旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978 年東京生まれ。看護師を経て、旅するビアジャーナリストに転身。旅とビールを組み合わせた「旅ール」(タビール)をライフワークに、世界各国の醸造所や酒場を旅する。ドイツビールにほれこみ1 年半ドイツで生活したことも。「ビール王国」(ワイン王国)、「ビールの図鑑」(マイナビ)、「BRUTUS」(マガジンハウス)など、さまざまなメディアで活躍中。
www.jbja.jp/archives/author/kogo

アインベックのマイボックで春の訪れを祝う

若葉が鮮やかに茂る5月。この季節に期間限定で店頭に並ぶビールが「マイボック」だ。寒い冬を乗り越えて春の訪れを祝うビールで、四旬節が終わりイースターの頃から夏の始まりまで好んで飲まれる。「マイ」(Mai)はドイツ語で「5月」のこと。「ボック」は麦芽の風味が豊かでアルコール度数のやや高いビールで、ビール醸造が盛んだったニーダーザクセン州にあるハンザ同盟都市アインベックに由来する。マイボックはドイツ全土で造られ、ヘラーボック、ヘレスボック、またはフリューリングスボックとも呼ばれているが、「マイ・ウア・ボック」(Mai-Ur-Bock、元祖5月ボック)と呼称することができるのは、アインベックのものだけだ。

当地では14世紀ごろから市民の家でビール醸造が行われており、共用の醸造釜が荷車に載せられ家から家を巡回していた。名前に「マイ」(5月)が含まれる理由は、醸造釜を使用する順番が春祭りの5月1日に公開抽選で決められたことからとも、冬の期間にゆっくりと熟成され5月に蔵出しされるからともいわれている。アルコール度数が高めなのは、輸出品であったビールを遠くの地域まで運ぶための腐敗防止の名残だ。

アインベックのビールはマルティン・ルターのお気に入りで、1521年のヴォルムス帝国議会で「人類にとって最もおいしい飲み物はアインベッカービール」と賞賛したと伝えられている。今からちょうど500年前の1525年には、ヴィッテンベルクにいたルターと修道女カタリーナの結婚のお祝いに、ビール樽が届けられている。

「Einbecker Mai-Ur-Bock」はカラメルのような甘く香ばしい風味に、ノーブルなホップの香りと苦味が追随してくる。少しのスパイシーさと、オレンジの皮のようなフルーティーさ。口にすればウキウキと弾んだ気分になる、春の始まりにぴったりな一杯だ。

www.einbecker.de

vol.101
Einbecker Mai-Ur-Bock

Einbecker Mai-Ur-Bock

 
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