Hanacell

輝け、原石たち
日本を飛び出し、ドイツで切磋琢磨する "若き血潮" を紹介します。


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1979年 北海道 札幌市生まれ
1996年 米国ミシガン州に1年間留学
2001年 NINAGAWA COMPANYに参加。
蜷川幸雄氏の演出助手を務める。
2002年 国際基督教大学 教養学部人文学科 卒業
2004〜08年 東京・新国立劇場に演出スタッフとして所属
2008年〜 Komische Oper Berlinの演出スタッフとして活動中
4歳からヴァイオリンを始め、オペラ好きな父のもと、米国、オランダ、ドイツに暮らしながら、幼少時代より多くの舞台を観て育つ。日本での演出経験やポテンシャルを買われて渡独して3年目の今年、ケルンにて、オペラ演出家としてドイツデビューを果たす。

「そういうものなしに人間は生きていけないんじゃないかな・・・・・・」。オペラ演出家の菅尾友さんは、そう言い残して稽古に戻っていった。「そういうもの」とは、生きる喜びや悲しみに関わるすべての芸術を指す。不況の煽りを受けやすい芸術界に身に置きながら、その必要性に確信を持つ。

「ぼくにとっては、オペラも日本昔話もグリム童話も同じ」と言うほど身近な存在だったオペラ。観劇する楽しみを覚えるにしたがって、膨らんできたのは「自分だったらこうするのに」という思い。中学生の頃、バズ・ラーマン演出によるオペラ『夏の夜の夢』(シェイクスピア作、ブリテン作曲)をシドニーで観た。その興奮冷めやらぬ内に、今度は日本で蜷川幸雄演出による同作の演劇版を観た。同じ作品、違った魅力。何百年も語り継がれてきた物語が持つメッセージを、現代を生きる観客にどう分かりやすく、魅力的に伝えるか、その責任を負う演出家という仕事に魅了されていく。

演出家として本格的にオペラを公演したのは、大学2年生の春。「幸せな公演だった」と当時を振り返る。オペラの演出をしたい一心で有志を集め、「分からないなりに、良いものを作ろうというポジティブなエネルギー全開で作り上げた」というこの経験が、その後も菅尾さんの背中を押す。

尊敬する蜷川氏の下で学んだ後、新国立劇場で世界のプロと肩を並べた4年間の経験。充実した活動を営む中で、新たなチャンス到来。新国立劇場オペラ公演で演出助手を務めたアンドレアス・ホモキ氏(ベルリン・コーミッシェ・オーパーの劇場総裁)から直々に「ドイツに来るか?」と誘いを受ける。「オペラ演出の歴史上とても重要な場所で、憧れの劇場」と言う、その大本命からの誘いを断るはずがない。

挑戦し続けるドイツの劇場での経験を楽しんでいる菅尾さん。稽古では、時に冗談を言って雰囲気を盛り上げつつ、演出に関しては妥協を許さない。適切と判断すれば、ほかの人の意見を大胆に採用するのも「作品や観客とまじめに向き合うこと」を信条としているから。

(編集部:高橋萌)


再演演出を務めた『ロビン・フッド』。
子ども合唱の稽古(Komische Oper Berlin)



稽古後のダメだしの様子



『ロビン・フッド』、急病の主役テノールの代役を務めた



演出を務めた『ヘンゼルとグレーテル』(新国立劇場)
Information

2月22日(火)~3月17日(木)
『子どもと魔法(Das Kind und der Zauberspuk)』

フランスの作曲家、ラヴェルの名作オペラ『子どもと魔法』。ワガママな子どもが大暴れ、すると被害を被った部屋や家具、動物たちが怒り出し・・・・・・。主人公の子どもと彼を取り囲む家具や動物たちが織り成すファンタジー。準備期間およそ1年。菅尾さんと、信頼関係で結ばれたチームのメンバーが作り上げた子どものためのオペラ。

チケット
子ども7ユーロ(14歳まで)、大人14ユーロ

公演場所
Altes Pfandhaus
Kartäuserwall 20, 50678 Köln

問い合わせ
TEL: 0221-22128400
www.operkoeln.de / www.kinderoper.info

 
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