Hanacell

輝け、原石たち
日本を飛び出し、ドイツで切磋琢磨する "若き血潮" を紹介します。


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1979年 神奈川県生まれ
1988~91年 ボンに滞在、現地校に通う
1999年 東京横浜ドイツ学園卒業。ザールブリュッケン大学法学部入学
2005年3月 第1次司法試験合格
2008年5月 第2次司法試験合格
2010年 弁護士として独立開業。ベルリン在住
子どもの頃にドイツ滞在経験があり、常にこの国を身近に感じながら育ったため、ドイツの大学を選んだのも自然な流れだった。将来、キャリアを積むのに理想的と考えて法学を専攻し、弁護士資格を取得。

独特の厳粛さが漂う裁判所の一室で、黒いローブに身を包み、理路整然とした口調で相手を説き伏せる̶̶。弁護士には、法を盾に市民を権力の横暴から守る勇士というイメージがある。弁護士、亘理興さんも今年、その戦力に加わった。

今年初め、ベルリンで弁護士として独立開業した亘理さんの初仕事は、自分自身の弁護だった。司法試験をパスし、晴れて法学部を卒業後、司法修習を終えて就職活動用のビザを入手したが、労働時間に制約があったため、労働局から失業手当の支給を拒否された。憤りを感じて裁判に持ち込んだが自身の主張を認められず、州裁判所への上訴を決意。しかし、そうこうするうちに労働局が折れ、請求を認諾した。

「役所というのは、往々にして違法な判断を下すことがあります。立場的に弱者である市民はそれを不満に思ったとしても、積極的に異議を唱えなければ、何も変わりません」と、亘理さんは力強く語る。市民が権力者を相手に様々な権利を勝ち取ってきた歴史を持つ欧米社会と比べ、訴訟を起こすことに消極的な日本人。ましてや外国生活ともなれば言葉の壁も加わり、諦めてしまう気持ちも理解できるが、それではもったいないと彼女は考える。

市民は自分の権利を勝ち取るために行動を起こすべきであり、その手伝いをするのが自分の役目と信じる一方、迷いがないわけではない。法律自体、それが通用する社会の価値観を示しており、恣意的なものである。その上、視点の置き方によって解釈が異なってくるという玉虫色で抽象的な文言が法律なのだ。それを具体的な事象に当てはめ、権利義務関係を解明する作業は、一筋縄にはいかない。

学生時代、法学を学びながら実感した法解釈の難しさ。この先、実務経験を積む中で、理想と現実の乖離(かいり)に直面し、幻滅するかもしれない。しかし、歩み始めたばかりの弁護士は「人間として自分の行動を100%肯定できる仕事」を目指し、試行錯誤をしながら確かな自分の価値観や判断基準を築きたいと願っている。

(編集部:林 康子)


よく利用するベルリン高等裁判所の図書館



法律問題を解くためには、いくつもの法律を
同時に考慮しなくてはならないことがある



法律家の必需品、法令集
Information

大学で商法や民法、刑法を学んだ亘理さん。現在、彼女の事務所にはドイツで暮らし始めたばかりの日本人から滞在許可や賃貸契約に関する相談が多く寄せられている。また、ドイツ滞在が長い日本人からは、亡くなった後の手続きなどに関する質問を受けることもあるそう。「日本人には訴訟や争いを避ける傾向がありますが、弁護士はそこに至る前の法律相談にも乗ります」とのこと。日本人がドイツで安心して暮らすための手伝いをしたいと、日々分厚い法律書と格闘している。

亘理法律事務所
Schulstraße 40, 13347 Berlin
TEL: 030-46797127
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www.watari.de

 
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