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築300年の「牧夫の家」で夫の還暦祝い

昨年末の話になりますが、夫が60歳の誕生日を迎えました。ドイツでは主役がゲストをおもてなしするスタイルが主流。特にルンダーゲブーツタークと呼ばれる「節目の誕生日」は盛大にお祝いします。日本では、60歳の還暦のお祝いは赤いちゃんちゃんこが定番ですが、今回、主役の夫には愛車でポーズを決めてもらい、その写真を使って招待状を作成。準備は2カ月前から始まり、会場準備や食材の買い出し、料理の仕込みなど家族総出で行いました。当日はゲストにもスイーツを持参していただき、親戚や友人約30名と共に心温まるひと時を過ごしました。

築300年の「牧夫の家」築300年の「牧夫の家」

パーティー会場に選んだのは、私が住むミッヘルバッハという人口1800人ほどの村にある築300年の「ヒルテンハウス」(Hirtenhaus)です。ここはかつて、村の共有地で家畜(ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタなど)を放牧・管理する「牧夫」のために建てられた歴史的な建物で、現在はイベントやレンタルスペースとして活用されています。18世紀初頭、ミッヘルバッハ村には33世帯、約140人が暮らしており、人々の生活は決して豊かではありませんでした。そんななか、地域と雇用契約を結んだ「牧夫」による放牧のおかげで、畜産は何世紀にもわたり、村の人々にとって重要な経済的役割を果たしてきました。

還暦パーティーの招待状還暦パーティーの招待状

牧夫の仕事は早朝から始まります。各家庭の家畜たちは牧夫の笛が鳴ると、一斉に通りへと駆け出し、牧夫と共に周囲のオークやブナの森へ餌を求めて向かったそうです。牧夫の雇用契約書によると「冬季には午前1時〜午後3時まで、夏季には午前6時半〜午後3時半まで、家畜の群れと共に外出しなければならない」とのこと。近隣の村とのトラブルを避けるため、厳密に区分された放牧地の中で動物を監視する必要もあり、重労働でありながら賃金は低く、決して恵まれた生活ではありませんでした。

友人作の「還暦ケーキ」友人作の「還暦ケーキ」

そんな牧夫のために地域の人々が建てたのが、この「牧夫の家」なのです。毎朝、牧夫の笛で森へ出かけていく動物たちの姿を思い浮かべると、なんだか幸せな気持ちになりました。現代よりも大切に家畜の命をいただいていたことを感じます。しかしその後、1930年以代になると人々は工場で働くようになり、小規模農業は徐々に衰退しました。ミッヘルバッハの最後の牧夫も1930年代には姿を消したそうです。

300年の時を超えて、豊かさとは何かを静かに問いかける「牧夫の家」での還暦祝い。夫と幸せな時間を過ごせたことに心から感謝するともに、数カ月後に迫った私の「節目の誕生日」をどうしようか頭を抱えています。

ビルケルト( めぐみ )
南ドイツの黒い森の片隅で、自然と調和した暮らしを実践中。味噌や麹を通じた伝統食の紹介やオーガニックの魅力の発信、親子で楽しめる味噌作りワークショップを開催。ローカルな暮らしの日々をインスタグラムでつづっています。
@schwartzwaldtagebuch

 
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