2月末の週末、息子がある音楽コンクールの地区大会に出ることになり、下見も兼ねて前日のピアノ部門を聴きに行った。会場はモアビット地区にあるファニー・ヘンゼル音楽学校。作曲家フェリックス・メンデルスゾーンの姉の名前にちなんだ学校だ。
子どもたちのピアノ演奏をいくつか聴いてから、少し空き時間ができたので、近くにある屋内市場(マルクトハレ)に行ってみることにした。車やバス、トラムがにぎやかに行き交うトゥルム通りから一歩入ったアルミニウス通りに面していることから、アルミニウス・マルクトハレの名で知られる。
1891年創業の屋内市場「アルミニウス・マルクトハレ」
19世紀末にベルリンに建てられた14のマルクトハレのうち、戦災を経て、現在も使われているのは四つだけ。横に長いレンガ造りの建物の入口から入ると、そこがメイン回廊だ。当時は馬車や荷車が直接商品をスタンドに運んでいただけに、造りがゆったりしている。そして天井の高いこと。同時代に建てられた教会や鉄道駅にも共通する、天にそびえるようなスケール感が今も息づいている。入口近くの南欧風カフェのスタンドで飲むコーヒーは、格別にうまかった。
次の土曜日、家族を連れてもう一度マルクトハレに行った。今度はお昼時の雰囲気を見てみたかったのだ。メイン回廊を北側に向かって歩くと、手前には新鮮な肉やパン、チーズなどの食材のスタンドが並ぶ。
その奥の列はレストラン街になっており、食事する人たちでにぎわっていた。長テーブルが置かれたオーストリア料理の「Der Hofladen」、スペアリブなどの肉料理が売りの「Smoke & Barrel」、カリカリのフィッシュ&チップスがおいしそうな「Der Fischladen」など。どうやらこのマルクトハレは週末のブランチを売りにしているようで、店によってはお値段も立派。私たちは空席が見つけられたアジア料理のお店に入ったが、十分満足できるものだった。
2010年前後の空き店舗が目立つ寂れた時期を知っている私としては、伝統あるマルクトハレの活況はうれしい。が、この冬ある問題に直面しているという。暖房費が急激に高騰したことで、建物の所有者Zunft AGによって暖房が充分に供給されず、年始から厳しい寒さが続くなか、飲食スタンドの来訪者が大幅に減っているというのだ。
アルミニウス・マルクトハレの外観
私たちが訪れた日は、寒さはいくらか和らぎ、通常のにぎわいを取り戻しているように見えた。食事したテーブルの近くには追加発注されたという赤外線ランプがあったのも幸いだった。所有者は将来的に再生可能エネルギーに依存したいと考えているようだが、このご時世だけにどうなるか。
高級感のあるお店が出てきた一方、カプチーノ1杯2.6ユーロというベルリンの一昔前の値段で飲めるスタンドもある。あらゆる層を受け入れてくれる、マルクトハレという空間の良さがなくならないでほしい。もう少し暖かくなったら、今度は席を予約して週末のブランチを楽しんでみたいと思った。
アルミニウス・マルクトハレ
Arminius-Markthalle
1891年にMarkthalle X(10番目のマルクトハレ)としてオープンした屋内市場。第二次世界大戦中に大きな被害を受けたが、1950年代に再建。1982年には文化財に登録された。毎週土日の10:00〜14:00は豊富なブランチのコースが用意されており、www.markthalleberlin.comから予約可能。
オープン:月〜土12:00〜22:00
住所:Arminiusstr. 2-4, 10551 Berlin
電話番号:01511-5307908
URL:www.markthalleberlin.com
トラム M10
Straßenbahnlinie M10
2023年にベルリン中央駅からトゥルム通りまでトラムM10が延長されたことで、モアビット地区へのアクセスはより便利になった。トゥルム通りから東のワルシャワ通りまで時計回りに結ぶこの路線は、さらなる拡張計画がある。2028年末までにトゥルム通りから西のユンクフェルンハイデ、2030年末までにワルシャワ通りから南のヘルマン広場まで伸びる予定だ。
URL:www.bvg.de



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック



中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『






