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日本とドイツ ふたつの「戦後」日本とドイツ
ふたつの「戦後」
熊谷 徹

発行元:集英社新書

私たちは今、大きな時代の転換期を生きている。毎日のニュース報道から、時代の空気感から、そのことを確かに感じる。

ドイツには連日、万単位の難民がシリアなどから押し寄せて来ている。その先に待つのは、かつてベルリンの壁を越えて来た東ベルリンの市民を迎えたように、笑顔で難民を受け入れる大勢のドイツ市民。一方、日本では、国会議事堂前に怒れる市民が押し寄せ、デモ行動により政府に不満をぶつけている。まるで、戦後70周年やドイツ再統一から25周年という節目の年を待っていたかのように、世界各地で同時多発的に問題が表面化しているが、このことは何を意味しているのだろう。それを知るためのヒントとなるのが、この1冊。

在ドイツ25年のジャーナリストで、本誌に「独断時評」を連載している熊谷徹さんが、戦後70年を機に『日本とドイツ ふたつの「戦後」』という本を執筆した。日本とドイツは同じ敗戦国として、焼け野原から戦後の復興を果たした。その意味において、日独の類似性を指摘されることが多かったが、2015年現在、両国の立ち位置には大きな差ができていると著者は指摘する。

主に歴史認識問題、経済、エネルギー政策における日本とドイツの戦後の歩みを振り返る本書は、膨大なデータと記憶の蓄積だ。アウシュヴィッツの生還者の証言に呼応するような、歴代ドイツ首相の言葉は鋭く胸に響く。また、「若者も自国の歴史の流れから外に出ることはできない」と1989年、著者とのインタビューで語ったヴィリー・ブラント元首相の言葉の通り、「歴史リスク」に無頓着でいては、隣人と共に歩む未来は見えない。本書では、歴史を追いながら、一貫してそのベクトルは現在を、そして未来を指している。読み進めるほどに、私たちが生きる時代との繋がりを感じるのだ。

そして、「現実を直視せよ」「思考せよ」、 著者が発する警笛が行間から鳴り響く。アジアの、世界のリーダーとなるために、日 本はこのままではいけないという切実なまでの危機感が、多岐にわたる分野の問題意識を1つにまとめている。(高橋 萌)


 
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