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ドイツでの子どもの予防接種

小さい子どもが2人います。日本とドイツの子どもの予防接種の仕組みは同じでしょうか。

予防接種 (Impfung) とは

病気に対する免疫を作る抗原物質を投与することです。特にウイルスなどによる感染症の予防を目的としています。赤ちゃんの麻疹(はしか)に対する免疫は生後2カ月ほど、水痘(水ぼうそう)に対する免疫は生後3カ月ほどでなくなります。

ワクチンの種類

作り方の違いからワクチンは3種類に分けられます(表1)。注意すべき点は、生ワクチンは免疫獲得までに約1カ月を要し、その期間に発熱などの軽い症状が現れることがあります。不活化ワクチンは2、3回摂取して初回免疫を作り、次第に免疫が低下するため、約1年後に再接種する必要があります。

表1 ワクチンの種類

種類 中身は何? ワクチンの例
不活化
ワクチン
・病原体から免疫に必要な成分
だけ取り出したもの
・複数回の投与が必要
百日咳、ヒブ菌、ポリオ(ドイツ)など
トキソイド ・細菌の作る毒性を失わせたもの ジフテリア、破傷風
生ワクチン ・病原体の病原性を弱めたもの
・発熱など軽い症状が出ることあり
麻疹、風疹、ポリオ(日本)など

同時接種と混合接種

日本ではDPT以外は単独接種が原則で、次のワクチン接種まで、生ワクチン接種後は原則的に4週間以上、不活化ワクチン接種後は1週間以上の間隔をとります。そのため、すべての予防接種を完了するまでに何度も通院することになります。一方、ドイツでは一般に6種混合ワクチンが用いられ、スケジュールも簡素化されています。

表2 日本とドイツの予防接種項目

対象の病気 日本 ドイツ
ジフテリア(D)
破傷風(P)
百日咳(T)
B型肝炎 任意
ポリオ
ヒブ菌 任意
肺炎球菌 任意
麻疹(M)
おたふく風邪(M) 任意
風疹(R)
水痘 任意
髄膜炎 なし
子宮頸がん 任意
BCG なし
日本脳炎 なし

日本とドイツの基本接種項目 (Standardimpfungen)の違い

ドイツでは水痘、おたふく風邪、B型肝炎に加え、ヒブ菌(日本では平成20年より任意で接種可能)、肺炎球菌(同、平成22年)、子宮頸がん(同、平成21年)などSTIKO(後述)推奨の基本接種項目がすべて組み込まれています(表2)。ドイツの基本接種項目に含まれる髄膜炎菌のワクチンは、日本では未発売です。

ドイツの基本予防接種は義務ですか?

基本予防接種は必ずしも義務ではありません。しかし、ほとんどの子どもがこの基本予防接種をカレンダー通りに受けています。また、幼稚園や小学校に入る時に、予防接種の証明書を提示することもあるようです。

ドイツの基本予防接種は無料ですか?

基本予防接種のワクチン接種料は保険(Krankenkasse)によって支払われ、自己負担分は無料です。但し、感染症の流行地などへの旅行目的のために行う予防接種や基本予防接種スケジュール以外に任意で接種を受ける場合は保険の適応にはなりません。

STIKO(ständige Impfkommission)とは何ですか?

1972年にドイツ厚生省がベルリンのロベルト・コッホ研究所に作った予防接種常任委員会。16名の専門家が1年に2回の会合を開き、基本予防接種の項目やスケジュールの提言を行っています。

日本とドイツの接種法の違い

注射製剤の場合、日本では法律に基づき皮下接種が、ドイツでは筋肉内注射が行われています。ワクチンにアルミニウム塩が含まれているものは、筋肉内注射の方が皮ふへの刺激や炎症の危険が少ないとされています。ポリオの場合、日本では経口生ワクチンの2回接種が用いられるのに対し、ドイツでは不活化ワクチンの4回の筋肉注射が行われます。日本の麻しんのワクチン接種は平成18年より麻しん・風しんの混合接種(MR)を2回することになりましたが、麻しん・風しんの接種がなされていなかったり、2回目の接種が抜けている子どももいます。ドイツでは麻しん・風しん・おたふく風邪の3者(MMR)を2回接種することになっているので、どのようにすれば良いか、かかりつけの医院に相談してください。

日本の定期接種カレンダー通りにドイツで接種することはできますか?

先述のように、ドイツの基本予防接種は義務ではないため、入手できる個々のワクチンを日本の接種スケジュールに従って接種していくことは理論的に可能です。ただし、経口のポリオ生ワクチン、BCG、日本脳炎(平成21年より新ワクチン)など、ドイツでは入手困難なものもあります。逆に、ドイツの基本接種カレンダーはほぼWHOの推奨と国際基準を満たしているので、BCGと日本脳炎以外はすべて含まれています(表3、4)。

表3 ドイツの基本予防接種カレンダー(18歳まで)
表4 日本の予防接種カレンダー

子宮頸がんの予防ワクチンは思春期前に

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。このウイルスは性的交渉による感染が多いので、性行為開始前にワクチン接種を完了しておくことが望ましく、ドイツでは基本予防接種に含まれています。日本では平成21年より任意での接種が始まりました。

予防接種のためのドイツ語

ジフテリア Diphtheria
破傷風 Tetanus
百日咳 Keuchhusten
B型肝炎 Hepatitis B
ポリオ Polio
ヒブ菌 Homophiles influenza Typ B(Hib)
肺炎球菌 Pneumokokken
麻疹 Masern
おたふく風邪 Mumps
風疹 Röteln
水痘 Varizellen (Windpocken)
髄膜炎 Meningokokken
子宮頸がん Human Papillomavirus(HPV)
 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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