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マルツァーンの世界庭園

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日本庭園内にある「如水亭」から枯山水を臨む
日本庭園内にある「如水亭」から枯山水を臨む

今年6月、皇太子殿下のドイツ公式訪問の際、「おや」と感じたのが、マルツァーンの保養公園(Erholungspark Marzahn)がベルリンでの日程に含まれていたことだった。日本の皇太子と旧東独の郊外の団地街の象徴であるマルツァーンという組み合わせが、どこか新鮮だったからである。今回皇太子殿下が訪問されたのは、同公園内にある日本庭園。この時期としては異例の陽気に恵まれた10月初頭の日曜日、今までなかなか足を運ぶ機会のなかった「世界の庭園」をじっくり見て回ることにした。

Sバーンのマルツァーン駅から195番のバスに乗って約10分、高層アパートの住宅群を抜けて間もなく、公園の入り口に到着した。マルツァーン保養公園は、まだ東独時代だった1987年に開催されたベルリン造園展覧会をきっかけに、マルツァーン・ヘラースドルフ地区の緑のオアシスとして生まれた。ベルリンの内外に広く知られるようになったのは、中国庭園がオープンし、同時に「世界の庭園」としての歴史が始まった2000年秋以降のことである。

30ヘクタールもの広大な敷地を誇る公園だが、日本庭園「融水苑」は入り口から比較的近い場所にあった。横浜市の寺住職にして庭園デザイナーの枡野俊明氏の監修により2003年に造られた庭園で、全体が過去から未来への時間軸をもって構成されている。中に入り階段を上ると眺望台があり、滝が流れている(過去の歴史の流れを表現)。そこを下りると前庭が見えてきて、「現在」を表しているという建物「如水亭」に入る。そこから臨む枯山水の庭は、現在から未来への展望を象徴しているそうだ。過去から未来までを見据える精神の自在さと「融合すること水の如く、以って和と成す」という庭園全体のテーマが、確かにどこかで重なり合う。日本だったら芝生ではなく苔が生えているだろうなと感じる場所もあったが、細かな相違は別にして、美しく整えられた枯山水を眺めていたら、一瞬ここがドイツであることを忘れそうになった。

とはいえ、「融水苑」は世界庭園の見どころの1つに過ぎない。近くにある韓国庭園では日本との微妙な文化的相違を実感させてくれたし、ヨーロッパでは最大級という中国庭園は数年前「ドイツで最も美しい庭園」のベスト3に選ばれたこともあるそうだ。

ここから西側の端にあるイタリアのルネサンス庭園まで一気に歩いてみた。そばにはIrrgartenという迷路庭園なるものまであって、これは子ども連れの家族でも楽しめるだろう。想像以上に広くて、とても全部は回りきれなかったが、最後にオリエント庭園に入ってみた。回廊の床のモザイクは美しく、庭の中心にある小さな噴水では子どもたちが裸足で遊び、アジアの庭園とは雰囲気ががらっと変わる。どの国の、そしてどの文化の庭園も甲乙つけがたい魅力があった。また、隅々まで手入れが行き届いているのにも感心した。

日本庭園の桜が咲き乱れる頃、マルツァーンをまた訪ねようと思う。

ブルーのモザイクが鮮やかなオリエント庭園の回廊
ブルーのモザイクが鮮やかなオリエント庭園の回廊


information

世界の庭園
Gärten der Welt

「地理、宗教、民族など異なる背景を持つさまざまな庭園を体験できるように」という目的から2000年にオープン。本文で紹介した庭園以外にも、バリ島庭園、キリスト教文化をテーマにした庭園などがある。入場料は3ユーロ(11~3月は2ユーロ)。日本、韓国、オリエントの各庭園は4月~10月のみのオープンなのでご注意。

開館:11~2月(9:00~16:00)、3月と10月(9:00~18:00)、4~9月(9:00~20:00)
住所:Eisenacher Str. 99, 12685 Berlin
電話番号:(030)700906 699
URL:www.gruen-berlin.de/parks-gaerten/gaerten-der-welt

中国茶館
Chinesisches Teehaus Berghaus zum Osmanthussaft

中国庭園内にある本格的な中国茶館。約30種類もの中国茶を堪能できるほか、それによく合う焼き菓子も用意されている。天気が良い日は、池に面したテラスがお勧め。近くには中華インビスの“ Tsing Tao Pavillon“ も。世界庭園内には、ほかにもカフェやキオスクなど、一休みできる場所は豊富にある。

営業:4~10月(月~日10:30~18:00)、11~3月(天気の良い週末)
住所:Eisenacher Str. 99, 12685 Berlin
電話番号:(030)700906 699
URL:www.china-teehaus.de

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
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