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おうち時間がもっと盛り上がる! 本場ドイツのボードゲームで遊ぼう

ドイツは実は、ボードゲーム大国であることをご存知だろうか? 実際、ゲーム(Spiel)という言葉から、電子ゲームより「ボードゲーム」を思い浮かべるドイツ人も少なくない。平日の夜や週末に家族でプレイしたり、友人同士で「Spielabend(ゲームナイト)」を企画したりと、ドイツではボードゲームが余暇の過ごし方の一つとして定着している。そんなドイツボードゲームの魅力を徹底解剖。新たな趣味に、ボードゲームを始めてみるのはいかが?(Text:編集部)

参考:SPLENDID RESEARCH「Studie: Deutschland spielt Gesellschaftsspiele」、 staista「Ein Brettspiel kommt selten allein」、有田隆也(名古屋大学)「ドイツボードゲームの教育利用の試み–考える喜びを知り生きる力に結び付ける–」、ドイツ年間ゲーム大賞:www.spiel-des-jahres.de

ドイツボードゲームの9つの特徴

  • ❶ 対象は子どもから大人までと幅広い
  • ❷ 比較的ルールが単純で分かりやすい
  • ❸ プレイ時間は およそ15分~2時間程度
  • ❹ 言葉による説明ではなく、絵や図形が用いられている
  • ❺ 多様性に富んだゲームのテーマ。ただし戦争を題材にしたものは少ない
  • ❻ 運だけで勝てないし、戦略だけでも勝てない
  • ❼ 交渉や協力プレイなど、ほかのプレイヤーとのコミュニケーションが必要
  • ❽ ゲームのパーツに木が使われるなど、素材やデザインに配慮がある
  • ❾ 途中で誰かが脱落することは少なく、全員が最後まで楽しめる

ドイツはボードゲーム大国

ドイツは、毎年数百のボードゲームが新たに発売されている、言わずと知れたボードゲーム大国。街のおもちゃ屋やボードゲーム専門店はもちろん、書店やカフェなどでもボードゲームを見かけることが多い。また、親戚の集まりや友人たちとの飲み会で、誰かがボードゲームを引っ張り出してきて、みんなで盛り上がることもしばしばだ。

実際、SPLENDID RESEARCHによる2017年の市場調査では、18~69歳の回答者1024人のうち、29%のドイツ人が「頻繁に」、33%が「たまに」ボードゲームで遊ぶと回答。世代別に見ると、最も頻繁にボードゲームで遊んでいるのは30~39歳(38%)。60~69歳の回答者でも、5人に1人がよくプレイすると答えた。さらに興味深いのは、回答者のうち39%が、これまでにボードゲームに白熱しすぎてわれを失ったことがあると告白。ドイツ人のボードゲームへの熱量が伝わってくる。

また、ボードゲームは家族間のコミュニケーション手段としても人気だ。親がボードゲームにかけるお金は、1年あたり平均64ユーロで、これはおよそ2~3個のボードゲームを買える金額。2017年にYouGovが行った調査では、2000人のドイツ人を対象に「自分の家(世帯)にいくつボードゲームがあるか」という質問がされ、31%が「1~5個」、29%が「6~10個」と回答。「1個も持っていない」という世帯はわずか2%で、ボードゲーム文化がいかに生活の中に浸透しているかが明らかになった。しかし、今日のようなドイツのボードゲーム文化が普及したのは1970年代ごろからと言われ、その歴史はまだ比較的浅い。

各家庭のボードゲームの保持数

批評から生まれたゲーム大賞

ドイツに限らず「ボードゲームの歴史」という点から見れば、最も古いものは紀元前3500年ころのエジプトで遊ばれていた「セネト」というゲームで、マス目のある盤上で2人のプレイヤーがレースを行うものだった。それらは世界各地に広がって独自の発展を遂げ、紀元前700年ごろには中国で囲碁が誕生。6世紀にインドで生まれたチャトランガは西洋でチェス、日本で将棋へと発展した。7世紀ごろの日本には、すでに「すごろく」もあったという。ボードゲームで扱われるテーマは時代とともに変化していき、20世紀ごろからは、ボード上で軍事作戦や不動産経営などを行うシミュレーションゲームも登場した。

ドイツでは、新聞やラジオなどで本や映画が盛んに批評されているのと同様に、ボードゲームについての批評もあったそう。その延長として1979年に設立された「ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)」が、その後のドイツボードゲームの発展に大きく寄与した。この賞は、評論家やジャーナリストなどの専門家が、過去1年間に発売された中から優秀なゲームを選ぶもので、大賞を受賞したゲームは、ライセンス料を支払うことで「年間ゲーム大賞」のロゴをパッケージに印刷する権利が与えられる。中立の立場を守るためにスポンサーなどは一切付けず、ロゴのライセンス料のみで運営されているため、ゲーム制作者・購入者からの信頼も厚い。この賞の存在によって、ドイツの玩具業界は質の高いボードゲームをつくることに力を入れ、「ドイツボードゲーム」という独自のジャンルを発展させた。

ゲーム大賞2019年のドイツ年間ゲーム大賞を受賞した「ジャスト・ワン」制作者のザウター氏(左)と、グリュッタース文化メディア担当大臣(右)

「考える楽しさ」を味わおう

ドイツのボードゲームは非常に多様性に富んでいるが、そのどれにも共通するのが、「人が生きること」や「世の中がどのように動いているか」について、ボードゲームが扱う題材やメカニズムを通して疑似体験できることだろう。プレイヤーたちは、与えられたルールの中で競争や交渉、協力、時にはだまし合いなど、さまざまなコミュニケーションで互いに影響し合い、ストーリーを展開させる。ゲームとして楽しみつつ、そのなかで行われる思考やコミュニケーションは、現実社会で私たちが行っているものに限りなく近いのだ。

一方でドイツボードゲームには、戦争を題材にしたものはほとんどなく、直接的にほかのプレイヤーを攻撃したり、脱落させたりするルールも少ない。これは、ドイツが2度の世界大戦で敗戦国となったことや、ナチスの過去との決別とも関係があると言われ、1950年代にアメリカでシミュレーション・ウォーゲームが誕生したときも、ドイツでの人気は高くなかった。ゲームのテーマや目的を「戦争」や「争いごと」以・・外にするという暗黙の了解もまた、誰もが楽しめるような工夫あふれるゲームづくりへとつながったのだ。

ドイツボードゲームはもともとコンピューターとの相性が良く、最近ではオンライン化も進められたことで、より幅広いファンを獲得しつつある。しかしドイツボードゲームの醍醐味は、人と人とが対面してコミュニケーションを行い、「考えること」をともに楽しむことにこそある。普段の生活が慌ただしく、パソコンや携帯電話の画面を通したコミュニケーションが増えている私たちに、ドイツボードゲームは、大切な人との心温まる豊かな時間を提供してくれるだろう。

子どもから大人まで夢中 おすすめドイツボードゲーム6選

遊びを通して想像力や記憶力、コミュニケーション力など、さまざまなスキルを鍛えられるボードゲーム。人と人が1つのテーブルを囲み、面と向かって遊べるので、子どもの教育にはもちろんのこと、家族や友人との絆を深める役割も。今回は、家族みんなで遊べるものから、友人たちとわいわい盛り上がれるものまで、ドイツでも特に人気のボードゲームを厳選してご紹介しよう。

買う前にここをチェック! ❶対象年齢 ❷プレイ人数 ❸プレイ時間

幻想的な雰囲気に包まれて Waldschatten Spiel 森の影あそび

Waldschatten Spiel
Waldschatten Spiel

本物のキャンドルに火を灯して暗い森の中でかくれんぼをする、幻想的なクリスマスの雰囲気にぴったりなゲーム。オニを1人決め、残りはこびとになって木の陰に隠れる。キャンドルに火をつけて部屋を暗くしたら、オニはサイコロを振ってキャンドルを動かし、こびとを探す。こびとたちは影の中を移動し、全員同じ木の下に集まったらこびとチームの勝ち。オニがこびと全員を照らして動けなくすれば、オニの勝ちだ。

おすすめポイント
まるで本当に森の中にいるようなワクワク感を味わいながら、子どもたちは、風や光など、自然への好奇心を掻き立てられる。キャンドルで火傷しないよう、オニ役は大人がやるのが◎。

ゲームデザイナー:Walter Kraul
製作年:1985年
対象年齢:5歳以上(表面)、7歳以上(裏面)
プレイ人数:2~8人
プレイ時間:30分
https://spielzeug-kraul.de

かわいいオバケに惑わされる Geister Treppe オバケの階段

Geister Treppe

子どもたちがオバケを驚かそうと廃墟の階段を上っていくが、逆に魔法でオバケにされてしまうという、愉快なストーリーのすごろく。サイコロを振ってオバケの目が出たら、誰かのコマに白いオバケを被せる。そのうち全員がオバケになり、ゲームが進むにつれて、どれが自分のコマだったか記憶があやふやに。誰か1人が階段を上りきったところでゲーム終了。オバケを外して現れた、元のコマの持ち主が優勝だ。

おすすめポイント
自分のコマだと思ってゴールしても、オバケの中身を覗いてみたら、違う人のコマ……なんてことも。シンプルなルールながら、記憶力、観察力、そして運の良さが必要で、ゴールするまで勝敗が分からないのもポイント。

ゲームデザイナー:Michelle Schanen
製作年:2003年
対象年齢:4歳以上
プレイ人数:2~4人
プレイ時間:15~30分
https://www.dreimagier.de

ズルをしないと勝てない?! Mogel Motte いかさまゴキブリ

Mogel Motte

ゴキブリやクモ、蚊、アリなどのムシが描かれた8種類のカードを順番に出していき、手札を最初に無くした人が勝ち、という単純なルールのカードゲーム。しかし、唯一「蛾のカード」は捨てることも誰かに渡すこともできない。そのためゲームであがるには、警備員役のプレイヤー(持ち回り)にばれないようにカードを床に落としたり、服の中に隠したりと、いかさまをしなければならないのだ。

おすすめポイント
このゲームの最大の特徴は、一般のゲームでは絶対にしてはいけないことを、ルールとして行えるということ。ズルをすることに慣れていないと、プレイ中はドキドキしっぱなし!

ゲームデザイナー:Emely Brand, Lukas Brand
製作年:2011年
対象年齢:7歳以上
プレイ人数:3~5人
プレイ時間:15~25分
https://www.dreimagier.de

経営を通して人生を体験する AGRICOLA アグリコラ

AGRICOLA

17世紀のヨーロッパを舞台に、プレイヤーたちは農民として自分の農場を経営。資材を集めて家を建てる、家族を増やす、畑を耕すなどして、農場を豊かにしていく。だが、家族が増えるとその分多くの食料が必要になったり、食料の確保ばかりしていると農場発展が進まなかったりと、現実の経済活動のようなジレンマに悩まされる。最終的に、最もバランスがとれた農場をつくったプレイヤーが勝利する。

おすすめポイント
要素が多く、やや複雑な中上級者向けゲームだが、慣れてくるとどんどん知的興奮が高まってくると評判だ。農場経営という架空の設定を通して、実は経営センスが問われている?! 初めての人は、経験者とプレイするのがおすすめ。

ゲームデザイナー:Uwe Rosenberg
製作年:2007年
対象年齢:12歳以上
プレイ人数:1~5人
プレイ時間:30〜150分
https://lookout-spiele.de(ドイツ語版)
http://hobbyjapan.games(日本語版)

大人数にぴったりのパーティーゲーム Just One ジャスト・ワン

Just One

2019年の「ドイツ年間ゲーム大賞」を受賞した、協力型の言葉当てクイズゲーム。各プレイヤーの手元にフリップとペンを置き、回答者を1人決めてお題カードを選択。ほかのプレイヤーはフリップにヒントとなる言葉を書くが、ほかの人と同じ言葉を書いてしまうとヒントを発表できなくなる。回答者は発表されたヒントから連想して言葉を当てる。プレイヤー間の勝敗が無く、みんなでハイスコアを目指すのが特徴だ。

おすすめポイント
ほかの人と同じヒントを書いてはいけないため、誰とも被らないようなクリエイティブな言葉のチョイスを考えるのが面白い。参加人数が多いほど「ヒントの被り」が起こりやすいので、大人数でわいわい楽しもう。

ゲームデザイナー:Ludovic Roudy, Bruno Sautter
製作年:2018年
対象年齢:8歳以上
プレイ人数:3~7人
プレイ時間:20分
https://asmodee.de

美しいタイルを敷き詰める AZUL アズール

AZUL

プレイヤーがタイル職人として王宮の壁をきれいに装飾するという、華やかで美しいゲーム。テーブル中央のタイル工房から交代でタイルを選び取り、自分の図案ボードに並べていく。工房からタイルがすべて無くなったら、ボードの右側にある王宮の壁にタイルを貼る。これを数ラウンド繰り返し、誰かが横一列にタイルを5枚並べたところでゲーム終了。タイルを貼った個数やデザインによって得点が加算される。

おすすめポイント
ルールが簡単なため初心者でも気軽に遊べる一方、ほかのプレイヤーがどのタイルを欲しがっているかを推測し、時には高度な駆け引きも必要。ペルシャ風のカラフルなタイルが見た目にも楽しい、奥の深いボードゲームだ。

ゲームデザイナー:Michael Kiesling
製作年:2017年
対象年齢:8歳以上
プレイ人数:2~4人
プレイ時間:30〜 45分
https://www.planbgames.com

AZUL

 
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