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日独アーティストによる 展覧会で見つめる生と死

青緑の空に向かって白い波が上る大きな絵があります。とても繊細な美しさで、タイトルは「最後のレター」。これは文倉千恵子さんの作品で、東日本大震災で津波が来た際に「助けて!海水が車内に入ってくる」と、ある一人の女性が夫に最後のメールを書いたという実話が元になっています。文倉さんとフランク・フアマンさん夫婦の展覧会「Gestern Heute Morgen」(昨日、今日、明日)が、8月16日(日)までハノーファーのギャラリー「metavier」で開かれています。毎週日曜13〜17時に開館しており、入場は無料です。

「最後のレター」の前で、左からブランデスさん、文倉さん、フアマンさん「最後のレター」の前で、左からブランデスさん、文倉さん、フアマンさん

このギャラリーを運営しているのは、実は葬儀会社です。死がタブー視される昨今、死を身近なものとして知ってほしいと、生と死をテーマにした展示や催しを定期的に開いています。展覧会をはじめ、大事な人を亡くした人が集う会や悲しみを文章にする講座もあります。

展覧会では、文倉さんの絵画6点をはじめ、お清めや神棚を題材にした作品、フアマンさんによる精霊流しをイメージしたインスタレーションなどが見られます。岩絵具を使った柔らかなタッチの絵画は、修行や仏教など日本文化の真髄を映し出したものもあります。

フアマンさんのパフォーマンスフアマンさんのパフォーマンス

文倉さんは「心が張り裂けるような、切ない心の叫びを体験した人が一体どれだけいるのか。日本は災害国なので、そういう思いをした人はものすごく多いと思います。昨日まで普通の生活を送っていたのに」と、絵に込めた思いを語ります。また「魂を描いていたら、『銀河鉄道999』のようになった」という絵もありました。マンガ『銀河鉄道999』で、永遠の命を享受できる機械の体を求めて宇宙を旅する乗客たちは、死を忌諱する人々の願望を体現したものでもあります。

オープニングでは、フアマンさんがオルガンと石でパフォーマンスを披露しました。最初に静寂があり、次々と石を鍵盤に載せることでいろいろな音が重なり、不協和音が響きます。そのうち石が徐々に取り除かれて、また静かになるのですが、まだ音が鳴っている。それは救急車のサイレンでした。津波とその足跡を想像させる、独特かつ印象的なもので心に響きました。

窓に飾られたフェルト作品「2011年3月11日」窓に飾られたフェルト作品「2011年3月11日」

キュレーターのヨハン・ブランデスさんは日本文化に興味を持っており、「人は生きて死ぬという循環の中にいる」と話し、この展覧会の開催期間をお盆までとしました。生と死について感じることは人それぞれ。日本の死生観をドイツの人に知ってもらう貴重な機会にもなりそうです。

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。ジャーナリスト、法廷通訳士。著書に『なぜドイツではエネルギーシフトが進むのか(学芸出版社)』、共著に『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿(光文社新書)』、『夫婦別姓─家族と多様性の各国事情(筑摩書房)』など。
 
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