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2008年五輪開催記念 金メダル候補にインタビュー

今年は北京五輪の年。そこで新春第1号では、ドイツ、フランス、英国に縁の深いスポーツのアスリートたちに聞いた、五輪への意気込みをお届けする。ドイツからは、昨年の地元開催で沸いた世界選手権で優勝し、北京五輪の金メダルに最も近い競技・ハンドボール。ドイツ代表チームでゴールキーパーを務めるへニング・フリッツ選手に、ハンドボールの魅力を語ってもらった。

Henning Fritzヘニング・フリッツさん
Henning Fritz
1974年9月21日、旧東ドイツ、ザクセン=アンハルト州の州都マグデブルク生まれ。188センチ、89キロ。愛称はフリッツェ(Fritze)。国内プロ・リーグ、ブンデスリーガ1部「ライン・ネッカー・レーヴェン(Rhein-Necker Löwen)」のゴールキーパーで、ドイツ代表チームのメンバー。キーパーとしては小柄な体格であるにもかかわらず、世界で最も優れた選手の1人に数えられる。ブンデスリーガ1部でのキャリアをマグデブルクでスタートし、2001年には「SCマグデブルク」でリーグ優勝、「THWキール」に移籍後も4回のリーグ優勝に貢献した。妻バベットさんとの間に2人の娘がいる。www.henningfritz.de

ハンドボールの魅力とは、電気による刺激のようなもの

昨年、自国で開催された世界選手権で優勝されました。優勝の瞬間はどのようなお気持ちでしたか。

とても幸せな気分でしたね。これまでのキャリアの中で、五輪準優勝や欧州チャンピオン、国内チャンピオンを始め、チームとして、個人としても数々のタイトルを手にしてきましたが、国民みんなが注目する自国開催の世界選手権で優勝タイトルを獲得するというのは、特別の感慨がありました。

ファンとともに勝利を喜ぶ
試合終了のホイッスルの後、ファンとともに勝利を喜ぶ
Fotos: © Hartmut Beyer

ハンドボールを始められたきっかけは何だったのでしょうか。

学校の授業でハンドボールをやったのがそもそものきっかけです。友人に誘われたのですが、フィールドでプレーをしたがる子どもばかりで、だれもゴールに立とうとしませんでした。でも相手チームが早く試合をしようと待っていたので、自らを奮い立たせてゴールキーパーをやることにしたんです。8歳のときでした。

ご家族でハンドボールをやる方はいらっしゃいますか。

いません。父が水球の旧東ドイツ・リーグ「ディナモ・マグデブルク」でプレーしていたくらい両親ともにスポーツ好きなのですが、家族の中でハンドボールをやったのは私が初めてです。

ハンドボールのおもしろさとは何でしょうか。

身体能力を最大限に追求する点ですね。それが達成できて勝ったときには、冷たい身体に熱いシャワーを浴びたような感じがするんです。シュートを立て続けに止めたときとか、チーム一丸となって勝利を挙げたときや観客が盛り上がっているときにも、アドレナリンが放出されますね。

ハンドボールは1917年にベルリンで初めて、ドイツ人のマックス・ハイザーによってチームが結成されました。その歴史についてはどうお考えですか。

ハンドボールはドイツでは昔からサッカーに次いで、またバレーボールと並んで好まれてきたボール競技です。最初は屋外においてサッカーコートの広さでプレーされていましたが、その後よりスピーディーで攻撃的、選手と観客がともに盛り上がる屋内での試合がメインになるにつれ、さらに重要な意味を持つようになりました。でも昨年の世界選手権で優勝したことが、ドイツでハンドボールへの関心を一挙に高めたのは事実ですね。


時速100キロのシュートを恐れない図太い神経が必要

今シーズンより、ブンデスリーガ1部の「THWキール」からマンハイムの「ライン・ネッカー・レーヴェン」に移籍されました。プロ選手の日常とはどのようなものですか。

多くの人が、試合がないときはトレーニングだけでのんびりやっていると思っているようです。でも実際は、日常生活もスポーツ一色ですよ。毎日の食事から始まり、取材への対応、理学療法士の治療、チームのさまざまな予定、そして日々のトレーニング。たいてい1日2回練習しますが、まれに1回だけのときもありますね。対戦相手をビデオで分析することも、大事なトレーニングの一つです。

ファン
昨年の世界選手権準決勝で、フランスに勝利し
歓喜する1万6000人のファン(ケルンアレーナにて)
Fotos: © Hartmut Beyer

シーズン中はまさに休みなし、といったところでしょうか。

そうですね。試合はたいてい週1回のペースで行われますが、ときには週2回になることもあります。ただよく忘れられるのは、移動時間ですね。国内のブンデスリーガで試合をしながら国内外のチャンピオンシップに参戦している場合、相手のホームグラウンド(アウェー)への移動スケジュールは非常にタイトなものになります。例えば、飛行場からさらにバスで何時間もかけて移動しなければならないことがよくありますよ。そしてやっと到着、または帰着すると、すぐに練習ですからね。スケジュールはびっしり詰まっていて、私のようにドイツ代表チームでプレーしていると、さらに忙しくなります。

試合後はどのように過ごされますか。勝利したときと負けたときでは過ごし方が違うように思うのですが。

勝利とひと言で言っても、苦しんで勝った試合や、勝って当然と思われるものもあります。どちらも満足して更衣室に戻ることに変わりはありませんが、苦しんで勝利したときは、もう一度感情を爆発させて、チームメートとふざけたりビールで祝杯をあげたりしますね。

もちろん、負けたときは違いますよ。試合内容について監督から厳しく、ときには穏やかに批判されます。あと、対戦相手にもよりますね。苦い思いを抱えざるを得ないか、負けをいさぎよく認められるか……。

ゴールキーパーは、どのような点が他のポジションと異なりますか。

時速100キロで放たれたシュートが体に当たっても、痛みを恐れないことが第一ですね。体格や柔軟性、敏しょう性、そして瞬発力といった身体面のほかに、確固たるパーソナリティーと図太い神経も求められます。キーパーはディフェンスの指揮者であり、重要な役割を持っているのです。

優れたハンドボール選手の最も重要な条件とは?

柔軟な体といった身体能力面のほかに、当然、素早い反応が求められます。キーパーは一人でゴールを守っていますが、それでもチームワークはもちろん、対戦相手のゲー ムの組み立て方を覚えておく記憶力も必要です。例えば、どのような位置からシュートを打ってくるかを把握しているか、とかね。


勝利への飽くなき執着心が五輪優勝への絶対条件

今年は北京で五輪が開かれます。代表チームの一員として参加されるお気持ちはいかがですか。

うれしいですね。五輪に再び参加できれば、私にとって4 度目になります。想像を絶するほど素晴らしいことだと思うよ!また、自分の国を代表し、トップ選手の一員として参加できることに誇りも感じています。

1万人のファンに感謝の想いを伝える
1万人のファンに感謝の想いを伝える
Fotos: © Hartmut Beyer

世界選手権と五輪とでは何か違いはありますか。

ありません。スポーツ的な価値は違うものの、国を代表する選手としてプレーするという気持ちはまったく同じです。

ドイツ代表チームが北京五輪で優勝するためには、何が必要だとお考えですか。

世界選手権のときと同じことが言えると思います。団結力を示し、勝利への飽くなき執着心によって、一つひとつの試合で自分の持つ能力と潜在能力を発揮させること。もちろん、世界選手権のときのようなホームでの熱烈な応援がないことは、とても大きな痛手ですが……。

ドイツは優勝候補の一角に挙げられています。ライバルはどこになると思われますか。

北京五輪に参加する全チームがライバルになる可能性を秘めています。もちろんその中には、過去に五輪や世界選手権、欧州選手権で優勝した強豪チームもいます。例えば、クロアチア、スペイン、ロシア、ポーランドなどです。

2004年には「世界の最優秀選手」に選出された
2004年には「世界の最優秀選手」に選出された
Fotos: © Hartmut Beyer

ハンドボールはドイツで非常に人気がありますが、その理由はどこにあるとお考えですか。

とても見応えのあるスポーツだと思います。競技とスピリット、それに遊び心、この3つが融合したスポーツです。試合展開はとても早く、最後まで緊迫感に溢れています。また、世界選手権優勝後にテレビ放映される回数が増えたことも、興味を持つ人が増えた理由でしょう。

ハンドボールの日本代表チームについてご存じですか。

1997年にブンデスリーガ1部のSCマグデブルグに所属していたとき、日本の代表チームと対戦したことがありますが、ずいぶん前のことなので詳しくは覚えていません(笑)。

日本代表チームが世界のトップ・レベルになるために、何かアドバイスはございますか。

ユーモアを交えて答えるならば、ドイツ代表チームのハイナー・ブラント監督を日本に招請してはいかがでしょう?(笑)

ご自身にとって、ハンドボールとはどんな存在ですか。

その魅力をひと言で言うならば、電気による刺激のようなものです。子どものころからハンドボールとつながってきました。選手として長いキャリアを積んできましたが、いまも楽しんでプレーしていますし、それで生活の糧を得ています。趣味を職業にできるというのは理想的なことだと思います。家族と同じように、ハンドボールは自分のすべてだと言えますね。

ハンドボール競技解説
ハンドボールは、ゴールキーパーとコートプレーヤー6人の計7人のメンバーからなるチーム同士が得点を競う競技。ゲーム時間は前後半30分ずつで、選手は試合中、審判を通さずに何度でも交代できる。スピードだけでなく、体を張って自陣を防御するという肉体を駆使する点が魅力で、ドイツやデンマークなどヨーロッパを中心に人気がある。1936年ベルリン五輪のときにヒトラーの肝入りで正式種目となり、その後一時は不採用となったものの、72年のミュンヘン五輪から再び復活した。

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