9月の週末、開業から丸20年を迎えたベルリン中央駅を見に行こうと思い、息子と動物園駅からSバーンに乗ると、異変に気づいた。隣に敷かれた長距離用の複線が完全に工事中なのだ。中央駅に着くと、ホームには資材が積まれ、点検用の車両が横たわっている。
開業から20年を迎えたベルリン中央駅のヨーロッパ広場
後で知ったところによると、2027年末まで続くベルリン~ハノーファー間の大規模な改修工事のためだという。常態化する列車の遅れの大きな要因となっているインフラ老朽化というドイツ鉄道の現実を、いきなり見せつけられることになった。
そんななかでも私と11歳の息子は、ささやかな楽しみのためにベルリン中央駅にやって来たのだった。今年6月15日、ゲズントブルンネン駅から中央駅を結ぶSバーンのS15が開業した。20年目にして初めて北側から乗り入れた新線に、これから乗ろうと思う。
ガラスと鉄による巨大な吹き抜けの駅の北側に、青を基調とした新しいSバーンの乗り場がある。階段で地下ホームに降りて行くと、ちょうど折り返しの電車がやって来たところだった。
現在は20分間隔の運行。すぐに地上に出た電車は、ゆったり右にカーブしながら高架を上がっていく。真新しい建物群の奥にテレビ塔が顔をのぞかせるが、すぐ横に長距離列車の線路が平行するため、格別新鮮な眺めというわけではない。ヴェディング駅でリングバーン(環状線)に合流すると、次がもう終点のゲズントブルンネン駅。合計3駅、5分の短い旅。
従来はフリードリヒシュトラーセ駅を経由してここに来ていたことを考えると大幅な時間短縮だし、この路線が今までなかったことが不思議なくらいだ。とはいえ、あまりにあっけない。私たちは駅の近くのスタンドに行ってカレーソーセージを食べた。
ベルリン中央駅に乗り入れたS15の電車
ベルリン中央駅は、それまで東西に分断されていたベルリンを南北と東西でつなぐ巨大な再統一プロジェクトだった。このS15は将来ポツダム広場を通り、グライスドライエックの新駅を経て、最終的にズートクロイツまで貫く新しいSバーン網(S21)となる。もっとも、複雑な地下ルートや、計画認可手続きに時間を要することが予想され、全線完成は2040年代中期と見込まれている。S15の開業は、ベルリン中央駅の次の20年の工事の序章に過ぎないのかもしれない。
今のベルリンで、そんな先のことは想像すらできないので、もう少し近い将来の話題で締めくくろう。20年前、周りにほとんど何もなかった中央駅にはホテルやオフィスが建ち並び、だいぶ街らしくなってきた。この駅からの長距離路線網に、今年5月、プラハ発ベルリン経由コペンハーゲン行きの直通列車が登場。そして、2028年夏からはベルリンからなんとノルウェーの首都オスロまでを結ぶICE Lが運行を開始するという。コペンハーゲンを経由し、14〜15時間かけて欧州三つのの首都を横断する。乗ってみたい。いまだ未完成の中央駅で、せめて手に届きそうな未来の旅を夢想した。
ベルリン中央駅
Berlin Hauptbahnhof
サッカーW杯ドイツ大会に合わせて2006年5月26日に開業した鉄道駅。ドイツでも最大級の交通結節点として、毎日約30万人が利用し、年間約48万6000本の列車が発着する。現在この駅からは、ドイツの主要都市に加え、ワルシャワ、プラハ、ウィーン、アムステルダム、パリ、コペンハーゲンまで乗り換えなしで行ける。
住所:Europaplatz 1, 10557 Berlin
URL:www.bahnhof.de/berlin-hauptbahnho
Sバーン S21
S-Bahn S21
ベルリン中央駅を軸にしたSバーンの建設プロジェクト。次は、政府地区の地下を通ってポツダム広場までの区間が2030年代に開業予定であり、さらにズートクロイツまでつながることで、中央駅と南北の環状線が直結される。南北方面の交通網の利便性を高めるのが目的で、現在の主要乗換駅となっているフリードリヒシュトラーセ駅の混雑も緩和されるという。



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック



中村真人(なかむらまさと) フリーライター。神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。著書に『




