今年は第二次世界大戦の終戦から80年のため、ハノーファーでも関連の催しが開かれています。その一つとして、10〜11月に市民学校で、広島と長崎の原爆投下についての展示がありました。閉幕式では、今年広島と長崎を訪れたハノーファーの高校生二人が制作した、平和をテーマにした30分の映像を上映しました。
ハノーファーでの上映会の後には討論を行いました
この映像を制作したのは、私の息子である田口フィリップ明と学友のコルジャン・エイギュンです。ドイツの学校では、日本への原爆投下について歴史の授業でちらりと触れる程度。一方で、ロシアがウクライナ侵攻で核威嚇を行うなど、現在は核兵器使用の可能性がまたとなく高まっています。そのため二人は、特に若者に原爆について知ってもらいたいと考えました。映像制作に当たっては、私も彼らと一緒に広島と長崎を訪問し、広島では平和祈念式典に参列しました。
長崎の爆心地で高校生平和大使たちと
広島では、日本被団協の相談員であり、原爆投下時に2歳だった山田寿美子さんから、原爆によって親を亡くし、大変な思いで成長したことを聞きました。戦争は人々の体を傷つけるだけでなく、家族を引き離し、日常を奪ってしまうことだと感じました。長崎では、長崎人権平和資料館の園田尚弘さんや国武雅子さんの紹介で、長崎南山高校演劇部や長崎大学の学生たちと原爆投下について話し合いました。また、140人が参加した全国高校生平和集会にも参加し、核抑止や核廃絶について議論。原爆投下時に6歳だった城じょうだい臺美彌子さんから、原爆投下時の様子を直接聞くことができたのも稀有な経験でした。さらに、ジャーナリストで平和活動家の山本健治さんにもじっくり話を聞きました。本誌1196号でも紹介しましたが、山本さんは広島で被ばくした米澤鐡志さんの体験を冊子にまとめ、英語やロシア語、フランス語などさまざまな言語に翻訳し、世界の人々に原爆の悲惨さと平和の大切さを伝えています。
盛り上がった全国高校生平和集会
高校生の活発な討論をあちこちで聞き、彼らは主に下記のようなことを考えていると感じました。「自分たちは、被爆者から直接話をきける最後の世代」「聞いたことについて考え続ける、周りに伝えていく」「自分ごととして考えよう」「核廃絶や戦争反対のために行動に移す」。ドイツから参加した二人も、「日本の若者も平和に興味を持ち、みんな頑張っている」と話し、刺激を受けた様子です。
映像は改良を加え、ハノーファー市庁舎など多くの場所で上映したいと考えています。興味のある方は、どうぞご連絡ください。
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。ジャーナリスト、法廷通訳士。著書に『なぜドイツではエネルギーシフトが進むのか(学芸出版社)』、共著に『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿(光文社新書)』、『夫婦別姓─家族と多様性の各国事情(筑摩書房)』など。



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