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写真展と劇で知る 性の多様性

11月25日~26日に、ハノーファーのファウスト文化センターで写真展「クィアプラトニック」(QueerPlatonic)が開催されました。この写真展では、LGBTQIA* コミュニティーにおける友情の重要性や美しさをテーマにしています。写真展はソフィア・エマリッヒとリサ・ケンプケによるもので、LGBTQIA*コミュニティーや友人たちに、大切な人を連れてきてもらって6組の友情カップルを撮影。写真約20点が展示されました。

多くの人でにぎわう写真展多くの人でにぎわう写真展

クィアとは、性的マイノリティーを包括的に捉える言葉。自身を性的少数者と思いながらも、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)など既存のカテゴリーに当てはまらないと感じる人も少なくなくありません。性をグラデーションのように流動的なものと考え、また枠にとらわれずに自分らしく生きることを肯定する言葉として使われています。

25日には同会場でトーク「クィアの友情」が開かれ、上記の2人とクィア当事者ら計6人が語り合い、100人以上が訪れました。ハノーファーでの写真展は、ベルリン、ロンドン、ニューヨークに次いで4カ所目とのこと。ベルリンでの展示会には「50人ぐらい来るかな、たぶん知っている人ばかりだろうけど、と思っていたら長蛇の列で800人以上来てびっくりした」と、ユーモアたっぷりに話していました。

写真展「クィアプラトニック」でのトーク写真展「クィアプラトニック」でのトーク

彼女たちは、「クィア同士の友情は、一般的な友情とは少し違い、とても奥が深い」と語ります。その理由は、「クィアであることで差別された経験が共有できる」、「差別される者同士ならではの絆がある」から。性的嗜好や見かけで差別されることへのやるせなさや怒りがあるといいます。性的少数者は、社会ではまだまだ異端視されることが少なくありません。 当事者がいかに理不尽な状況にさらされているのか、その一旦を垣間見た思いでした。写真展は12月半ばから、今度はハノーファー市民大学で開催される予定です。

11月12日には、演劇「INTER* Leben zwischenden Geschlechtern」を鑑賞しました。インターセックス(男性・女性の典型的な定義に当てはまらない生殖・性的構造を持って生まれた人)をテーマにした当事者3人による劇で、さまざまな人からの実体験を集めて構成されています。生まれた時の性別が不特定であるために、医者が性別を定めるべく、幼いときから手術やホルモン治療を繰り返す。本人の意見を聞かずにです。周囲の人たちの無理解、自分の中の混乱や不安などが生々しく描かれていました。

インターセックスがテーマの劇「INTER* Leben zwischen den Geschlechtern」インターセックスがテーマの劇「INTER* Leben zwischen den Geschlechtern」

最近は「ジェンダーフリー」という言葉が流行り、性別に関係なく誰もが使えるトイレが増えるなど、さまざまな取り組みがなされています。一方で、自分と違う人、自分が理解できない人を排除する動きはまだまだあります。性の多様性を受け入れる社会の実現には、当事者の声に耳を傾けることが必要だと思いました。

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。ジャーナリスト、法廷通訳・翻訳士。著書に『なぜドイツではエネルギーシフトが進むのか』『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』、共著に『お手本の国」のウソ』(新潮新書)、『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)など。
 
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