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ドイツと自転車の関係を深掘り
ドイツのサイクリング小史

整備されたサイクリングルートや交通ルール、サイクリストが安心して旅行できるサービス……ドイツが「自転車天国」と呼ばれるのには、古くからの自転車文化や歴史、環境への意識など、実はちょっぴり深い理由がある。ここでは、そんなドイツと自転車の関係を紐解いてみよう。

参考:ADFC(ドイツ自転車連盟)ホームページ、自治体国際化協会ロンドン事務所「ドイツ;国家レベルでの自転車施策への取り組み」、Telescope Magazine「自転車重視を鮮明にするEU」、www.muenster.de、radfahren.de「Dies sind die fahrradfreundlichsten Städte in Deutschland!」

自転車を発明したのはドイツ人?!

自転車が誕生したのは、1817年のドイツ。産業革命による工業化と都市化が進み、社会構造に変革が起こっていた時代だ。蒸気機関車の発明から40年が経っていたが、市民の日常の移動手段としてはまだまだ高価で、馬車などが主な交通・運輸手段だった。

そんななか、バーデン=ヴュルテンベルク州で森の管理をしていた森林官のカール・フォン・ドライス男爵が、自転車の原型となる「ドライジーネ」を発明。木製の二輪車でペダルは付いておらず、地面を蹴って走る仕組みだった。

サイクリング生活のすすめ世界初の自転車である「ドライジーネ」。発明者のドライス男爵は、ほかにも高速タイプライターなどのさまざまな発明品で知られる。

ドライジーネが完成すると、ドライス男爵は早速、マンハイムにある自宅から7キロ南東にあるライナウ地区までドライジーネを試走。平均時速は15キロ程度で、なんと駅馬車よりも速かったという。ドライス男爵はドライジーネの特許を取得し、その後、瞬く間に欧州で普及していった。そしてフランスや英国でも自転車の改良が重ねられ、19世紀後半には工場での大量生産も始まった。

戦後ドイツの復興と自転車

1950〜60年代の戦後復興期、ドイツでは急速に自動車が普及していったが、それに伴う騒音や振動、環境への負荷が問題となっていた。さらに人々が住環境の向上や健康面にも配慮するようになり、自転車がもたらすプラスの側面が注目されることに。

1964年の東京オリンピック1964年の東京オリンピックに、東西分断中のドイツは「東西統一ドイツ」チームとして参加。男子4000m団体追い抜きでは、見事金メダルに輝いた

そのような背景から、ドイツ国内でも1970年代後半から長距離自転車道の整備が開始。1990年代には、そのほとんどが完成したという。また欧州連合(EU)では「自由な移動の保証」というEUの理念に基づき、人々の車以外の交通手段も整える必要があった。そこでEUは、自転車を「移動の自由」を担う存在としてクローズアップし、国を超えた自転車道ネットワークを次々と整備していったのだ。

ドイツではさらに、国家計画として2002年から「全国自転車計画」、2013年からは「全国自転車計画2020年」を実施。自転車道の整備や交通インフラの向上、自転車に関する研究などを支援し、利用促進を行っている。近年、ドイツでは「自転車ツーリズム」が重要な観光形態の一つとなり、世界中の人々がサイクリングを目的にドイツを訪れている。

自転車に優しい街はサステナブルな街

フライブルクやミュンスターといったドイツのいくつかの街は、近年では持続可能な社会を実現するための街づくりを推進する環境都市として注目されている。これらの街に共通して言えるのが、快適に自転車生活を送ることができる「自転車に優しい街」でもあるということだ。ADFCが2年ごとに発表する「自転車に優しい街」ランキングでも、これらの都市は上位の常連となっている。

ミュンスター市内ミュンスター市内中心部には車で入ることができなくなっており、徒歩か自転車の方が生活しやすいという

特にミュンスターは、自転車交通比率が39%と非常に高く、これは同規模の都市の約3倍にも上る。人口よりも自転車数の方が多いともいわれ、中央駅西口にある3000台以上を収容できるガラス張りの駐輪場は街のシンボル的存在だ。また旧市街を囲む城壁跡地に作られた自転車専用道路は、どこからでも市内中心部にアクセスが可能。さらに高速道路と主要道路以外での自動車制限速度を時速30キロに設定するなど、「自転車や徒歩の方が移動しやすい」街づくりを通して、環境に配慮した都市を実現してきた。新型コロナウイルスの感染拡大によって生活空間や街づくりが見直される今、「自転車に優しい街」から学べることは多いだろう。

 
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