ジャパンダイジェスト

ドイツのポイントカード ドイツのポイントカード事情
15周年を迎えた
PAYBACKを徹底解剖

日本と比較すると、遅れを取っているように感じていたドイツのポイントカード文化。お財布の中がすっきりして、これもまた良し……なんて思っていたが、年々カードの枚数は増える一方だ。Big Data時代の到来とともに存在感を増し、今ドイツで一番人気のポイントカードに成長したのがPAYBACK。

今特集では、今年15周年を迎えたPAYBACKの人気の秘密と、一見デメリットがなさそうなポイントカードの仕組みに注目する。タダより高いものはない?! ポイントカード・ビジネスの仕組みを知った上でより良く使いこなそう。 (編集部:高橋 萌)

財布の中のポイントカードをお見せします!

編集部 K
PAYBACK歴:約12年
現在のポイント数:約1万ポイント

「財布に入っている唯一のポイントカード。PAYBACKカードは利用歴12年で、貯まったポイントの総計は3万ポイントくらい。VISAカード付きも作りました!」

編集部 T
PAYBACK歴:約2年
現在のポイント数:約5000ポイント

「1枚のカードにポイントが集中するのがPAYBACKの魅力。何枚ものカードを使いこなせない、がさつな自分には向いていると思う」

編集部 Y
PAYBACK歴:約3カ月
現在のポイント数:148ポイント

「日本の習慣が抜けないのか、ポイントカードがあると聞くとついもらってしまう。ドイツのポイントカードの良いところは有効期限がないこと。また、こちらから言わないとくれない場合もある」

4人で会社をスタートした PAYBACKとは?

PAYBACKは、アメリカン・エクスプレス・グループ傘下にあるロイヤルティー・パートナー社が2000年に開始したサービス。生みの親はアレクサンダー・リットヴェーガーで、「ロード・オブ・ザ・ディスカウント・ポイント(Herr der Rabattpunkte)」の異名を持つ。彼が欧州最大の経営戦略コンサルティング会社ローランド・ベルガーに勤めていた頃に、航空大手ルフトハンザ社のマイレージプログラム「Miles & More」の立ち上げに携わったことからヒントを得て、PAYBACKのアイデアが形になった。このビジネス・プランに魅了されたルフトハンザ社やローランド・ベルガー社などからの勧めと、家電量販店や百貨店を所有するメトロ社からの出資を得て、1998年、ロイヤルティー・パートナー社は設立されたのだ。

設立当初の従業員は、社長であるリットヴェーガーを含め、たったの4人。それが15年で600人となり、ドイツのほか、ポーランド(2009)、インド(2011)、メキシコ(2012)、イタリア(2014)にも進出して、現在はドイツ国内に2600万人、全世界で7500万人のカード利用者を抱えるまでに成長した。

経済リサーチ会社CRF研究所が認定する優良企業アワードを受賞
経済リサーチ会社CRF研究所が認定する優良企業アワードを受賞

現在約620社
魅力的なパートナー企業を次々に獲得!

1998年に会社を設立したリットヴェーガーの最初のミッションは、魅力的な企業と手を組むこと。PAYBACKカードがあらゆる消費者層に普及し、毎日の買い物で使われるようにならなければ、サービスは成り立たない。一番最初にパートナー企業に名を連ねたのが、スーパーマーケットreal,-、ドラッグストアdm、デパートGaleria Kaufhof、眼鏡販売大手Apollo-Optikの4社。ドイツ全土に支店を持つこれら小売大手の信頼感を追い風に、2000年、PAYBACKはサービスを本格的にスタートさせた。その後、キッチン用品の老舗WMF、オンラインショップebayやitunes、スーパーマーケットREWEなど、ドイツに暮らす人なら誰もが知る大企業がこぞってPAYBACKに加盟し、現在のパートナー企業数は620社以上にまで膨れ上がっている。その結果、1日のPAYBACK利用数は300万回、つまり1秒に36回のペースでカードがレジに通されていると同社は発表している(2014年統計)。

パートナー企業

PAYBACKポイントとは?
ポイントカード・ビジネスの仕組み

„Haben Sie eine PAYBACK-Karte?“(PAYBACKカードをお持ちですか?)という言葉を、もう耳にたこができるほど聞いたとうんざり顔の人もいれば、ポイント集めに熱中する人もいる。そもそもは、お得意さんを大事にするという発想から、紙のカードにスタンプが貯まったらプレゼントを提供するというアナログ式と根底にある思想は同じ。しかし、より広範囲に分散する不特定多数の顧客にアピールできるという点では企業側にメリットがある。リットヴェーガーがルフトハンザでノウハウを得たように、航空業界のマイレージプログラムから端を発した「ロイヤルティー・マーケティング」と呼ばれるこの手法は、ドイツのPAYBACK、日本のTカードなど、今や世界中で成功を収めている。

顧客の利用状況に応じてポイントを発行し、それを蓄積。顧客は好きなタイミングで商品券や希望の商品とポイントを交換できるシステム。この、買い物をすればするほどポイントが貯まるというシステムは、消費者からすると、お店に行っただけでおまけをもらった気分になり、大きなメリットを感じる。筆者の消費行動にも現れているが、例えばドラッグストアROSSMANNよりはdm、スーパーマーケットならKaisersよりREWEと、同じ買い物をするならPAYBACKに加盟している店につい足が向かってしまう。

嬉しい特典と引き換えに
消費者が提供している情報とは?

情報PAYBACKにパートナー企業として加盟するメリットは、顧客の囲い込みや満足度の向上のみにとどまらない。大規模なPAYBACKシステムが収集する情報にこそ、本当の価値があるのだ。具体的に、PAYBACKを利用する際に、どのような情報が店舗からPAYBACKに送られるかを見てみよう。

カード所有者が何をどれだけ購入したのか、その内訳についてはカードを利用した店舗のみ知ることができる。そして、合計金額の内訳について、加盟店舗はPAYBACKと情報交換をしないことになっており、もちろん、PAYBACKは蓄積した情報を第三者に売り渡さないとも、規約に明記してある。どこで・いつ・いくら分の買い物をしたかという範囲を超え、プライバシーの侵害にならないよう、ドイツの消費者センターは常に目を光らせている。PAYBACKの規約の中には、消費者団体の訴えにより追記されたものもある。

こうしてPAYBACKは、顧客情報と購買情報とを結び付け、消費者の行動を分析し、企業の販売促進や広告戦略、商品開発に協力している。つまり、我々消費者は、PAYBACKポイントと引き換えに個人情報を売り渡していることになる。その情報を、それくらいなら問題ないと納得できるかどうかが、PAYBACKサービスを利用する際の判断基準となる。

申し込みから利用方法
ポイントを貯めるコツまで

1

PAYBACKのメリットとデメリットを踏まえ、申し込む決意をしたら、下記の方法でカードを注文する。

● パートナーに加盟している企業の店舗、またはオンラインショップから申し込む
● PAYBACKのカード注文サイト www.payback.de/pb/id/21334/ から申し込む

カードは下記の3種類から選べる

PAYBACK KartePAYBACK Karte

パートナー企業での購入金額に応じてポイントが貯まる。
1ユーロ=1ポイント、2ユーロ=1ポイントなど、パートナー企業がそれぞれポイントの加算条件を決めている
※キーホルダー型のPAYBACK Mini-Karteも同条件


PAYBACK Visa KartePAYBACK Visa Karte
  • パートナー企業での購入金額に応じてポイントが貯まる
  • カードでの支払いの際、4ユーロにつき1ポイントが貯まる
  • お気に入りのパートナー企業を1つ選べ、ポイントが2倍に
  • 初年度の年会費無料(翌年から年25ユーロ)など

PAYBACK American Express® KartePAYBACK American Express® Karte
  • パートナー企業での購入金額に応じてポイントが貯まる
  • カードでの支払いの際、2ユーロにつき1ポイントが貯まる
  • 年会費無料
  • ショッピング保険のカバーあり、など

2

パートナー加盟店で買い物をし、レジでカードを提示。ポイントが貯まる。

※Visa、American Expressカードの場合は加盟店以外の買い物も有効
3

貯まったポイントを使う。使い方はいろいろ。

● PAYBACK公式ウェブサイト www.payback.de の「Punkte Einlösen」をクリック。オンラインカタログから商品を選び、希望の商品を注文する

PAYBACK公式ウェブサイト

● 200ポイント以上貯まったら、100ポイント=1ユーロの割引券に換金
※対応店舗: real,-、GALERIA Kaufhof、dm、REWE、Alnatura

店舗で割引券に換金

● ルフトハンザ航空のMiles & Moreで、1ポイント=1マイルに変換

ボランティア団体などへ寄付をする
www.payback.de/pb/bpc/start/id/109112/

クーポンを利用してポイントを倍に!

購入金額に対するポイントが数倍になったり、対象商品を購入することでポイントが贈呈されるクーポンを利用すると、ポイントが効率良く貯まる。自宅に送られてくるダイレクト・メールに同封された券、またはオンライン上でeCouponを有効にして利用しよう。

ドイツで一番人気のPAYBACKカード

調査会社エムニドの発表によると、ドイツ在住者の財布に入っているカードの種類で多いのは、1位が銀行のECカード、2位がクレジットカード、続く3位がPAYBACKカードだった。ポイントカードの満足度ランキングでも、総合1位となっている。それほど生活の中に浸透し、信頼を得ているサービスと言える。

PAYBACKの魅力は何だろう。加盟店舗数の多さ、ポイントと交換できる魅力的な商品、クーポンを使ってゲーム感覚でどんどんポイントを増やしていく快感……。実体を持たないポイントが価値を持ち、実像の見えにくかった消費者の姿が情報の蓄積を通して浮かび上がってくる。膨大なデータを収集し続けるPAYBACKは、我々の生活をより豊かなものにしてくれるのか、はたまた我々は情報に踊らされてしまうのか。Big Data時代の個人情報に価値を見出し、ビジネスの資源とするPAYBACKをはじめとするポイントカード・ビジネスの行く末はいかに。便利なだけで終わらない、この種のビジネスとの付き合い方は、消費者の課題でもある。

ドイツの財布の中のカード


ドイツのポイントカード・顧客満足度ランキング

家計の出費が27%アップ!
1位 Payback Karte 75.1
2位 Adler Kundenkarte 74.9
3位 Esprit Friends Card 74.6
4位 DeutschlandCard 73.4
5位 Tchibo Privatcard 72.7
6位 Ikea Family Card 71.4
7位 Karstadt Kundenkarte 71.0
8位 Miles & More Karte 70.1
9位 Shell ClubSmart Karte 68.8
その他 73.2
 
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