Hanacell

過去と未来を見つめる日本映画

終戦70周年を迎える今年、広島市と姉妹都市提携をしているハノーファーでは、戦争や原発関連の日本映画の上映が予定されています。ハノーファーは、2020年までに世界の核兵器廃絶を目指す平和市長会議の副会長都市を務めるなど、平和活動に力を入れています。

ハノーファー
Taidan2010:2010年に対談した鎌仲さん(左)と国本さん(提供:前田せつ子さん)

6月18日、ブラウンシュバイク在住の映像作家・国本隆史さんの『ヒバクシャとボクの旅(Meine Reise mit den Atombombenüberlebenden)』(63分/2010年製作/ドイツ語字幕付)が、シュプレンゲル映画館で上映されます。国本さんは、2008年に103人の被ばく体験者を乗せた「ヒバクシャ地球一周:証言の航海」(企画:ピースボート)に同行し、ドキュメンタリーを撮影しました。被ばくについて、被ばく者本人やほかの人々がどう捉えているのか、国本さんの視点で語られています。「被ばく証言にどう向き合っていくのか。そして、原子力エネルギーや核のゴミなど、我々を取り巻く“核”について、映画を観た後にドイツに住む皆さんと一緒に考えたい」と、上映当日はご本人も来場されます。監督から直接話を聞くことができるまたとないチャンスです。また同映画館では、6月11日に高畑勲監督のアニメ『火垂るの墓』を、無料上映します。

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『ヒバクシャとボクの旅』より(写真提供:国本隆史)

7月9日には、ハノーファー市営映画館(Künstlerhaus)で、鎌仲ひとみ監督の『小さき声のカノン(Little Voices from Fukushima)』(119分/2014年製作/英語字幕付)が上映されます。福島に住み続けることを決意した人々の葛藤をはじめ、チェルノブイリ事故のその後が描かれています。子どもを持つお母さんたちは、日々「何を食べるか」「どこで遊ばせるか」といった選択をしなければならず、その精神的負担は計り知れません。しかし、その中で子どもを守ろうと活動を始めた姿に、未来への希望を感じます。

鎌仲監督は、2003年の『ヒバクシャ~世界の終わりに』を皮切りに、『六ヶ所村ラプソディー』『ミツバチの羽音と地球の回転』『内部被ばくを生き抜く』ほか、原発や核兵器をテーマにした映画を制作されています。2004年には、ウラン兵器廃絶に関する世界会議のため、ハノーファーを訪れたそうです。鎌仲監督は「チェルノブイリの事故以来、ドイツではチェルノブイリの子どもたちを保養に受け入れる活動が続いているが、福島では『保養』に拒否感がある。日本の普通の暮らしの中で起きていることをハノーファーの皆さんに知ってもらうとともに、原発事故後の世界を生きる母たちのしなやかさ、強さ、その揺らぎや弱さまで含めて、映画から感じてほしい」と語っています。

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『小さき声のカノン』より(写真提供:鎌仲ひとみ)

両監督は2010年、東京で対談をしたこともあるそう。ドイツ人はもちろん、ドイツに住む日本人にも観ていただきたい映画です。

Kino in Sprengel:www.kino-im-sprengel.de
Kino in Künstlerhaus:www.presse-hannover.de/koki

 

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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