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ロンドンのゲストハウス
Mo. 21. Okt. 2019
Carsten Laade

ワインビューネの演出家

純粋にワインを楽しむ場所を
提供したい

今回の仕事人
Carsten Laade
カルステン・ラーデ

ワインビューネ主宰者。1968年ビーレフェルト生まれ。職業学校卒業後、複数のホテルで実習を積み、独英のホテルでの勤務を経て、ホテル専門学校でマーケティングを学ぶ。英国でのワインとの運命的な出会いを機に、帰国後はホテル勤務から徐々にワイン営業に移行。2013年に独立し、イベントを中心に独自のワインビジネスを展開している。

ぜいたくな昼食

カルステン・ラーデ(45)の母親は結婚当初、全く料理ができず、夫に勧められて市民大学(VHS)の「主婦業コース(Hausfraumeisterkurs)」に通い始めた。母親はそこで料理の面白さに目覚め、個人で料理教室を開くほどの腕前となった。カルステンは少年時代を振り返るとき、料理に熱中していた母親の姿ばかりが思い浮かぶと言う。

小学校卒業後、カルステンは職業学校へ進み、地元のホテルで見習いを始めたが、当時、昼休みに自宅へ戻り、母の手料理を味わうのが何より嬉しかったと言う。同輩の中で、食事のために自宅へ帰るのは彼だけだった。「母は毎日、前菜とメインディッシュとデザートを作ってくれた。愛情のこもった食卓は、今の僕の仕事の原点なんだ」。

ホテルマンになりたい

カルステンがホテルマンに憧れたのは、インテリア業を営む父が頻繁に英国に出張し、同地でホテルの内装を手掛けていたから。「幼い頃から父に連れられて、英国をはじめ欧州各地のホテルに滞在した。僕にとってホテルはとても身近な存在で、大人になったらホテルで働きたいとずっと思っていたんだ」。2つ目の実習先はバーデン地方のシュロスホテル・ビューラーヘーエだった。実習後は同ホテルに就職し、4年間働いた。

カルステンがいた当時、このホテルは電機大手グリュンディッヒ(2003年に倒産。家電部門はトルコ企業に吸収された)が所有しており、大改装を終えて国内最高級ホテルの1つとして営業を開始したところだった。カルステンはレセプションと著名人ゲストの送迎を担当した。「開業時に居合わせたのは幸運だった。スタッフが一丸となって働く生き生きとした職場だったからね」とカルステン。バーデン地方の生活も肌に合った。

英国での3年間とドイツでの模索時代

カルステンはその後、英国へ渡り、ロンドン近郊のホテル、クリブデン・ハウスに就職。ジュニアウェーターとして働いていたある日、1961年産のシャトー・ラトゥールと出会う。ソムリエが、彼にもそのワインを味わうチャンスを与えたのだ。それはカルステンにとって決定的な意味を持つワイン体験だった。ソムリエの仕事を間近に見ながら、彼はワインの面白さに夢中になる。「英国のソムリエから多くを学んだよ。偉大な造り手に対する敬意が高まるとともに、自分の無力さも感じた。以来、僕は人間の手仕事と労苦の結晶と言えるワインを探し求めるようになったんだ」。

ドイツへ戻ると、ホテル業務よりもイベント企画を手掛けたいと思い始め、エムデンのホテル専門学校で2年にわたりマーケティングを学んだ。卒業後、ハンブルクのホテル・ルイ・C・ヤコブのマーケティング部に就職するが、業界のヘッドハンターの「今、ドレスデンがダイナミックな動きがあって面白いよ」という一言でドレスデンへ向かい、ホテル・ビュロー・レジデンツに転職する。このとき、ザクセン地方のワインに開眼し、ついにはマイセンの醸造所、シュロス・プロシュヴィッツで1年間研修をすることを決めた。「醸造所で働いたことで、今後はワインの仕事一筋で行こうと決意できたんだ」。

カルステンはまず、ドレスデンのワイン販売会社に就職。その後、ミュンヘンのワイン販売会社に転職し、ドレスデン支店の営業を一任される。ザクセン地方の市場開拓は彼自身のアイデアだった。そうしてドレスデンやライプツィヒの高級レストランに、ハイレベルのドイツワインを提供した。しかし6年後、会社が大手飲料メーカーに買収され、ビール販売に力を入れるという方針が決まる。カルステンは、ここにいては駄目だと思い、退社を決意。ズュルト島のワイン販売会社に転職し、ハンブルク圏の営業を担当した。ところが、この会社もやがて大手に買収され、ワイン部門の個性が潰されていく。「2003〜08年の間に2社でワインの営業実績を積んだから、そろそろ独立しようかと思い始めたんだ」。

ワインを舞台に

カルステンはドレスデンにいた頃、バッハの大ファンでありながら、まだライプツィヒを訪ねたことがないという英国の著名なワイン批評家マイケル・ブロードベントとドイツワイン界の著名人らをライプツィヒに招き、 戦後から現在に至る偉大なリースリングの比較試飲会を演出したことがあった。その体験を基に、ハンブルクでワインバーの経営に携わりながら企画を練り始めた。大手が決して扱わないワイン、造り手の顔が見えるワイン、人々に感動をもたらすワインを紹介したいという想いから、ワインビューネ(Weinbühne)のコンセプトが生まれた。2012年のことだった。

ワインビューネ(ワインの舞台)は、カルステンのアイデアの結集だ。その1つが「メッセージ・イン・ザ・ボトル」という一般向けの試飲企画。しんと静まった夜の肉屋、ハンブルク港で活躍する様々な汽艇、アルスター湖畔のボートハウス、エルベ川を望むカフェなどで、定期的にテーマ別の試飲会を開いている。地元メディアにも取り上げられ、国内各地からも特別企画の依頼が舞い込むなど、事業は順調に滑り出し、2013年に独立した。

また、ワインの営業マンとして働いていた頃にレストランのワインカルテの製作に関わった経験から、ハンブルクのタウン誌『SZENE』の別冊レストランガイドに、優秀ワインカルテ賞を新設してはどうかと提案。企画は通り、3年前から同市内のほぼすべてのレストランのワインカルテに目を通し、審査している。「個性的で、かつ分かりやすいワインカルテは、レストラン選びの重要なポイントになる。レストラン側の意識も高まっていて、手応えがある」と言う。

イベントにて
イベントでは、サービスも務める

先日、彼は市内のワインショップに共同でバーコーナーをオープンした。「セミナーや試飲会も良いけれど、純粋にワインを楽しめる場所を提供したい。この店では、ワインを飲みながら、ワイン談義だけでなく、美術や映画、音楽など、いろんな話で盛り上がってほしい。そこにワインがお供しているというのが理想なんだ」。

Die Weinbühne
www.weinbuehne.de

共同企画のワインバーはこちら
Andresen Weine & Spirituosen
www.andresen-weine.de

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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