初めまして!今回からシュトゥットガルトのレポーターを担当させていただく、ビルケルト恵です。私は、シュトゥットガルトから車で約1時間の距離にある「黒い森」の小さな村に暮らしながら、お味噌作りのワークショップを開いたり、イベントを通じて日本の伝統食の魅力を伝えたりする活動をしています。
ヴァルドルフ教育の出発点となったシュトゥットガルトの建物。現在は商業施設と住宅として利用されています
先日も、黒い森北部の街カルフのシュタイナー学校で開催された「日本の日」(Japantag)というイベントで、おにぎりワークショップを担当させていただきました。おにぎり作りが初めてという方も多く、慣れない三角形に苦戦しつつも、作った人が次の人にコツを伝える微笑ましい光景も見られました。
ドイツの哲学者であり自然科学者のルドルフ・シュタイナーが提唱した「シュタイナー教育」は、教育を総合芸術として捉え、個性を尊重しながら子どもたちが自ら能力を伸ばしていくことを目指したものです。1919年に、当時ヴァルドルフ・アストリア紙巻たばこ工場の所有者エミール・モルトと共にシュトゥットガルトで最初の学校を設立したことから、ドイツでは「ヴァルドルフシューレ」(Waldorfschule)として広く認識されています。
おにぎりワークショップの様子
今回のイベントは、シュタイナー教育関係者を中心に14名の有志日本人によって開催されたもので、おにぎりワークショップのほか、たこ焼き、浴衣の着付け、習字や折り紙、空手体験、さらにステージでの地じうたまい歌舞や中なかの野七ななづまい頭舞、落語、日本の歌の合唱、ビュッフェ形式での日本食の提供など、幅広い日本文化が丁寧に紹介されました。
私自身は今回、初めて中野七頭舞を目にしました。にぎやかなおはやしに合わせた勇壮で華やかな舞は会場を一気にお祭りムードに包み込み、まるで日本にいるかのような気持ちに。発起人の一人である下田生三さんによれば、この舞は五穀豊穣、家内安全、大漁を祈願する岩手県の伝統芸能で、本校と日本のシュタイナー学校卒業生たちとの交流の中で受け継がれてきたそうです。今回は新堂尚輝さん率いる3名の男性が勇壮に舞ってくださいましたが、本来は2人1組の7組14名で7種類の舞を披露することから「七頭舞」と呼ばれるのだそうです。
勇壮な七頭舞
偶然にも、七頭舞と同じ14名の有志がそれぞれの「できること」を持ち寄って創り上げた今回の「日本の日」。100名を超える来場者が食事を持ち寄り、使用する食器やカトラリーも各自が持参するなど、全てが寄付によって賄われました。オープンで協力的な雰囲気は、シュタイナー教育の理念を体現する学校ならではの光景といえるかもしれません。
私自身も今回、おにぎりワークショップを通して、日本文化だけでなくシュタイナー教育の理念にも触れることができました。次回の開催はまだ未定ですが、今後も続いてくれたらと願っています。
南ドイツの黒い森の片隅で、自然と調和した暮らしを実践中。味噌や麹を通じた伝統食の紹介やオーガニックの魅力の発信、親子で楽しめる味噌作りワークショップを開催。ローカルな暮らしの日々をインスタグラムでつづっています。
@schwartzwaldtagebuch