健康診断で便潜血テストを受けたのですが、陽性でした。痔の影響はあるでしょうか?親戚が最近、大腸がんの手術を受けたばかりなので心配です。大腸カメラは受けた方がよいかどうか、教えてください。
Point
- 男女合わせた罹患数が最も多いがん
- 50代から増えてくる
- スクリーニングには便潜血テスト
- 便潜血陽性であれば大腸カメラ
- 早期がんでは5年生存率90%以上
- 直腸がんの手術後はストーマ設置
大腸がんとは
大腸(Dickdarm)とは
小腸(Dünndarm)から続く長さ1.5〜2メートルの消化管で、食べた物の最後の通り道です。小腸から送られてきた内容物から、水分やミネラルを吸収し、固形の便(Kot)を作って体外へ排泄します。
大腸がん(Kolonkarzinom)とは
大腸の粘膜に発生する悪性腫瘍(がん、Krebs)です。組織学的には「腺がん」(Adenokarzinom)が多く、比較的治療しやすいがんと考えられています。
大腸がんの多い部位
大腸は、結けっちょう腸(Kolon)と直腸(Mastdarm)からなっています。結腸は、盲腸(Blinddarm、腹部右下)から始まり、上行結腸(腹部右側を下から上へ)、横行結腸(腹部上側を右から左へ)、下行結腸(腹部左側を上から下へ)、S字形のS字結腸(Colon sigmoideum、下腹部)を通って、直腸に至ります。大腸癌研究会の毎年の全国登録集計によると、S字結腸と直腸のがんの割合が約3分の1ずつ、残りの盲腸部・上行結腸・横行結腸合わせて約3分の1と報告されています(全国がん登録罹患データ[2016〜2023年])。
大腸がんの頻度と発症年齢
日本の男女合計で罹患数が最も多いがんです(国立がん研究センター)。大腸がんの生涯罹患リスクは男性が9.6%(約10人に1人)、女性が7.9%(13人に1人)です(上記の全国がん登録罹患データ)。40代から増え始め、50代以降に急増、70代の発症が約半数を占め、手術例からの年齢分布でも、60歳以上が約80%を占めています(全国がん登録罹患データ)。ドイツでもほぼ同じ傾向です(ロベルト・コッホ研究所)。
大腸がんの症状
早期は無症状
早期の大腸がんは、無症状のことがほとんどです。お腹が痛くなる、腹部の張った感じ、しこりが触れる、貧血などは、ある程度がんが大きくなってからみられる症状です。その場合、がんの大腸の発生部位により、次のような特徴が知られています。
右側結腸の場合
便が液状のため、便秘(Verstopfung)が起こりにくく、仮にがんから出血があっても泥状状態の便と混じり、排便時に出血に気付きません。
左側結腸の場合
横行結腸の左側から下行結腸、S字結腸では、便が硬いため出血(Blutung)に気付きやすく、がんが大きくなった場合は便秘を来たしやすくなります。
直腸の場合
便の表面に血液が付着しやすく(blutiger Stuhl)、便の通り口が狭くなるため、直径1センチ以下の細い便(Bleistiftstuhl)になるなど、残便感が生じます。
大腸がんのスクリーニング・診断
便潜血検査によるスクリーニング(FOB Test)
目に見えない出血(潜血、okkultes Blut、FOB)を確かめるのが便潜血検査です。ヒトの血液のみに反応する免疫法のヒトヘモグロビン法が用いられます(iFOBT = Immunochemical Fecal Occult BloodTest)。痔や裂肛(切れ痔)からの出血、生理、血尿が混じると、テストが陽性になることがあります。
大腸カメラ(Darmspiegelung、Koloskopie)
便潜血検査が陽性の場合、精密検査として大腸カメラが行われます。2021~2024年のデータをまとめたドイツの最近の報告によると、便潜血陽性者の大腸カメラ検査で、何らかの肉眼的所見は約64%に、組織検査を行った患者に限れば、ポリープやがんなどの腫瘍性病変は約60%に、大腸がんは約2~3%に見つかります(Gesundheitsforen「Evaluationsbericht 2025Darmkrebs」)。
ドイツの疾病保険での適応は?
大腸がん検診は、ドイツの公的疾病保険の中に組み込まれています。検診として大腸カメラを受けない場合は50歳からFOBテストを2年ごとに、受ける場合は10年以上の間隔で2回まで選択できます。プライベート保険では、契約の内容によって異なります。
大腸がんの進展の目安
大腸がんの進行の度合い
病期(ステージ)で示されます。このステージの判断に、国際的にはTNM分類(次項)、日本では独自の「大腸がん取扱い規約」が用いられています。共通点は多いものの、ドイツでは前者が基準になります。
TNM分類とステージ(病期)分類
①腫瘍(Tumor)の大腸壁への深達度(T0~ T4)、②所属リンパ節(Nodus lymphatic、Lymphknoten)への転移の有無(N0~ N2)、③遠隔転移(Metastase)の有無(M0、M1)で評価します。さらに、TNM分類をもとに進行度をステージⅠ~Ⅳに分けます。
早期がんと進行がん
TNM分類の深達度が、大腸壁の粘膜内か粘膜下層の場合を「早期がん」(Frühkarzinom)、それ以上深く浸潤している場合を「進行がん」(fortgeschrittenesKarzi nom)といいます。したがって、「早期がん」とステージ分類は必ずしも一致しません。
治療方法
結腸がんの治療
早期がんの場合、肛門からの内視鏡(Endoskopie)によってがんを切除します。内視鏡の先から出した「輪」(スネア)をポリープの茎に引っ掛けて取り除きます。進行がんでは、切除が可能な限り、手術療法が基本です。病変が限られて小さな場合には「腹腔鏡下手術」を、がんが大きい場合や、ほかの臓器に浸潤している場合には「開腹手術」が選ばれます。化学療法では、①手術療法の後に行う補助化学療法と、②切除不能な転移がんに行う化学療法があります。薬剤には、がん細胞の増殖を抑える従来からの化学療法と、がん細胞に特徴的な物質を標的とする分子標的薬があります。
大腸がんの5年生存率
早期がんのステージIでは99%、ステージIIは90%以上、ステージIIIでも84%と治療効果が良好です。一方で、ステージIVは約20%と低くなります(国立がん研究センター・全国がんセンター協議会「全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について5年生存率、10年生存率データ」)。
直腸がんの治療
以前は直腸の周囲も大きく切除する「拡大手術」が行われてきました。術後に排尿障害や性機能障害を残すことから、近年は「機能温存手術」(funktionserhaltendeOperation)が広く行われています。手術した後、大腸内容物を排泄するため腹壁にストーマ(人工肛門、Stoma、künstlicher Darmausgang)を造設します。



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック





