先日、ライプツィヒ大学植物園で毎年行われている春の植物市の日程を調べていたところ、この植物園がドイツで最も古い植物園の一つであることを知りました。春の日差しが心地良い土曜日、あらためて訪れてみることに。植物市などのイベントでにぎわう週末とは打って変わって、園内は驚くほど静かで、穏やかな空気に包まれていました。
静かな土曜日の朝の植物園
ライプツィヒ大学植物園の起源は、少なくとも1542年までさかのぼるといわれています。ザクセン選帝侯が、聖パウリのアウグスティノ会修道院の土地を大学に譲渡したことに始まり、現在に至るまで大学の教育・研究と密接に関わってきました。その後、植物園は何度か移転を重ね、1877年以降は現在のリンネ通り沿いに落ち着いています。
およそ3.5ヘクタールの園内には、世界各地から集められた約7000種類もの植物が育てられています。屋外の植物に加えて熱帯植物のための温室もあり、その中ではチョウが舞っています。子どもが小さかった頃に連れて行ったとき、チョウを見つけてうれしそうな顔をしていたのを思い出しました。
150年以上前に造られたヴィクトリアハウス
今回は久しぶりに園内をゆっくりと歩きながら、特徴的な八角錐の形をした温室「ヴィクトリアハウス」の案内板をじっくりと読みました。ヴィクトリアハウスとは、熱帯の巨大なスイレンであるヴィクトリア・アマゾニカ(オオオニバス)を展示するために開発された特別な温室で、19世紀後半にはこの植物種と建築様式が世界的に広まりました。
ライプツィヒにあるものは1876年に建てられたもので、世界に現存する五つのヴィクトリアハウスのうち3番目に古いものだそうです。私自身も植物が大好きですが、こうした施設の背景を知ることで、偉大な先人たちの植物への深い情熱に触れたような気持ちになりました。ちなみに、夏にはこの温室でヴィクトリア・アマゾニカの開花が見られるとのことです。
春先の植物の交換棚はまだまばらな様子
ピクニックをする気満々で作ってきたお弁当を平らげて、屋外の植物を見て歩いていると、植物の「交換棚」を見つけました。まだガーデニングシーズンの始まりということもあって並んでいる植物はまばらでしたが、「いつか家で増やした植物を持ってきて、誰かに手渡したいな」と思わせてくれるすてきな仕組みだと思いました。
市の中心部からも徒歩でアクセスでき、屋外エリアへの入園はなんと無料! 暖かい季節にはピクニックにもぴったり……なんて紹介すると、混み合ってしまわないかと少し心配になるほど、居心地が良かったです。なお、熱帯植物が栽培されている温室に入るには、5ユーロの入場料がかかります。
歴史ある空間の中で、季節ごとに異なる表情を見せてくれるライプツィヒ大学植物園。ハスの花が咲く季節に、もう一度ゆっくり訪れてみたいです。
IT系の翻訳者・プログラマー。オーストリア、インドを経てドイツへ。ライプツィヒには2016年より在住。三度の食事と、手に入らない食材を自分で育てるのが何よりの楽しみ。古巣のアート分野に戻りつつある。