Hanacell

暗闇の中のダイアローグ

私たちは普段、目に見える情報に従って多くの物事を判断しています。もし視力が奪われたら、私たちはこの世界をどのように感じるのでしょうか?そんな漆黒の闇を体験できる施設が「暗闇の中のダイアローグ(Dialog im Dunkeln)」。2000年にハンブルクに最初の施設が作られた後、世界各地に拡がり、日本でも2009年から期間限定で開催されています。

体験は1回90分。少人数のグループで、視覚障害者の方が持つ白い杖を手にして闇の中に入って行きます。この施設内を案内してくださるのは、闇が日常である視覚障害者の方。彼らは闇の中をいとも簡単に歩き回りますが、視覚を奪われた健常者は急にこわごわと歩みが遅くなります。頼りにできるのは案内人と同じグループの人たちの声、気配のみ。とにかく何も見えないので、よく人とぶつかるのですが、ぶつかると「ああ、ここに人がいる」と安心するのです。最初に案内されたのは森の中。やわらかい土の感触と湿った空気、鳥の声。次はマーケットに行き、売られている野菜を手に取って、それが何の野菜か、あるいは本物なのか、プラスチックなのか、などと声を掛け合います。次に案内されたのは(さすがハンブルク!)船です。係員にチケットを渡して船に乗りました。船が揺れている感覚、頬をなでるさわやかな風——視覚以外の感覚が研ぎ澄まされて行きます。横断歩道を渡ってバーへ行き、お金を出して飲み物やお菓子を買う……など、小さな日常生活を一通り体験しました。

ハンブルク
待合室で案内を待つ人々。
この赤い門の中は漆黒の闇の世界

体験を終えて感じたことは、目に見える情報は一部でしかないということ、それなのに私たちは目に見えるものにいかに大きく囚われてしまっているかということです。暗闇の中へ放り出された時、私たちがどんな容姿であるのか、またどんな資格を持っているかは、何の意味も持たなくなります。さらに、コミュニケーションの重要性も再認識させられました。日本風の「何も言わなくても分かってほしい」という甘えは通用しません。自分から心開いて声を出すことが必要です。この施設を紹介してくれた、生まれつき全盲の友人はとても積極的な人ですが、彼女の積極性の秘密が理解できた気がしました。

この施設の入場は予約制です。コミュニケーションが頼りなので、ドイツ語に不安がある場合は英語のガイドを申し込むこともできます。とても有意義な体験でしたので、多くの人々に経験していただきたいと思いました。

Dialog im Dunkeln
Alter Wandrahm 4, 20457 Hamburg
チケット:大人19ユーロ / 子ども11.50ユーロ
予約:040-3096340
www.dialog-im-dunkeln.de

ハンブルク
倉庫街の一角にあるDialog im Dunkeln。
赤い入口が目印

井野さん井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
 
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