12%はより安い旅行先を探すと回答。また他国とは異なり長期より短期滞在を好み、滞在費を極力抑えたい傾向がある。このように日常生活への不安は尽きないものの、英国人の41%はそれが理由で旅行を止めることはないと考えている。また、22年には空港のスタッフ不足により多数のキャンセル便が出て連日ニュースになったが、それが旅行への情熱を止める理由にはならないと思っている人が39%もいるそう。

プレッパーが急増

2023年のトレンドの一つとして、最低限の必需品だけで生活し、人間の原点に立ち返るような特別な体験を求めるプレッパー(Prepper=最悪の事態の備え準備をする人)の増加が挙げられる。きれいな水を調達する方法(37%)や点火法(36%)、食料を探す方法(30%)などを学びたいと考えている人が多く、23年は不測の事態を生き抜くための基本的なスキルを学ぶサバイバル・スクールの参加者増加も予想されている。ただし先のコスト問題が解決する場合、50%の人はより良いホテルに宿泊しながらオフグリッド旅行を楽しみたいと答え、54%が電話とネット接続は欲しいというのが本音のようだ。

ドイツ

国を挙げてサステナビリティを重視

環境大国ドイツでは、長年の課題である気候変動をはじめ、近年のエネルギー危機により、ますます持続可能性への関心が高まっている。そのため、2023年はさらにサステナビリティの旅が注目されると予想される。例えば、ドイツ政府観光局によるサステナブル・キャンペーンのポータル・サイトFEEL GOODは、ウェブサイト上で持続可能な旅行をするためのヒントを紹介。サイトには二酸化炭素(CO2)計算機が搭載されており、CO2の量を具体的な数値で知ることでよりエコを意識した旅行を推奨している。また、環境に配慮した宿泊先を検索することもできる。

ただし、サステナビリティとの付き合い方について、まだ消費者が完全に追いついていないのが現状。例えば、旅行会社Tourlaneの調査では、旅行をする際にサステナビリティを重視すると回答した人はわずか39%で、61%は重視しないという結果だった。理想と現実にまだギャップがあるものの、時代の流れとともに次第に変化していくといえそうだ。

出典:Tourlane「2023年旅行トレンド調査」出典:Tourlane「2023年旅行トレンド調査」

自然の中で過ごす休暇がやっぱり好き

2021年にStatistaが行った調査では、66%が好きな休暇のアクティビティとして自然の中で過ごすと回答した。そのほか、散歩する(43%)、ハイキング(38%)というように、自然を愛することで有名なドイツ人。コロナ禍での自然回帰もあいまって、23年の休暇はマスツーリズムよりも自然の中で過ごす時間を選択する人が増えるとみられる。

フランス

屋外で過ごせる観光地を選ぶ

「8月は街から地元の人がいなくなる」といわれるほど、バカンスはフランス人にとって大切。そのため2023年はパンデミックで抑圧された時間を取り戻すべく、「リベンジ旅行者」が増加する見込みだ。旅行会社Tourlaneの調査によると10人中8人は23年に旅行すると答え、13%は旅行頻度はまだ増やさないが、その代わりに長期滞在を選ぶという。また、一定層のフランス人はやはり新型コロナを気にしており、68%は今後も屋外で過ごせる観光地を選ぶそう(22年比-4ポイント)。酪農やハーブ園などは、屋外で実際に生き物や植物に触れて自然の恵みを堪能するなど、現地でしか味わえない体験ができるため23年は特に人気が出そうなジャンルだ。バカンス! と言いながら新型コロナのことは気になるのがフランス人といえる。

長距離旅行の人気が高まる

パンデミックによって海外旅行が大幅に制限されていたが、2023年にはフランス人の70%が欧州以外の国へ積極的に旅行するようになり、飛行機を使った長距離旅行の人気が高まる(22年比+27ポイント)と予想されている。18~25歳は登山やスポーツなどアクティブな休暇を選ぶ傾向が強く(40%)、20%が美食の休暇を選ぶなど、グルメな傾向は若い世代にも相変わらず強い。また、18~25歳に次いで最もアクティブな休日を選んだ年齢層(24%)が56~65歳という高齢層という意外な結果が出た。

英国のおすすめ旅行先

無骨な建物や廃墟好きにはたまらない 産業革命の時代をリアルに学ぶ旅

18世紀の工業地帯にタイム・スリップ

現在私たちはAIやIoTなどの技術革新による第4次産業革命の世に生きている。初代の産業革命は18世紀中ごろ、蒸気機関の発明とともに英国で起きた。その歴史を今も誇りに思う英国には、当時をしのぶ遺構が各地に残り、後世にその姿を伝えている。ウェールズ南東部の町ブレナヴォンにも、そんな遺構の一つ「ブレナヴォン産業用地」(Blaenavon World Heritage Site)がある。産業遺産群として2000年にユネスコの世界遺産に指定された。約33平方キロメートルの広大な敷地内には、炭鉱遺産のビッグ・ピット(Big Pit)や製鉄所跡を中心に、石切場、鉄道、溶鉱炉、そして労働者の住宅や暮らしに必要なインフラなども残り、産業革命を支えた町をほぼ全て本来の姿で見ることができる。

ブレナヴォン製鉄所の溶鉱炉。垂直に削り取られた丘の側面に建てられたブレナヴォン製鉄所の溶鉱炉。垂直に削り取られた丘の側面に建てられた

ビッグ・ピットは1980年に閉山となった炭鉱を博物館に再生させたもので、地下90メートルの採掘場に降りるツアーが開催されている。ビジターは元炭鉱労働者の案内で、炭鉱労働の追体験ができるとあって人気が高い。ツアー中はかつて労働者たちが使ったものと同じヘルメットやベルトなどを装着し、シャフトで下降した後、地下採掘場の一部を50分ほどかけて歩く。ちなみに、スタジオジブリの長編アニメ「天空の城ラピュタ」の主人公パズーが働く炭鉱は、このビッグ・ピットをモデルにしているといううわさもある。

国立炭鉱博物館ビッグ・ピットの敷地内国立炭鉱博物館ビッグ・ピットの敷地内

一方、ブレナヴォン製鉄所跡には、溶鉱炉、鋳造所、鋳物工場、バランス・タワー、住居などがほぼ完全な形で残されている。当時の最新鋭の技術で造られた溶鉱炉は見応えも十分なので、ビッグ・ピットと併せてぜひ立ち寄りたい。また、敷地から国立公園を走る蒸気機関車は、英国の保存鉄道の中で最も高い標高を行くといわれており、ゆっくりと景色を楽しみたい方におすすめ(4~10月のみ営業)。

『嵐が丘』の故郷を走る蒸気機関車

産業革命をけん引した蒸気機関車は英国では今も特別な存在。上記のような保存鉄道が国内随所に残り、ボランティアたちによって大切に保存・運行されている。保存鉄道の走る路線は、停車駅もまた昔の面影を残した風情ある駅舎であることがほとんど。英北部のウェスト・ヨークシャーを走るキースリー&ワースヴァレー鉄道(The Keighley & Worth Valley Railway)もそんな蒸気機関車の一つだ。この路線は地元の繊維産業の裕福な工場所有者の出資によって1867年に開通。以来、急な勾配を大きな蒸気を吐きながら登る機関車は、近隣の谷間に反響する走行音とともにドラマチックな光景をもたらしている。かつて周辺にあった羊毛工場の多くは取り壊されたものの、機関車はこの地の産業遺産として生き残り、人々に美しい田園風景を見せてくれる。道中にはエミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』の舞台にもなったハワースの村も。石炭の匂いや白い煙にまみれ、機関車ならではの振動に身を任せながらかつての英国に思いをはせることができる旅は、今も人々を引き付けてやまない。

『嵐が丘』の舞台になったハワース駅に停車中の蒸気機関車『嵐が丘』の舞台になったハワース駅に停車中の蒸気機関車

Blaenavon World Heritage Site www.visitblaenavon.co.uk The Keighley & Worth Valley Railway https://kwvr.co.uk

おすすめの体験3選!

地球の歴史を体感したい 1.ジュラシック・コーストで化石掘り

恐竜が地上を歩いていた2億800万年前から1億4600万年前。そんな中生代ジュラ紀の地層が残る英南西部ドーセットの海岸線は、化石の宝庫として知られる。アンモナイトを中心に、大量の化石が素人でも簡単に発掘できるのが魅力で、週末は家族連れでにぎわう。現地スタッフが化石の探し方を教えてくれる1時間ほどのツアーもある。また、海岸に突き出たアーチ状の岩、ダードル・ドア(Durdle Door)は偶然にも水を飲む恐竜のような形をしており、人気観光スポットの一つだ。近くには「恐竜ランド化石博物館」(Dinosaurland Fossil Museum)があり、ここには1万6000点あまりの化石が展示されている。手作り感のある恐竜の実物大オブジェなども設置されており、大人から子どもまで楽しめる。暖かい季節に、世界自然遺産でもあるジュラシック・コーストで太古の昔に触れてみては。

Jurassic Coast Information Centre
http://jurassiccoast.org(化石ツアー) Dinosaurland Fossil Museum
www.dinosaurland.co.uk

ウイスキーの聖地と呼ばれる 2.アイラ島で蒸留所見学

スコットランドのアイラ島といえば、良質なモルト・ウイスキーの産地として日本でも知られた存在。島内には王室御用達のラフロイグ(Laphroaig)や1779年創業のボウモア(Bowmore)をはじめとした8カ所*の特徴ある蒸留所があり、それぞれが見学ツアーを実施している。ツアーでは蒸留所の中を歩きながら、ウイスキー造りや蒸留所の歴史などをスタッフが丁寧に案内してくれる。試飲ばかりではなく、床に大麦を広げて大麦を発芽(モルティング)させるフロア・モルティングや、ウイスキーをたるから空瓶に自分で詰めるハンドフィル・ボトルなど、蒸留所によってさまざまな体験ができる。また、8カ所の蒸留所を回るツアーなども開催されているが、季節さえ良ければ3日ほど滞在し、レンタルした自転車でのんびり回ることも可能だ。
*9カ所目のポート・エレンは2022年に再開としながら現時点では未定

Isle Islay Information
www.visitscotland.com/destinations-maps/isle-islay

自力で乱世を生き抜け 3.サバイバル・スキルを磨く

新型コロナの流行やウクライナ紛争、そして経済不況など、自分の命や生活を脅かすような事柄が続いたこともあり、多くの人が「自分の身は自分で守る」モードに。そんな気持ちをすくい上げてくれるのが、「ベア・グリルズ・サバイバル・アカデミー」(Bear Grylls Survival Academy)だ。同アカデミーは、元兵士で現在はTVやNetflixでも活躍する冒険家、ベア・グリルズが設立。サバイバルに必要なアウトドア・スキルを身に付けるためのコースが各種そろっている。スコットランドのハイランドで山を登り滝を下る、野生動物を捕獲して調理するなど、自らを究極まで追い込む厳しい5日間コースから、森林での方向感覚を養う、道具を作るなど、家族で楽しめる手軽な4時間コースまでとレベルもさまざま。スキルが身に付くだけではなく、自然の中で体を動かすことで心身ともにリフレッシュできる。

Bear Grylls Survival Academy
https://beargryllssurvivalacademy.com

ドイツのおすすめ旅行先

持続可能性を体感できる施設に泊まろう 環境大国ドイツのサステナブルな旅

まるごとサステナブルなリゾート地

旅行業界でも「サステナビリティ」がトレンドのドイツでは、それを実践するユニークな宿泊施設が増えている。まずは、ドイツ北西部ニーダーザクセン州ヒッツアッカーにある「デスティネイチャー」(destinature)をご紹介しよう。「ヴェルクハウス」(WERKHAUS)という接着剤やねじを使わずに組み立てられる家具のメーカーが、2020年に「持続可能な観光」というコンセプトで立ち上げたリゾート地だ。自然のど真ん中につくられたこの施設は、一つの村のようになっており、持続可能な運営を実践している。

ゴミを出さずに解体できるシンプルなつくりのコテージは「デスティネイチャー」の顔ゴミを出さずに解体できるシンプルなつくりのコテージは「デスティネイチャー」の顔

特に驚きなのは、ヴェルクハウスの家具と同じコンセプトで造られたコテージだ。シングルベッド・サイズの1人用コテージからリビングとバスルーム付きのファミリー・コテージまで、簡単に組み立てることができ、一切ゴミを出さずに解体が可能だという。施設内にはオーガニック・ビストロがあり、地元の材料を使った料理が楽しめる。また屋外には、自然を見ながら入れるバスタブとサウナがあり、お風呂好きにはたまらない。

さらに近郊には、ドイツで人気のサイクリング・ルートの一つ、全長1200キロにわたるエルベ川サイクリング・ロードがある。デスティネイチャーを拠点に日帰りのツアーに参加するのも良し、自転車旅行の途中に宿泊するのも良し、自分に合ったスタイルで訪れてみよう。

そんなデスティネイチャーは、経済的にも持続可能な形で運営されていることなどが評価され、2021年にドイツ観光賞の最優秀賞と観客賞をダブル受賞。EUから資金援助も受けており、パイロット・プロジェクトとしても注目されている。

ローカルに根ざす新しい時代のホテル

「ミヒェルベルガー・ホテル」(Michelberger Hotel)は、大都市ベルリンにある三ツ星ホテルだ。ベルリンでもとりわけヒップなフリードリヒスハイン地区に位置し、かつてオフィスとして使われていた建物を改装して造られた。インダストリアル・デザインにインスパイアされた23室の客室には、それぞれ「Cozy」や「Luxus」などの名前があり、ミニ・バーやサウナがついている部屋、プロジェクターで映画を楽しめる部屋など、滞在の目的や人数によって選ぶことができる。さらに大小五つのミーティング・ルームもあり、オルタナティブ・スペースとしても注目されている。

ミヒェルベルガー・ホテルの一室。「Band」と名付けられたファミリー・ルームミヒェルベルガー・ホテルの一室。「Band」と名付けられたファミリー・ルーム

さらにミヒェルベルガー・ホテルで特筆したいのは、ベルリン南部に自家農園を所有していること。ホテルのレストランでは、そこで採れる野菜やハーブをふんだんに使った料理がふるまわれる。また、ベルリンを美食の街とすることを目的とした共同体「ベルリン・フード・コレクティブ」(Berlin Food Kollektiv)のメンバーであり、飲食業におけるエコ・システムの確立に積極的に貢献。そんなミヒェルベルガー・ホテルは観光客をもてなすだけでなく、地元にもファンを持つ、これからの時代のホテルといえるだろう。

広々としたミヒェルベルガー・ホテルの中庭では食事が楽しめる広々としたミヒェルベルガー・ホテルの中庭では食事が楽しめる

destinature www.destinature.de Michelberger Hotel www.michelbergerhotel.com 「サステナブルな旅」におすすめのサイト
FEEL GOOD
www.germany.travel/de/feel-good/nachhaltigkeit サステナビリティを重視する宿泊施設を検索できるほか、移動で排出されるCO2を算出する計算機などがある

おすすめの体験3選!

国境の街バウツェンに住む少数民族 1.ソルブ人の生活文化を知る

ドイツといえば単一民族のようなイメージを持ちがちだが、実はいくつかの少数民族が暮らしている。その一つが、西スラブ系の少数民族であるソルブ人。ドレスデンから東へ約60キロ、チェコとポーランドの国境付近にあるバウツェンという街には多くのソルブ人が居住する。ソルブ語とドイツ語の二言語表記の標識や、ソルブ語の学校、ソルブ博物館、ソルブ語の劇場などがあり、その歴史や文化を維持し続けている。とりわけ有名なのが、イースターの時期に行われるシルクハットをかぶった男性たちによる騎馬行列(Osterreiten)や、精緻な装飾が施されたカラフルなイースター・エッグ。中世さながらの街並みの中に、土着的なスラブ文化とキリスト教文化が混ざり合っており、ドイツの多様な一面を垣間見ることができる。街にはソルブ料理を提供するレストランもあるので、ぜひ試してみて。

Stadt Bautzen
www.bautzen.de

サンティアゴへと通じる「ヤコブの道」 2.サイクリングで巡礼の旅

ローマ、エルサレムと並ぶキリスト教の最も重要な巡礼地であるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ。ドイツにもこの聖地へと通じる巡礼の道「ヤコブの道」(Jakobus Weg)があり、30以上のルートが国内に張り巡らされている。長距離を歩くのが苦手な人には、ドイツ南部のオーバーフランケン地方を自転車でめぐる「ヤコブの自転車巡礼道」(Jakobus Radpilgerweg)がおすすめ。ホーフからバイロイトを経てニュルンベルクへ、さらにアウグスブルク、ウルム、アイヒシュテットへと、自転車での巡礼を気軽に楽しもう。美しい自然の中を自転車で走ると、およそ2時間に一つの教会にたどり着けるようにルートが整備されており、教会を見学したり修道院に宿泊したりと、巡礼の醍醐味(だいごみ)を味わえる。おいしい南ドイツ料理レストランや疲れを癒やすサウナなど、各種アクティビティも充実。

Jakobus Radpilgerweg
https://erlebe.bayern/storys/radpilgern-jakobsweg

バーデン・ワインの名産地をめぐる 3.黒い森のワイン・ハイキング

南ドイツに広がる山岳地帯シュヴァルツヴァルト(黒い森)。さくらんぼケーキや黒い森のハム、カッコウ時計などで世界的にも有名だが、実はバーデン・ワインの名産地としても知られる。「ハイキングとワインどちらも両方楽しみたい!」というぜいたくな願いをかなえてくれるのが、約280キロのバーデンワイン街道に沿って歩くワイン・ハイキングだ。黒い森の美しい景色を楽しみつつ、途中の村でブドウ畑を眺めたり、ワイナリーを見学したりできるほか、ランチタイムにはそこで造られたワインや伝統料理が味わえる。この地域では1年中、ワイン・フェスティバルやテイスティングのイベントが開催されており、またバーデン・ワイン街道沿いには美食を味わえるこだわりのレストランも多い。テイスティングをしてお気に入りのワインを見つけたら、旅のお土産に購入しよう。

Badische Weinstraße
www.badische-weinstrasse.de

フランスのおすすめ旅行先

実際に作ってみる食体験 グルメ&農業大国を味わい尽くす旅

生物多様性の宝庫! 農場を見学

世界に冠たるフランス料理だが、農耕に適した土地が多いのも料理文化が発展した理由の一つだろう。2019年の農業総生産額はEU加盟国の中でフランスが最も高く、牛肉の生産量でもトップ、乳製品は第2位となっている。そんな農業大国で実際に農業に携わって本物のグルメを堪能しよう。スペインのカタルーニャ州と隣接するアリエージュ県にある「キュビエール農場」(La Ferme Cubières)では、70頭のヒツジやニワトリを飼育し、菜園や果樹園も所有。オーガニックの乳製品の製造や、ヒツジから刈りとった上質なウール、環境にも肌にもやさしいナチュラル・ソープなど、自然の素材を使った製品を、動物たちのリズムに合わせて生産している。それを一般の人にも体験してもらおうと、定期的にワークショップを開催。例えば、乳搾りから始まるフレッシュ・チーズ作りの全工程を学び、自分だけのチーズを味わうことができるワークショップなどがある。

キュビエール農場でゼロからチーズを作ってみようキュビエール農場でゼロからチーズを作ってみよう

のんびりファーム・ステイを体験

もっとゆっくり農場で過ごしたい人には「レ・ボヌール・ドゥ・ソフィー農場」(Les bonheurs de Sophie)がおすすめ。この農場はフランス東南に位置するオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏にあり、農場見学のほか、民宿も運営している。特にオーヴェルニュ地方はなだらかな起伏や小山の続く地形で、牧畜業が盛ん。良質な食品が生まれることで知られている。同農場で搾乳されたヤギとヒツジの乳で、チーズだけでなく、ヨーグルトやアイスクリームなども作られている。オーナーのモットーは「大量生産はしない、手に入るものを食べる、旬のものを食べる」とのこと。この農場でとれた旬ものをいただくレストランをはじめ、生態系について学ぶワーク・ショップ「fil du vivant」(命の糸)も開催。搾乳体験をはじめ、チーズ造りの見学、さらに農産物を味わったり、牛の群れの見張りをしたりと農家の生活を体験できる。ただし人数が限られているので、事前の予約が必要!

動物たちと触れ合えるレ・ボヌール・ドゥ・ソフィー農場の農泊が人気動物たちと触れ合えるレ・ボヌール・ドゥ・ソフィー農場の農泊が人気

農園で「自然」を味わう

フランス料理では古くから素材の臭みを抑え風味を良くするためにハーブが使われてきた。そんなハーブを栽培している農園「ナテュレルマン・サンプル」(Naturellement Simples)が、仏中南部のオクシタニー地域圏にある。植物学者・ハーブ専門家として経験を積んだ夫婦が経営する農園では、芳香植物や薬用植物を主とする500~600種類の植物が育ち、天然植物由来の製品も幅広く取りそろえている。4月から10月にかけて植物を使ったワークショップを開催。植物学をはじめ、有機菜園方法、野生料理など、食用の草花を使った料理を学べる。また薬草を摘み取り、それを使った治療法を伝授してもらったり、植物からインクを作り水彩画を描いたりと、発見と驚きに満ちた時間が過ごせるはず。

ナテュレルマン・サンプルでは食用の草花を使った料理を紹介ナテュレルマン・サンプルでは食用の草花を使った料理を紹介

La Ferme Cubières www.lafermecubieres.fr Ferme Les bonheurs de Sophie https://lagrangealudo.fr Naturellement Simples www.naturellementsimples.com

おすすめの体験3選!

ハエドゥイ族が生活した城塞都市 1.ビブラクテでガリア文化を体験

文化的な体験や自然を楽しむ旅を求める方にたまらないのが、城塞都市「ビブラクテ」(Bibracte)。ここはガリア人・ハエドゥイ族が住んでいた場所であり、ジュリアス・シーザーが『ガリア戦記』の仕上げを行ったのも、このビブラクテだといわれている。現在はフランスの偉大な景勝地として認定され、保護森林に囲まれたビブラクテの遺跡の見学や、ガリア人の日常生活を知ることができる博物館がある。2000年前に放棄されたビブラクテの街は、19世紀以来毎年行われている発掘調査によって、先人たちの暮らしが少しずつ明らかになっている。例えば、ビブラクテの食生活の一部を復原することに成功。博物館内にあるレストラン「ル・ショードロン」(Le Chaudron)では、当時の食事を再現したグルメを味わえる(要予約)。美術館のみ毎年冬は休館し、2023年は3月18日から再開する。

Bibracte
www.bibracte.fr

有名な塩はこうしてできる 2.ゲランドで塩田見学

世界中のシェフが愛用しているブルターニュ地方ゲランドの塩。1000年以上の歴史を誇る伝統手法で作られたこの自然塩は、精製塩とは異なり添加物は一切加えておらず、多くの栄養を含む。経験豊富な塩田職人が土地を整え、塩田内の水位を管理している。おすすめはその塩田を職人とともに巡るツアー。塩の形成、塩湿地のしくみや塩性湿地帯の植物について、科学的な実験を体験しつつゲランドの塩湿地についてを、楽しく理解することができる。ゲランドの塩は食塩と同じ使い方ができる細かい塩「セル・マリン・ムウル」(Sel marin moulu)、パスタをゆでるときやグリルのときに使う粗塩「グロ・セル」(Gros sel)、前菜や料理、デザートに使う「フルール・ド・セル」(Fleur de sel)の3種類ある。特に希少価値の高いフルール・ド・セルはお土産としても人気。

Terre de Sel
www.terredesel.com

豊かな自然を体感しよう 3.ワイン畑の風車に宿泊

「フランスの庭園」と呼ばれるロワール渓谷はユネスコの世界遺産に登録されている。フランス一長い川であるロワール川が流れているこの流域のブドウ畑は、土壌や気候条件によって味の違いが楽しめ、ワイン巡りにも最適だ。そのブドウ畑とロワール渓谷の真ん中にある古風な風車「ムーラン・ジェオン」(Moulin Géant)は、なんと宿泊可能。ブドウ畑に囲まれた風車からは、自然と静寂に包まれたロワール川とブドウ畑が織りなす特別な景色を満喫できる。このおしゃれなB&Bはロワール川の水源と河口を結ぶ長距離ハイキング・コース「GR3」やサイクリング・ロード沿いにあるので、ロワール川岸の探索と合わせて楽しめるのもうれしい。宿泊施設では自転車やカヌーの貸し出しも行っているので、手ぶらで訪れてもOK。オリジナルで非日常的な時間を楽しんでみては。

Moulin Géant
www.moulin-geant.com

特集 番外編:編集部スタッフおすすめ
本当に「行ってよかった」旅行先 >
最終更新 Mittwoch, 11 Januar 2023 18:35
 

<< 最初 < 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 > 最後 >>
14 / 117 ページ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


Nippon Express SWISS ドイツ・デュッセルドルフのオートジャパン 車のことなら任せて安心 習い事&スクールガイド

デザイン制作
ウェブ制作